中国の国旗について詳しく紹介していきます。その色やデザインが象徴する意味から、現在の国旗が制定されるまでの歴史を確認していきましょう。
広大な国土と同時に世界最大規模の人口を抱える中国は、長い歴史を持つことでも知られ、あらゆる点において大国と呼べる国です。
そんな現在の中国が持つ国旗は、一見すると非常にシンプル。
しかし、中国国旗が持つデザインや色を掘り下げていくと、そこに含まれる興味深い意味や歴史を見つけることが出来ます。
この記事では、中国の国旗についてデザインや色、そして意味や歴史までを見ていこうと思います。
中国(中華人民共和国)の国旗とは?
中国、正式名称「中華人民共和国」が用いている国旗は、赤地で、そこに5つの金色の星(左に大きな星と右に小さな4つの星)が描かれたもの。
五星紅旗(ごせいこうき)とも呼ばれ、現在は中国本土に加えて、中華人民共和国の特別行政区であるマカオと香港でも特別行政区独自の旗に加えて使用されています。
この中国国旗が初めて掲げられたのは1949年10月1日、中華人民共和国の建国が宣言された時で、最初の旗は中国人民解放軍によって北京の天安門広場に掲げられました。
ちなみに、中国の国旗のデザインが最初に発表されたのは1949年9月29日、中国人民政治協商会議の常任幹部会の指示によるもので、また、中国国家標準化管理委員会が文書「GB 12982-2004:国旗」を公にしたことで、正式な国旗として定められました。
さらに、中国における国旗に関する法律は、製造する際の5つのサイズを定めており、加えて中国国内の各省、自治体、自治区にはそれぞれ、業者に対する国旗製造の任免権が与えられています。
他にも中国では、軍部、各組織、特別行政区で使用する旗があったり、
- 国旗の外観
- いつどこで旗を掲げるか
- どのように旗を掲げるべきか
- 旗をどのように折りたたむか
などについての、国旗に関する細かいガイドラインが定められていたりします。
中国国旗の色やデザインが持つ意味
中国の国旗は全体が赤くて、左上に黄色で描かれた1つの大きな星と4つの小さな星が描かれているわけですが、このデザインや色に関する主な解釈は以下の通り。
まず色については、
- 赤色 → 共産主義革命
- 黄色 → 光明
といった感じです。
ちなみに、中国において赤色は、人民を表す伝統的な色であり、他にもお祝い事などの行事で採用されてきた縁起の良い色で、対する黄色は高貴な色として大切にされてきました(例えば、清朝は皇帝の色として黄色を用いていた)。
一方でデザイン、中国の国旗に描かれた5つの星が意味するものは次のようになっています。
- 左の大きな星 → 中国共産党
- 右の4つの小さな星 → 4つの階級
- 労働者
- 農民
- 小資産家・愛国的資本家
- 知識人
つまり、旗に描かれている5つの星は、中国共産党の支配の下に団結する中華人民共和国の理想像を象徴しているのです。
中国国旗が持つ意味に関して異なる解釈も存在する
ただし、中国国旗が持つ意味に関しては、主な解釈以外にも異なる解釈がいくつか存在します。
革命だけでなく戦争によって流された血や人種を表現しているという解釈
まず一つ目が、色に関する解釈です。
通常であれば赤は共産主義革命に紐づくものとして解釈されますが、非公式な解釈ではその範囲が広がり、
共産主義革命だけでなく、日本による侵略やその他の内乱によって命を落とした者たちの血も表している
となるのです。
また、黄色に関しては中国の人民が黄色人種であることを示しているという解釈が存在します。
5つの星は中華人民共和国に存在する5つの民族を表現しているという解釈
そして、デザインとして描かれた星に関しても主な解釈とは異なる解釈があり、それによると中国に存在する五族が描かれているとされます。
(中華民国で1912年から1928年まで使用されていた国旗)
この五族とは、
- 漢民族
- ウイグル族
- 回族
- チワン族
- 満州族
という組み合わせや、
- 漢民族
- 満州族
- モンゴル族
- 回族
- チベット族
の中国国内における5大民族の組み合わせなどがあります。
ちなみに、共産党支配下の中華人民共和国が1949年10月1日に誕生する以前には一時期、中国国民党による中華民国が中国大陸を支配していましたが、その体制下で1912年から1928年までは、5大民族を象徴する五色旗が使われていました。
この点を考慮すると、この五色旗と混合され、現在の中国国旗に描かれた5つの星は5つの民族を表しているという解釈が広がったのだと考えられます。
中国国旗の歴史
現在の中国国旗以前の旗
中国の旗で最も古いものとして確認出来るのは、1644年、清の時代のものまで遡ります。
「黃龍旗」または「イエロードラゴンフラッグ」と呼ばれるこの旗は、清朝が滅亡するまで使われていました。
20世紀初頭になり、1911年から1912にかけて武昌起義(ぶしょうきぎ:武昌で起きた兵士たちの反乱で辛亥革命の幕開けとなる事件)や、辛亥革命(しんがいかくめい:清(中国)で発生した共和革命でこれによって清は崩壊した)が続いた時期には、中国各地で様々な旗が掲げられました。
青地の旗や白地の旗を掲げた地域もあれば、武漢のように18個の星があしらわれた旗を掲げるところもあり、北部では赤、青、白、黄、黒色の五色の旗が使われていました。
そして、辛亥革命後に中華民国が樹立した際には「五色旗」が国旗として制定されたのです。
またこの時期、18個の星があしらわれた旗が軍部によって使用され、別の黄色の旗が海軍の印として使われていました。
現在の中国国旗の歴史
中華民国統治下の中国において1921年に結党された中国共産党は、国民党政府を中国大陸から台湾島へ追い出していった結果、1949年初め頃には中国大陸における実行支配地域を拡大し、1949年10月1日には共産主義の中華人民共和国を樹立。
ここで採用されたのが「五星紅旗」でした。
この五星紅旗を新しい中国の国旗として制定するにあたり、新政府の下での団結力を示す新しい国旗デザインの公募を共産党が中華人民共和国の誕生直前に行い、ある男性が提出した案が注目され、現在私たちがよく知るデザインとして採用されたのです。
中国国旗の公募が始まった
1949年夏のこと、新国家の実現を目前にした中国共産党は、主要新聞紙上で新国旗デザインの公募を行いました。
新国家には新しいシンボルが必要であったと同時に、中華人民共和国の「人民共和国」という名前からも分かる通り、当時の政府は国旗の考案者として「人民自身をおいて他に適任な者はいない」と考えたためです。
この時、デザインには、
- 中国
- 力
- 長方形
- 赤色
の4つが含まれることが求められました。
応募は殺到し3000近く寄せられ、多くのデザイン案が没になってく中で、いくつかのデザインが最終候補まで残りました。
毛沢東が気に入ったデザイン
特に中華人民共和国の建国者で、同国の初代最高指導者として知られる毛沢東は、
- 赤地の左上部角に黄色い大きな星
- 下に太い黄色い横線
をあしらったデザインを気に入り、これは、その後に実際に採用されたものとさほど違いがないものでした。
このデザインにおいて、星は共産党を、横線は黄河を表していました。
しかし、数ヶ月後には中国共産党の初代国家主席となる毛沢東の一押しがあったにも関わらず、このデザインが日の目を見ることはなかったのです。
あしらわれた横線が国家の分裂を想起させるという点が懸念として生じたからです。
盼星星盼月亮にヒントを得た曾聯松
代わりに採用されることになったのは、上海の近く温州市出身の労働者階級の市民「曾聯松(そうれんしょう)」の案でした。
曾は新聞で共産党の公募を目にし、愛国心から応募することにしたと言われます。
そして、新政権への熱い思いをどう図案として表現するか、夜を徹して思案していた時に夜空を見上げると、
- 盼星星盼月亮
という慣用句を思い起こします。
これは、「星を待ち望み、月を待ち望む」という意味で、日本語で分かりやすく表現すると、
長い間待ちに待つこと(首を長くして待ち望むこを)
を意味します。
この慣用句からヒントを得た曾は、星を旗の中心的シンボルにすることに決めたのです。
五星紅旗がデザインされる
曾は、共産党を表す大きな黄色の星を左の角にあしらい、その右側に小さい黄色の4つの星を描き、かつて毛沢東が語った中国人民の「4つの階級」である、労働者、農民、小資産家・愛国的資本家、知識人を表しました。
そして、この4つの階級を構成する人民達が共産党の指導の下でまとまっている様子を旗の中に表現したのです。
その結果、1949年9月27日に満場一致で採用が決定されました。
ちなみに、曾聯松は初め、大きな星の中心に槌と鎌を描きましたが、これは当時のソビエト連邦の国旗と類似しすぎるとして選考側によって拒否されています。
中華人民共和国の国旗がついにお披露目された
五星紅旗は、中華人民共和国が正式に樹立した1949年10月1日に、北京の天安門広場にてお披露目されました。
そして、曾聯松には賞金として500万人民元が付与されたと言います。
現在この旗は、中国本土全域で用いられており、旗の尊厳については国家刑法にも明記されるなど、中国を象徴する重要なものとなっています。
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中国の国旗|意味・色・歴史・デザインを解説のまとめ
中国の国旗について、意味や色、そして歴史と一緒にデザインの変化などを見てきました。
五星紅旗と呼ばれる中国の国旗は非常にシンプルなデザインですが、そこに含まれる意味や背景にある歴史はとても深いと言えるでしょう。