ローマ神話の神と女神一覧(ギリシャ神話の神や女神との比較付き)

ローマ神話の神と女神15柱を一覧にして紹介していきます。ギリシャ神話の神々との名前の比較や、共通点や差異なども含めて見ていきましょう。

ローマ市内のマルス広場に建設された神殿「パンテオン」は、世界的に見ても最大規模の神殿。

古代ローマで信じられていたローマ神話に登場する様々な神々が祀られていたことを考えると、その規模感も容易に理解出来るでしょう。

古代ローマ人は想像出来る限りの万物に、神々の存在を信じていました。

さらに、古代ローマ文明は、それ以前に地中海を中心に発展していたギリシャ文明に大きな影響を受けました。

その結果、パンテオンで祀られている神々のように、ローマ神話に登場する多くの神は、ギリシャ神話に登場する神や女神と同一視されることになり、大抵の場合、名前が違うだけで、その描写は両神話で共通していたりします。

この記事では、ローマ神話の神と女神の中でも、ギリシャ神話の神や女神と同一視される神々の中から主だったものを15柱ピックアップし、ギリシャ神話における名前や描写との比較も加えながら紹介していこうと思います。

(※ここで紹介するローマ神話の神々の名前は英語読みに基づきます)

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ローマ神話の神1:サターン(クロノス)

サターン、またはラテン語でサートゥルヌスとは、ローマ神話において、解消の神、時間の神、富の神、農耕の神、再生の神および解放の神として知られ、また土星の守護神としても描かれる神。

英語読みではサターンですが、キリスト教において悪魔や堕天使の代表格として描かれる「サタン」とは全く異なる存在で、ギリシャ神話において全宇宙を統べた2番目の神「クロノス」に該当します。

サターンが信仰を集めた時代は、豊富さと平和の黄金時代と言われていました。

ローマ神話の神2:ジュピター(ユピテル)

ジュピター、またはラテン語でユピテルとは、ローマ神話における主神でサターンの息子。

古代ローマ人は、ギリシャ神話において最高神であるゼウスと同一視していました。

その強大な力をもって雷と天空を支配する神として描かれ、ジュピターが扱う落雷は、宇宙で最も強力な武器であるとされます。

また、「輝く父」とも呼ばれるジュピターは、法と国家の守護神であり、古代ローマ人は、都市ローマがジュピターによって守られていると信じていました。

ジュピターのことを「ユピテル・オプティムス・マクシムス(最善最大のユピテル)」として崇拝していたのです。

ローマ神話の神3:ネプチューン(ポセイドン)

先端が三つに尖った三叉槍を手に、ネプチューンまたはラテン語でネプトゥーヌスと呼ばれるこの神は、馬やイルカにまたがって海を支配しました。

ギリシャ神話においては海を支配するポセイドーンと同一視されています。

ネプチューンは紀元前399年頃、水に関連するローマ神話に初めて登場し、それ以降は気難し屋の神として描かれ、このネプチューンが激怒した時には大地の揺れが起こると考えられたため、地震を引き起こす神としても捉えられるようになりました。

また、ネプチューンに該当するポセイドーンは、ギリシャ神話における三神(ゼウス、ポセイドーン、ハーデース)に含まれるため、ネプチューンもローマ神話において重要な位置を占める神となります。

ローマ神話の神4:プルートー(ハーデース)

ジュピターの父であると同時にネプチューンの父であり、農耕や時の神として扱われるサターンには、プルートーと呼ばれる息子もいました。

このプルートーは、ギリシャ神話におけるハーデースに該当する神で、ジュピターとネプチューンと一緒に、3人で世界を分割した(天空はジュピター、海はネプチューン、冥界がプルート)と描かれるため、ローマ神話においてはとても重要な神として扱われました。

ちなみに、プルートーという名前は、ギリシア神話の富の神の名であるギリシア語の単語「Ploutos」と同じ語源から来ており、古代ローマ人は、金、銀そしてその他、地殻にある物質は、「冥界 ≒ 地下世界」を司るプルートーの恵みであると考えていたと言われます。

また、冥界の神と言っても、恐ろしくおぞましいイメージで捉えられていたというよりは、ポジティブな意味で死後の世界を司る役割を持っていたと考えられていたようです。

ローマ神話の神5:ミナーヴァ(アテーナー)

ジュピターの娘であり、ラテン語ではミネルヴァと呼ばれるミナーヴァは、詩、医学、知恵、商業、製織、工芸、魔術、戦いを司るローマ神話の女神であり、ローマ神話の最高神ジュピターの娘として有名。

ギリシャ神話におけるアテーナーと同一視されます。

ただし、アテーナーが戦いの神としての性格を強調される傾向にあるのに対して、ミナーヴァはアテーナーと同一視される以前は医学の神としての側面が強調されていたため、アテーナーほどは戦いの神としての側面が強調されていないと言えます。

ローマ神話の神6:ジューノ(ヘーラー)

ラテン語でユーノーと呼ばれるジューノは、ローマ神話における主神ジュピターの妻で、ローマ神話最大の女神。

ギリシャ神話に登場するゼウスの妻「ヘーラー」に該当します。

女性の結婚生活や出産を司る神として知られ、同時に月にも関係がある女神として描かれ、またローマ帝国の守護神としても崇められていました。

ちなみに、現在のローマには「ローマの七丘」と呼ばれる古代ローマ時代からの七つの丘がありますが、その中でも最も高い丘「カンピドリオ」はローマの中心であり、そこにはジュピター、ミナーヴァ、ジューノの3神を崇拝している神殿があります。

ローマ神話の神7:ディアーナ(アルテミス)

ディアーナはジュピターの娘ですが、正妻であるジューノとの子ではなく、ラートーナと呼ばれる女神との間に生まれた娘と言われます。

狩猟、貞節、そして月の女神としてローマ神話では描かれ、ギリシャ神話におけるレートーに該当し、「新月の銀の弓」を持つ姿が特徴的です。

ただ、レートーだけではなく、ギリシャ神話において月の女神として描かれるセレーネーとも同一視されています。

ローマ神話の神8:アポローン(アポローン)

音楽の神、治療の神、光明の神、真実と予言の神、疫病の神、詩歌の神、その他多くの神として知られるアポローンは、ジュピターの息子の一人で、狩猟や貞潔の女神とされるディアナの兄。

ギリシャ神話では同じ名前のアポローンに該当します。

アポローンは、人間と神の仲介役を務めていました。

その高潔さと誠実さにより、アポローンは予言を授ける能力に恵まれていたと描かれ、人間が神託を必要とした時に助言を与える役割を担っていたのです。

また、アポローンは力強いだけでなく、若さ、知恵そして美しさの典型で、数多くの文学作品や芸術作品の主題とされてきました。

さらに、道徳的な性質にも優れたアポローンを崇拝する信仰は、国中の宗教および法律問題に重大な影響力を及ぼしたほどです。

このように、ローマの神々の中でとても重要な位置を占めただけでなく、アポローンは良い意味で複雑な側面を持っていたのです。

ローマ神話の神9:マーズ(アレース)

マーズ、またはラテン語でアレースとは、戦いの神であり、都市ローマの守護神と考えられていた神。

ギリシャ神話においては同じように戦いの神として描かれるアレースに該当しますが、アレースは狂気の性格を持っていたとして描かれるのに対して、マーズはそのようなネガティブな側面がほとんどなく、むしろ勇敢な戦士として描かれている点は注目すべき違いです。

実際、ローマ帝国初代皇帝であるアウグストゥスの治世下で人気が高まって以降、マーズはローマ史上最も有名な軍神として大きな支持を集めるとても人気な神でした。

そして古代ローマ芸術でマーズは、髭をきれいに剃り落とした若者か、髭を生やした年配者のいずれかの姿で描かれています。

また、男性の性別を示す「♂」のマークは本来、マーズを意味する記号です。

ローマ神話の神10:ヴィーナス(アフロディーテ)

ヴィーナス、またはラテン語でウェヌスとは、ローマ神話において愛、美、多産、繁栄を司る神で、ギリシャ神話で最も美しいとして描かれるアフロディーテと同一視されます。

「美の神」としての側面は古代から現在まで特に強調される点で、現代においても「ヴィーナス」と言えば「美」が連想されるほどです。

また、その美しさを表現するため、芸術作品でヴィーナスが描かれる場合は、半裸や全裸の姿で表現されてきました。

ちなみに、上で紹介したマーズを意味する記号として「♂」が使われていたように、現代の女性を意味する「♀」の記号は本来、ヴィーナスを意味するものでした。

ローマ神話の神11:キューピッド(エロース)

キューピッドまたはラテン語でエロースとは、性欲、愛、魅力そして愛情の神で、マーズとヴィーナスの息子。

ギリシャ神話におけるエロースに該当します。

一方で、ギリシャ神話におけるエロースとは少し異なり、キューピッドは恋の弓を放つ幼児として描かれます。

日本でも「恋のキューピッド」というフレーズがある通り、キューピッドは恋の矢を受けた人物に、愛情や恋愛願望を沸き起こさせる力の源として描かれていたのです。

さらに、キューピッドは中世にヨーロッパがキリスト教時代を迎えた後もお馴染みの存在として愛され続けてきました。

これは、キリスト教の影響下でキューピッドが、大地と天空の両方の愛の神と描かれ、また背中に羽を生やした姿が天使に似ていたというのが理由と考えられます。

ローマ神話の神12:ヴァルカン(ヘーパイストス)

ヴァルカンまたはラテン語でウゥルカーヌスは、古代ローマ神話において火の神、金属工芸の神、火山の神、鍛冶神とされており、鍛冶屋のハンマーを手にした様子で描かれていました。

ギリシャ神話に登場する神ヘーパイストスと同一視されています。

古代ローマ人はヴァルカンに対して、火の威力を活かした破壊と繁栄の両方を司ると神として畏敬の念を抱いており、8月23日にはヴァルカンを祝して名付けられた「ウゥルカーナーリア祭」を毎年開催していました。

ローマ神話の神13:マーキュリー(ヘルメース)

マーキュリーまたはラテン語でメルクリウスは、古代ローマの神々のなかでは影響力が大きく、ディー・コンセンテス(ローマ神話に登場する12人の最高神の総称で、ギリシャ神話ではオリュンポス12神に該当)の一人です。

幸運の神、商売の神、旅行の神、雄弁家の神、詩の神、罠の神および盗賊の神とされ、商人や旅人の守護神として知られます。

また、旅人を見守るという点では、冥界へ魂を案内する役割を担っているとしても捉えられていました。

ちなみに、ギリシャ神話に登場するヘルメースに該当し、商売の神という性質から、ローマ帝国初期の二種類の青銅硬貨にはヘルメースの絵が描かれていました。

ローマ神話の神14:バックス(ディオニューソス)

バッカスまたはラテン語でバッコスと呼ばれる神は、ギリシア神話の神ディオニューソスと同一視される神。

豊穣とぶどう酒と酩酊の神で、多産とも結びつけられることがありました。

そのため、この神を祀った祭りなどでは、踊り狂う熱狂的な女性信者がいたと言います。

そんなバッカスは、若いゼウスと言われるようなハンサムな青年として描かれることもありますが、古代ローマ芸術作品のなかでは、くせ毛の子どもがワインを飲んでいる姿か、泥酔した男の姿で描かれることも多くあります。

ローマ神話の神15:ヴェスタ(ヘスティアー)

ヴェスタまたはウェスタは、ジュピター、ネプチューン、プルートー、ジューノなどと同じ、サターンの子供で、兄妹の中では長女に当たる神。

ギリシャ神話において釜戸の女神や家庭の女神とされるヘスティアーに該当すると同時に、ローマ帝国の守護神の一柱としても考えられていました。

また、生涯において一切性交を持たなかった処女神で、この女神を崇拝するウェスタ崇拝では、神官になった少女は神官を続ける間、絶対に処女を守り通さなければいけませんでした。

もしもこの義務を破った場合、少女は生き埋めによる死罪が与えられたと言います。

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ローマ神話の神と女神一覧(ギリシャ神話の神や女神との比較付き)のまとめ

ローマ神話に登場する神や女神たちを15柱紹介してきました。

見てきたように、古代ローマ神話に登場する神々の多くはギリシャ神話と共通する神々で、古代ローマ文明は古代ギリシャ文明に大きく影響されてきたのが分かります。

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