多国籍企業とは?メリットとデメリットとは?世界企業について考える

多国籍企業のメリットとデメリットを見ていきます。世界経済の主要プレーヤーである企業が生み出す利点や問題点を探っていきましょう。

世界には多くの大企業がありますが、その大企業の多くは複数の国をまたいで事業活動をしている多国籍企業です。

有名なもので言えば、コカ・コーラ、マクドナルド、トヨタ、Microsoftなどの名を挙げることが出来ます。

では、これら多国籍企業は世界にどのようなメリットを生み出しているのでしょうか?

また一方で、デメリットはないのでしょうか?

現代の世界経済においてキープレーヤーである、多国籍企業が生み出すメリットやデメリットについて見ていこうと思います。

ただし、まずは多国籍企業の意味を明確にするためにも、その定義の確認から始めていきましょう。

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多国籍企業とは?

多国籍企業(multinational corporation)とは、超国境企業(transnational corporation)や世界企業(world enterprise)とも呼ばれる企業のこと。

その多国籍企業の定義は以下のようなものになります。

  • 国連多国籍企業委員(Commission on Transnational Corporations)による定義
    • 本拠のある国以外で生産またはサービスの設備を所有もしくは支配している企業
  • 国連の国際連合貿易開発会議(UNCTAD)による定義
    • 資産を2ないしそれ以上の国において統轄するすべての企業
    • 2か国以上に拠点を有する企業
  • 元ハーバード大学スティーブ・ハイマーによる定義
    • 海外直接投資を行う企業

つまり、一つの国だけでなく2つ以上の国(複数の国)で企業活動を行う巨大企業と言い換えることが出来ます。

多国籍企業がもたらすメリットとデメリットとは?

この多国籍企業は、世界の国々(特に発展途上国)が経済的、または社会的に発展して行くために必要な金融インフラを提供して事業活動を行っている国に恩恵をもたらす一方、それらの国々を支配し、また貧困状態に付け込んで搾取するなど、非倫理的な行為をもたらすという主張もあります。

多国籍企業は、事業活動を行う国(現地の国)と、本拠のある国(本拠地)の双方にとってどのような効果や影響をもたらすのでしょうか?

この点に関して、多国籍企業がもたらすメリットとデメリットの2つに大きく分けて、それぞれ見ていきたいと思います。

多国籍企業のメリット

メリット① 巨大な規模が消費者にとってプラスである

多国籍企業はその運営規模の大きさからスケールメリットの点で有利になり、平均原価と消費者価格を下げられる基盤が出来上がっています。

これは製造業、なかでも自動車や航空機メーカーなど固定費が非常に高い業界にとっては特に大事な点。

結果、多国籍企業が活動することで、現地の人々は提供される商品や製品を比較的安い価格で購入することが可能になり、家計にとって恩恵をもたらす可能性が高くなるのです。

メリット② 多方面で国を援助できる

多国籍企業は特に途上国に対して先進技術を持ち込むことができ、重要な工業的発展の担い手となっている側面があります。

また、多国籍企業がその国で社会開発プロジェクトや環境保護活動を手がけることで、様々な社会問題の解決につながることもあります。

一方で、先進国に対しては低コストの製品、商品、サービスを提供することができます。

メリット③ 雇用と富を生む

グローバルな多国籍企業が現地の国へ投資する対内投資により、発展途上の経済において必要とされる外貨をもたらし、その国の富を生み出すというメリットがあります。

同時に、多国籍企業が現地に入って事業活動を行うには人材が必要です。

そのため、求人市場を作り出し、雇用創出が特に喫緊の課題である発展途上国へメリットをもたらすことになると言えます。

一方で、事業活動を行う国だけでなく、いくつもの国をまたいで経済活動を行う多国籍企業の巨大な事業により、国内と海外双方にとって市場を拡大させていく役割もあるのです。

メリット④ 費用対効果が高い

生活費が安く高賃金を必要としない国々の労働力を利用することにより、必要なコストは大幅に安くなります。

結果、販売価格に対してコストが下がる分、利益率が高くなり、将来に対する研究開発や設備投資へお金を回せるようになり、生活を便利にしたり、様々な課題を解決する製品やサービスが生まれる確率が高まります。

また、企業が投資を増やすことで、経済が潤い、間接的にその国の消費者が恩恵を受けることになるメリットもあると言えるでしょう。

メリット⑤ 巨大な収益が研究開発に利用される

上で述べたことと重なりますが、巨大で体力のある多国籍企業だからこそ、最先端の研究開発をいくつも立ち上げ、また同時に継続することが出来ます。

例えば、グローバルな製薬会社を例に挙げると、研究開発を行うために何百万ドルもつぎ込む余裕があります。

これは、巨大な資本力がないことにはできません。

また、もう1つの良い例は石油探索事業です。

高コスト&高リスクのため、基本的には巨大な資金やその他の資源を使うことができる大企業しか、この事業を研究開発して事業化させることが出来ません。

メリット⑥ 現地企業を助ける

多国籍企業はまた、現地の企業を助けることもあります。

現地で伸び悩んでいる企業をM&Aを通して買収することで、多国籍企業はローカルの知識、マーケティングノウハウ、スケールメリットを獲得出来る一方、経営難に陥っていた会社や事業が健全化されることで、経営者や労働者は富や雇用を失わずに済みます。

また、外資系の多国籍企業がローカルのマーケットへ進出する際は、現地企業と合併することもしばしばあり、合併企業が大きくなることで、現地の雇用創出につながるといったメリットをもたらします。

メリット⑦ 同水準の品質やブランド基準を順守する

これは多国籍企業の最も優れた点の一つであると言えます。

例えば、マクドナルドは世界中どこの国に行っても同じマクドナルドです。このチェーンレストランには順守すべき基準が存在します。

製造業においても同様に基準が設けられ、多国籍企業はこれを守らなければなりません。

結果、国を問わず常に一定水準の品質や基準が保証され、消費者の信頼や支持を得ることにつながるのです。

逆に言えば、多国籍企業が提供する製品やサービスは基本的な最低基準を満たしているため、購入または利用する際にリスクを限定することが出来るのです。

多国籍企業のデメリット

デメリット① 市場の独占につながる

必要なコストが低くなり、価格で競争優位に立ちやすい多国籍企業は、多くの市場で圧倒的な支配力を持ち、場合によっては独占に近い状態を作りあげてしまいます。

すると、地元の中小企業が成長し成功するのが困難になると同時に、消費者の選択肢を狭めてしまうことになりかねません。

価格優位な大型スーパーが昔ながらの商店街に入ってくると、その他の商店の経営が難しくなり潰れ、消費者も商品の選択肢が狭くなるのが良い例です。

デメリット② 低いコストにも関わらず法外な利益を得ようとする

多国籍企業は巨額の利益を得ることができますが、多くの多国籍企業はそれを現地社会へ分配しようとはしません。

例えば、低賃金の中国に製造工場を持つ企業は、巨額の臨時収益がある時でさえ、労働者の給料を増やすようなことはしないのです。

デメリット③ 労働力の搾取

多国籍企業は様々な理由から海外へ行って市場開拓をしますが、発展途上国での安い労働力というのが最大の理由になっていることが多々あります。

多くの発展途上国の人々は、どんな仕事でも就きたがり、どんなに安い賃金でも働こうとします。

結果、このような労働者に対して、ひどい環境下でありながら、安い賃金で長時間労働を強いているケースが珍しくありません。

また、その市場で大きな影響力を持った多国籍企業の中には、最低価格を提示する業者を優先するあまり価格の下落圧力をかけ、現地のサプライヤーを苦しめてしまう場合もあります。

デメリット④ ある種の覇権となってしまい新興勢力が生まれにくい

先進国または発展途上国に関わらず、巨大な多国籍企業の多くは自然とその業界を独占しています。

結果、競争は不可能でないにしても非常に困難になってしまうため、同じ土俵で戦おうとする新しい企業が生まれにくくなってしまい、最悪の場合、その分野でのイノベーションが停滞してしまうことにもなりかねません。

例えば、検索エンジンの分野で巨大なGoogleに対抗して、別な検索エンジンを作って発展させるのはリスクが非常に高いため、多くの起業家は検索エンジンという分野は避けるのではないでしょうか?

さらに、政治家や権力者は献金を受け取ることで、これら多国籍企業にとって有利に働く規定を定めるようになるなど、多国籍企業は間接的に規定を定める側となり、それ以外の人々や企業にとって不利な状況が生まれてしまうことがあります。

デメリット⑤ 環境へのダメージ

多国籍企業によっては利益という名の下で、環境汚染につながる資源や再生不可能な資源の利用に広く関わり、環境に対する脅威を引き起こしています。

また、製造業においては巨大な製造設備を必要としますが、これが環境に被害を与える排気ガスや廃棄物を生み出すことになります。

環境への配慮が薄い多国籍企業が、環境面での基準が低い国へ進出すると、大きな環境破壊を引き起こす可能性があるのです。

多国籍企業の税逃れ問題

多国籍企業のメリットとデメリットを見てきましたが、最後に多国籍企業の税逃れ問題について触れておきます。

多国籍企業は、複数の国で事業展開をしてやり取り出来る立場にいるため、法人税を抑える税逃れ(合法的な節税対策)を行うケースがほとんど。

税を抑えることで最終的な利益を高め、少しでも効率的に事業活動出来るようにするため、これは、企業側にしてみれば当たり前の視点です。

一方、国としては本来見込んでいたはずの税収が減ってしまいます。

結果、税金を払ってもらうため、政府が多国籍企業に忖度して便宜を図ったり、政府の力が弱まったり、国民の税制に対する不信感が高まるなどのマイナス面が出てきてしまいます。

そのため、経済協力開発機構(OECD)も問題視しており、多国籍企業に対する新しい課税の仕組みが検討されています。

多国籍企業は基本的に莫大な利益を生み出して体力も十分にあるわけなので、少しでもその利益を社会に還元出来るような仕組みが作られていくべきではないでしょうか。

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多国籍企業とは?メリットとデメリットとは?世界企業について考えるのまとめ

多国籍企業は多くのメリットをもたらすのも事実ですが、同時にいくつかのデメリットも引き起こしていることは否定出来ません。

今回触れたメリットやデメリットを見て、自分ならどう考えますか?

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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