ブラジルの宗教と割合|キリスト教カトリックが歴史的に多数派である

ブラジルの宗教と割合について見ていきます。キリスト教のカトリックが優勢なブラジルは、一方で宗教的多様性を擁した国です。

南米最大の国ブラジルは2億人を超える人口を誇り、そのうちの90%以上の人々が何かしらの宗教を信仰していたりと、実は南アメリカで最も宗教的な国であると同時に、特定の宗教に関して言えば世界最大規模の国となります。

また、その大多数はいずれかのキリスト教宗派に属するものの、歴史の中で奴隷や移民を受け入れてきたことから、ブラジルは宗教的な多様性も持つ国だったりします。

この記事では、そんなブラジルにおける宗教状況や各宗教の割合などについて、詳しく見ていこうと思います。

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ブラジルの宗教状況とそれぞれの割合

キリスト教カトリックの国として知られてきたポルトガルの植民地であったことから、ブラジルは歴史的に、カトリックが最も優勢な宗教として支持される国。

カトリック教徒の人口割合は2010年度の国勢調査によると全人口の64.63%と高く、現在も同程度の割合の人々がカトリック教徒だとみなした場合、ブラジルの人口2億900万人のうち、およそ1億3500万人がカトリックを信仰していることになり、ブラジルは世界で最も多くのカトリック教徒人口を有する国になります。

そして、カトリックの次に信徒を多く抱えるのが、同じキリスト教のプロテスタントで、その割合は2010年時点で22.16%に上ります。

さらに、他のキリスト教宗派(1.98%)や、他の宗教(3.19%)、加えて無宗教または無神論の人々(8.04%)がいるなど、全体としてキリスト教徒が88.77%の多数派を占めるものの、ブラジル国内では信仰の自由が認められており、宗教的多様性が生まれています。

ちなみに、ブラジルに多様な宗教が存在するのは、ブラジルが主に移民と奴隷によってつくられた国であるためです。

各ブラジルの宗教の割合

上で示したブラジルの宗教の割合を分かりやすく示すと以下の通りです。

  • キリスト教:88.77%
    • カトリック:64.63%
    • プロテスタント:22.16%
    • その他のキリスト教宗派:1.98%
  • その他の宗教:3.19%
  • 無宗教/無神論:8.04%

(2010年度ブラジル国勢調査)

ブラジルの各宗教についてもう少し詳しく見ていこう

ブラジルの宗教状況から各宗教の割合について見てきましたが、ここからはそれぞれについてさらに詳しく見ていきたいと思います。

キリスト教

カトリック

カトリックは主にポルトガルからの開拓者によってブラジルに広まり、その布教活動の多くはブラジルの人々にカトリックの教えを強制するものであったと言います。

1500年から1815年に渡ってポルトガルの植民地であったブラジルには、カトリック教の布教のために教会が建設され、宣教師や宗教の指導者が海を渡りやってきました。

また、非公式ではあったものの植民地時代そして独立においてカトリックは国教とされ、1824年には正式に国教に定められ、当時のカトリック司祭は政府から給料をもらい、政治に影響力を持っていました。

1891年に憲法が制定され、非宗教的な政権体制となったものの、カトリック教会は1970年代まで国家の運営に対して政治的な影響力を持ち続け、現在に至るまでブラジル国内において影響力のある存在であり続けています。

その結果、ポルトガル人移民以降も多くの移民が他の地域からブラジルへ入植してきたにも関わらず、人口の6割以上がカトリック教徒という状況が生まれ、27ある州のうち25前後の州において、人口の半数以上がカトリック教徒となっています。

今日、ブラジルの有名な祭りであるリオのカーニバルを始めとした主要な祭りの多くは、カトリックの教えに基づいたものです。

プロテスタント

キリスト教のプロテスタントは、ブラジルで二番目に信徒の多い宗教であり、プロテスタント信者は伝統的なプロテスタントから新ペンテコステ派までの、様々なプロテスタント系宗派に属しているとされます。

プロテスタントの教派は、1557年、プロテスタント諸派に大きな影響を与えたジャン・カルヴァンによって派遣された、フランスのユグノー(カルヴァン派の新教徒達)がブラジルの植民地化を試みたことにより国内に広まりました(当時のフランスは宗教改革の中でプロテスタントの影響が強くなっていた)

そして、フランス領南極植民地が築かれたリオデジャネイロ州に位置するグアナバラ湾に浮かぶ島々を拠点に布教活動が展開され、1557年3月にはブラジルで初めてのプロテスタントの礼拝が行われました。

しかし、カトリックのポルトガル人勢力により1567年にはフランス勢力が植民地から追放され、植民地支配はわずかな時代で幕を閉じることとなりました。

その後、プロテスタントの教派がブラジル国内で活動を再開したのは1820年代になってからのことで、1822年には英国国教会のチャペルが建設されました。

そして、1880年代に入ってからヨーロッパからの移民そしてイギリス、アメリカからの宣教師が数多くブラジルに渡り、プロテスタント信者の数が増加。

同時にブラジルがカトリック教会を国教とする政権から非宗教的な国家へと変わったことも、プロテスタント勢力を勢い付ける結果となりました。

それから一世紀以上の時が経過し、プロテスタント勢力は教会、学校、神学校、大学など新教を広め、関連団体が多く設立されています。

その他のキリスト教宗派

カトリックとプロテスタント以外にも少数ではあるものの、どちらにも属さない他のキリスト教宗派を信仰する人々がブラジル国内には約2%います。

例えば、過去一世紀ほどに渡って、ギリシャ、ウクライナ、ロシア、アルメニア、レバノンそしてシリアから多くの移民を受け入れてきた歴史から、オーソドックスや正教会と呼ばれる宗派に分類されるキリスト教を信仰する人々が一定数以上ブラジルには存在します。

また、エホバの証人と呼ばれるキリスト教系の新宗教は、国内各地に1万以上の集会場を設置しており、他にもモルモン教として知られる末日聖徒イエス・キリスト教会は、2000前後の教会といくつかの神殿を有しています。

その他の宗教

スピリティズム(カルデシズム)

スピリティズムまたはカルデシズムとは、いわゆるスピルチュアリズムと同じようなもので、心霊主義や心霊術、交霊術などを意味し、フランス人のアラン・カルデックによって1857年に出版された本に始まる教義です。

人間の霊は不滅であり、知性の発展と精神修養のために肉体での輪廻転生を繰り返すとの信仰を説くと同時に、心霊主義はまた、自然界に直接的または間接的にプラスそしてマイナスの影響を与える力を持っているとの考えを示しています。

2010年の時点でブラジル国内には2%近くの信奉者がいるとされ、キリスト教以外では比較的大きな勢力となっています。

アフリカ由来の宗教

アフリカから連れてこられた奴隷達によって持ち込まれた宗教の中で最も有名なのが、カンドンブレとウンバンダ。

カンドンブレはほとんどサルバドール、レシーフェ、リオデジャネイロ、そしてブラジル南東部で信仰され、またウンバンダはブラジル南部で信者を集めています。

ちなみにウンバンダは、スピリティズム、先住民族の信仰、そしてアフリカの文化的な要素が混じり合ったものです。

他にも、バトゥーケ、シャンゴ、タンボール・デ・ミナといった他のアフリカ由来の宗教もありますが、今日のブラジルではその信者の数は減少しています。

これらアフリカ由来の宗教に共通するのは、歌や踊りの儀式で、初めてそれらを目にしたキリスト教徒から異教や悪魔信仰とみなされました。

しかし、アフリカ由来の宗教は社会から排除されそうになりながらも生き延び、持ち込まれて500年の間に大きく変わりましたが、歌うことで精霊と交信するといった伝統を残しながら、今日ではブラジルの宗教の重要な一部となっています。

先住民の宗教

ブラジルには300近い先住民が暮らすとされますが、こういった先住民グループの中には、昔からの信仰を守っている人々もいます。

その信仰とは、いわゆるアニミズムやシャーマニズムと呼ばれるものです。

アマゾンで採れる幻覚作用のあるお茶「アヤワスカ」を飲んで精霊とのコミュニケーションを図ったり、幻覚作用のあるものは一切摂取せずに、リズミカルな踊りや手を叩くことによってトランス状態になって精霊との接触を図るなど、その方法は様々です。

仏教・ユダヤ教・イスラム教など

かつて日本から多くの移民がやってきた結果、サンパウロを中心に大規模な日系ブラジル人のコミュニティが存在します。

そのため、こういった日系コミュニティの中では仏教や神道が信仰されていることがあります。

また他にも、ブラジルにはユダヤ教、やイスラム教、ヒンドゥー教なども少ないながら存在します。

無宗教/無神論

宗教のグループと言うわけではありませんが、どの宗教も信仰しないという無宗教または無心論者の割合はブラジル人口の8.04%に当たるなど、それなりに大きな勢力となっています。

1970年の時点では、ブラジル国内において無宗教または無神論にあたる人の数は100万人を下回るものだったとされます。

しかし、ブラジル全体の人口増加に加えて、単純に割合が増加したこともあり、その数は現在、およそ1600万人近くになっています。

増加理由としては、神の存在に疑問を抱くことが以前と比べて社会的に受け入れられやすくなっていること、また、世界各地において若い世代の宗教離れが目立つようになってきていることなどが挙げられるでしょう。

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ブラジルの宗教と割合|キリスト教カトリックが歴史的に多数派であるのまとめ

ブラジルの宗教状況や各宗教の割合、さらにはそれぞれの宗教に関する詳しい内容までを見てきました。

ブラジルは人種のるつぼと呼ばれる国であり、キリスト教勢力が圧倒的であるものの、その他の宗教も受け入れられています。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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