世界一大きい牛(世界最大の牛)を11種類集めて紹介していきます。バザデーズ種からキアニーナ種、そして度々大きな個体を輩出してきたホルスタイン種について見ていきましょう。
食肉や牛乳の生産量を考えると、牛の大きさは極めて重要な要素です。
と言うのも、大型であればあるほど、一頭の牛から獲得出来る牛乳と肉の量は多くなるからです。
また、大型の牛種は厳しい気象条件に適応する術を心得ており、環境要因に対して頑強である点も、優れていると言えます。
もちろん牛の大型種の主なデメリットとして、餌や水が大量に必要となることや、衛生的な牛舎や投薬の維持が大変である点を挙げることも出来ますが、それでも大型の牛には魅力的なメリットがあるのです。
この記事では、そんな大型の牛の中でも世界一大きい牛または世界最大の牛として良く名前があがる世界最大級(体重基準)の牛10種類と、度々世界最大級の個体を輩出してきた品種1つの合計11の牛種を紹介していきます。
世界一大きい牛の種類
バザデーズ牛
バザデーズ牛は、もともとフランスのボルドー地方のブドウ畑で役牛として使用されていました。
体重1,100kgに達することがある大型の牛で、徐々に単なる頑強な役牛だけでなく、評判の良い食肉用の肉牛として重宝されるようになっていきました。
現在では食肉用に使用される、最も一般的なフランス牛の一種となっています。
リムーザン牛
筋肉質に優れたフランスのリムーザン牛は、体重1,100kg以上に達することがある世界最大級の牛の一種。
フランスのリムーザン地方、マルシュ地方といった生育地の環境に適応した結果、リムーザン牛は稀に見る頑強な牛で健康状態もよく適応能力も高い品種となりました。
その食肉が高品質なだけでなく、役牛としても使用されています。
パルテネーズ牛
パルテネーズ牛は世界一大きい牛のトップランクに入る牛で、体高約1.45m、体重1,150kgにも達します。
西部フランスのドゥー=セーブル地方に起源があり、フランス最古の歴史を誇る牛の品種の一つで、パルテネーズ牛から生産されるミルクは高品質なことから、バターなど数種類の乳製品に使用されている他、パルテネーズ牛自体も役牛として使用されることがあります。
さらに、パルテネーズ牛は、その肉質がコレステロール低値で高品質なため、肉牛としても重宝されています。
モンベリアール牛
モンベリアール牛は、フランスのモンベリアール地方に起源があり、主に酪農目的で飼養されている牛の品種。
モンベリアール種の牛一頭から搾乳されるミルクの生産高は、年間7,400リットル以上にもなると言われ、重宝されています。
モンベリアール種は体高約1.54m、体重1,200kg近くに達する大型の牛で、生産されるミルクには、bカゼインが豊富に含まれ、それがミルクやチーズの生産量増加に大きく貢献。また、原産地名称保護の品質認証チーズ(コンテ、ルブロンション、モンドールなど)にも使用されています。
ちなみに、赤毛の斑点がこのモンベリアール牛の外見的な特徴として良く挙げられます。
ジャーマン・アンガス牛
世界一大きい牛のトップランクに入る牛の品種の一つとして、このドイツを原産とする品種を忘れてはなりません。
ジャーマン・アンガス牛は、体高1.5m、体重1,200kg近くに達することがある大きな牛で、世界一大きい牛ではないものの、その黒々と光る体毛により、パッとみは他のどの大きな牛よりも高い威圧感を持つ牛種です。
ジャーマン・アンガス種は1950年代に、アバディーン・アンガス種とドイツ原産の他の品種とを交配させて作られた品種で、その主な目的は、気性が穏やかで角がなく、脂肪分の少ない食肉を生産できる大型種を作るためでした。
ジャーマン・アンガス種はまた、植生管理や乳飲み仔牛のための牛として使用されています。
グラン牛
もともとグラン種は、ドイツのラインラント=プファルツ地方で異なる多くの目的で飼養されていましたが、今日では主に食肉用とされています。
体高約1.45m、体重1,200kgに達することがある大きな牛です。
グラン種の個体数はかつてほぼ全滅に近い状態となってしまいました。
しかし、1985年にグラン種の品種保存のための協会が設立され、その努力の結果、徐々に個体数が戻り始めました。
それでも今なお、あまり知られていない牛の品種となっており、残念なことに頭数も少しずつ減少しています。
シャロレー牛
シャロレー牛はフランス中部のヌヴェール近辺が原産地とされる大型の牛で、世界全体で見ても最古かつ最も一般的な牛の品種の一つ。
体重1,200kgに達することがあり、フランス国内だけでも200万頭近くの純粋なシャロレー種が飼養されており、この数はフランス国内で食肉用に飼養される肉牛の半数で、ヨーロッパの肉牛の4分の1を占める規模です。
シャロレー牛の食肉生産は、品質、生産量、労働力などの点で優れており、これがフランスにおいて広まった大きな理由となっています。
メーヌ・アンジュー牛
フランスのアンジュー地方に起源を持つのがメーヌ・アンジュー牛。
体重はおよそ1,400kgに達することもある乳肉兼用の牛です。
また、メーヌ・アンジュー種は筋肉がつきやすく、そして脂肪がつきやすいことでも有名です。
もともとフランスの畜産農家では、小さな区画の土地があればメーヌ・アンジュー種を飼養していました。
これは、メーヌ・アンジュー種は脂肪がつきやすいため、高い利益を得やすいからというのが大きな理由です。
メーヌ・アンジュー種はかなり気性が気難しいこともありますが、母性本能が強く、ミルクの品質も高いため、仔牛の栄養状態は常に優れています。
サウスデボン牛
「ジェントル・ジャイアント」の別名でも知られるサウスデボン牛は、イギリスの原産種で、イギリスの在来種のなかでは最も大型の品種。
平均体重は1,600kgに達しますが、記録によればサウスデボン種のこれまでの最大体重は2,000kgにも達したとされます。
12歳ごろまで搾乳することが出来るのが特徴で、乳肉兼用の牛として現地では重宝されてきました。
また、牛乳の生産能力が高いだけでなく母性本能が発達しているため、仔牛の生存率も高くなっており、サウスデボン種は15歳頃まで生殖能力を維持する点も注目に値します。
キアニーナ牛
キアニーナ種は名実ともに世界一大きい牛または世界最大の牛の種類。
イタリアのトスカーナ地方を原産とする種で、体高2m弱、体重はなんと1,700kg以上にも達することがあります。
キアニーナ種は、体高、体重ともに世界最大であり、また世界一古い歴史をもつ品種の一つとしても知られます。
主に食肉用ですが、過去には役用としても一般的に使用されていました。
キアニーナ種は温暖な気候に馴染みやすく、その厚い皮には寄生虫に対する抵抗力もあります。
ちなみに、2010年にローマで開かれた品評会に登場したキアニーナ牛の「ベリーノ」の体高は、2mを超える超背の高い牛として注目を浴びました。
(おまけ)世界一大きい牛の個体として度々名前が挙がる牛の種類
種類全体の平均サイズとしては決して世界最大の牛の品種とはならないものの、比較的大きな牛の品種ホルスタインは、これまで、「体高」の点で世界最大級の個体を度々世の中に送り出してきました。
例えば、2015年に死んでしまった「ブロッサム」というホルスタイン牛の個体は190cmの体高を誇っており、また、カリフォルニア州ファーンデールで飼育されている「ダニエル」という個体は、193cmの体高と1043kgの体重を誇ります。
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