大天使ミカエルについて詳しく見ていきましょう。天使軍団長であり、天使トップに位置するミカエルの役割や、その他知っておきたい知識などを紹介していきます。
宗教史、特にアブラハムの宗教と呼ばれるユダヤ教、キリスト教、イスラム教に関する宗教史において、重要な役割を果たす2人の天使の名前が聖書の中には出てきます。
その2人の天使とは、大天使として知られるミカエルとガブリエルです。
聖書の中では全ての天使の名前が明記されているわけではないため、このように名前が示されている時点で、その存在が際立っていると言えるのです。
中でもミカエルは、ガブリエル以上に聖書の中で名前が挙げられており、このことは同時に、天使のトップに君臨する天使軍のリーダーとしてのミカエルの重要性を示しています。
この記事では、そんな大天使ミカエルについて、基本的な概要から大まかな役割、さらに知っておきたい7つのポイントなどを紹介していき、ミカエルに関する理解を深めていきたいと思います。
大天使ミカエルとは?
聖書の中で名前が明記されていることからも分かる通り、ミカエルは非常に重要な位置を占める天使。
「ミカエル」という名は「神の似姿」や「神に似たる者」という意味で、聖書では「大天使」や「天使長」と記されていることからも分かる通り、天使の中でも特に高い階級に位置する大天使のトップ、つまり天使全体の頂点に君臨する天使であり、「天使団の軍団長」や、カトリック教会では「大天使聖ミカエル」と呼ばれます。
また、聖書に登場する天使のほとんどは天の使いとして描写されている一方で、ミカエルは絶え間ない悪魔との戦いの最中にあり、ほとんどの場面で、争い、闘い、悪魔たちに立ち向かう存在として描かれているのが特徴です。
その姿のイメージ像は通常、剣と魂の公正さを測る秤(はかり)、またはそのどちらかを手にしており、ルネサンス期の絵画では鎧姿で描かれています。
そして、これはミカエルの
- 強さ
- 勇気
- 真理
- 高潔さ
を表現しているのです。
特に、そのミカエルの姿や特徴は、「堕天使ルシファーとその手下の天使たちを天国から追放する場面」に象徴されていると言えます。
天使軍団トップ「ミカエル」の役割
ミカエルの役割① 神に使える
無数にいる天使のトップとして非常に強力な力をもつ大天使ミカエルが担う、最大で最重要の役割として、神への絶対服従があります。
その神への信頼と服従を表しているのが新約聖書「ユダの手紙」の1章9節、
大天使ミカエルは、モーセの遺体のことで悪魔と言い争ったとき、あえてののしって相手を裁こうとはせず、「主がお前を懲らしめてくださるように」と言いました。
(引用:日本聖書協会)
にある「主がお前を懲らしめてくださるように」という箇所。
大天使ミカエルは神への絶対的な信頼を置くと同時に服従しており、これは「神に似たる者」の名前を持つミカエルにとっては、最も重要な役割だと言えるのです。
ちなみに、天使たちのこの支配者への服従は、妻の夫に対する従順さのイメージとして用いられることもあったようです。
ミカエルの役割② 天使軍団を率いて悪魔と戦う
さらに、悪魔と戦っている姿の描写が多いことからも分かる通り、大天使ミカエルにとっては、真っ向から悪魔と対峙して戦い続けるのも重要な役割。
天使の軍団長として天使たちを率いて邪悪な悪魔と激しく戦い、神や天国を守っているのです。
例えば、新約聖書のヨハネの黙示録12章7節から9節には、ミカエルと悪魔との戦いが以下のように描写されています。
さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、
勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。
この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。
(引用:日本聖書協会)
ミカエルがいるからこそ、悪魔とその手下たちは天国にはいられず、天界は守られているのです。
また、この悪魔と対峙するミカエルの導きで、か弱い人間も人生の中で出くわす悪魔に対して、勇気を持って戦うことが出来ると考えられています。
ミカエルの役割③ 死者の霊を導く
大天使ミカエルの役割の一つに、死者の魂が迷わないように次の世界へ導くというものがあります。
これは、アブラハムの遺訓(旧約聖書の正典・外典にふくまれない文書である偽典の一つ)のなかで、アブラハムの死が近づいた際にミカエルがとった一連の行動によって描かれています。
アブラハムの寿命が近づくと、大天使ミカエルはアブラハムに「死が近いこと」を告げました。
するとアブラハムは、後悔しないためにもこの世のすべての奇跡を見届けたいと神に願った結果、大天使ミカエルの導きで世界を巡ることになったのです。
そしてその後、アブラハムは死を迎えました。
ミカエルの役割④ ユダヤの民を守る
また、旧約聖書の中の一書「ダニエル書」によると、どうやら大天使ミカエルは「ユダヤ人を守る」使命も負っているようなのです。
ダニエル書では、ユダヤの民に終末の日を説く天使の姿が書き記されており、その中で12章1節には、
その時、大天使長ミカエルが立つ。彼はお前の民の子らを守護する。その時まで、苦難が続く/国が始まって以来、かつてなかったほどの苦難が。しかし、その時には救われるであろう/お前の民、あの書に記された人々は
(引用:日本聖書協会)
とあり、「彼はお前の民の子らを守護する」の「お前の民」というのはユダヤの民のことです。
そして、10章21節には、
しかし、真理の書に記されていることをお前に教えよう。お前たちの天使長ミカエルのほかに、これらに対してわたしを助ける者はないのだ。
(引用:日本聖書協会)
と記され、この中で「お前たちの天使長」と大天使ミカエルが呼ばれていることは、大きなポイントだと言えます。
つまり、ミカエルはユダヤの民に対して特別な責務を負っていて、ユダヤの民を守ることが一つの役割だと言えるのではないでしょうか。
大天使ミカエルについて知っておきたいその他7つのこと
「神に似たる者」であり、神の戦士として天使軍団を率いて悪と対峙する大天使ミカエルについて、基本的な概要から役割までを見てきましたが、ここからは、ミカエルに対する理解をさらに深めるために、他にも知っておきたい7つのことを簡単にまとめて紹介していきたいと思います。
エデンの園ではアダムとエバ(イブ)に目を光らせていた
まだアダムとエバ(イブ)がエデンの園で暮らしていた際には、ミカエルはアダムとエバの行動を監視するような役割も負っていました。
また、ミカエルはアダムに農耕を教えることもあったとされます。
そして、アダムが死んだ時にはミカエルが神を説得し、その魂が天国へ行けるようにしたとも記されています。
ミカエルが聖書のなかで語るのは一言だけ
これほどまで天使のトップとして存在感が大きく強力なミカエルですが、そのミカエルが聖書の中で発した言葉はたったの一言のみ。
それは、先述した新約聖書「ユダの手紙」の1章9節にある、「主がお前を懲らしめてくださるように」という一言です。
イサクが犠牲にならないように止めたのはミカエル
ユダヤ教では全てのユダヤ人の父、そしてイスラム教ではユダヤ人に加えて全てのアラブ人の祖とされるアブラハムの妻サラは、子供を産むことなく老いていました。
そんな時、サラの前に神の天使と名乗る天使(ミカエルだと考えられている)が現れ、子供が生まれるというお告げをします。
そして、アブラハムとサラの間にイサクが生まれましたが、しばらくしてから神は、アブラハムの信仰を試そうとして「イサクを捧げ物として神へ供えるように要求」しました。
そのため、アブラハムはイサクを犠牲にして神へ捧げようとしたその時、神はアブラハムの信仰を確信し、大天使ミカエルがイサクを屠ろうするアブラハムを押しとどめたと言われます。
1961年から1965年にかけてスペインの片田舎によく姿を現した
スペイン北部にあるカンタブリア州のサン・セバスチャン・デ・ガラバンダルの田舎町で起こった出来事に、「ガラバンダルの聖母」と呼ばれるものがあります。
これは、聖母という名前が示す通り、聖母マリアが現れたとされる一連の出来事で、その中では数々の超常現象が起こり、その超常現象に関しては何千人もの目撃者がいるとされる点が特異な事件です。
そして、中でも4人の少女たちがこの出来事の主役で、聖母マリアからのメッセージを4人に伝えるため、1961年から1965年にかけて、幾度にも渡って大天使ミカエルと名乗る天使が現れたと言われているのです。
ジャンヌダルクを鼓舞してフランスを救った
百年戦争において、イギリスに対して劣勢だったフランスに生まれた信心深いジャンヌ・ダルクを鼓舞し、ジャンヌがフランスを救うように仕向けたのも大天使ミカエルだったとされます。
ジャンヌ・ダルクはわずか13歳の時にミカエルの声を聞いて姿を見たと言われ、その中でミカエルは、ジャンヌに対して祖国を救うように伝えます。
また、ミカエルの声はその後、何度もジャンヌダルクの耳に届き、ジャンヌダルクを勇気付けただけでなく、掲げる旗や戦略や戦術についてもジャンヌへ教えたと言われます。
大天使ミカエルへの祈り
1965年初め頃まで、カトリック教会のミサの終わりには、「大天使ミカエルへの祈り(レオ13世の祈りとも言う)」という祈りが唱えられていました。
これは、19世紀に生涯のほとんどを生きたローマ教皇のレオ13世が、ミカエルがサタンと戦って地獄へ追い返すという幻視を見た結果、著したもの。
具体的には以下のような祈祷文となっています。
大天使聖ミカエル、戦いにおいてわれらを護り、悪魔の凶悪なる謀計(はかりごと)に勝たしめ給え。
天主のかれに命を下し給わんことを伏して願い奉る。
あゝ天軍の総帥、
霊魂をそこなわんとてこの世をはいかいするサタンおよびその他の悪魔を、天主の御力によりて地獄に閉込め給え。アーメン。
至聖なるイエズスの聖心、われらをあわれみたまえ(この部分を3回繰り返す)
(引用:wikipedia)
大天使ミカエルが聖書に登場するのは黙示録での記述が最後
大天使ミカエルの名前が聖書で最後に登場するのは、ヨハネの黙示録12章。
さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、
勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。
この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。
(引用:日本聖書協会)
の中にある「さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、」という7節の部分です。
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大天使ミカエル|天使軍団長・天使トップに座する大天使の役割や知識のまとめ
大天使ミカエルは、聖書の登場人物のなかで魅力があり、また強力な力を有する大天使で、聖書に名前が出てくるもう一人の大天使ガブリエルと比べても良く知られた天使。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教においては非常に重要で、その歴史において重要な影響を与えてきた存在です。