フランス語圏とは?フランス語を話す国やフランス語話者の数や状況

フランス語圏について見ていきます。世界中に多くの話者を抱え、一大言語圏を誇るフランス語話者の数や状況、そしてフランス語を話す国などを見ていきましょう。

フランス語はイタリア語、ポルトガル語、ルーマニア語、そしてスペイン語と同じように、インド・ヨーロッパ語族の中でもロマンス諸語と呼ばれるグループに属する言語の一つ。

ロマンス諸語とはラテン語の口語である俗ラテン語に起源を持ち、ローマ人たちが日常的に使う言語でした。

この言語はローマの植民地開拓者たちによって広範囲に渡って広められましたが、西ローマ帝国の崩壊によってその支配下にあった多くの地域は文化的にも言語的にも分裂。

俗ラテン語は多くの土地でその地方の方言へと枝分かれし、最終的に私達が今日知っているロマンス諸語となったのです。

フランス語はフランス北部の方言であったガロ・ロマンス語から進化し、1539年にフランソワ1世がフランス語を行政の公式言語としたことから、フランスの公用語はラテン語からフランス語へと変わり、フランス共和国またはフランス人の間で話される言葉として認知されました。

一方で、歴史の中でフランスは国外へ植民地を有していたこともあり、こういった旧植民地では現在でもフランス語が話され、「フランス語圏」が形成されています。

この記事では、そのフランス語圏について詳しく見ていこうと思います。

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フランス語圏とは?

フランス語圏とは、フランスの旧植民地を中心に、フランス語がその地域で重要な言語の1つとなっている国や地域の総称。

ここでいう重要な言語とは、必ずしも公用語として制定されている必要はなく、実質的に重要であれば、第二公用語や準公用語であったとしてもフランス語圏と見なされます。

そのため、フランス語圏に含まれてフランス語を公用語としている国は全部で29ヶ国しかないのにも関わらず、フランス語圏には他にも21の国または地域が含まれ、合計50の国と地域で構成されているフランス語圏は、一大言語圏だと言えるのです。

また、フランス語はEUの手続き言語であり、欧州司法裁判所にて審理の際に使われる唯一の言語。そして、国連の作業言語として認められている言語うちの一つです。

ちなみに、フランス語を公用語とする29の国家は以下の通りです。

フランスベルギーコンゴ共和国
コンゴ民主共和国チャドガボン
カナダギニアコモロ
マダガスカルルワンダ赤道ギニア
コートジボワールハイチジブチ
カメルーンブルンジルクセンブルク
ブルキナファソベナンバヌアツ
ニジェールスイスセーシェル
セネガルトーゴモナコ
マリ中央アフリカ

フランス語圏に含まれるフランス語話者の数はどれほどか?

では、フランス語圏に含まれ、実際にフランス語を話す人は世界でどれほどいるのでしょうか?

この数に関しては、単純に「フランス語話者」という大きな括りで見た場合、簡単に言えば「約3億人」となります。

しかし、この答え方はフランス語がおかれた複雑な状況を現しています。

というのも、この3億人の中にはフランス語が母国語となる人たちのみでなく、フランス語は話すいくつかの言語のうちの一つである人たちもいれば、数多く存在するのフランス語の方言や混合語を話す人たちも含まれているからです。

さらに難しいことに、資料によってその定義や数値がまちまちな点も、フランス語話者の正確な実態の理解を阻んでいます。

例えば、

  • 一部の資料では「母語話者(フランス語家庭に生まれてフランス語が第一言語となっている人々)」と表記しているのに対して、別の資料では「主要話者(フランス語を主に使う人々)」と表記されている
  • 一部の資料では母語話者の数が7200万人とされているのに対して、別な資料では主要話者の数が1億3000万人とされている
  • 一部の資料では総話者の数は2億人以上とされているのに対して、別な資料では約3億人とされている

といった具合です。

いずれにせよ、フランス語母語話者の数は、世界中で最低でも7200万人から1億3000人近くおり、それに加えて、1億2000万人から2億人近くの人々が第二言語としてフランス語を話せると考えるのが、フランス語圏の規模を知る上で1つの参考となるのではないでしょうか。

また、母語話者から第二言語話者まで含めた総話者数で見ると、英語、中国語、ヒンディー語、スペイン語に次いで、世界で5番目に広く話されている言語となります(※ただし、資料によってはアラビア語の方が話者が多いとされることもあり、その場合は世界で6番目の規模となる)

ちなみに、人口統計学の観点から見ると、アフリカの旧フランス植民地における人口増加によって、フランス語話者は今後、増えていく可能性が考えられます。

各大陸におけるフランス語圏とフランス語話者の状況

ヨーロッパにおけるフランス語

フランス語を母国語として話す人が一番多いのは当然ながらフランスであり、フランス国内にいるフランス語が母語でない人も、基本的にはフランス語を多かれ少なかれ話すため、フランスの人口約6700万人が、まずはヨーロッパにおけるフランス語話者とみなすことが出来るでしょう。

そこへ加えて、ベルギーの人口の約40%とスイス国民の4~5人に1人程度は、母語としてフランス語を話します(第二言語としてのフランス語話者も含めればさらに多くなる)

さらに、ルクセンブルクでも広範囲に渡って話されています。

このような状況のため、もし、彼らのようなフランス語話者を全員集めた場合、ヨーロッパにおけるフランス語話者の総人口は、全世界のフランス語圏のおよそ40%ほどを占めると言われる規模になります。

北アメリカ大陸におけるフランス語

北アメリカではどれくらいの人々がフランス語を話すのでしょうか?

まず、カナダはカナダ人権憲章により二ヶ国語併用を保障しているので、英語とフランス語が公式に公用語として認められています。

ただし、この二つの公用語の立場はそれぞれの州によって異なります。

例えば、北アメリカ最大のフランス語圏となるケベック州では、フランス語が唯一の公用語です。

この州には、フランス語を母国語とするカナダ国民1000万人中の700万人が暮らし、モントリオールはフランス語圏の都市として、世界でトップ5に入る規模を抱えます。

さらに、カナダ全体では第二言語としてフランス語を話す人々があと200万人程度いるとされるため、フランス語話者全体の規模は約1200万となり、これは、カナダ全人口の約30%の規模です。

一方で、アメリカ合衆国ではフランス語は公用語でもなければ、英語やスペイン語に比べて重要な言語だとは言えませんが、それでもルイジアナ州とメイン州では、フランス語が行政上の第二言語となっており、ルイジアナにはフランス語を主要言語として話す人が20万人いるといった報告もあります。

また、地域的に北アメリカに含まれるハイチ共和国はかつてフランスの植民地だったこともあり、ここではフランス語が1つの公用語に制定され、1000万人ほどの人がフランス語を解すとされます。

アフリカにおけるフランス語

フランスが海外へ植民地を拡大した際、その主な対象地域はアフリカであったこともあり、アフリカには他のどの大陸よりもフランス語話者が多く住んでいます。

ただし、コートジボワールのアビジャンのように現地の言葉に代わってフランス語が主要言語または母語として話されていることは稀なため、アフリカにおけるフランス語話者の中でフランス語を母語とする人々は少なく、第二言語としてフランスを身につけた人がほとんどです。

また、フランス語が公用語とされているものの、国の総人口に対して実際にフランス語を使用できる人口数が限られている場合もよくあります。

例えば、フランス語を公用語とするコンゴ民主共和国の人口はおよそ8000万人とされるものの、実際にフランス語を使用できる人の数は3000万人程度と言われます。

これは、コンゴ民主共和国内だけでも約242の言語が存在する上、スワヒリ語、コンゴ語、ルバ語、リンガラ語が同国を代表する国民語として認められており、さらに、貧困によって一部の児童は学校へ通えなかったりとフランス語へアクセス出来ないのが理由だと考えられます。

また、アフリカにはフランス語圏に含まれる国がおよそ30カ国あるとされますが、これらの国で話されているフランス語は多くの場合、その土地の原住民の言語との係わり合った末、標準的なフランス語から枝分かれし、その土地特有の新しいフランス語の形として発展したものだという点も抑えておくべきでしょう。

その他の地域大陸におけるフランス語

フランス語は見てきた3つの大陸(ヨーロッパ、北アメリカ、アフリカ)で主に話されていますが、他にもアジア中近東、南米、そしてオセアニアにも一定数のフランス語話者がいます。

例えば、ブラジル北部と隣接する南米のフランス領ギアナは、厳密に言えばフランスの海外県であり、EU圏内に含まれるヨーロッパ大陸外最大の地域です。

ここでは公用語としてフランス語が制定されており、約25万の人口のほとんどはフランス語話者で、またユーロが通貨として使用されています。

そして、オセアニア地域においてフランス語は、バヌアツ共和国の公用語であり、フランス領ポリネシア、フランスの海外領土(特別共同体)であるニューカレドニアやウォリス・フツナでも話されています。

また、アジアでは、かつてフランス領インドシナであったラオス、ベトナム、カンボジア、中東ではレバノン、シリアなどのフランスの旧植民地において、フランス語は当時の名残として残っています。

これらの国々でフランス語が公的に使用される機会は減っていますが、年配者やエリート層によって、そして多くの高等教育機関において広く学ばれたり、話されたりしています。

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