蛇と神話の関係や伝説に出てくる蛇(サーペント)を確認!

蛇と神話の関係、そして伝説に登場する蛇までを確認していきましょう。世界各地に生まれた神話の中での描写を比較して、共通点や異なる点を発見してください。

「蛇(ヘビ)」または「サーペント(英語でヘビの別名)」は、古代文明や神話、さらに民間に伝わる伝説の中で、様々な象徴として幾度にも渡って登場してきました。

うろこに覆われ、ニョロニョロとどくろを巻く生き物であるからか、大きさや種類に関わらず恐怖を抱く人も多い一方で、その畏怖の念はやがて畏敬の念へと代わり、神聖な存在や人智を超越した存在として神話の中で描かれるようになっていったのです。

特に、成長と共に脱皮を繰り返していく蛇の姿は「生まれ変わること」を象徴していると描写され、それから派生して復活、死、さらには知恵、受胎、出産を象徴する神聖なシンボルとなっていきました。

一方で、異なる数多くの神話に蛇は登場するものの、その描写は神話や伝説によって微妙に異なってきます。

この記事では、神話と蛇の関係を理解していくためにも、地域の伝承や特定の神話で蛇がどのように扱われているのかを簡単に確認していき、最後には異なる神話上の蛇を5匹ピックアップして紹介していきます。

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各地域の神話に登場する蛇とその描写

アメリカ大陸の神話における蛇

アメリカ大陸の中でも中米と呼ばれるメキシコ付近には、マヤ文明という古代文明が存在していました。

そして、このマヤ文明に残る神話では、ユカタン半島に住みついた最初の人々は「蛇の人々」と呼ばれる人達だったという話が存在していました。

この蛇の人々の社会ではイツァムナーと呼ばれる蛇神が、力ではなくて秘教的な知識を用いて民衆を支配したと言うのです。

さらに、当時から残された絵画の中には羽のある蛇が描かれており、これら「神聖な蛇」は、飛行能力を持っていたのではないかとさえ考えられています。

他にも同じアメリカ大陸に生まれたアステカ文明の神話には、水や農耕に関わる羽を持った「ケツァルコアトル」が登場し、人々に科学と数学の知識を与えた蛇神として描かれています。

ネイティブアメリカ先住民の信仰における蛇

北米に住んでいるネイティブアメリカン(インディアン)達の中で蛇は、「生殖」そして「再生」の象徴であるとして語り継がれてきました。

また、彼らの神話の中には、

  • 人を一気に飲み込んでしまうことのできる巨大な蛇の怪物「ウンセギラ
  • 大地に嵐と大雨を呼ぶ「アヴァニュ」と呼ばれる蛇神

なども登場し、大地の偉大さを象徴する存在として描かれていました。

中国における蛇

中国の神話において蛇の神は、いわゆる「竜」として描かれていることがあります。

しかし、中国神話において蛇は、それ以上に重要な位置を占めていると言えるでしょう。

というのも、中国神話によると人類を創造したとされる「女媧(じょか)」と「伏犠(ふっき)」は、「蛇の体」を持ち、上半身は人間という姿をしていたと描写されるからです。

この蛇身人首である神々は、古代中国の発展に大きく貢献した神聖な存在でした。

さらに、古代中国を起源とする十二支にも蛇(巳)が登場し、知性、知恵、コミュニケーションといった、人に大切な能力を象徴する神聖な生き物として描かれています。

インドにおける蛇

インド神話に登場するナーガは、空から舞い降りた古代の蛇の一種であった伝えられています。

蛇の精霊」として描かれたり、または「上半身は人間で下半身は蛇の蛇神」として描かれ、自らを完全に人間または蛇の姿に変えることが出来るとされていました。

さらに、ナーガの女性「ナーギ(女の蛇神)」は大変に美しいらしく、インド王家の人々は自らをナーギの子孫であると主張していたようです。

ちなみにナーガは、天候を左右する力を有しており、干ばつや洪水を引き起こす一方で、恵みを与えてくれる存在でした。

ケルト神話における蛇

ケルト神話において蛇は、知恵、受胎、不死と繋がりがあるとして、回復の泉や水と関係づける傾向にありました。

また、成長した蛇だけでなく、蛇の卵にも似たような力があるとされたことから、蛇の卵の形をした表面のなめらかな石にも、何らかの魔力があると信じられていました。

北欧神話におけるヘビ

古代スカンジナビアを発祥とする北欧神話にもまた、蛇が登場します。

その蛇とは、「世界蛇」とも呼ばれるヨルムンガンドで、神であるロキと女巨人のアングルボサの間に生まれた巨大な毒蛇の怪物でした。

その巨大な体から、地球を一周して自らの尻尾を握ることが出来たために世界蛇と呼ばれていたのです。

そして、ヨルムンガンドが握っていた尻尾を離した結果、北欧神話では世界の終末となる日「ラグナロク」が起きたと言います。

ギリシャ神話とローマ神話における蛇

ギリシャ神話やローマ神話の世界で蛇は、守護神の象徴とされ多くの祭壇に描かれていました。

例えば、ギリシャ神話に登場するアテナイの王エリクトニオスは神話的な古代ギリシャ初期の王で、「上半身が人間で下半身が蛇」であったとされますが、アテネのアテーナー・ニーケー神殿では、籠の中に捕らえられた蛇がこのエリクトニオスの生まれ変わりであるとして扱われていました。

また、アポロ神殿にも蛇は置かれ、裸の乙女がその世話にあたっていたと言います。

一方で、悪に関連する存在として描かれることもありました。

例えば、見たものを石に変える能力を持つ怪物「メドゥーサ」を始めとした「ゴルゴン三姉妹」の頭髪が無数の毒蛇で描かれている点は、まさに悪い存在としての蛇を象徴するものだと言えるでしょう。

アフリカの神話における蛇

アフリカの神話においては、古代の神が一塊の土から太陽、月そして地球を創造したとされていますが、神はまた「ノンモ」と呼ばれる双子の精霊も創造しました。

そしてノンモは、「上半身は人で下半身は蛇、手に関節が無く、舌は二股に分かれている」という蛇と人間が混ざった姿を持ち、

  • 原初の人間に男女対になる魂を与えた
  • 母なる大地を浄化した
  • 世界に秩序をもたらした

という役割を果たした伝説的な存在として描かれているのです。

ちなみに、このノンモに関する神話は、アフリカの中でも特にマリ共和国のニジェール川流域に面したバンディアガラの断崖に昔から暮らす、「ドゴン族」の人々によって伝えられています。

エジプトの神話における蛇

エジプト神話で蛇は、不死の象徴であるだけでなく、

  • 神々とのつながりをもつ存在

として非常に神聖視されていました。

例えば、王達の墓には蛇が王(ファラオ)を神々の国である空へ運ぶ姿が描かれており、また蛇は、この時代に王位のシンボルにもなっていたため、ファラオの頭飾りにもよく登場するようになりました。

しかし、蛇の描写は時代が移っていくと同時に変わっていきます。

エジプト第2中間期に侵略され、エジプトが遊牧民族のヒクソス達の手に落ちた後、蛇は「侵略者」や「」の象徴として扱われるようになってしまったのです。

一方で、次のような蛇に関する描写も古代エジプトの神話には残っています。

  • 太陽神アメンは自らを生き返らせるために蛇に姿を変えることができる
  • 悪の世界は二つの首を持つ蛇「ネヘベカウ」によって守られている
  • 闇と混沌を象徴する悪の化身として巨大な水蛇であるアペプが存在する
  • 円を描き自らの尾を口にする蛇(ウロボロス)の姿は再生および復活を象徴する

旧約聖書における蛇

旧約聖書の中に登場する蛇の描写には、世界的にも非常に知られている蛇が含まれています。

その蛇とは、アダムとイブがエデンの園で暮らしていた時、イブに禁断の果実とされる「善悪の知識の木の実」を食べるようにそそのかした蛇で、これによってアダムとイブは楽園を追放され、下界に降り立って人間の始祖となりました。

この蛇は悪魔サタンによって操られていたと言われます。

さらに、旧約聖書に登場し、モーゼの十戒で有名なモーゼに関しても蛇の話は残っています。

それは、神が、モーゼが率いるイスラエル人を罰するために、噛まれると死を引き起こす炎の蛇を送った際、悔い改めた民を守るためにモーゼが神に祈りを捧げた結果、「青銅の蛇」を作るように伝えられたという話です。

この青銅の蛇を見た人は、炎の蛇に噛まれても命を落とすことはなくなったと言うのです。

世界各地の神話に登場する伝説の蛇5選!

それぞれの地域や異なる神話で、どのように蛇が描かれているのかを見てきましたが、最後に世界各地の神話に登場する蛇を5匹だけピックアップして簡単に紹介していきます。

画像を含め、姿や描写の違いを確認してみましょう。

ヒュドラ(ヒュドラー)

複数の頭を持つ水蛇の怪物として描かれる、ギリシャ神話上の伝説の生き物です。

その最大の特徴は、「頭を切り落とされてもすぐに生えてくる」点です。

アンピプテラ

(出典:wikipedia

頭から尻尾までは蛇で、コウモリのような翼が首元から生えている姿が特徴的なアンピプテラは、イギリスで紋章に描かれるほどの聖なる存在で、またドラゴンの一種だともされます。

ヤマタノオロチ

(出典:wikipedia

日本の神話に出てくる蛇といえばヤマタノオロチでしょう。頭と尻尾が8つあり、乙女を食べる邪悪な生き物として描かれます。

最終的には、スサノオミコトによって退治されてしまいました。

ラードーン

(出典:wikipedia

ギリシャ神話には数々の英雄や怪物、そして神が登場しますが、その中でも怪物として描かれるのが蛇の姿をしたラードーンで、黄金の林檎を守っていました。

しかし、最終的には英雄ヘラクレスによって退治されてしまいます。

ククルカン(ケツァルコアトル)

マヤ神話ではククルカン、アステカ文明ではケツァルコアトルと呼ばれる羽を持った蛇の神は、雨、風、火を司った神聖な存在でした。

また、血なまぐさい生贄を好まない平和を愛する存在としても知られています。

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蛇と神話の関係や伝説に出てくる蛇(サーペント)を確認!のまとめ

世界各地に伝わる蛇と神話の関係や、伝説上の蛇を見てきました。

蛇は今日においても特定の地域や領域では、善または悪のシンボルとして使われています。

例えば、二匹の蛇が杖に巻きつく医療のシンボルは、善のシンボルとして比較的良く知られているでしょう。

このように、蛇は古代の神話から現代まで、神秘的な象徴として扱われ続けているのです。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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