インドの国花を知っていますか?
それは、水に美しく浮かび、色や質感の美しさで知られるハス(蓮)の花で、インドの古代文化だけでなく、インド起源の二大宗教(ヒンドゥー教と仏教)と深い関わりがあるなど、インドにおいては昔から重要な意味を与えられてきました。
このハスについて「インドの国花」という観点から、インドにおける意味や重要性なども含めて解説していきます。
インドの国花は「ハス(蓮)」
インドの国花はハス(蓮)。
学名は「Nelumbo Nucifera」で、インド亜大陸とその周辺を原産地とする多年生の水生植物。日本ではその花だけでなく、ハスの地下茎部分である「蓮根」も食用として有名です。
暖かい日差しを好み、寒さには弱いため、冬に花を咲かせることはありません。
また、浮遊する葉や花は1mほどになる長い茎を持ち、その中には浮力を保つための空洞があり、一般に白とピンクの色が見られ、浅く濁った水域に生育しています。
インドでは古代から芸術と神話の中でユニークな位置を占める神聖な花で、インド文化の中では太古の昔から縁起の良いシンボルでした。
そんなハスの花はインドの国花として1950年、近代インドの建国者たちによって憲法に明記されることとなったのです。
インドにおいて考えられているインドの国はな”ハス”が象徴する物事
インドの文化や宗教においてハスの花はまず、豊穣、富、知識を象徴すると言われますが、もう一つ忘れてはならないものとして、インドを起源とする仏教において重要な「悟り」をも象徴しています。
また、ハスの花は濁った水の中で育ち、水面上に長い茎を伸ばして華麗に咲き誇るというユニークなものですが、このハスが持つ「泥の中に根を張り、集団としては何千年も生き延びて再び発芽する」という特徴は、勝利のシンボルであると同時に、長寿、名誉、幸運を象徴していると考えられています。
加えて、ハスが象徴することとして日本でも比較的有名なのが、
- 純潔(純粋な心と精神)、聖性、美、威厳、優美、静寂
を象徴しているとされる点です。
実際日本人の中にも、
蓮は泥より出でて泥に染まらず
という中国の成句を聞いたことがある人がいるかと思います。
これは、濁った水(泥)の中から成長するのにも関わらず、その濁りに影響されることなく美しい花をハスが咲かせることに依ります。
また、泥の中から美しい花へと成長する神聖な美だけでなく、泥水の上に浮かぶハスの花は、愛着と欲望を表し、誰からも愛される花と考えられているのです。
ハスが持つインドの神々や宗教における重要性
まず、インド生まれの宗教の多くでは、人間は無執着の生活を送るよう指示されていますが、この点についてハスの花は比喩的に重要な教えを示しているという考えがあります。
ハスの大きな葉は水面に浮いているのに対して、葉の上には水滴一つ残らないユニークな様が、
人間に無執着な生活を送り、世俗的な快楽を避けることを教えている
とする解釈です。
そして、ハスの花はインド生まれのヒンドゥー教の神々にとって神話的な意味を持っています。
例えば、ウィシュヌやラクシュミー、サラスヴァティーといった女神達は、しばしばこの花ロータスと結びつけられています。
具体的には、ヴィシュヌとラクシュミーは通常ピンクの蓮の花の上に立ち、サラスワティーは白い色の蓮の上に描かれる傾向にあり、特にヴィシュヌ神は「蓮の目をした者」とも表現されます。
ヒンドゥーの神の一柱として有名なシヴァ神に関してもまた、サニースワランの怒りから逃れるために蜂の姿に変身して蓮の中に身を寄せたという話があります。
このように、インドに起源を持つ宗教である仏教やヒンドゥー教において、ハスの花は教えを示す花や神話的な意味を持つ花として重要視されているのです。
インドの国花「ハス」の実践的な用途
インドの国花「ハス」がインドにおいてどれほど重要かを紹介してきましたが、最後に人類全体においてハスが貴重な資源となる可能性を秘めているいくつかの点についても簡単にまとめておきます。
- 蓮の花は排水中の汚染物質や重金属を除去する能力があるため、排水処理に関して効率的に利用出来るかもしれない
- ハスの根(蓮根)、葉、種子、花は、民間薬、アーユルヴェーダ、中国の伝統医学、東洋医学などで使用されている
- ハスの葉は吐血、鼻出血、血尿の治療に、花は下痢、コレラ、発熱、過飲症の治療に使われる
- 熱安定性を持つハスのタンパク質は、タンパク質のバイオエンジニアリングにおける使用にも最適であると考えられている