中国の食文化について見ていきましょう。料理の種類から食習慣、さらには食事マナーや乾杯の方法まで、8つのポイントを紹介していきます。
非常に長い歴史を持つ中国を発祥とする料理の数々は、世界中の人々を魅了しており、世界各地で中華レストランを見つけることが出来ます。
一方で、これらの美味しい中華料理を生み出してきた中国の食文化自体もまた、日本や西洋の食文化と異なり、とても興味深いものだったりします。
この記事では、そんな中国の食文化に関して、料理の種類から食習慣、さらには食事マナーや乾杯の方法にいたるまで、知っておきたい8つのポイントを紹介していこうと思います。
中国の食文化と食習慣1:料理の種類
広大な国土を持つ中国では、地域ごとに異なった料理が発展してきました。
そのため、中国の食文化を理解する上では、料理の大まかな分類を抑えておくことが役立ちます。
中国四大料理
日本において中国の料理は、次の4つに大きく分類されることが一般的です。
- 山東料理(北京料理など)
- 代表的な料理:北京ダック、水餃子
- 濃い味で塩辛い傾向にある
- 宮廷料理を中心に発展してきた
- 上海料理
- 代表的な料理:八宝菜、小籠包
- 魚介類が豊富で、淡白な味付けと甘みが強い料理が多い
- 四川料理
- 代表的な料理:麻婆豆腐、スーラータンメン
- 唐辛子や山椒などの香辛料を多く使った刺激的で辛い料理が多い
- 広東料理
- 代表的な料理:ふかひれスープ、しゅうまい、チャーシュー
- 天然食材が豊富に使われ、薄い味で材料の味を生かす淡白な味が特徴
八大菜系(八大中華料理)
ただし、日本においてはそれほど一般的でないものの、中国では8つの料理系統に分けた「八大菜系(八大中華料理)」という分類が一般的で、それの8つとは以下のようになります。
- 山東料理
- 広東料理
- 四川料理
- 江蘇料理(こうそりょうり)
- 江蘇省発祥の郷土料理で、上海料理の原型
- 浙江料理(せっこうりょうり)
- 炒め物、炒め煮、蒸し物、あんかけ、揚げ物などが中心で魚介類が良く使われる
- 安徽料理(あんきりょうり)
- 山または川で採れる食材を使って比較的油を多く使い、味が濃く、とろみを付けてこってりとした料理
- 福建料理(ふっけんりょうり)
- 米や魚介類を使って比較的あっさりとした味にあるものが多い
- 湖南料理(こなんりょうり)
- 唐辛子を多用した料理が多く、酸味が効いた料理もある
中国の食文化と食習慣2:食卓に出される料理のパターン
もちろん、何をどこで誰と食べるのかによって色々と変わってくることはありますが、中国で誰かと食卓を囲む場合、次のようなパターンまたは傾向がある点を覚えておくのは、中国の食文化を知る上で良いかもしれません。
まず、複数の人からなる宴会に招待されたとします。
この場合、中国においては、少なくとも4品(〜8品)の冷たい料理「前菜」と4品(〜8品)の温かい料理「主菜」が用意されると考えておくのが良いでしょう。
また、他にも子豚、鶏、魚が丸ごとふるまわれることがあったり、そこに加えて、汁物(スープ)とご飯などの主食が提供されます。
一方で、家庭では1〜2杯のご飯や麺類とともに肉類や野菜を楽しみ、場合によっては汁物で食事を終えます。
中華料理におけるフルコースイメージ
ちなみに、中華料理のフルコースの基本的なイメージは以下の通りです。
- 前菜
- 冷菜と呼ばれる冷たい食べ物が中心に盛り付けられた前菜で通常は4品ほど
- 醤油、チリパウダー、塩、砂糖、酢などの材料が使われ、前菜の印象が次に登場する主菜への期待につながるため、人々の食欲を引き出す上でも大切
- スープ(湯/タン)
- 大きな器に参加者全員分のスープが入って持って来られる
- 野菜や肉類が含まれ、とろみがついているもの、ついていないものがある
- 主菜の前に振舞われることもあれば、後に振舞われることもある
- 主菜
- 肉、魚、野菜などを使った温かい料理で4品以上出てくる
- 炒め物、揚げ物、焼き物などの調理方法が用いられる
- 主食
- ご飯や麺類
- 中国では地方により主食がお米または麺類と異なっているため、場所によって違う
- 南部ではご飯類、北部では麺類の他、小麦粉からなる主食が一般的
- 点心
- いわゆるデザートのこと
中国の食文化と食習慣3:箸
「箸」は中国の食卓において、最も重要なテーブルウェア(食器)だと言って良いかもしれません。
竹、木材、金、銀、象牙、銅など、物によって異なる素材から作られていますが、竹や木材で作られた箸が最も一般的です。
その箸を使う上で、中国の食文化には次のようなエチケットがあります。
- 料理へ箸を立ててはいけない
- 日本でも同じように避けられるエチケットの1つとして、中国の食事では、箸をご飯が盛られたお椀や料理が盛られた皿に対して直角へ立ててはならないことになっている
- これは、葬儀を象徴するものであり、葬儀の際にはご飯が盛られたお碗に直角に箸が立てられて供えられることが理由
- お椀を箸で叩いてはならない
- お椀を箸で叩く動作は、歴史的に「物ごいによって行われてきた」ものであると考えられていることから控えるべき
- 他の人と箸が触れないように心がける
- 特に、大皿から料理を取り分ける際には気をつけるべし
- 箸で遊ぶことは控える
- 箸を叩き合って音を出すなどはNG
- 箸で食べ物を刺すことは基本的には控える
- 食材に対して敬意を示しことが1つのマナーであるため、食べ物を箸で刺すことは良いこととは受け取られない
- 箸でつかんだ食べ物を落とすことは嫌がられる
- 一度箸で掴んだ食べ物を落としてしまうことはマナーに反すると見なされる
- 箸で食べ物を掴む際には、落とさずにしっかりと口に運ぶことができるよう確認するべき
- 掴んだものを落としそうになるなら、食器を持って口に近づけて食べてOK
また箸が得意で無い場合、特に悪い印象を持たれる心配はないので、代わりにフォークとスプーンを頼めば大丈夫です。
ただし、中国においてナイフは、凶器であるとされることもあるため、場所によってはほとんど用意されていないことがあります。
中国の食文化と食習慣4:皿から取り分ける(料理をシェアする)
中国の食卓において、ご飯や、時には蒸し饅頭などの主食となる食べ物は、お椀などに入れられて各自に配られつこともありますが、主食以外の前菜やおかずなどの料理は通常、テーブルの中心に置かれ、それぞれが各自好みの量を取り分けるスタイルとなるのが普通。
これは、中国の長い歴史の中で培われてきた中国文化や中国思想(または哲学)を象徴していると言えます。
食卓を囲む人々が皆で食べ物を共有することは「団欒(だんらん)」を象徴することであり、中国で大切にされている家族との繋がりやコミュニティとの繋がりを維持する上で、とても重要なものだからです。
そのため、人が多く集まる食卓の上は、様々な料理が色鮮やかに並べられることになり、参加者全員で同じ料理を分け合い、同じ時間を共有して連帯感を醸成していくのです。
中国の食文化と食習慣5:乾杯の必要性
多くの人が集まってご飯を食べるときには、日本でも皆で乾杯を行いますが、中国の食文化でも「乾杯」をすることは一般的であり、むしろ日本以上に必要不可欠と言えるかもしれません。
中国では「カンペイ」と声をかけあいながら乾杯を交わし、主催者はワインやお酒の入ったグラスを掲げ、この乾杯に参加した人は皆、「一気に最後の一滴まで飲み干す」ことが期待されています。
これは、「飲み干す」ことで相手へ敬意を表すことが出来るという考えが根底にあるからで、また、敬意を示された方も、自らのグラスに注がれたお酒を一緒に飲み干すのが習わしです。
ちなみに、年長者を敬ったり、お互いを尊重し合う習慣を含む中国の文化を体現しているかのように、中国の食事で乾杯を行う場合、特に年下の人間や招待側の人間は、自分のコップ(グラス)を相手のものよりも少し下に下げて行うのがマナーの1つになっています。
中国の食文化と食習慣6:席次
中国の食文化や食習慣として、席次は覚えておいた方が良いでしょう。
まず、中国の食事における席にはいわゆる「上座」と「下座」があり、ドア(出入り口)から最も遠い所が基本的には「上座」になります。
そして、中国文化ではその上座から見て左側が次席、右側は三席となり、以降、四席は左、五席は右と、交互に繰り返していきます。
また、下座は上座から最も遠く、円卓の場合は向かい合う場所で、上座には最も重要な人(通常は主賓)から順番に座っていき、招待する側は下座側に座るのが習わしです。
ただし、窓から外を眺められる個室では、窓に面した方が上座、出入り口から離れていても窓を背にする席は下座になったり、もてなすのが簡単ということで、ゲストの近くへ主催者が座ることもあるなど、この辺りは臨機応変に対応されます。
さらに、特に招待客などがいない場合は、通常、年長者から上座側へ座っていくのが習わしです。
中国の食文化と食習慣7:敬意が最優先
中国の人々と敬意を重んじる文化は一体となっていると言えるでしょう。
そして、これは食事の場でも重要で、年配の方から先に食事を楽しんでもらうように心がけるのが習慣となっています。
また、訪問先でも主催者にすすめられるまで待つようにし、主催者の歓迎に応対するためにも、食事は声がかかってから始めるのが大切です。
他にも、宴会によっては主賓が席に着いてから席に着くことが期待されることや、自己紹介または主催者によって自分が紹介された後に席を着くことが期待される場合もあります。
この辺りについては、食事や宴会の目的、さらに重要度によって異なってくるので、迷ったら周りを観察したり主催者に確認しておくのが良いかと思います。
中国の食文化と食習慣8:1日の食事スタイル
中国における一般的な1日の食事は次のような感じです。
中国における朝食
食事の内容は国内各地地域ごとに異なりますが、朝食は午前6時から9時頃で、以下のような料理を食べることが多いと言えます。
- お粥
- お粥は一般的に家庭はもちろんのこと屋台などでも楽しまれて様々な味わいのものがある
- 蒸し饅頭
- ずっしりと腹がふくらむ蒸し饅頭は1日を通して提供されるが朝に楽しまれることが多い
- 具材の入ったもの、生地のみのプレーンなものどちらも一般的
- 具材の入ったものは、食事1食分にかわるボリュームとなっている
- 麺類
- 昼食または夕食に食べる日本とは違い、中国では朝食にも麺類が登場する
- その他
- 他の粉ものや揚げパンなども朝食で食べられ、都心部ではより西洋に近い朝食を取る人もいる
中国における昼食
中国では正午から午後2時までが昼食の時間帯。
昼食時には好みによって様々な食事を楽しみ、伝統的には少なくとも3種類の野菜、そして肉類が主食の麺類またはご飯とともに楽しまれてきました。
一方で、都市化が進んだ地域などでは、食後すみやかに業務に戻ることができるように、ファストフードなどを利用して短時間で昼食を済ませることが多くなってきています。
中国における夕食
中国において夕食は、基本的に午後6時から8時まで。
夕食は中国の人々にとって最も大切な食事であり、1日を終えて家族が揃い集う時間となっています。
スープ、肉料理、野菜料理が基本で、そこへ麺類またはご飯が加わります。
また、家族や友人とレストランで夕食を楽しむことも一般的です。
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中国の食文化|食事マナーや食習慣から料理の種類や乾杯方法までのまとめ
中国の食文化について、8つのポイントを紹介してきました。
紹介した点以外にも、例えば、中国の食文化では、「料理がどのように盛り付けられて提供されるか」が大切にされる傾向にあります。
他にも、薬効効果のある香辛料などがふんだんに使われるのは、中国文化に大きな影響を与えている道教の開祖「老師」が、「食べ物は人々に生命を与える」といった考えを持っていたことに由来するのかもしれません。
とにかく、その豊かさから、世界各国の人々がうらやむものが中国の食文化なのです。