世界一大きい魚は、通常でも10m近くなるジンベエザメであることは比較的良く知られています。
一方で、世界一小さい魚についてはほとんどの人が知らないのではないでしょうか?
実は、世界最小の魚については色々と議論があり、誰もが納得する答えが出ていないのです。
例えば、ある魚は他の魚よりも全長では小さい一方、体重では別の魚の方が軽かったり、別の魚はオスだけで見れば他の魚よりも圧倒的に小さいものの、メスが大きいために世界最小とは言われなかったりなど。
この記事では、そのような議論も合わせ、世界的に広く世界一小さい魚・世界最小の魚とされる魚から、比較する基準や情報源によっては世界最小となる、3種の世界最小級の魚までを紹介していきます。
世界的に広く「世界一小さい魚・世界最小の魚」とされる魚とは?
現在確認されている魚で「世界一小さい魚」または「世界最小の魚」とされるのが、「パエドキプリス・プロゲネティカ(paedocypris progenetica)」という名の魚。
このコイの小さな親戚は、インドネシアの小さな沼にしか生息していないインドネシアの固有種で、酸性雨の100倍もの強い酸性を示す泥炭湿地やブラックウォーター(木の茂った湿地や沼地を通る、水深が深く、流れが遅い河川)で生活しています。
その大きさは10mm前後で、確認されている最小のメスの個体は7.9mmという大きさでした。
元々は1996年に発見されましたが、新種として正しく認定されたのは2006年になってからです。
他にもいる世界一小さい魚達
上で示したように現在、最も広く受け入れられている世界最小の魚はパエドキプリス・プロゲネティカですが、実は「何を対象に比較するか」や「情報源」などによって、世界一小さい魚として名前が挙げられる魚は変わってきたりします。
そのためここでは、パエドキプリス・プロゲネティカに負けないぐらい小さい体を誇る3種類の世界最小級の魚達を簡単に紹介しておきます。
世界最小級の魚① ドワーフ・ピグミー・ゴビー
ドワーフピグミーゴビー(学名:Pandaka pygmaea)またはフィリピンハゼと呼ばれるこの魚は、東南アジアの汽水域や、マングローブが生い茂る地域に生息する世界で最も小さな魚の一種。
オスは成熟すると全長9mmから最大で11mmになり、メスは15mmまで大きくなります。
また、体重は4mgほどです。
薄くて非常に半透明な体を持ち、色彩は体側とヒレの付け根にある黒い斑点だけ。丸みの帯びた頭部も特徴です。
現在、ドワーフ・ピグミー・ゴビーは、絶滅危惧種に指定されています。
世界最小級の魚② スタウト・インファントフィッシュ
(出典:animal.memozee.com)
このスタウト・インファントフィッシュ(学名:Schindleria brevipinguis)が、世界一小さい魚だとする主張も多くあります。
というのも、世界最小級の魚の中で体重は最も軽いと考えられており、今まで確認されてきたオスの個体の全長もメスの個体の全長も、同じように小さかったからです。
オスの大きさについては平均的に7.7mmという数値が挙げられていますが、6.5mmが最大という説や、7.5mm程度が最大という説があり、情報が錯綜しています。
一方で、メスは8.4mmというのが平均的な大きさで、最大で10mmに達すると考えられています。
ちなみに、このやせっぽちな淡い黄色の世界最小級の魚は、小さなバナナと言えるような形をしていて、オーストラリアのグレートバリアリーフに多く生息しています。
世界最小級の魚③ フォトコリヌス・スピニケプス
多くの日本人がイメージするアンコウとはかけ離れた大きさを持つため、アンコウの一種と聞くとびっくりするかもしれませんが、このアンコウの一種であるフォトコリヌス・スピニケプス(Photocorynus spiniceps)もまた、世界最小級の魚の一種。
(メスのイメージ図 / 出典:wikimedia)
オスに関しては成熟しても全長は6.2〜7.3mmにしか達しない一方で、メスはオスよりもかなり大きな50.5mmにまで達します。
これは、オスは大きなメスの体にくっつくように寄生して生きていく必要があるからだと言えるでしょう。
(メスの背中にくっつくオス / 出典:UW)
メスのフォトコリヌス・スピニケプスは他のアンコウと同様、牙によく似た歯を持ち、獲物をしっかりと捕まえて捕食しますが、半透明のオスはティッシュペーパーの切れ端をくしゃくしゃにしたような形をしていて一生のほとんどをメスにくっついて過ごし、メスが食べるものから栄養を取るのです。
ちなみに、6.2~7.3mm程度にしか成長しないオスだけを比較対象とした場合、現在確認されている中では「世界一小さい魚」であると同時に「世界最小の脊椎動物」となりますが、メスが大きいため、フォトコリヌス・スピニケプスが世界最小の魚と言われることはそこまで多くありません。