中国の神獣を見ていきましょう。知っておきたい10の神獣と有名な四獣の合計14体を、一覧にまとめてそれぞれ解説していきます。
世界各地に残る伝承や神話には、神獣と呼ばれる神格を持つ獣の存在が多く描かれています。
そして中国に残る伝承や神話の中にも、伝説的な生き物は非常に多く存在し、それら全てを把握するのは非常に大変です。
そこで、この記事では中国の神獣の中でも人気だったり有名だったりすることから特に抑えておきたい10の神獣と、有名な四獣をピックアップして一覧としてまとめ、それぞれを簡単に紹介していこうと思います。
覚えておきたい10体の中国神獣
中国の神獣① 竜(龍)
竜は中国の民間伝承において広く一般的な伝説上の生き物であり、神獣や霊獣として描かれます。
水中か地中に棲む神格を持った獣と描写され、啼き声によって雷雲や嵐を呼んだり、竜巻となって天空に昇って飛翔する能力を持ち、また、口の周りには長髯をたくわえ顎下には宝珠を有し、特に水や雨を支配しています。
また、外見は大抵、長い身体と鱗に覆われた四本足の蛇のような生物として描かれることが一般的。
強大な吉祥の力の象徴であり、幸運のシンボルであると同時に強烈な力の象徴とされてきました。
そのため、中国の歴史の中に誕生した多くの皇帝は、自らの力のシンボルとして竜を用いてきました。
中国の神獣② 鳳凰
欧米における神話上の生き物「フェニックス」と見なされることもある鳳凰(ほうおう)は、中国神話において有名な神獣の1つ。
炎の中から生まれると言われ、あらゆる鳥類の帝王として描かれる伝説上の霊鳥で、太陽、温もり、夏、収穫を象徴します。
雌雄そろった鳳凰は永遠の愛のシンボルであり、中国皇帝の象徴であるともされ、また、日本も含めた東アジア全般で伝説上の生き物とされてきました。
10円硬貨にも描かれる京都の平等院鳳凰堂は、鳳凰を象徴とした歴史的建造物の代表格です。
中国の神獣③ 夔
(出典:wikipedia)
夔(き)は、中国の神話に登場する、一本足の雄牛のような獣(神獣)であり、他にも人物や妖怪として描かれることがあります。
東シナ海に面した流波山で生まれたとされ、もともとは龍神の一種として描かれていましたが、その後には、灰色の身体をした牛のような姿を持つ霊獣として描かれることが多くなりました。
嵐が近づくと身体が陽の光のように輝き、その吠え声は雷のようだったと言います。
音楽に深い関係にあるとされるこの神獣に関してはまた、中国の皇帝がその毛皮を使って太鼓を作り鳴らしたところ、太鼓から発せられた音が500里(約2000km)離れたところにまでも届いたという言い伝えがあります。
中国の神獣④ 麒麟
麒麟(きりん)は、東アジア文化圏全般で知られる中国神話の神獣であり霊獣。
5mほどの背丈がある鹿のような身体に、龍に似た顔と牛の尾と馬の蹄を備え、身体は鱗で覆われ、金色に輝く毛を持つとされます。
日本ではキリンビールのロゴになっているため、親しみを持つ人も多いでしょう。
賢者や優れた王の登場、または死去に伴って現れると信じられており、麒麟は炎を吐くことができ、これで不道徳者を罰します。
また、中国の神話上における生き物の中では獣類の長とされ、鳥類の帝王に君臨する鳳凰とはしばしば対として描かれます。
中国の神獣⑤ 饕餮
(出典:wikipedia)
饕餮(とうてつ)は、中国神話に登場する怪物です。
非常にどん欲で目に映るものすべてを食らい、自らの身体さえも食べてしまうほどであるため、身体のない大きな頭と大きな口だけのイメージで描写されることが一般的。
ただし、身体が描写される場合は牛または羊のようだとされ、人の物に似た頭には曲がった角を有します。
なんでも食べることから、魔さえも喰らうと考えられるようになり、結果的に魔除けの意味を持つようにもなりました。
ただし、饕餮は食べ過ぎて死んでしまったたとされることから、どん欲な人々のシンボルとなり続けてもいます。
中国の神獣⑥ 獬豸
獬豸(かいち)は高度な知能を持っており、善悪を判断でき、咬みついたり角で突き倒したりして不道徳者を一掃する、中国神話における伝説上の動物であり神獣。
どこかユニコーンや竜のような生き物として描写されることもありますが、どちらかと言えば麒麟に似ている姿で描かれることが多く、水辺に住むのを好むとされます。
また、日本の神社の入り口などに祀られている狛犬(こまいぬ)の起源とも言われ、日本人とも所縁があります。
中国の神獣⑦ 犼
犼(こう)は、2つの長い耳を持ったライオンのような姿をしている中国神話上の神獣または妖怪。
竜王の息子と言われ、彫刻された円柱の高位置に座すこの神獣は、天の声を伝え、人民のメッセージを反映すると言い伝えられています。
また、犼は仏の乗り物であると記す記録も残っています。
一方で、非常に大きな声で吠えるだけでなく、犼の尿を浴びると血肉は腐るとされ、他の伝説上の生き物でさえその存在を恐れたとして描かれることもありました。
中国の神獣⑧ 畢方
畢方(ひっぽう)は神話に登場する、赤い文様と白いくちばしを持った鶴のような一本足の霊鳥。
鳥であるのに穀類ではなく炎を食べ、その出現は大火災の兆しであるとされ、中国の伝承では大きな火災が起こるとして恐れられていました。
一方で、火神の使いとしても描かれます。
中国の神獣⑨ 貔貅
貔貅(ひきゅう)は、何事も漏らすことなく飲みことができるため、あらゆる方向から財運をもたらすとされている中国の伝説上の神獣または霊獣。
これは、貔貅は金を食べる一方で肛門がないため、食べた金はどんどん身体に溜まっていくと考えられているからです。
また邪悪なものを祓い、幸運を招くこともできます。
古代中国では「獰猛な動物」の一種としても信じられ、勇猛な兵士を指す言葉として使用されました。
ちなみに、貔貅は中国の南京市の象徴にも採用されています。
中国の神獣⑩ 白澤
(出典:wikipedia)
中国神話に登場する白澤(はくたく)は、崑崙山脈(こんろんさんみゃく)に生息し、人語を解する雪のように白い神獣または聖獣。
あらゆる生き物の本質を理解することが出来るとして描写されます。
また、白澤は治めるものが有徳であれば姿を見せるという性格を持ち合わせるため、国が賢明な王に統治されていない時にはめったに見ることが出来ません。
このような理由から、中国の歴史の中で政権を担ってきた者たちは、度々この白澤に関する物を傍に置いて魔除けとしてきました。
中国の四獣(四神)
中国神話に登場する代表的な10の神獣を見てきましたが、中国の神話を語る上では四獣についても触れておくべきでしょう。
四象や四神とも呼ばれる四獣は、4体の神獣(青龍、朱雀、白虎、玄武)からなり、それぞれは中国古代の天文学や星官において天を四方から守る存在であるとされ重要な意味を持っています。
また、これらの神獣は五行(古代中国に端を発する自然哲学の思想で、万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなるという説)とも結びつけられており、東の青龍は木、南の朱雀は火、西の白虎は金、北の玄武は水の象徴とされているのです(五行説においては中央の黄竜が土の象徴として加えられる)。
これら中国において重要な各四獣を、以下で簡単に解説しておきます。
青龍
中国神話に出てくる竜の一種であり、四獣の1つ青龍(せいりゅう)は、東の方位を象徴する聖なる神獣。
「青」の漢字が付いていますが、実際には植物のように緑色をしているとされ、また、春を象徴しています。
中国文化の中では青龍に限らず竜が全般的に皇帝や力のシンボルとされてきたこともあり、三国時代に魏の皇帝であった曹叡は、青龍を君主の治世の元号として使用しました。
朱雀
朱雀(すざく)は四獣の中では南方を司る神獣。
火のような朱(赤)色で描かれ、五行説では火とされることから、夏を象徴しています。
また、その姿が上でも紹介した鳳凰に似ていることから、同一起源が唱えられたり、同一視されることもあります。
鶏の頭、燕の顎、蛇の首、魚の尾といった身体的特徴と、五色の羽で覆われた外見を持つとされます。
白虎
白虎(びゃっこ)は四獣の中では西方を司る神獣であり、五行においては金で、四季では秋の象徴とされています。
白い虎として描かれ、強さや軍事力のシンボルともなっており、古代の中国において白虎が登場する多くの場面は、何かしら軍事と関係があることがほとんどです。
古代の陸軍で使用された白虎の旗や、司令官の合印に用いられた白虎のイメージなどは良い例でしょう。
また、漢王朝時代には悪霊を追い払うため、白虎の姿が墓の扉に描かれたり、青龍とともに墓の通路に刻まれていました。
玄武
玄武(げんぶ)は四獣の中では北方を司り、黒を意味し、五行においては水を表すと同時に冬の季節を象徴します。
そんな玄武は元々、神託を伝える亀を指していました。
黒い甲羅を持ち、冥界を訪れてやがて起こる出来事について尋ねる力を持っていた玄武は、神からのお告げを聞いた後、その答えを示しながら現世に戻って来るとされていたのです。
その後、玄武は徐々に亀と蛇の形で描かれるようになり、中でも蛇が亀に巻きついた姿が一般的となりました。
そして、亀は水中で生活することから玄武は水の神となり、また長寿を全うすることから長寿のシンボルともなったのです。
合わせて読みたい世界雑学記事
- 中国の少数民族一覧|満州族・回族・チワン族・ヤオ族など
- 中国の宗教と割合|道教や儒教の中国起源の信仰から世界的宗教の状況
- →こちらから中国に関する情報をさらに確認出来ます
中国の神獣一覧|龍や麒麟から四獣まで14体を紹介!のまとめ
数ある中国の神獣から14体を厳選して紹介してきました。
他にも中国神話には多くの神獣が登場しますが、今回紹介した神獣達をまずは覚えておくと良いかと思います。