毒蝶”オオカバマダラ”の生態【幼虫から成虫そして大移動】

毒蝶として知られるオオカバマダラについて見ていきましょう。幼虫から成虫までの一生や、渡り鳥のようだと表現んされる大移動まで、興味深いオオカバマダラの生態を紹介していきます。

世界にいる数多くの蝶はそれぞれ、美しい特徴や外見を持ちますが、オオカバマダラという名前の蝶もまた、オレンジ色と黒色が特徴のとても鮮やかで美しい蝶です。

しかし、このオオカバマダラは、他の美しい蝶とは違う特徴を持ち合わせています。

その違いとは「毒」。

オオカバマダラは蝶の中でも珍しい毒を持った蝶なのです。

この記事では、そのオオカバマダラについて詳しく見ていこうと思います。

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毒蝶「オオカバマダラ」とは?

オオカバマダラは、チョウ目・タテハチョウ科・マダラチョウ亜科に分類されるチョウの一種で、北アメリカ大陸のカナダ南部から南アメリカ大陸の北部にかけて主に生息し、また、他の地域、例えば太平洋諸島やカナリア諸島にも分布する蝶。

毎年冬になると、メキシコやカリフォルニアまで、数百万のにも及ぶ群れを作って大規模な移動を行うため、特に北アメリカでは渡り鳥のような蝶としても有名です。

他の昆虫と同じく、脚が6本、触角が1対で、体は3つの部分に分かれており、体の3つの部分は、胸、腹、頭。

オオカバマダラの6本の脚と4枚の翅は、胸の部分につき、胸の部分には筋肉があるため、これによって翅や脚を動かすことが出来ます。

また、蝶の前翅(まえばね)の長さである「肢翅長(ぜんしちょう)」は約5cmで、両翅を広げた時の大きさまたは長さである「開張(開長)」は8.9〜10.2cmと、やや大きめな体を持ち、見た目にも分かりやすい、鮮やかなオレンジ色、黒、白から成る鮮やかな見た目が特徴で、飛んでいても飛んでいなくても簡単に見つけることが出来ます。

そのため、オオカバマダラは捕食者からも容易に見つかり、狙われてしまいそうですが、逆に、この体色のおかげでオオカバマダラは、他の蝶と区別され、捕食されずに済んでいます。

というのも、見た目が美しいだけではなく、オオカバマダラは極めて有毒な毒蝶であり、それゆえ、捕食者はオオカバマダラの捕食を避けるからです。

オオカバマダラを捕食すると不快な味がするため、捕食者はオオカバマダラに近づかず、その鮮やかな体色はまた、この蝶が「毒蝶」であることを知らせる警告になっているとされています。

ちなみに、オオカバマダラは英語で「Monarch Butterfly(君主の蝶)」と呼ばれますが、名前にある「monarch(君主)」とは、17世紀後半から18世紀初頭までイングランド王だったウィリアム3世に由来します。

南フランスのオランジュに領地を有したウィリアム3世は、「Prince of Orange(オレンジの王子)」という称号を持っていたため、オオカバマダラの代名詞であるオレンジ色と関連づけられたのが理由でした。

オオカバマダラの一生

卵時代

オオカバマダラの一生は、おおよそ1.2×0.9mmの大きさの卵から始まります。

オオカバマダラの卵はトウワタと呼ばれる、白い乳液を含んだ有毒な多年草の葉の裏側などに産み付けられるのが一般的で、産み付けられた後、およそ3〜8日で孵化し、小さないも虫状の幼虫が出てきます。

幼虫時代

卵から孵化した幼虫が最初に食べるのは自分の卵の殻で、その後にはトウワタと呼ばれるキョウチクトウ科の多年草の葉を食べ続けます。

この段階で、オオカバマダラの幼虫は、トウワタに含まれる有毒物質「アルカロイド」を体内に取り込みことで有毒になっていきます(※幼虫から成虫に成長すると、この毒成分が翅や腹を中心に、体の様々な部位へ移動する)。

つまり、毒蝶と言っても、オオカバマダラは自ら毒を生成出来るわけではなく、餌によって毒を溜め込んだ結果、毒を持つ蝶となるのです。

また、オオカバマダラの幼虫は4回の脱皮を繰り返し成長していきますが、脱皮のたびに古い皮を食べることでも知られます。

そして、幼虫の体長がおよそ5cmに達すると、食べるのを止め、蛹(さなぎ)になる場所を決めます。

蛹時代

オオカバマダラの幼虫は、その腹部先端を小さな突起と尾脚の生糸で枝にくっつけて蛹になります。

そして、新たに露出した皮が乾いて固くなると、オオカバマダラの蛹はまるでヒスイのような淡緑色を帯びます。

その後、蛹はおよそ10~12日で透明になり、最終的には湿り気のある成虫となり蝶の姿をしたオオカバマダラが現れるのです。

成虫時代

美しくも鮮やかなオレンジ色と黒色が美しい翅を持った成虫が現れた時、また体全体は湿っていて、また翅もしっかりと伸びきっていません。

少し時間をかけてオオカバマダラは、腹部の体液を翅の脈に送り出して翅を伸ばしていき、最終的には良く知られる蝶の形をした完全な成虫となります。

成虫になった後、オオカバマダラはそれ以上成長せず、また、吻(ふん)と呼ばれるいわゆる口にあたる突出部分から、液体を吸うだけになります。

オオカバマダラに関する4つのポイント

オオカバマダラの毒性について

毒蝶であるオオカバマダラを捕食した動物は、体調が悪くなり嘔吐するとされます。

一般的に死に至ることはありませんが有害であるため、結果的にこの蝶を捕食した動物は、その鮮やかな配色が特徴的な姿を記憶して、それ以降は避けるようになるのです。

また、体内のカルデノライド・アグリコンによって、オオカバマダラは不快な味がすると言います。

オオカバマダラの大移動

8月から10月までの間、オオカバマダラのなかには、3000km以上もの距離を大移動する群れが現れます。

こうしたオオカバマダラの大群は冬越しするため、アメリカやカナダから、カリフォルニア南部の沿岸地域やメキシコ中央部のトランスメキシコ火山帯にまで飛んでいきます。

また、東部の個体群は毎年、南と北の双方から大移動を行い、ロッキー山脈東部の個体群は、メキシコのオオカバマダラ生物圏保護区に大移動します。

そしてこの移動中、渡りのルートに沿ってオオカバマダラのメスは卵を産み付けていきます。

ちなみに3000km以上もの大移動を行うオオカバマダラの集団は、南下については1世代で行うものの、北上に関しては3世代から4世代にまたがって行います。

オオカバマダラの生息地

主に北アメリカ大陸のカナダ南部から南アメリカ大陸の北部にかけて生息し、地中海沿岸の国々、オーストラリア、カナリア諸島、インドネシア、ハワイ、その他、太平洋の島国の多くに見られるオオカバマダラは、世界中の熱帯および亜熱帯地域に生息しています。

そして、こういった地域では、畑、牧草地、整備された道端、沼地など、トウワタをはじめとしたガガイモ科またはキョウチクトウ科の植物が生えている場所であれば基本的にはどこにでも生息しています。

オオカバマダラの寿命

成虫まで成長するのに約1か月を要するオオカバマダラの寿命は様々。

蛹から脱皮した季節に依ることもあれば、オオカバマダラの大移動の群れに依ることもあるからです。

以下はオオカバマダラの寿命を推定する上での参考になるでしょう。

  • 初夏に成虫となった個体
    • 寿命が短く2~5週間しか生きられない
  • 夏の終わりに成虫となった個体
    • 冬越するため数ヶ月生きる
  • 夏の終わりに成虫となって南へ大移動する個体
    • およそ8〜9ヶ月と、寿命ははるかに長くなる

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毒蝶”オオカバマダラ”の生態【幼虫から成虫そして大移動】のまとめ

毒を持つ毒蝶「オオカバマダラ」について詳しくみてきました。

オオカバマダラは、アメリカではとても大切にされている蝶だと言って良いでしょう。

というのもこの蝶は、アイダホ州、イリノイ州、アラバマ州、テキサス州、ウェストバージニア州、ミネソタ州、バーモント州において、州の昆虫として指定されているからです。

また、実現しなかったものの、州を超えてアメリカ合衆国の昆虫としてノミネートされたこともありました。

このようにオオカバマダラは、毒蝶であるものの、その生態や美しさからとても大切にされている貴重な蝶でもあるのです。

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