エイブラハム・リンカーンの演説(スピーチ)として特に有名な名演説、ゲティスバーグ演説について、和訳や原文を通して見ていきましょう。
アメリカ合衆国の16代大統領であるエイブラハム・リンカーンと言えば、南北戦争中に奴隷解放宣言をして、アフリカ系アメリカ人を奴隷制から解放した人物として非常に有名。
さらにリンカーンは、その生涯の中で様々な演説(スピーチ)を行っており、なかでも「ゲティスバーグ演説(gettysburg address)」は、彼による史上最高の名演説だと言われます。
そこで、この記事では有名なゲティスバーグ演説に関して、その簡単な概要と、さらには和訳と原文、そして動画までを紹介していこうと思います。
エイブラハム・リンカーンによる有名なゲティスバーグ演説とは?
1863年11月19日、アメリカ合衆国16代大統領エイブラハム・リンカーンが、ゲティスバーグ演説を行いました。
南北戦争史上最大の激戦の一つとなった「ゲティスバーグの戦い(1863年7月1日〜7月3日)」の戦場跡地で行われた「ゲティスバーグ演説(スピーチ)」は、史上最高の演説の一つとして知られ、エイブラハム・リンカーンが大統領として残した業績のなかでも歴史的な一場面といえる名演説でした。
(ゲティスバーグの戦い)
この演説の4ヵ月前、南北戦争に出征した北軍と南軍の兵士合わせて約4万6千人が、ペンシルベニア州ゲティスバーグにおける戦いで死傷。
これは南北戦争における事実上の決戦となった戦いであった一方、北側のアメリカ合衆国と南側の連合国に、大きな人的被害の爪痕を残してしまったのです。
そして、この状況を見かねた当時のアメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンは、1863年11月19日、国立戦没者墓地の奉献式にて、273の英単語から成るゲティスバーグ演説を実施。
アメリカ独立宣言の基本理念および北軍の理想、つまり「人民の、人民による、人民のための政治」を呼びかけたのです。
リンカーンによるゲティスバーグ演説の和訳と原文
奉献式にてリンカーン大統領が実際に述べた正確な文言を、一字一句間違いがないか確認することはできません。
また、その演説の内容に関しては、エイブラハム・リンカーンの自筆による、5通りのコピーが存在することが知られています(参照:Abraham Lincoln Online)。
そのうち、ワシントンD.C.にあるリンカーン記念堂の内壁面に刻まれているものを始めとして、最も多く引用されるのが、アレクサンダー・ブリス大佐にちなんで名づけられたBliss Copyと呼ばれるもの。
そこでここでは、Bliss Copyに基づいたゲティスバーグ演説の和訳と原文を紹介しておきます。
ゲティスバーグ演説の和訳
87年前、我々の父祖はこのアメリカ大陸に、自由の精神にはぐくまれ(注)、すべての人は平等につくられているという信条に献げられた新しい国家を誕生させました。
今、我々は、まさに一大内戦の最中にあり、この国家が、あるいはこのような自由の精神にはぐくまれ、すべての人は平等につくられているという信条に献げられたあらゆる国家が、長きにわたり存続し得るかどうか、試されています。
我々は、この内戦の一大激戦地に集いました。
この地で国家のために命を捧げた者たちの永眠の地として、この戦場の一部を国立戦没者墓地とする奉献式を行うために参りました。
我々がそうするのは全くもって、適切で正当なことであります。
しかし、より大きな意味では、我々はこの地を捧げることも、神聖なものとすることも、崇敬することもできません。
生き残った者も死せる者も、ここで戦った勇敢な人々が、足すことも引くこともできない、我々の微力をはるかに超える高い次元で、すでにこの地を神聖なものとしてきたからです。
ここで我々が発した言葉は、世界がさして気に留めることもなく、すぐに忘れ去られてしまうことでしょう。
しかし、勇敢な者たちが、この地で成したことは必ずや記憶に残ることでしょう。
この地で戦った者たちが、これまで気高くも進展させてきた業績の残りを受け継ぎ、それに身を捧げるべきは、むしろ、我々、生ある者たちなのです。
今ここに集い、我々の前に残された偉大なる事業に身を捧げるのは、他ならぬ我々なのです。
それは、名誉の死を遂げた者たちが死力を尽くし献身した大義について、我々がその後を継ぎ、さらなる献身をすることであり、亡くなった者たちの死を無駄にしないよう、ここに固く決意することであり、この国家が神の名の下に、新たな自由をもって生まれ変わるように努めることであり、そして、人民の、人民による、人民のための政治がこの地球から消え去ることがないよう、我々が全力を尽くすことなのであります。
エイブラハム・リンカーン
1863年11月19日
ゲティスバーグ演説の原文
Four score and seven years ago our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal.
Now we are engaged in a great civil war, testing whether that nation, or any nation so conceived and so dedicated, can long endure. We are met on a great battle-field of that war. We have come to dedicate a portion of that field, as a final resting place for those who here gave their lives that that nation might live. It is altogether fitting and proper that we should do this.
But, in a larger sense, we can not dedicate — we can not consecrate — we can not hallow — this ground. The brave men, living and dead, who struggled here, have consecrated it, far above our poor power to add or detract. The world will little note, nor long remember what we say here, but it can never forget what they did here. It is for us the living, rather, to be dedicated here to the unfinished work which they who fought here have thus far so nobly advanced. It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us — that from these honored dead we take increased devotion to that cause for which they gave the last full measure of devotion — that we here highly resolve that these dead shall not have died in vain — that this nation, under God, shall have a new birth of freedom — and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.
Abraham Lincoln
November 19, 1863
※ゲティスバーグ演説の和訳に関する注釈
ゲティスバーグ演説については数々の全文和訳が存在し、特に、原文に含まれる下記部分の「conceive」の解釈については諸説あります。
Four score and seven years ago our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal.
この単語が本来持つ
- 考えを抱くという意味
- (聖書などで)受胎するという意味
- またはその両方の意味である
という主に3通りの解釈が存在し、専門家のなかでも意見が分かれているのです。
そして一般的には、①の「考えを抱く」という解釈に基づいた「自由という理念によって打ち建てられた」という訳文が主流とされいるようです。
しかし、当サイトでは①の意味だけでなく、「国家という命が芽生え、(神に)捧げられて、我々の祖先がこの大陸に誕生させた」という宗教的な②の「受胎する」という意味合いもあるように思いましたので、今回の和訳では「打ち建てる」という訳語を充てていません。
ゲティスバーグ演説の動画
ゲティスバーグ演説を後に別な人間が音声にした(別な人間が喋っている)動画もあるので、こちらへ紹介しておきます。
興味があれば閲覧してみてください。
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リンカーンの演説/スピーチ|ゲティスバーグ演説は史上最高の名演説のまとめ
エイブラハム・リンカーンの演説(スピーチ)の中でも特に有名で、名演説とされるゲティスバーグ演説を紹介しました。
この名演説は、その後も変わることのない力を持ち続け、アメリカの歴史や社会へ影響を与えてきました。
例えば、アメリカの学校教育で児童生徒が長年、この歴史的演説の台詞を暗唱するように指導されていることからもそれが分かります。
さらに、リンカーンに続く後世の大統領もまた、アメリカ合衆国を治めるにあたって、このゲティスバーグ演説を指針としてきたと言われているほどです。