堕天使とは?その意味やルシファーの影響などを掘り下げていく

堕天使とはどういった存在なのでしょうか?その意味することやルシファーによる影響、さらには抑えておきたい5つのポイントなどを紹介していきます。

一般的に「天使」と言えば純粋で聖なる存在であり、神を愛して人々を助けることで神に仕えるとして知られます。

しかし、中にはこれとは異なる性質、言い方を変えれば真逆な性質を持つ天使もいます。

ある宗教、とりわけ西洋で主要な宗教であるキリスト教、そして後期ユダヤ教の諸派には、「元々は純真な神の使い手であった天使の一部が、神に反旗を翻して天界から堕落していった」とする教えがあり、こうして堕ちていった天使達は「堕天使」と呼ばれるのです。

この堕天使とは一体、どういった存在なのでしょうか?

この記事では、堕天使が意味する存在をより具体的に掘り下げていき、さらに堕天使を理解する上で抑えておきたい6つのポイントも紹介していこうと思います。

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堕天使とは?その意味するものを確認していこう

世界にいくつも存在する宗教の中でもとりわけ西洋の宗教であるキリスト教の教えの中には、「堕天使(だてんし)」と言う概念が存在し、また、後期ユダヤ教の諸派の中にも、「堕落していく天使」の話が登場します。

この堕天使とは、

神の試練に堪えきれず下界に堕(お)とされた天使

(引用:コトバンク

のことで、傲慢や嫉妬によって神へ反逆した結果、罰として天界を終われ、その後、自らの意志で堕ちていった(堕落していった)天使達だとされます。

そして、キリスト教の教理では、人間に悪さをしようと地上をさまよう「悪魔」はこの「堕天使」のことを指すとしています。

さらに教えによっては、「人間が後悔の念からイエスを救世主として受け入れるように、いつの日か堕天使が完全に地上に解き放たれ、神の許しを得て史上最悪の大惨事を引き起こす」といったことが唱えられており、この惨事から救われるにはキリスト教を受け入れなくてはならないと説いているものもあるのです。

このように、堕天使は悪行を行い、それによって世の中を破壊する存在であると言えます。

一方で、堕ちていない天使、つまり通常の「天使」とは、天界に住み神に忠実な天使達のことで、彼らの行いは良い目的のために行われ、堕天使のそれとは正反対なのです。

また、天使は神のメッセンジャー(使い手)であるのに対して、堕天使とは啓蒙されていないメッセージを運ぶメッセンジャーであると言う捉え方も可能でしょう。

いずれにせよ、後期ユダヤ教諸派やキリスト教に登場する概念である堕天使が意味するところは、簡単に言ってしまえば悪行を行う「悪魔」のことであり、また同時にこの悪魔とは「天界を追われて堕ちていった天使」のことを指すのです。

堕天使を考える上で重要な「ルシファー」

堕天使を理解する上では、堕天使の長や堕天使の首領と描かれる「ルシファー(ルシフェル)」の存在を抑えておくべきでしょう。

キリスト教の教理によると、神はもともと天使を聖なる存在として創りましたが、その中でも最も美しい天使であり、天使達の長として存在していたのがルシファー(今では最強の悪魔「サタン」と呼ばれている)でした。

しかし、ルシファーは神と同じくらいのパワーを手にすることを願い始め、神からの愛を返す代わりに神に刃向かうことを選び、結果として「堕天使」へと堕ちていったのです。

ちなみに、ユダヤ教の聖典であるトーラーや聖書の『イザヤ書』14章12節には、以下のようにルシファーの転落が描かれています。

ああ、お前は天から落ちた/明けの明星、曙の子よ。お前は地に投げ落とされた/もろもろの国を倒した者よ。

(引用:日本聖書協会

ルシファーが堕ちた天使となった後、神が創った天使の中には、神に反抗すれば自分も神のようになれるとルシファーに騙されたものもいました。

そして、『ヨハネの黙示録』 第12章7〜8節によると、この結果として天国で戦争が起こったと記されているのです。

さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。

(引用:日本聖書協会

堕天使たちは反乱を起こしたことで神から離れ、そのために崇高な地位から転落し、罪の中にとらわれ、こうして堕天使団とでも呼べるものが形成されていきました。

そして、自分たちの破壊的な選択によって性質も歪み、その結果として悪魔になったのです。

このように、数いる堕天使や堕天使団を知る上では、最初に神へ反逆した美しい天使「ルシファー」が鍵となると言えます。

堕天使の意味を理解する上で抑えておきたい6つのポイント

堕天使の基本的な概要から、多くの堕天使が現れる上で鍵となったルシファーについて見てきましたが、ここからは堕天使の意味をさらに理解する上で抑えておきたい6つのポイントを紹介していきましょう。

神に忠実な天使を信じる他の宗教では堕天使という概念は存在しない

神に忠実な天使を信じる他の宗教では、堕天使は存在しないとされます。

例えばイスラム教は良い例でしょう。

ユダヤ教やキリスト教と同じように、聖書の預言者アブラハムの宗教的伝統を受け継ぐことから「アブラハムの宗教」に含まれ、聖書を経典とするイスラム教では、すべての天使が神の意志に忠実であると描かれます。

コーランの66章(禁止)の6節では、地獄で人々の魂を監視する役目を神から与えられた天使達ですら、

神の命令に違わず、言いつけられたことをその通りに行う

と記されています。

また、キリスト教においては最も有名で強大な力を持つ悪魔の長と描かれるサタンは、イスラム教ではそもそも堕ちた天使などでなければ元々天使だった存在でもなく、霊魔(自由意志を持つ別の霊的存在で、神が光から天使を創ったのに対して火から創ったもの)として描かれます。

このように、「堕天使」という概念は、ユダヤ教(特に後期ユダヤ教諸派)やキリスト教以外では一般的でない点は、堕天使を正しく理解する上で大切でしょう。

堕天使は神による善行を邪魔する

神が人々に対して善行を行おうとした時、それに介入して邪魔しようとするのが堕天使の特徴の一つです。

例えば、『ダニエル書』では、神からの大切なメッセージを地上にいる預言者ダニエルに届けようとした天使を堕天使が引き止め、21日間も抵抗した話が描かれています。

また、神がダニエルの祈りを聞き入れ、それらに答えるためにすぐに天使を遣わしたことを告げますが、そこへ再び堕天使が介入し、その堕天使があまりにも強大だったために、大天使ミカエルが闘いに加勢しに来なければならなかったことも記されています。

神に反逆する堕天使はこういったことを通して、神の意に反する行いを続けるのです。

堕天使は人々を騙す存在である

聖書によれば、堕天使は時に聖なる天使のふりをして、人々に自分たちの言うことを聞かせようとすると言います。

『コリントの信徒への手紙二』の第11章14−15節は、次のように警告しています。

だが、驚くには当たりません。サタンでさえ光の天使を装うのです。

だから、サタンに仕える者たちが、義に仕える者を装うことなど、大したことではありません。彼らは、自分たちの業に応じた最期を遂げるでしょう。

(引用:日本聖書協会

そして、天使を装った堕天使に騙された人々は、信仰さえも捨ててしまう可能性があると、『テモテへの手紙一』の第4章1節で危惧されています。

しかし、“霊”は次のように明確に告げておられます。終わりの時には、惑わす霊と、悪霊どもの教えとに心を奪われ、信仰から脱落する者がいます。

(引用:日本聖書協会

堕天使は人々へ罪を犯すようにそそのかす存在である

さらに、人を騙す堕天使達は、神への信仰を捨てさせるだけでなく、人々を「罪を犯したくなる衝動に駆られるように仕向け、対象となった人間を神から離れるようにそそのかす」ことも分かります。

トーラーと聖書の『創世記』3章には、堕天使が人々に罪を犯したくさせる最も有名な物語が語られています。

そこで描かれているのは、神によって、

食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから

(引用:日本聖書協会

と、最初の二人の人間である「アダム」と「イブ」に伝えられていた園の中央に生えている木の果実を、悪魔(堕天使)のリーダーであるサタン(ルシファー)が蛇の姿になり、

それを食べると、目が開け、神のように善悪を知るものとなる

(引用:日本聖書協会

と二人をそそのかし、神からの命を無視して罪を犯させたという話です。

堕天使は人を悩ませたり不健康にしたりする

また、騙したり罪を犯させるだけでなく、堕天使は人々を精神的または肉体的に悩ませる存在であるともされます。

例えば、『マルコによる福音書』の第1章26節には、

汚れた霊はその人にけいれんを起こさせ、大声をあげて出て行った。

(引用:日本聖書協会

と記されており、汚れた霊、つまり堕天使は、人々に取り付いて身体や精神を傷つけることがあると描かれているのです。

堕天使は神に忠実な「天使」より少ない

堕天使と呼ばれたり、堕天使と考えられる存在の数は多く、神に忠実な天界に住む天使軍団と競うことから、堕天使の数は天使の数に匹敵するように思われがちですが、実際には堕天使の数は神に忠実な天使よりも少ないようです。

というのも、ルシファーにそそのかされて神へ反逆し、そして罪の中に堕ちていった天使達は、神が創った数多くの天使達の1/3に過ぎないとされるからです。

また、中世ヨーロッパのイタリアの神学者として有名な「トマス・アクィナス」は、著書「神学大全」にて、

神に忠実な天使の方が堕天使よりも数多い。なぜなら罪は自然の摂理に反しているからだ。

つまり自然の摂理に反するものは、自然の摂理にかなったものよりも起こることが少ない。

と記しており、このことからも堕天使は数の上で天使に匹敵する存在ではないことが分かります。

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堕天使とは?その意味やルシファーの影響などを掘り下げていくのまとめ

神に使える聖なる天使達とは対極に位置する堕天使について詳しくみてきました。

後期ユダヤ教諸派とキリスト教に現れる堕天使という概念は、ある意味で人々に対して警鐘を鳴らす存在であると言えるのかもしれません。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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