中国軍(中国人民解放軍)について基本的な知識から、なぜ脅威となりつつあるのかを示す5つの兆候までを紹介し解説していきます。
世界最大の人口を誇り、過去数十年に渡って圧倒的な経済成長を見せてきた中国は、現在、世界No.2の経済大国として君臨しています。
そして近年は、その経済的な力を背景に覇権大国を目指すような動きも目立ち始め、その一つが中国軍(中国人民解放軍)の強化やグローバル展開です。
この記事では、日本にとっても将来的に脅威となるかもしれない中国軍について、基本的な知識から知っておくべき5つの情報、そして、脅威になりつつあることを示す5つの兆候までを紹介していきたいと思います。
国際情勢を理解する上でも、また、日本の将来を考える上でも知っておきたいことだと思います。
中国軍(中国人民解放軍)に関する基本的知識
日本国内では通称「中国軍」と呼ばれる「中国人民解放軍(Chinese People’s Liberation Army:PLA)」は、中国共産党の指揮下にある中国人民共和国(中国)の軍隊。
2018年にイギリスの「国際戦略研究所」が発行した「2018年ミリタリーバランス」によると、
- 現役兵
- 203万5千人
- 予備兵
- 51万人
を抱える世界最大の軍隊であり、それに加えて準軍事組織である「人民武装警察(武警)」の66万人も、中国共産党と中国の軍事力に含まれるとされています(※中国人民解放軍の人員に関して、中国政府と中国軍は情報公開に積極的でないため、この数字はあくまでも外部による推測である)。
さらに、防衛予算は世界第2位であり、現在(2018年現在)の世界においては、最も速く近代化をしている軍隊の一つで、将来的には圧倒的な軍事力を備える潜在力を持っている軍隊と言えるでしょう。
また、中国人民解放軍は、以下の5つの部門(軍種)から構成されています。
- 陸軍(地上部隊)
- 海軍
- 空軍
- ロケット部隊
- 戦略支援部隊
中国軍(中国人民解放軍)について抑えておきたい5つの情報
中国人民解放軍は共和党の軍隊である
1927年に設立され、当初は中国工農紅軍(紅軍)と呼ばれていた中国人民解放軍は、1927年から1950年まで続いた「国共内戦」において、蒋介石が率いた国民革命軍を破り、その結果、共産党の毛沢東が実権を握ることになりました。
この経緯を見ても分かる通り、現在、中国軍と呼ばれる「中国人民解放軍」は、正しくは共産党の軍隊であり、中国の国軍となるべきだという声も度々上がる中、共産党の中国統治を徹底することが主要な任務となっています。
またその指揮は、中国共産党の最高軍事指導機関である「中国共産党中央軍事委員会」によって行われています。
中国軍は1984年以来戦っていない
中国人民解放軍は、これまで何度も海外紛争に派遣されていますが、実際に海外で戦ったのは5回(2018年現在)。
1回目は1950-53年の朝鮮戦争で、中国軍は共産主義の北朝鮮側を支援しました。
その後、1962年にヒマラヤの国境をめぐってインドと紛争になった時と、1969年にシベリアの国境線をめぐってソ連軍と紛争になった時に武力衝突しています。
そして中国が支援していたカンボジアのポルポト政権がベトナムの侵攻によって崩壊した後、1979年に中国とベトナムの間で中越戦争が始まり、また、1984年にはその延長で両国の国境を巡る中越国境紛争が起こり、これが中国軍が実戦に参加した今のところの最後の紛争となっています。
有名な「天安門事件」
日本で「天安門事件」として知られる「六四天安門事件(ろくよんてんあんもんじけん)」は、1989年6月4日、民主化を求めていた一般市民のデモ集団に対し、中国人民解放軍が武力を行使して制圧した事件。
丸腰の一般人達に対して中国軍は無差別発砲を行い、最大で3000人もの人々が殺されたと言われます。
中国政府はこの凄惨な事件を今でも「反革命的な暴動」と言及しており、これに対して公然と反論することを禁止していることは有名です。
巨大ビジネスと中国人民解放軍
1978年に鄧小平が中国で実権を握った時、中国人民解放軍に「不動産、製薬、ナイトクラブなどの広範囲にまたがる巨大ビジネスを行う許可」を与えた結果、市場中心の経済改革を行うことに対する人民解放軍からの支持を得ることが出来ました。
そして1998年、当時の中国国家主席であった江沢民は、人民解放軍に対してビジネスの多くを手放すことと引き換えに、防衛費の大幅な引き上げを約束します。
一方、現在(2018年現在)の国家主席である習近平は、人民解放軍に残りの商業事業も手放すよう要求しており、軍内の腐敗を一掃するために指揮系統の見直しを推し進めています。
兵役は法律で義務付けられているが実施されたことはない
実は中国において、兵役は法律で義務付けられています。
しかし、中国国内で兵役の義務があると耳にすることはまずありません。
というのも、中国にはすでに多数の現役兵や予備兵が存在し、また、国家の緊急時には人民武装警察も参加するため、現在のところ強制兵役を行って軍人を確保する必要はないと考えられているから。
実際にこれまで、軍人確保のための強制兵役は実施されたことはありません。
中国軍が今までよりも脅威になってきていることを示す5つの兆候
中国軍(中国人民解放軍)を理解する上で知っておきたい基本知識から、5つの情報までを見てきましたが、最後に、中国軍がこれまでよりも危険になってきているかもしれない5つの兆候を挙げておきます。
中国軍はより柔軟で素速い武力行使が可能になっている
過去の中国軍は、当時世界最強の軍事力を誇ったアメリカやソ連の軍隊と比較すると、柔軟性に欠けて動きも遅い大集団でした。
しかし現在は、より規模の小さい旅団や、大きな大隊などの様々な部隊を組み合わせることで、戦況に応じて柔軟に、しかも素早く対応出来る集団に変身していると言われます。
加えて各部隊には、
- 武装隊
- 歩兵隊
- 防空隊
- 特殊部隊
- 陸軍航空隊
- 技術担当・化学防衛隊
- 支援部隊
が設置されているようで、これによって中国軍の臨機応変さはさらに強化されていると言えるでしょう。
ハイテクを採用して数以上の力を付けている
中国人民解放軍は単なる人員の数による強さではなく、それ以上の破壊力を有する軍隊を実現するために、あらゆる手段を採用し始めています。
2017年には、
- 防空技術
- ミサイル
- 後方支援
- 技術担当
- 化学防衛システム
の分野でハイテクを導入するなど、拡大および改善が見られたと言われ、これによって、各部隊は数以上の力を発揮することが出来るようになったと考えられます。
中国人民解放軍に見る陸海空部隊の統合
これまで中国軍が戦争に参加する時は伝統的に、陸軍が中心となって、空軍と海軍は支援する形を取ってきました。
しかし、中国はここにきて統合的な活動を可能にすべく改革を進めています。
陸軍、海軍、空軍の3者による統合的な訓練が増えたのに加え、新たなコミュニケーションネットワークによって、陸海空軍内の協力が促進されるようになってきたのです。
拡大し続ける防衛費
2018年度の国防費予算案として中国政府が発表した額は、およそ18兆4千億円と言われ、この数字は2010年度の中国国防費のおよそ2倍で、毎年増え続けています。
また、2018年度の日本の国防費4兆9388億円と比較した場合、その予算額は3.7倍にも達し、中国が自国の一部だと主張し続ける台湾と比較すると、その差はおよそ15倍近くになります。
実際、台湾を中国の一部として事実上の併合をする上で必要な軍事力を手に入れるために、中国の国防費の多くが費やされているという分析もあるほどです。
強力な破壊力を誇るドローンの開発
ハイテクによって可能になった破壊力抜群のドローン開発によっても、中国の脅威が増していると言えます。
2017年、中国の防衛産業の代表らは、「長距離ステルスおよび、非常に高い高度を飛べる無人航空機(ドローン)を開発している」と発言。
2018年の2月には、中国の海南島(ハイナン島)でXianglongと名付けられた無人航空機が確認されたとの報告もありました(参照:Jane’s 360)。
この結果、近い将来、中国軍は人命を犠牲にすることなく軍事的な活動を行うことが可能になると推測出来、中国軍のさらなる軍事力拡大につながると言えます。
中国軍のグローバル化
中国軍は近年、グローバルにその軍事的な影響力を持つような活動を活発化させています。
例えば、中国、台湾(中華民国)、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの6か国が、全域または一部について領有を主張している「南シナ海の南沙諸島海域」の一部に、中国は2014年から大量の土砂を投入して人工島を建設。
2018年5月の時点で、すでに400棟近い建造物が存在し、
スービ礁には将来的に人民解放軍の海軍陸戦隊数百名が常駐する可能性があるだけでなく、中国が文民の存在によって領有権の主張を強化しようとしているため、行政拠点が置かれる可能性もある
(引用:REUTERS)
と指摘されています。
また、2017年8月に中国は、アフリカ大陸北東部の国ジブチに、初めての海外の中国軍基地を置き、海兵隊員や必要な機材を配置しています。
このように中国政府は、
- 実力行使による軍事拠点の拡大
- 長年親交の深い国に軍事施設を設置させてもらう
といった二方向からアプローチすることで、中国人民解放軍のグローバル化を虎視眈々と狙っているようなのです。
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中国軍(中国人民解放軍)の基本知識と実力・装備の変化に見る脅威のまとめ
中国軍に関して、基本知識から抑えておきたい情報、さらに、脅威となりつつ兆候までを見てきました。
これ以外にも、中国軍がグアム、フィリピン、日本を含めた太平洋西部深くまで空爆する訓練をしているとする報告もあるなど、中国人民解放軍の脅威は無視できないほどに強まってきています。