ベトナムのバイク事情|多い理由から事故を避ける交通ルールまで

ベトナムのバイク事情について見ていきます。非常に台数が多い理由から、人気となっていった歴史、さらには事故を避ける上で知っておきたいいくつかの交通ルールまでを紹介していきます。

ベトナム名物と言えば、米粉麺のフォーや、着た人を美しく見せるアオザイなど沢山ありますが、現地へ行った人の間で名物として挙げられるのがバイク。

「ベトナムと言えばバイク」と言われるほど、ベトナムの都市、例えばサイゴンやハノイ、他にもホーチミンなどでは、ありえないほどの数のバイクが道路を走っている光景を目にします。

人を載せて路地をかいくぐるだけでなく、冷蔵庫を始めとしてあらゆる大きさの物を運ぶバイクやスクーターを至るところで見かけ、そこに乗っている人の数も一人ではなくて複数人なんてこともしょっちゅうです。

このような状況のため、ベトナムの都市でバイクは当たり前の光景になっており、エンジン音が都会の喧騒とシンフォニーを生み出しているとさえ言えるほどなんです。

この記事では、ベトナムのバイク事情からなぜバイクがそこまで人気なのか、さらに、ベトナムにおけるバイクの歴史から、ベトナムでバイクに乗車する際に知っておきたいルールまでを紹介していきます。

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現在のベトナムのバイク事情

およそベトナム人二人に対して一台の割合でバイクが国内を走っていると言うと、なんとなくベトナムのバイク事情が分かるかもしれません。

現在のベトナムの総人口およそ9600万人に対して、バイクの数はおよそ5000万台近いと言われ、なんとベトナムで登録されている車両のうち90〜95%は、バイクかスクーターなんです。

しかも、例えばベトナムの首都であるハノイにおける交通手段の80%以上、もしかしたら90%以上はバイクかスクーターに頼っているとされ、ベトナムの都市圏においてバイクは、数が多いだけでなくとても重要な交通手段になっているのが分かります。

一方で、現在でこそ大人気で日常の生活には欠かせないバイクですが、1995年当時のハノイでは自転車が人気で、およそ47%、つまり半数近くの交通手段を担っていました。

しかし、2008年までには自転車が交通手段として担う割合はたったの3%にまで減り、大部分のシェアはバイクまたはスクーターに奪われいました。

なぜこれほどまでにベトナムでバイクは人気なのか?

ベトナムでバイクが普及したのにはいくつかの大きな理由があります。

バイクは小回りが利く

まず第一に、バイクは小回りが利くというのは、非常に重要な理由だと言えます。

これについては特に、

  • ベトナムの路地の多くは単純に、四輪自動車が通行するには狭すぎる
  • ベトナムの大都市でひっきりなしに発生する交通渋滞において、バイクなら狭いスペースを通り抜けることが出来る(中には道をただそのまま突き進んだりする人もいる)

といった2つの点から考えると納得出来るでしょう。

駐車スペースの不足 → バイクはどこにでも駐車しやすい

駐車スペースの不足もまた、自家用車を保有する人にとっては悩みの種です。

自動車向けに確保できる駐車スペースは、ベトナムの大都市にはほとんどありません。

一方でバイクは駐車に場所を取らないため、このような状況下でもなんとか駐車スペースを見つけることが出来るのです。

経済的な問題

さらに、年間所得が全国平均で30万円にも満たない平均的なベトナム人にとって、バイクはなんとか購入可能なのに対して、自家用車は高額すぎて手が届かないという理由も、ベトナムでバイクが人気となっている大きな理由でしょう。

特に、ベトナム政府は四輪の自動車にとても高い関税をかけているため、裕福な人にしか購入することが難しいというのも、この状況に拍車をかけています。

ベトナムでバイクが人気になっていくまでの歴史

かつては静寂に包まれていた

今日のサイゴン、ハノイ、ホーチミンなどでは、バイクによる騒音やカオスのような交通事情、そして公害が問題視されていますが、実は20世紀後半のベトナムの大都市は、

静寂に包まれている街

と表現する人もいたぐらい、現在とは全く異なる様相を見せていました。

というのも、かつてベトナムの大都市における主な交通手段は自転車で、他の多くの人は徒歩で移動していたため、街頭に出ても騒音がほとんど無かったからです。

また、現在はバイクが多すぎて道路を横断するにも命がけと言えるほど大変ですが、当時の道路は時たま車が走るだけで、横断するのにもそれほど危険なことはありませんでした。

大都市圏で突然急増したバイク

しかし、バイクの急増によってベトナムの都市の静寂は突然破られることになります。

先に説明した主な理由に加えて国内経済全体の急速な成長なども加わり、ベトナムのバイク台数は1990年の50万台から、2004年末にはほぼ1400万台に急増。

2008年には、大都市圏における交通手段の80%近くがバイクまたはスクーターに置き換わりました。

このようにバイク台数が増加の一途を辿った結果、一般家庭の交通手段としてはもちろんのこと、木材から鶏肉、豚肉、TVセット、ビールの木箱まで、ありとあらゆるものを運ぶバイクの輸送便なども登場。

大都市では横断歩道や歩行者用信号もほとんどなく、通りを横断するのは危険な状況となってしまったのです。

時代遅れと見なさる自転車

ちなみに、このようにバイクが当たり前の交通手段に代わったことで、自転車に対する人々の考えも変化していきました。

今や、自転車は時代遅れなだけでなく「劣っている乗物」とさえ見なされている風潮があります。

例えば、ベトナムの大都市において自転車は、「下層階級の人の乗物」や「カッコ悪い」として、心理的に抵抗感を感じる人もいるようで、止むを得ず乗る場合も、他の人に見られないようにひっそりと停めることがあるほどです。

現在のベトナムでは日本ブランドのバイクが人気

現在、ベトナム国内で最も人気なバイクは日本ブランドのホンダとヤマハで、その両ブランドが国内の売り上げのおよそ80〜90%を占めています。

実際、ホンダのリード、WAVEアルファ、エアブレイド、ヤマハのヌーボは、ベトナムの街頭で良く見かける人気モデルです。

また、街中を走る地元住民には人気がありませんが、ホンダのウィン(Honda Win)は頑丈なことから、ベトナム北部の山岳地域を登るバイクとして選ばれることが多いバイクです。

そして、日本ブランドのスズキ、台湾ブランドのSYM、イタリアブランドのピアッジオが、残りのシェア獲得を争っている状況です。

(豆知識)かつては侮れない模倣品バイクも登場した

一方で、かつてはホンダ製やヤマハ製のオリジナルバイクに比べて、はるかに価格の安い中国製の模倣バイクがベトナム市場に大量に流入したため、ホンダは苦境に立たされたことがありました。

日本のバイクメーカーにとっては屈辱的なことに、「Hunda」、「Hongda」、「Yamaza」など、日本ブランドにそっくりのロゴがついた、しかも価格は3分の1の模倣品バイクがベトナムの街頭でみられるようになったのです。

また、ホンダ・ウィンの中国製模倣バイクが300USドル以下で手に入ることから、バックパッカーのあいだでヒット商品になったこともありました。

しかし、これらに対してホンダは極めて価格を低く抑えた商品を発売開始。

さらに、ベトナム政府がより厳しく規制を強化し始めた結果、こうした模倣バイクブランドは姿を消していきました。

ベトナムのバイクの今後

交通渋滞を緩和し、急増しているバイクによる事故を少しでも減らすため、ベトナム政府は今後、路上を走るバイク台数を減少させる方針を表明しています。

しかし、ベトナムのバイク台数が減少していくことは、まだしばらくなさそうです。

というのも、ベトナムでバイクが人気となっている主な理由をすぐに解決出来る状況まで、まだベトナムが発展しきれていないからです。

具体的には、

  • ベトナムの道路事情は相変わらず
    • 大きな車が走るには難しい路地が多くあり、これを解決する交通手段としては自転車かバイクぐらいしかない
  • 駐車スペースの整備には時間が掛かる
    • 車専用の駐車スペースや立体駐車場の整備が間に合っていない
  • 平均所得がすぐに倍々になることはない
    • 平均所得が先進国レベルになるには、今後毎年10%ずつの経済成長を達成したとしてもまだ数十年は掛かり、それまでは安価なバイクが購入され続けると考えられる

といった状況です。

しかも、2013年に発表されたベトナム商工省の予想では、2020年までに路上のバイク台数が3600万台に達するとするとされましたが、現在、ベトナム国内には5000万台近くのバイクが走っているとされ、予想の数字を大幅に上回っています。

加えて、毎年550万台近いバイクが国内の生産拠点で生産されている状況です。

このようなことから、政府の意に反して、今後もまだしばらくは、ベトナムのバイク台数は増えていく、または少なくとも維持されていくと言えるのではないでしょうか。

ベトナムでバイクを運転する際に注意しておきたいこと

最後に、バイク渋滞やバイク事故が酷いベトナムの大都市でバイクを乗ってみたいという場合に、運転するまたは乗客として乗るに関わらず知っておきたい、幾つかの基本的なルールを紹介しておきます。

ルール① ヘルメットの着用

必ずヘルメットを着用しましょう。これはベトナムでバイクに乗る全ての人の義務です。

ヘルメットを着用しないで運転をすると、警察に止められてしまいます。

ルール② ルールが無いのに慣れる

ベトナムでの運転にはルールが無いと言って良いぐらい。

一方通行の道路を猛スピードで逆走したり、信号機を無視したりするのは日常茶飯事。

なので、ベトナムでバイクを運転したいなら、今までの道路交通法の知識は一旦忘れて、このことに慣れるのが大切です。

また、乗客としてバイクに乗車する場合も最初は怖いかもしれませんが、現地の運転手を信じて乗車を楽しむことが大切です!

ルール③ クラクションを怖がらない

ベトナムの道路ではクラクションが良く鳴らされます。

これは、「自分はここにいるから気をつけてね」という合図でもクラクションが良く使われるというのが理由の一つです。

そのため、クラクションに怖がりすぎないようにすることも大切です。

ルール④ 安全第一

安全第一を心がけましょう。

ベトナムの飲酒運転率はとても高く、特に田舎では飲酒運転をしていてもおそらく警察には止められないでしょう。

しかしだからと言って、飲酒運転をするべきではありません。

日本でしない事はベトナムでもしないで、リスクを高めないように注意することが大切です。

ルール⑤ スピードの出し過ぎには気をつける

中には猛スピードで走っているバイクもいますが、だからと言ってスピードは出しすぎないようにしましょう。

ベトナムの道路は整備が行き届いていないために窪みや穴があることが多く、スピードを出しすぎていると避けられずに横転し、最悪の場合は大事故に繋がってしまうかもしれません。

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ベトナムのバイク事情|多い理由から事故を避ける交通ルールまでのまとめ

ベトナムにおけるバイク事情について見てきました。

かつては自転車が主流だったベトナムには現在、非常に多くのバイクが走っており、ある意味、ベトナムの名物にまでなっています。

ベトナムに行った際にはこの名物のバイク渋滞を見ることになると思いますが、もしもそのバイクに乗る場合には紹介したルールを守って楽しみましょう。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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