ムハンマドの顔|イスラム教創始者で預言者はなぜ描かれない?また特徴とは?

イスラム教の創始者で預言者のムハンマドの顔は、なぜイスラム教において描かれないのでしょうか?また、彼の顔はどういった特徴を持ち合わせていたのでしょうか?

「預言者ムハンマドの姿を描くことは、イスラム教で禁じられている」と聞いたことがあるかもしれません。

また、聞いたことがない人であれば、このことに戸惑うかもしれません。

実はこの点に関しては、イスラム教における聖典「コーラン」に明記されているわけではありません。

では、一体なぜ、ムハンマドの顔を描くことが禁じられてきたのでしょうか?

一方で、ムハンマドの顔とはどのような特徴を持っていたのでしょうか?

この記事では、ムハンマドの顔を描くことが禁じられてきた背景と、ムハンマドの顔の特徴について、確認できる範囲内で見ていきたいと思います。

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ムハンマドの顔を描くことはなぜイスラム教で禁じられているのか?

コーランではなくハディースに残されているのが根拠の一つではないか?

イスラム教の聖典であるコーランには、ムハンマドの肖像を厳密に禁止する記述はありません。

しかし、神(アッラー)からの啓示を記したとされるコーランに対して、イスラム教の預言者であるムハンマド自身と彼に近しかった者たちの言行録「ハディース」のいくつかは、顔を含めたムハンマドの姿を「視覚的に描写する」ことを禁じています

つまり、ムハンマドの顔を描くことが禁止されている教義的な理由の一つとしては、コーランではなく、コーランに次ぐ第二聖典とされるハディースに残されているからだと言えるでしょう。

ではなぜ、アッラーが禁止したわけではないのにも関わらず、ハディースではムハンマドの姿が視覚的に描かれることを避けているのでしょうか?

ムハンマドをキリストの二の舞にさせたくはなかった?

ある意味で初期のイスラム教徒はキリスト教を意識しており、「イエス・キリストが人間ではなく神として考えられたことで起こってしまった「混乱」を避けたかった」というのが、預言者ムハンマドの視覚的描写がハディースでは禁止されている理由と言えるかもしれません。

つまり、

  • イスラム教もキリスト教も「唯一絶対の神」のみを認める「一神教」である
  • しかしキリスト教では、イエス・キリストを偶像化して偶像崇拝を認めた結果、
  • 唯一絶対の神を崇拝するはずがイエス・キリストまでを崇拝するようになってしまった
    • → これは神と神の子であるキリストが一体であるとする「三位一体」の概念で説明されるが、現実的には神以外」も崇拝していることになっているのではないか?

よって、

イスラム教では神(アッラー)のみを唯一信仰するためにも、人間である預言者ムハンマドの偶像崇拝を禁止し、キリスト教と同じ轍を踏まないようにしたのではないか

と仮説立てられるのです。

実際、ムハンマド本人は「もしも描かれた自分の肖像を人々が目にしたならば、すぐにその偶像を崇拝し始めるようになってしまう」ことに気づいていたと言われます。

そして、唯一神への絶対的信仰を守るためにも、ムハンマドは自らが偶像化されることに反対し、「自分は預言者ではあるがただの人間に過ぎない」ことを明確にしたのではないでしょうか。

キリストやモーゼなどの他の預言者も描いてはいけない

また、顔や姿の視覚的描写が禁止されているのは、イスラム教の創始者であるムハンマドに限られたことではなく、ムハンマドと同様に預言者として位置付けられている人物にも及び、そこにはイエス・キリストや、モーゼの十戒で知られるモーゼなども含みます

実際、イスラム教における最大宗派「スンニ派」のモスク内を訪れてみると分かりますが、そこには人物の肖像画など偶像に含まれるものは一切、壁に掛けられたり床に置かれてはいません。

代わりに、モスク内部を飾るのはコーランの一節で、その空間は非常に簡素で広々とした作りになっています。

さらに、イスラム教国の中には、イスラム教においても預言者と見られる人物が出てくる映画、例えば、「ノア 約束の舟(2014)」などの放映を禁止した国も見られます。

というのも、そこに出てくる預言者は俳優が演じていると言っても、それは偶像化であり、イスラム教においては避けるべきことだと捉えられるからです。

イスラム学者による宗教支配もムハンマドの顔の描写が禁止されている理由

さらに、イスラム教で最も重要な聖典「コーラン」においては明確にムハンマドの肖像を禁じているわけではないのにも関わらず、現代のイスラム教徒の大半がそれを禁忌として受け容れているのは、イスラム法学者による宗教支配というのも大きいでしょう。

イスラム世界では「シャリーア」と呼ばれる、コーランと預言者ムハンマドの言行を法源とする法律(イスラム法)が採用されています。

そして、このシャリーアの解釈は「イスラム法学者のみが持つ」とされ、その法律は多分にイスラム法学者たちによって体系づけられてきたと言えるのです。

また、ハディースの多くは9世紀以降、このイスラム法学者によって編纂されてきたと言う歴史を持ちます。

そのため、コーランではムハンマドの顔や姿の視覚的描写は禁止されていないにも関わらず、イスラム法学者によって体系づけられたシャリーアにおいてムハンマドの偶像化は禁忌とされ、結果、「ムハンマドの顔や姿を視覚的に描写してはいけない」と言うのが通念となったと考えられるのです。

ムハンマドの顔の特徴とは?

15世紀から16世紀にかけての画家たちは、ムハンマドの姿を描いてはいたようですが、苦肉の策として顔を描くことは避けたといいます。

そして、イスラム社会で1970年代から80年代にかけて広まった「ザ・メッセンジャー」というイスラム映画のなかで、ムハンマドの姿は影でのみ表現されています。

この様に、イスラム社会ではムハンマドの姿を表す必要があっても、顔だけはベールで覆い、ギリギリ問題にならない苦肉の策としていたようです。

一方で、初期の頃はムハンマドの顔を描くことは禁忌ではなかったと考えられています。

さらに、歴史の中ではイスラム教徒が預言者を描いた例もあり、特にイスラム教徒の中でもシーア派に属する人々の間でその傾向があったという話があります。

では一体、ムハンマドの顔とはどのようなものだったのか?

ここからは、「WITH PROPHET」を参考にして、ムハンマドの顔の特徴とされるポイントを「視覚」ではなく「文章」で紹介していきたいと思います。

預言者ムハンマドの頭

預言者ムハンマドは、「大きな頭」を持っていたと言います。

そしてこのことは、ムハンマドの完璧な精神力の証しであり、また、知性の印であると考えられているようです。

預言者ムハンマドの顔

預言者ムハンマドは「全ての人々の中で最も端正な顔立ちと、最も良い容貌を持っていた」とされます。

彼の顔は太陽や月のように丸みを帯びていましたが、完璧な丸ではなく、わずかな楕円形を描き、確かな審美眼を持つ人にとっては、最も端正な形であったようです。

その美しい形に関しては、

  • 「もしあなたが預言者ムハンマドを見たら、太陽が昇ったと言うことでしょう」
  • 「わたしはある月の輝く夜に預言者ムハンマドを見ました」
  • 「わたしは月を見て、預言者ムハンマドを見ました。そしてアッラーにより、預言者ムハンマドは月よりもさらに端正に見えると思いました」

といった言葉が残っています。

預言者ムハンマドのこめかみ

額の左右にあるこめかみに関して、預言者ムハンマドは「広いこめかみ」を持っていたと言われます。

つまり、ムハンマドのこめかみの幅は広かったようなのです。

預言者ムハンマドの眉毛

預言者ムハンマドの眉毛は、長くて太く、そして弓形をしていましたが、2本の眉毛の間には隙間があり、繋がってはいませんでした。

また、ムハンマドが怒ると、2本の眉毛の間には血管がはっきりと現れたと言います。

預言者ムハンマドの目

預言者ムハンマドの目に関しては、以下のような特徴があったとされます。

  • 大きい
    • 幅が広くて美しかった
  • 輪郭が長い
    • まつ毛が生えている目の端が長かった
  • わずかに赤い
    • 細かい毛細血管があった

さらに、ムハンマドの顔を見た人は、「彼がその目にコール(中東の女性がアイシャドーをするために使う化粧用品)を使ったと勘違いする」と言われることから、かなりクッキリとした目であったと推測出来ます。

預言者ムハンマドの鼻

預言者ムハンマド鼻は長く中央がわずかに盛り上がって先端は細くなっており、最も素晴らしい鼻だと言われます。

預言者ムハンマドの頬

「預言者ムハンマドは(祈りの最後に)頬の白い部分(高い部分)がはっきり見えるまで頭を左右に動かして、平和の挨拶を送った」とある様に、「高い頬」を持っていたようです。

つまり、頬骨がはっきりしている顔立ちでした。

預言者ムハンマドの口

預言者ムハンマドは「幅の広い口」をしていました。

そのサイズは決して小さくなく、歯は白く輝き、それぞれの間には隙間が空いていました。

ちなみに、アラブの人々は口が小さな男性を嫌っていたようで、ムハンマドの口の特徴は、男性として称賛に値するものだったようです。

預言者ムハンマドの顔色

ムハンマドの顔の色は、光り輝くような色であったとされます。

白すぎず、青白すぎず、顔には全く赤みがなく、顔色が暗いこともなかったとされるのです。

預言者ムハンマドのひげ

預言者ムハンマドのひげは「毛の量が多かった」ために、黒くて濃かったようです。

また、よく整えられており、白髪はなかったとされます。

預言者ムハンマドの髪の毛

預言者ムハンマドの髪の毛は、

  • きつくカールしてはいなかった
    • すなわち、きつくカールして、ねじれている状態ではなかった
  • 直毛でもなかった
    • すなわち、完全に真っ直ぐな髪の毛ではなかった

とあり、適度に波打った髪、つまりウェーブがかっているのが特徴だったようです。

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ムハンマドの顔|イスラム教創始者で預言者はなぜ描かれない?また特徴とは?のまとめ

イスラム教の創始者で預言者であるムハンマドの顔について、「なぜイスラム教では描写が禁止されているのか?」、そして「どんな特徴を持ち合わせていたのか?」という2点を確認してきました。

預言者ムハンマドの顔の視覚的な描写を避けることは、「唯一絶対の神に対する信仰というイスラム教の中心的教義を示している」と、言い換えることが出来るのではないでしょうか。

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