ネパールの民族|主要民族から少数民族も含めた一覧

ネパールの民族について解説していきます。主要民族の解説から、少数民族までをまとめた全民族の一覧までを合わせて確認していきましょう。

ネパール連邦民主共和国、通称ネパールは、南アジア地域を構成する国の1つであり、中国とインドの2つの大国に挟まれた小さな内陸国です。

約2800万人の人々が暮らしていますが、その中には100を超える非常に多くの民族集団が存在し、ネパールは世界にも稀に見る多民族国家となっています。

そのため、「ネパール人」と言う場合は民族的な人々の集団ではなく、ほぼ全てのケースにおいて、ネパール国籍を持った人々が該当し、単一民族国家である日本に暮らす日本人とはその点で大きく異なってきます。

この記事では、そんなネパールに暮らす民族に関して、4つの主要民族の簡単な解説から、全民族をまとめた一覧まで紹介していきます。

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ネパールの主要な4つの民族グループ

ネパールは100を超える民族が住む多民族国家となっていますが、いくつかの民族集団は比較的大きな人口割合を占めています。

ネパールの主要な民族① チェトリ

チェトリはネパールで最も人口の多い民族集団であり、2011年の人口調査によると、国の人口の16.6%を占めるとされている人々。

ヒンドゥー教社会を4つの層に分割する宗教的身分制度「(カースト制度の)ヴァルナ」に照らし合わせた場合、チェトリは上から2番目のクシャトリアに属す一方で、大きな民族的分類である「カス族」と呼ばれるアーリア系民族の一派に含まれます。

主にネパール語を話します。

また、「クシャトリア階級に属している」というカーストを基にした共通項があることから、チェトリはカースト集団の1つであり、人口の99%はヒンドゥー教を信仰しています。

ヴァルナによる階級分けで民族が細分化される以前は、他のカス族系民族グループと合わせ、「カス族」と呼ばれていました。

また、インド文学において有名な人々「カザス」や、11世紀頃に現在のネパールの極西地域に建国されたカーサ王国の子孫であるともいわれています。

ネパールの主要な民族② バフン(丘陵ブラーマン)

バフンまたは丘陵ブラーマンとは、チェトリと同様に大きな民族的分類だとカス族に含まれ、また、ヴァルナでは最上位に位置するバラモン階級にあたるカースト的民族集団。

古代インドのバラモン教の根本聖典でありインド最古の文献とされるヴェーダと、バラモン階級の伝統を慣習としており、民族全体ではネパールで2番目に人口の多い約12%を占める人々です。

ヴェーダそしてバラモン階級は、この民族のアイデンティティーの象徴と言え、中には「バラモン=宗教的な学びを守る責任を担う聖なる司祭または師」として、実際に祭祀をなりわいとする人がいます。

具体的には、通過儀礼、祈り、そして寺院への勤めなど、伝統的な宗教儀式を行うというものです。

ただし、現在は貧しい農民として生計を立ててる人も多くいます。

また、バフンの大多数はヒンドゥー教徒であるものの、仏教徒もいます。

ネパールの主要な民族③ マガール

マガール族は、アーリア系のカス族に含まれるチェトリやバフンとは違い、シナ・チベット語族系の人々で、大きな民族的分類では「丘陵部ジャナジャティ」と呼ばれる民族集団に含まれる、ネパールにおいては最も長い歴史を持つ民族の1つ。

ダウラギリの南部および西部の地域周辺で主に生活を送るマガール族は、ネパール最大の先住民族と呼ばれ、2011年の人口調査によると、マガールの人々はネパール人口の7.1%を占めており、国内で3番目に人口の多い民族となっています。

また、民族は氏族やさらに細分化されたグループに分けられており、大半の人がマガール語を話します。

従来マガールの人々が信仰していた宗教には、シャーマニズムやテングリが含まれていましたが、現在ではヒンドゥー教が主な宗教となっています。

ちなみに、ネパールの山岳民族を集めて構成するグルカ兵は、その優れた兵力によって有名ですが、このグルカ兵を構成する民族の1つはマガール族です。

ネパールの主要な民族④ タルー

ネパールの西部山岳地帯サーケット渓谷、チトワン渓谷、ダン渓谷、デウクリ渓谷、内部タライ渓谷のシンドゥリとウジャプル、およびネパール・インド国境地帯のタライ平原などに住むタルー族は、同地域の先住民族であり、より大きな民族区分ではマデシという集団に含まれる人々。

元々は人種的にいわゆる白人形質を持つコーカソイドでしたが、シナ・チベット系の人々と混血していくことでモンゴロイド化したと考えられています。

ネパールでは国民の約6.5%を占める4番目に大きな人口を抱える民族で、長年、森林地帯で、米、レンズ豆、とうもろこし、マスタードの栽培を主な経済活動として生活してきたことから「森の民」としても知られています。

インド・ヨーロッパ語族のインド語派に属するタルー語を話し、現在は主にヒンドゥー教を信仰する一方で、森に入る前に祈りを捧げることが一般的な儀式となっているなど、古来からの独特な信仰も残しています。

ネパールの民族集団一覧

ネパールには上に挙げた上位4つの民族グループ以外にも、比較的人口規模が大きい民族集団として、人口の約5.8%を占めるタマン族や約5%を占めるネワール族などがいますが、数が多いことから全集団を細かく解説していくのは困難です。

そこで、以下に、ネパールの全民族集団を簡単に一覧としてまとめたものを掲載しておきます。

順位カースト/民族広義の民族分類人口数割合
1チェトリカス族4,398,05316.60%
2ブラフマン/バフンカス族3,226,90312.18%
3マガール丘陵ジャナジャティ1,887,7337.12%
4タルーマデシ1,737,4706.56%
5タマン丘陵ジャナジャティ1,539,8305.81%
6ネワールネワール族1,321,9334.99%
7カミカス族1,258,5544.75%
8ムスリム/イスラム教徒イスラム教徒1,164,2554.39%
9ヤーダブマデシ1,054,4583.98%
10ライ丘陵ジャナジャティ620,0042.34%
11グルン丘陵ジャナジャティ522,6411.97%
12ダマイ/ドリカス族472,8621.78%
13タクリカス族425,6231.61%
14リンブー丘陵ジャナジャティ387,3001.46%
15サルキカス族374,8161.41%
16テリマデシ369,6881.40%
17チャマール/ハリジャン/ ラムマデシ335,8931.27%
18コイリ/ クスワーハーマデシ306,3931.16%
19ムサハールマデシ234,4900.89%
20クルミマデシ231,1290.87%
21サニヤシ/ ダシュナミカス族227,8220.86%
22ダヌクマデシ219,8080.83%
23カヌ/ ハルワイマデシ209,0530.79%
24ドゥサド/バスワン/バシマデシ208,9100.79%
25マラーマデシ173,2610.65%
26ケワットマデシ153,7720.58%
27カタバニヤンマデシ138,6370.52%
28テライ・バラモンマデシ134,1060.51%
29カルワーマデシ128,2320.48%
30カヌマデシ125,1840.47%
31クマール丘陵ジャナジャティ121,1960.46%
32ブジェル丘陵ジャナジャティ118,6500.45%
33ハジャム/タクールマデシ117,7580.44%
34ラジバンシマデシ115,2420.43%
35シェルパ丘陵ジャナジャティ112,9460.43%
36ドビマデシ109,0790.41%
37タトマ/ タトワマデシ104,8650.40%
38ロハルマデシ101,4210.38%
39カトウェマデシ100,9210.38%
40スディマデシ93,1150.35%
41ダヌワール丘陵ジャナジャティ84,1150.32%
42マジ丘陵ジャナジャティ83,7270.32%
43バライマデシ80,5970.30%
44ビンマデシ75,1950.28%
45ヌニアマデシ70,5400.27%
46チェパン丘陵ジャナジャティ68,3990.26%
47ソナーマデシ64,3350.24%
48クマールマデシ62,3990.24%
49スンワール丘陵ジャナジャティ55,7120.21%
50バンタール/サルダールマデシ55,1040.21%
51カハルマデシ53,1590.20%
52サンタルマデシ51,7350.20%
53マルワディその他51,4430.19%
54カヤスタマデシ44,3040.17%
55ラジプト/テライ・クシャトリアマデシ41,9720.16%
56バディカス族38,6030.15%
57ジャガール/ウラオンマデシ37,4240.14%
58ガンガイマデシ36,9880.14%
59ロダマデシ32,8370.12%
60バダイー(badhaee)マデシ28,9320.11%
61タミ丘陵ジャナジャティ28,6710.11%
62クルン丘陵ジャナジャティ28,6130.11%
63ベンガリその他26,5820.10%
64ガデリ/ バエディヤマデシ26,3750.10%
65ディマルマデシ26,2980.10%
66ヤッカ丘陵ジャナジャティ24,3360.10%
67ガレ丘陵ジャナジャティ22,8810.09%
68タジプリヤマデシ19,2130.07%
69カワス(khawas)丘陵ジャナジャティ18,5130.07%
70ダライ丘陵ジャナジャティ16,7890.06%
71マリマデシ14,9950.06%
72ドゥニヤ(dhuniya)マデシ14,8460.06%
73パハリ丘陵ジャナジャティ13,6150.05%
74ラジョブ(rajdhob)マデシ13,4220.05%
75ボテ丘陵ジャナジャティ13,3970.05%
76ドムマデシ13,2680.05%
77タカリ丘陵ジャナジャティ13,2150.05%
78コリマデシ12,2760.05%
79チャンテル丘陵ジャナジャティ11,8100.04%
80ヒョルモ(hyolmo)丘陵ジャナジャティ10,7520.04%
81ボテ丘陵ジャナジャティ10,3970.04%
82ラージバルマデシ9,5420.04%
83ブラーム/バラム丘陵ジャナジャティ8,1400.03%
84パンジャブその他7,1760.03%
85ナチリン(nachhring)丘陵ジャナジャティ7,1540.03%
86ヤンプ丘陵ジャナジャティ6,9330.03%
87ガイネカス族6,7910.03%
88チャムリン丘陵ジャナジャティ6,6680.03%
89アトパリヤ(athpahariya)丘陵ジャナジャティ5,9770.02%
90ジレル丘陵ジャナジャティ5,7740.02%
91ドゥガ丘陵ジャナジャティ5,3940.02%
92サラバリア(sarabaria)マデシ4,9060.02%
93メチェマデシ4,8670.02%
94バンタバ(bantaba)丘陵ジャナジャティ4,6040.02%
95ラジ丘陵ジャナジャティ4,2350.02%
96ドルポ丘陵ジャナジャティ4,1070.02%
97ハルコールマデシ4,0030.02%
98ビヤンシ丘陵ジャナジャティ3,8950.01%
99アマト(amat)マデシ3,8300.01%
100トゥルン丘陵ジャナジャティ3,5350.01%
101レプチャ丘陵ジャナジャティ3,4450.01%
102パタルカタ/クスワディアマデシ3,1820.01%
103メワハン(mewahang)丘陵ジャナジャティ3,1000.01%
104バヒン丘陵ジャナジャティ3,0960.01%
105ナツワマデシ3,0620.01%
106ハユ丘陵ジャナジャティ2,9250.01%
107ダンリカル(Dhanrikar)マデシ2,6810.01%
108ローバ(lhopa)丘陵ジャナジャティ2,6240.01%
109ムンダマデシ2,3500.01%
110デヴ(dev)マデシ2,1470.01%
111ドゥハンディ(dhandi)マデシ1,9820.01%
112クマールマデシ1,7870.01%
113キサンマデシ1,7390.01%
114サンパン丘陵ジャナジャティ1,6810.01%
115コチェマデシ1,6350.01%
116ロミ丘陵ジャナジャティ1,6140.01%
117カリン丘陵ジャナジャティ1,5710.01%
118トプケゴラ(topkegola)丘陵ジャナジャティ1,5230.01%
119チディマールマデシ1,2540.00%
120ワルン丘陵ジャナジャティ1,2490.00%
121ロルン丘陵ジャナジャティ1,1530.00%
122カラル(kalar)マデシ1,0770.00%
123ラウテ丘陵ジャナジャティ6180.00%
124ヌランマデシ2780.00%
125クスンダ丘陵ジャナジャティ2730.00%
外国人6,6510.03%
その他/不明27万56701.04%
合計2649万4504100.00%

広義の民族集団の一覧

また、大きな民族的分類をした場合における、それぞれの名前や割合も掲載しておきます。

順位広義の民族人種/言語人口の割合
1カス族インド・アーリア系約40%
2丘陵ジャナジャティシナ・チベット語族系25%前後
3マデシインド・アーリア系
& オーストロアジア語族系
30%前後
4その他(マールワーリー、ベンガリ、パンジャブなど)インド・アーリア系1%前後
不明・外国人1%前後

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ネパールの民族|主要民族から少数民族も含めた一覧のまとめ

多民族国家に暮らす民族集団について、4つの主要民族の解説から、少数民族も含めた全民族の一覧までを紹介してきました。

元々ヒンドゥー教が国教に定められていたネパールでは、ほとんどの民族がヒンドゥー教を主な宗教として信仰していますが、中には仏教徒やイスラム教徒が大きな割合を占める民族集団も存在します。

また、それぞれの民族は、伝統的な日常生活や慣習の面で独特な特徴を持っています。

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