トリスタンダクーニャ島はイギリス領に含まれる絶海の孤島です。行き方や観光情報などを含め、あまり知られていない世界有数の有人の孤島について紹介していきます。
広い地球には、通常では考えられない場所に人が住んでいることがあります。
その一つが、トリスタンダクーニャ島と呼ばれる南大西洋に浮かぶ島。
最も近くにある人間の居住地域まで、なんと2000kmも離れているという絶海の孤島で、イギリスの海外領土の一つです。
この記事では、そのトリスタンダクーニャに関して詳しく紹介していこうと思います。
基本的な概要から歴史、さらには行き方や現地での観光情報までを載せておくので、興味があれば参考にしてください。
トリスタンダクーニャとトリスタンダクーニャ島
(出典:wikipedia)
トリスタンダクーニャとは、アフリカ南部と南アメリカのおよそ中間に位置している群島「トリスタンダクーニャ諸島」のことで、また、この群島にはいくつかの無人島と、「トリスタンダクーニャ島」と呼ばれる有人の島が含まれます。
(※)以降、両者を分けるために、「トリスタングターニャ」は「トリスタングターニャ諸島」を、「トリスタングターニャ島」は「トリスタングターニャ島」を指すこととします。
また、トリスタンダクーニャは南大西洋の中でも、南アフリカからは約2800km、南アメリカからは約3200kmも離れた場所に位置しているなど、世界有数の孤島としても有名。
実際、トリスタンダクーニャ島は、ギネスブックによって「世界一孤立した有人島」と認定されているほどです。
一方、行政的には英国の海外領土であるセントヘレナ・アセッションおよびトリスタンダクーニャの管轄となるため、国際法上はイギリスに含まれることになります(ただし、同じ管轄下にあるアセンション島やセントヘレナ島からは、2000km以上も離れている)。
結果、トリスタンダクーニャに関しては、セントヘレナ島に常駐する同島の総督が兼任し、総督は自身の代わりにトリスタンダクーニャを管理する管理官を指名。その管理官が実際の業務を行っています。
トリスタンダクーニャを構成する島々
トリスタンダクーニャは、5つの小さな島から構成される「トリスタンダクーニャ群島」と、「ゴフ島」の6つの島々から構成されています。
トリスタンダクーニャ群島を構成するのは、トリスタンダクーニャ島、イナクセシブル島、ナイチンゲール諸島(ナイチンゲール島、ミドル島、ストルテンホフ島)であり、それぞれ40km圏内に位置。
一方のゴフ島は、トリスタンダクーニャ群島の南南東およそ320kmのところに位置し、他の島からは少し離れています。
これら島の関係をそれぞれの面積と併せて簡単にまとめると、以下の通りになるでしょう。
- トリスタンダクーニャ群島
- トリスタンダクーニャ島 (98km2)
- イナクセシブル島 (14km2)
- ナイチンゲール諸島 (2km2)
- ナイチンゲール島 (1.80km2)
- ミドル島 (0.10km2)
- ストルテンホフ島 (0.10km2)
- ゴフ島 (65km2)
(引用:wikipedia)
トリスタンダクーニャ島に関して
トリスタンダクーニャ島は、トリスタンダクーニャにおける主要な島。
トリスタンダクーニャの中では最大で、一番北に位置しており、大まかに言うと円形の形をしているのが特徴。
およそ34kmに及ぶ海岸線と、中央には2062mを誇る「クイーン・メアリー・ピーク」と呼ばれる火山があります。
また、気候は湿気があって風が強く、温暖です。
そして、島の北海岸にはトリスタンダクーニャ唯一の集落である「エディンバラ・オブ・ザ・セブン・シーズ」があり、250〜300人の人口を抱えています。
ちなみにトリスタンダクーニャ島は、ゾウアザラシを始めとする、世界でも珍しい動植物が生息していることでも知られる場所です。
イナクセシブル島とゴフ島と
トリスタンダクーニャに含まれるイナクセシブル島とゴフ島は、どちらとも正式には無人島とされる島。
両者ともにユネスコによって自然遺産として登録されており、また、野生動物保護区があります。
(ゴフ島:出典:wikipedia)
イナクセシブル島は、トリスタンダクーニャ島の西南西約32kmに位置する小さな島で、およそ300mの崖に囲まれ、崖の下には細長いビーチが存在。
この島特有の小さくて飛べない鳥「マメクロクイナ」を始め、島には3000羽以上の鳥が生息しています。
一方、トリスタンダクーニャ群島から南南東およそ320kmに位置するゴフ島は、正式には無人島として見なされますが、実際には気象観測所の職員が何名か住んでいます。
トリスタンダクーニャの歴史(ダイジェスト)
トリスタンダクーニャは、1506年にポルトガルの海軍司令官であるトリスタン・ダ・クーニャによって発見されました(ゴフ島は1505年頃にポルトガル人のゴンサロ・アルバレスによって発見された)。
そして1816年に英国は、守備隊を駐在させ正式に群島を、イギリスの植民地の一つ「ケープ植民地」に併合します(※これ以前に17世紀に二度、1810年に一度、群島への定住に失敗したグループがいた)。
一方、1817年には守備隊が撤退。
しかし、伍長のウィリアム・グラスが除隊して家族と一緒に島へ残った結果、その後、島に漂着した難破船の乗組員の一部、ヨーロッパからの定住者、セントヘレナ出身の人々などが、少しずつ増えていき、1886年には人口が97人になっていたと言われます。
また、この過程では、1867年のエディンバラ公アルフレッドの訪問を記念して、人々が住んでいた集落が「エディンバラ・オブ・ザ・セブン・シーズ」と名付けられました。
そして、1938年にトリスタンダクーニャはセントヘレナ島に属することになり、今日まで続く行政の基盤が作られます。
その後、第二次世界大戦中にはイギリス海軍の気象観測所とラジオ局が建てられるなど、戦略面で重宝され、これら施設と島の管轄は、戦後もイギリスによって維持されていきました。
1961年の火山噴火
1961年に起きた火山の噴火は、トリスタンダクーニャ島の住民達を恐怖に陥れました。
(出典:wikipedia)
島に存在する火山「クイーン・メアリー・ピーク」は当初、死火山だと思われていたものの、1961年8月6日から地震活動が活発となり、10月10日にはついに噴火が派生。
しかし、最も近い陸地まで2000kmもあるため、住民の避難はすんなりいくはずもなく、ナイチンゲール島を経由して大変な思いをしながらイギリスへ避難したのです。
その後、1963年11月、地震前にいた住人の多くが島に帰還。
1965年から1967にかけて、新しい港が建設され、電気、水道、下水道設備などと同じように道路や病院も建設されていきました。
そして、2009年に改められた憲法によって、トリスタンダクーニャはセントヘレナ島の属領ではなく、セントヘレナ島、アセッション島と同等の立場となり、現在の「セントヘレナ・アセンションおよびトリスタンダクーニャ」となって完全自治権を手にれたのです。
トリスタンダクーニャへの行き方
トリスタンダクーニャへ訪問するには国籍による制限やビザ取得の必要ありませんが、トリスタンダクーニャに滞在するには管理官もしくは評議会の許可が必要です。
そのため、admin@tristandc.comにメールをして、以下のポイントをまずは伝えると良いでしょう。
- 名前
- 国籍
- 年齢
- 訪問の日時と帰還
- 滞在希望場所
- 訪問方法(船でしかいけないため、船の名前や番号を伝える)
- 訪問の目的
- その他必要だと思われる情報
また、上記に加えて、警察による犯罪経歴証明書が必要になることもあるかもしれません(※担当の管理官に確認してください)。
ボートで行く場合にも綿密な計画が必要
トリスタンダクーニャに行くには、慎重に計画を練らなければないと言えるでしょう。
というのも、トリスタンダクーニャは南アフリカのケープタウンから2,800km以上も離れており、島に行くまでに5~10日はかかるから。
- 南アフリカ政府の調査船「SA Agulhas」
- 南アフリカの水産会社が運航する「MV Edinburgh」
- 南アフリカの水産会社が運航する「MV Baltic Trader」
の3つが一年間に9往復の定期便を出しているため、そのタイミングに合わせることになります。
さらに詳しくは、トリスタンダクーニャの公式サイトを確認してみましょう。
トリスタンダクーニャの観光
現地ガイドにお願いして周ってみる
トリスタンダクーニャでは、さまざまなアクティビティが可能だと言えます。
例えば、釣り、ウォーキング、登山、そしてちょっとしたゴルフなども楽しめます。
さらに、トリンスタンダクーニャ島だけでなく、比較的近場にあるイナクセシブル島へ行けば、世界遺産に登録されている美しい自然やたくさんの鳥達を観察することが可能。
また、とても小さなナイチンゲール島も、同じような理由から訪れてみるのが良いかもしれません。
これらの島は入島が許可されていますが、観光客を迎い入れるような施設はないため、訪問する上では必ず飲み物や食べ物を持参していくようにしましょう。
いずれにせよ、現地でガイドをしてくれる人に自分の希望を伝え、カスタマイズしてもらうのが良いかと思います。
島を散策してみる
島を探索するには、基本的に徒歩が最も一般的な手段となりますが、場所によっては平坦ではなく険しい地形となるため、隈なく探索するのは難しいと言えます。
一方で、村(エディンバラ・オブ・ザ・セブン・シーズ)は基本的に平坦な緑地であるため、特に徒歩だけでも問題なく過ごせます。
また、村からはおよそ5km離れた所にある「ザ・ポテトパッチ」という農園まで舗装道路が繋がっており、ザ・ポテトパッチまでは車を利用することが可能。
朝にはバスも運行しています。
トリスタンダクーニャでお腹が空いたら
トリスタンダクーニャでお腹が空いたら、「ポストオフィス・アンド・ツーリズムセンター(Post Office and Tourism Centre)」内にある、カフェ・ダクーニャを利用してみましょう。
温かい飲み物から冷たい飲み物、そしてサンドイッチのような軽食から温かい食事までを摂ることが出来ます。
そして、島で唯一のパブ「アルバトロス・バー(Albatross Bar)」は、月曜日から土曜日までの夜、日曜日は午後に数時間オープンしているので、立ち寄ってみるのも良いかもしれません。
さらに、アイランドストア(Island Store)では、様々な食べ物や飲み物を必要な分購入することが出来、また、ちょっとした工芸品などをお土産として購入することも可能です。
トリスタンダクーニャでの宿泊
トリスタンダクーニャで宿泊する場合は基本的に、ゲストハウス滞在かホームステイとなるでしょう。
ゲストハウスに関して言えば、トリスタンダクーニャには、様々な公的または民間の宿泊施設があります。
なかには食事付きの場所もあれば、食事はないロッジやバンガローのような場所もあります。
一方、3食の食事や洗濯付きのホームステイを選ぶのも、トリスタンダクーニャに滞在する上では良い選択肢かと思います。
詳しくは、こちらの公式ページで確認してみるのがおすすめです。
現金を十分に用意しておくこと
トリスタンダクーニャでは、クレジットカードを利用することが出来ません。そのため、訪問にあたっては、必ず十分な現金を用意しておくことが必須。
ユーロや米ドルを交換出来る場合もありますが、現地の現金はイギリスのポンドになるため、訪問前には必ずポンドを用意しておくようにしましょう。
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トリスタンダクーニャ島|イギリス領の孤島-行き方や観光情報までのまとめ
イギリスの海外領土であり、南大西洋に浮かぶ絶海の孤島「トリスタンダクーニャ島」について見てきました。
実際に行くのは結構ハードルが高そうですが、興味があれば調べてみてください!