アメリカの領土にはどのような地域が含まれるのでしょうか?主な50州と特別な連邦政府直轄地、そして14の海外領土からなるアメリカの領土について見ていきましょう。
アメリカ合衆国は現在の国際情勢において世界最大の経済大国であり、世界で三番目に大きな人口、そして世界で3番目か4番目に大きな国土を抱える超大国です。
そんなアメリカが領有権を主張する領土には、代表的な50州を含めてどのような地域が含まれているか知っていますか?
この記事では、アメリカの領土について簡単なまとめから始め、その後にアメリカが保有する海外領土をそれぞれ簡単に紹介していきます。
アメリカの領土とは?《簡単なまとめ》
アメリカの領土を確認していく上で、まずは「領土」の定義をおさらい。
領土の定義は以下の通りです。
国家の統治権(主権)の及ぶ区域。土地からなる国家の領域であるが、広義には領海・領空を含めて用いられる
(引用:デジタル大辞泉)
そして、この記事における領土の定義を狭義のものとした場合、アメリカの領土は次の3種類に大きく分けることが出来ます。
- 50の州
- 連邦国家「アメリカ合衆国」を構成する50の「国(州)」
- アメリカ合衆国本土の48州と飛び州のアラスカとハワイの2州から構成される
- ワシントンD.C.(コロンビア特別区)
- 州には属さないアメリカ合衆国・連邦政府直轄地
- 14の海外領土
- アメリカ合衆国連邦政府によって管理され、いずれの州および連邦直轄の特別区にも属さない土地
- ほとんどの海外領土は防衛、経済、および社会支援をアメリカ合衆国に依存している
- 5つの有人領土と9つの無人領土から成る
そして、アメリカの領土全てを合わせた総面積は、
- 領海を含んだ場合・・・およそ985万㎢
- 領海を含まない場合・・・およそ965万㎢
となります。
これは、中国と並んで世界で3番目か4番目に大きな国土となり、超大国アメリカ合衆国が抱える領土の規模が分かります(両者は何を含んでいるのか等によって順位が入れ替わる)。
アメリカ合衆国の海外領土
さて、アメリカ合衆国の領土について、その概要を見ていきましたが、ここからはアメリカ合衆国が抱える14の「海外領土」について、それぞれをもう少し詳しく見ていこうと思います。
有人のアメリカ合衆国海外領土
グアム
西太平洋のマリアナ諸島に位置するグアムは現在、観光地としても有名なアメリカの海外領土であり有人の自治領。
現在はおよそ16万前後の人々が暮らしています。
アメリカとスペインの間で起きた米西戦争終結後の1898年にアメリカの属領となりましたが、第二次世界大戦中は、1941年ハワイの真珠湾攻撃の3日後に日本軍によって占領されました。
その後、1944年7月21日にアメリカ軍により解放され、1950年に制定された「グアム自治基本法」によって、アメリカの自治的海外領土となりました。
ちなみに、グアムには先住民チャモロ族がいますが、彼らは約4,000年前にこの島に定住したと考えられています。
- 合計面積:549㎢
- 人口:約160,000
アメリカ領ヴァージン諸島
カリブ海に浮かぶヴァージン諸島の西半分に当たるのが、アメリカ合衆国の自治的海外領土となるアメリカ領ヴァージン諸島。
セント・クロイ島、セント・ジョン島、セント・トーマス島と、その他の小さな島々から成る群島地域で、1733年から1917年まではデンマークの植民地でした。
しかし、パナマ運河を防衛する上で戦略的な価値を有することから、第一次世界大戦中の1917年にアメリカはデンマークと条約を結んで購入。
それ以降は、アメリカの自治領となっています。
現在、住民たちはアメリカの市民権を得ていますが、連邦所得税は納める必要がなく、アメリカ合衆国の大統領選には投票出来ません。
- 合計面積:346.4㎢
- 人口:約105,000
プエルトリコ
プエルトリコは、フロリダの南東およそ1,610km、ドミニカ共和国のすぐ東、アメリカ領ヴァージン諸島の西のカリブ海に浮かぶ群島地域であり、アメリカ合衆国の自治的海外領土。
元々はスペインの植民地でしたが1898年には自治政府が成立し、スペインとアメリカの間で起きた米西戦争でスペイン側が敗北した結果、アメリカへ割譲され、同年の12月に両国間で調停されたパリ条約によってアメリカ領となりました。
そして、1917年に可決された法律によって、プエルトリコ人に対してはアメリカの市民権が与えられました。
一方で、市民権を与えられているため、プエルトリコ人はアメリカ国民となりますが、連邦所得税の納税義務はなく、また、アメリカの大統領選で投票することは出来ません。
さらに、元々スペインの植民地だったこともあり、現地住民の大多数は英語ではなくスペイン語を話します。
- 合計面積:9,104㎢
- 人口:約3,200,000
アメリカ領サモア
アメリカ領サモアは南太平洋のポリネシア地域に浮かぶサモア諸島の一部で、5つの島と2つのサンゴ環礁から成り立っている、アメリカ合衆国の連邦法的には非自治であるものの、実質的には自治化されている有人の海外領土。
およそ55,000の人々が暮らします。
1世紀を超えるフランス、イギリス、ドイツ、アメリカによる領有争いとサモア人による激しい抵抗の後、サモア諸島は1899年の三国間条約によってアメリカとドイツの間で二分割されました。
1900年にアメリカ合衆国は自国側へ分割されたサモア諸島の一部を領有。1911年には正式にアメリカ領サモアと改称しました。
その後、1967年に発行した憲法によって、自治政府が成立し、現在に至っています。
- 合計面積:199㎢
- 人口:約55,000
北マリアナ諸島
正式には北マリアナ諸島自治連邦区として知られる14の島からなるこの列島は、パラオ、フィリピン、日本に囲まれた、ミクロネシアに浮かぶアメリカ合衆国の有人海外領土で自治領。
北マリアナ諸島という名前よりは、このアメリカ自治領を構成するサイパン島の方が一般的に知られているでしょう。
過去、第一次世界大戦後に日本の国際連盟委任統治領になったこともある場所で、第二次世界大戦中には日本とアメリカの間で激しい戦いが繰り広げられました。
第二次世界大戦後にアメリカの国連信託統治領となり、1978年から北マリアナ諸島としてアメリカの自治的海外領土になっています。
- 合計面積:477㎢
- 人口:約55,000
無人のアメリカ合衆国海外領土
ベーカー島
ベーカー島は、北太平洋に浮かぶアメリカ合衆国の海外領で、ハワイのホノルルの南西約3,100kmの太平洋中央部、赤道のすぐ北に位置する環礁。
1857年にアメリカ領となり、1930年代にアメリカ人の移住が始まりましたが、第二次世界大戦中、太平洋上で日本軍の活動が激しくなったために避難を余儀なくされました。
その結果、現在は無人島になっています。
一方で、アメリカによって国立野生保護区に指定されている地域でもあります。
- 合計面積:1.64㎢
- 人口:無人
ハウランド島
(出典:wikipedia)
太平洋中部、ベイカー島の近くに位置するハウランド島は、ハウランド島国立野生動物保護区を有し、アメリカ合衆国魚類野生生物局により管理されている無人の海外領土。
1856年にアメリカ領となった後、ベーカー島と同じようにハウランド島へは入植が試みられましたが、第二次世界大戦によって住民は島外への脱出を余儀なくされ、それ以降は無人島となっています。
- 合計面積:1.84〜2.6㎢
- 人口:無人
ジャーヴィス島
(出典:wikipedia)
ジャーヴィス島は、南太平洋に位置する、ハワイとクック諸島の中間地点にある無人のアメリカ海外領土。
大部分が環礁から成るライン諸島の一部です。
1858年にアメリカに併合され、ベーカー島とハウランド島と同じように入植が試みられましたが、無人島のまま残っています。
現在は国立野生動物保護システムの一部として、合衆国魚類野生生物局に管理されています。
ちなみに1889年には一度、イギリスの領土として編入されましたが、結局、1935年に再びアメリカの領土に戻っている歴史を持つ島です。
- 合計面積:4.5㎢
- 人口:無人
キングマン・リーフ
キングマン・リーフは、北太平洋の北ライン諸島の北端部を構成し、アメリカが領有する環礁。
(出典:wikipedia)
最大でも海抜は1.5mに満たなく、その大部分は基本的に水をかぶっていることが多く、植物などは育たず人が住むことが出来ないため、無人島として残っています。
このように人間が住むには難しい場所であることから、1798年にアメリカのエドモンド・ファニング船長によって発見されたものの、アメリカの海外領土となったのは1922年のことでした。
ただし、第二次世界大戦の太平洋戦争では、その位置から戦略的に価値があると見なされたこともあります。
現在は、キングマン・リーフ国立野生生物保護区が設置され、アメリカ魚類野生生物局によって管理されています。
- 合計面積:0.03㎢
- 人口:無人
ミッドウェイ島
ミッドウェー環礁とも呼ばれるミッドウェイ島は、北米とアジアの中間点に位置するため、その名前がつけられた、北太平洋のハワイ諸島北西に浮かぶ環礁で、アメリカにとっては無人の海外領土。
1867年にアメリカ合衆国が領有を宣言しました。
(出典:wikipedia)
この地で行われたミッドウェー海戦は、第二次世界大戦中に日本とアメリカの間で行われた、最も重要な戦いの一つとして有名で、太平洋での第二次世界大戦の岐路となったと言われます。
1942年5月、日本軍は、ハワイ攻撃の基盤となるミッドウェー島に侵略を企てます。
しかし日本の無線通信はアメリカ軍により傍受されて解読された結果、1942年6月4日、空母エンタープライズ、空母ホーネット、空母ヨークタウンを飛び立ったアメリカ軍の戦闘機が、4隻の日本の航空母艦を撃沈。
日本は撤退を余儀なくされました。
また、冷戦時代もここにはアメリカ海軍の基地が置かれるなど、歴史の中で有事において、アメリカにとっては重要な戦略拠点となってきました。
ちなみに、定住者がいないため無人島とされますが、島の管理のために定期的に人が駐在しています。
- 合計面積:6.2㎢
- 人口:無人
ナヴァッサ島
ナヴァッサ島はカリブ海に浮かぶ島で、現状としてはアメリカ合衆国が実効支配している無人の海外領土。
(出典:wikipedia)
クリストファー・コロンブスの一行が1504年、ジャマイカからイスパニョーラ島に向かう途中でこの島を発見。
しかし、ナヴァッサ島には新鮮な淡水の供給源がないことから、その後、長期間に渡って放置されていました。
この状況が変わったのが1857年。ピーター・ダンカンというアメリカ人が再発見したとして、アメリカが領有を主張して以降です。
ただし、実はそれ以前からハイチも領有権を主張しているため、両国間における領土問題の対象となっています。
- 合計面積:5.4㎢
- 人口:無人
ウェーク島
ウェーク島は、グアムの東およそ2,400km、ハワイの西およそ3,700kmの大西洋西部に浮かぶ環礁で、アメリカ合衆国の無人海外領土。
1899年にアメリカが領有を宣言し、第二次世界大戦中の1941年に日本軍によって占領されますが、大戦後には再びアメリカの領土に復帰しています。
一方で、隣国のマーシャル諸島共和国も領有を主張している場所です。
ただし、アメリカが実効支配を100年以上続けているため、国際的にもアメリカの海外領土として賛同されています。
ちなみに、永住している人がいないために無人島として分類されますが、この島にある空港や港湾の管理のために、100人から200人の人々が住んでいます。
・合計面積:6.5平方km
・人口:100〜200
パルミラ環礁
太平洋中部に浮かぶパルミラ環礁は、ハワイ諸島の南南西1600km辺りに位置する、アメリカの無人海外領土。
1898年に、ハワイ共和国(現在のハワイ州)をアメリカへ併合した際に一緒にアメリカ領へ組み込まれました。
ちなみに、他のアメリカ海外領土は「未編入領域(合衆国の管轄下にあるが、合衆国憲法の選択された一部のみが適用される)」であるのに対して、パルミラ環礁は唯一の「編入領域(合衆国の管轄下にあり、合衆国憲法が完全に適用されることを合衆国議会が定めた領域)」となる海外領土です。
- 合計面積:11.9㎢
- 人口:無人
合わせて読みたい世界雑学記事
- 領土問題とは?世界で起こる具体的事例を確認して理解を深めよう!
- アメリカの有名なもの18選!国立公園・自由の伝統・音楽産業など
- アメリカ国旗の意味と由来|星条旗の歴史や星が象徴することは?
- →こちらからアメリカに関する情報をさらに確認出来ます
アメリカの領土|国土面積から州以外の海外領土までを見ていくのまとめ
世界最大の経済大国であるアメリカの領土についてみてきました。
超大国アメリカが主張する海外領土を含めた領土を知っておくことは、世界情勢を紐解いていく上でも役に立つ時があります。