北インドと南インドの違いについて、地図上で確認し、また文化面や人種面からも見ていきましょう。同じ国であっても広大な国土のため、地域によっては異なる特徴を示すのがインドです。
インドは広大な国であり、世界で最も人口の多い民主主義国。
そんなインドの広大な国土は、北、南、東、西に区分されることがありますが、一般的には北と南の2つに分けて語られることが多いと言えます。
そして、この北インドと南インドを詳しく見ていくと、地域的な差異だけでなく、文化面や人種面でも微妙な違いがあることに気づくのです。
この記事では、インドを北インドと南インドに分けた場合の違いを、地図上、文化面、そして人種面で見ていきたいと思います。
北インドと南インドの大まかな地理的概念を地図と一緒に確認
まず、北インドと南インドの大まかな地理的な違いを、地図を利用しながら確認していきましょう。
地理的に見た場合の北インドは、北側で接している中央アジアからインドを隔てるヒマラヤ山脈から、南側で接しているインド中部を東西に走るヴィンディア山脈までの地域のこと。
インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパールにまたがる大きな平野「ヒンドゥスターン平野」が大きな面積を占めます。
(Vindhyasとあるのがヴィンディア山脈)
一方で、ヴィンディヤ山脈によって隔てられた南側が南インド。
インド半島の大部分を構成するデカン高原が大きな面積を占め、西はアラビア海、東はベンガル湾、南はインド洋に面しています。
ただし、この北と南の地理的な概念は、あくまでも一般的な理解であり、行政上の定義としてはより範囲が狭まったり、文化的な観点からは、北と南だけでなく西インドや東インドといった区分も存在します。
北インドと南インドの文化的・人種的な違い
地理的な観点から、一般的に言われる北インドと南インドの違いを見てきましたが、それぞれは文化面でも大きく異なります。
また、それだけでなく、人種的な起源においても両者には違いが含まれるのです。
ここからは、北インドと南インドの違いに関して、より文化的、そして人種的な違いから見ていきましょう。
北インドと南インドの文化的な違い
食事
北インドと南インドの間に見られる文化的な違いの一つは食事です。
例えば目立つ差異として、南インドの食事は北インドで提供される食事よりも、かなり刺激が強くて辛味である点を挙げられるでしょう。
また主食として、北インドでは小麦を食べる傾向にあり、小麦粉から作られる、パラタ、チャパティ、プーリ、ロティなどを良く見かけます。
それに対して南インドでは、米を食べることをより好み、米を様々なレンズ豆と組み合わせて、ライスドーサ、イドリィ、ヴァダ、ウッタパムなどを作ります。
また、魚、タマリンド、ココナッツは、北インドと比べると南インドでより多く消費され、北インドでは比較的に乳製品が多く使われると言えるでしょう。
服装
北インドと南インドでは、服装にも大きな違いがあります。
北インドの女性がサルワール・カミーズ(日本では「パンジャビ・ドレス」の呼称が一般的)や、チューリダーを好む一方、南ンドでは特に結婚後、サリーが好まれる傾向にあると言えるでしょう。
ただし、地域によって、例えば南インドのタミル・ナデュ州では、中流階級以上の女性の多くが、結婚後でもチューリダーを好んで着ていたりします。
さらに、南インドの農村部で一般的であるハーフサリーは、北インドではほとんど見かけなかったり、南インドの男性が好む服装である真っ白なドーティや色鮮やかななルンギは、北部においてそれほど一般的ではなく、代わりにサルワールがよく着用されます。
とはいえ、これらはあくまでも傾向であり、例えば北インドであってもサリーを着ている女性もいれば、地域によって着方が微妙に異なったりもするため、明確に分かれているわけではありません。
音楽
インドの古典音楽は、それぞれ北と南を起源とするヒンドゥスターニー音楽とカルナティック音楽に大別することができます。
まず、ヒンドゥスターニ音楽は外国からの侵略による影響を大きく受けているのに対し、カルナティックサンギーはよりローカル(地域的)な影響を示しているのが特徴です。
また、北インドで発展してきたヒンドゥスターニー音楽はガラナと呼ばれる様々なスタイルに分かれていますが、南インドで発展したカルナティック音楽は、異なるスタイルに分裂していません。
加えて、音楽家に好んで使用される楽器もまた様々で、北と南インドの間には、以下のような違いを確認することが出来ます。
- 北インドにおいて好まれる楽器
- シタール
- サーランギー
- サントゥール
- タブラ
- 南インドにおいて好まれる楽器
- ムリダンガム
- ガットゥヴァディヤム
- バイオリン
- ヴィーナ
- ジャラタガンダム
舞踊
舞踏に関しても、北インドと南インドは音楽と同じような違いを持っていると言われます。
つまり、カタックダンスのような北インドの踊りは、歴史の中で同地に侵攻してきたイスラム教徒達による影響を大きく受けている一方で、南インドの踊りは、より独自性を維持している傾向にあるのです。
特に、踊りは社会や人との繋がりを表現する方法であるため、そこに住んでいた人々の社会環境の違いが、大きな影響を及ぼすのは当然と言えるでしょう。
そして、これら北インドと南インドを代表する舞踊形式の例として、
- 北インド
- カタック
- チヨウ
- ガウディヤ・ヌリッティヤ
- オリッシー
- マニプリ
- 南インド
- バラタナティヤム
- クチプディ
- カタカリ
などの名前を挙げることが出来るでしょう。
ちなみに、北インドと南インドでは、ダンサーが着用する衣装も異なりますが、どちらも非常に鮮やかです。
北インドと南インドの人種的な違い
北インドと南インドではそれぞれ、人種的な面でもいくつかの違いを確認することが出来るとされます。
まず、大まかに言うと、北インドに住む人々は紀元前15世紀以降に拡がっていきイランや北インド辺りに定住していた「アーリア人」を祖先に持つ割合が多く、逆に南インドの人々は、紀元前3500年頃にイラン高原からインド西北部に移動したトラヴィダ人のうち、南インドに定住した一部を祖先に持つ割合が多いと言われます。
そして、両者の外見的な特徴として、
- 北インド人
- 背が高い
- がっしりした感じ
- 色白
- 南インド人
- 比較的背が低い
- 中肉中背な感じ
- 浅黒い
といった傾向を挙げることが出来ます。
ただし、上記の身体的特徴が、人種の違いに依るもののか、環境に適応することによって徐々に違いが出てきたのかに関しては、確実なことは分かっていません。
(※例えば南インドはより暑くて強い陽射しが当たる環境にあるため、適応するために肌が浅黒くなったとも考えられる)
言語的な違い
さらに、住民の多くがアーリア人にルーツを持つ北インドの人々と、多くの住民がドラヴィア人にルーツを持つ南インドの人々との間には、言語学的な違いも存在します。
例えば、北インドではヒンディー語やウルドゥー語、そしてベンガル語やパンジャーブ語など、インド・ヨーロッパ語族に属する「インド語族」の言語が日常的に使用されています。
一方で南インドでは、タミル語やマラヤーラム語、コダグ語やカンナダ語など、インド・ヨーロッパ語族とは異なるドラヴィア語族に含まれる言語が日常的に使用されているのです。
ただし、カンアダ語やマラヤーラム語などは、インド・ヨーロッパ語族に含まれるサンスクリット語(ヒンドゥー教の礼拝用言語)の影響を受けていると言われます。
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北インドと南インドの違いを地図と文化&人種的な側面から確認!のまとめ
北インドと南インドの違いを見てきました。
インドは非常に広大な国であるため、同じ国であっても地域によってかなり大きな差異があい、その違いは北と南でも確認することが出来るのです。