シュールストレミングという名前の世界一臭い食べ物を紹介していきます。主にスウェーデンで消費される発酵した塩漬けニシンの切り身です。
シュールストレミングという食べ物を知っていますか?
「ちょっと臭いを嗅いだだけで目の玉が飛び出して皮膚が溶け始め、臭覚をつかさどる細胞が破壊される」とまで形容され、世界一臭い食べ物と言われる主にスウェーデンで食べられる食べ物です。
スウェーデンへ行ったことがある人なら、スーパーに並ぶ商品の中に膨張した缶詰を見たことがあるかもしれませんが、その膨張した缶詰こそ、ほぼ確実にこのシュールストレミングです。
シュールストレミングとは、いったいどのような食べ物なのでしょうか?
スウェーデンが誇る(?)かもしれない、世界一臭い食べ物「シュールストレミング」について、詳しく見ていきましょう。
シュールストレミングとは?
シュールストレミングとはニシンを塩漬けにして発酵させ、その後に缶詰にした保存食。
主にスウェーデンで生産されて消費され、同国では一種の伝統食的な立ち位置を確立している食べ物。
一方で、スウェーデンも含めた北欧では、かつて塩が大変貴重だったこともあり、塩漬けにすると言っても塩そのものに漬けることはなく、塩を節約するために塩水につける方法が採用されました。
つまり、塩そのものに漬けるのに比べて、塩分濃度は低くなるということです。
その結果、ニシンは腐敗することはないものの、発酵が止まることなく進みすぎることで、「世界一臭い食べ物」と呼ばれるほど強い悪臭や刺激臭を放つ保存食となったのです。
現在では直径およそ10cm程度の缶に、20枚ほどのニシンの切り身が詰まって販売されており、その缶に切り込みを入れるとたちまち凄まじい想像を絶する悪臭が放たれます。
そして、微妙に泡立つドロドロとした液体の中に、同じようにドロドロとやわらなくなった切り身が浮かんでおり、液をこぼさないように気をつけながら切り身を取り出して、パンなどに乗せて食べるのが一般的です。
このような特徴から、慣れていない人にとっては、臭いだけでなく見た目的にも、決して食欲をそそる食べ物ではないでしょう。
シュールストレミングの生産
シュールストレミングに使用されるニシンは、最もコンディションが良いとされている産卵直前の4月から5月にかけて獲られます。
そして、これらのニシンは、濃い塩水に約20時間ほどつけられて血抜きされ、頭や腸などが取り除かれた後に今度は少し薄めの塩水に漬けられます(※頭や腸を残したままのものも存在する)。
次に、ニシンを漬けた樽は15〜20℃の間に温度管理された部屋に置かれて、10週間から12週間の間、発酵が促されるのです。
その後、7月の始めになるとニシンの切り身が缶に詰められていき、この缶詰の工程は5週間に渡って行われ、シュールストレミング初売りの日から10日前には最後の製品が卸売業者に配分され、8月から9月頃には食べ頃を迎えます。
缶詰の中でも発酵を続けるシュールストレミング
缶に詰められたシュールストレミングの発酵は、そこで終わりではありません。
というのも、他の缶詰では通常、缶に詰める前に内容物が一度減菌処理されますが、シュールストレミングに関しては、減菌処理をせずに発酵状態のまま缶に詰められるからです。
結果として、シュールストレミングの発酵は缶の中でも続き、これによって発生したガスによって缶は明らかに膨らみ始めます。
そして、缶詰にされてから半年から一年後には、発生したガスによって、かつては平坦だった円柱状の缶の蓋も膨らんで丸みを帯びた形になっており、この異様な形の缶詰はスウェーデンのスーパーマーケットで良く見受けられる光景となっています。
ちなみに、現代の缶が使われる前にシュールストレミングは、木でできたら樽で売られており、地元でのみ消費されていました。
また、当時の樽だと漏れが生じることがあったため、現在のようにお店で販売されることはなく、一般の消費者はその都度、製造業者から直接購入していたと言います。
シュールストレミングの匂いを作り出している原因とは?
シュールストレミングの匂いは、発酵の過程で発生したバクテリアが原因です。
そのバクテリアは「ハロアナエロビウム」という細菌で、この缶内発酵の過程で、缶を膨張させる二酸化炭素に加えて、強い悪臭を放つ以下のような成分を生産するのです。
- プロピオン酸
- 刺激臭を生み出す
- 硫化水素
- 腐卵臭(腐った卵のような臭い)を生み出す
- 酪酸
- 腐ったバナーのような臭いを生み出す
- 酢酸
- 酸っぱいお酢の臭いを生み出す
シュールストレミングの食べ方
シュールストレミングは、缶の中に溜まったガスと同時に一気に臭い匂いと汁が噴出することがあります。
強烈な匂いが何日間にも渡って家に残らないようにするため、家の外で開ける、可能であれば屋外で食べることが強く推奨されており、そのためにも、極寒で屋外に出るのが辛い冬の時期ではなく、外に出ても問題ない夏の時期に食べるのがおすすめです。
万が一にも屋外での開封が難しい場合は、水中で缶を開けるようにしましょう。
そして、シュールストレミングは想像を絶するほどの強烈な匂いや味を持つことから、これを単体で食べるようなことは避けるのが無難でしょう。
スウェーデンの薄いパンにシュールストレミングを乗せて、ポテト、トマト、玉ねぎ、サワークリームを合わせるという方法が良いかと思います(スウェーデン人の中には切り身をそのまま、つまり臭いを気にせずにそのまま食べる人もいる)。
また、どうしても臭みが気になる場合は、強いアルコールを含んだお酒で洗い流すと、臭みが弱まるので、初めて試す人にはおすすめです。
シュールストレミングにまつわるその他の豆知識
航空会社によっては缶詰の持ち込みを禁止している
航空会社の中には、シュールストレミングの缶詰の持ち込みを禁止している会社もあります。
多くの人は、ひどい臭いのせいで禁止されていると思うでしょうが、それが主な理由ではありません。
禁止されている理由は、缶の中に溜まったガスの圧力によって破裂の危険性が有ると考えられているからです。
また、飛行機の高度変化による気圧の変化によって破裂の危険性が一層増すため、危険物として考えられるほどです。
名前の意味
シュールストレミング、スウェーデン語で「surströmming」という名前は、この食品を端的に言い表していると言えるでしょう。
その名前は、まさに「発酵したバルト海のニシン」という意味を持つのです。
ちなみに、「発酵したバルト海のニシン」として親しまれてきたシュールストレミングに関しての博物館が、スウェーデンにあるエルンシェルツビクという町に2005年にオープンしました。
シュールストレミングで訴えられて敗訴した
1981年、ある大家がテナントを警告なしで追放したとして裁判所に呼ばれました。
大家側の言い分は、「テナントがシュールストレミングの塩水をアパートの階段にばら撒いてしまった」というものです。
そして、この言い分の正当性を証明するためにも、大家側は法廷でシュールストレミングの缶を開封してみせたのです。
その結果、シュールストレミングの匂いは、同じビルに住む他のテナント達が我慢出来る程度をはるかに超えていたとして、大家によるテナントの追放は正当であるという判決が下されました。
世界一臭い食べ物と言われるシュールストレミングが、どれほどの威力を持つのかが分かる一例です。
発祥にまつわる言い伝え
シュールストレミングの発祥に関しては、次のような言い伝えがあります。
16世紀頃、あるスウェーデンの漁師は手元に十分な塩が無かったために、魚の保存に失敗してしまいましたが、その匂いの強い魚をフィンランドの住民に売りつけました。
すると驚いたことに、フィンランドの人々は、この魚の味を大変気に入ったというストーリーです。
ただし、これはあくまでも一つの伝承に過ぎない点は覚えておきましょう。
日本では「缶詰」に分類されていない
日本で販売されている「缶詰」は、減菌処理が求められます。
一方で、シュールストレミングはこの減菌処理がされずに発酵状態を保ったまま缶に詰められるため、日本における缶詰の定義には当てはまりません。
そのため、日本で缶に入ったシュールストレミングは、「缶詰」と表記することが出来ないとされています。
インターネットで手に入る
匂いが強烈でガスが吹き出し、室内で汁をこぼしたら大惨事になりかねないシュールストレミングは、日本国内であってもインターネットで購入することが可能。
例えば、Amazonでシュールストレミングと検索すれば商品を見つけることが出来ます。
味と匂いの冒険に挑んでみたい人は、インターネットからの入手を検討してみましょう。
ただし、開封して食べる際はくれぐれも注意は怠らずに!
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シュールストレミングとは?世界一臭い食べ物でスウェーデンの誇り?のまとめ
世界一臭い食べ物と言われるシュールストレミングについて紹介してきました。
シュールストレミングを始めて目の前にした人は、恐らく近寄ることさえ拒否するでしょう。
腐った酸っぱい魚と腐った卵が混ざったような、まるで「生ゴミ」とも言えそうな臭い匂いを想像してみてください。
恐らく、食べ物だと知らなかったらまず近寄ることはないはずです。
一方で味に関して言うと、匂いよりもずっと美味しいと言えますが、これも最初は鼻から息を吸うとたちまちノックアウトされかねないので、ある程度の慣れが必要かもしれません。
とにかく、世界一臭いシュールストレミングに興味があれば、試すのは悪くないと思うので検討してみましょう。
シュールストレミングを食べたと言えば誇れること間違いなしです!