ネパールの文化や習慣の特徴について見ていきましょう。民族面や伝統面、そしてスポーツなど、異なる視点からネパール文化を掘り下げていきます。
大国である中国とインドに挟まれたヒマラヤ山脈で有名な内陸の小国ネパールは、古くから異なる民族や文化が交わる場所となってきました。
その結果、様々な民族や宗教、そして伝統や価値観が入り混じっていき、他の国とは異なる独特なネパール文化が形成されていきました。
ネパール文化は豊かで多様性に溢れ、その特徴は様々な側面に現れています。
この記事では、そんなネパールの文化や習慣の特徴について少しでも理解を深めるため、7つの異なるポイントを見ていこうと思います。
ネパールの文化1:民族・言語・宗教
ネパールは現在、およそ3000万弱の人口を抱えていますが、地理的な位置から歴史の中で多くの民族や文化が入り混じってきたこともあり、実は「ネパール人」と一言で言っても、そこには数々の民族が含まれているのが特徴。
つまり、ネパールは多民族国家なのです。
その結果、公用語であるネパール語以外にも非常に多くの少数言語が存在し、その数はネパール語も入れると123種類にも上ると言われます。
一方で、宗教に関しては大多数のネパール人がヒンドゥー教を信仰しており、その割合は80%強。
それに続いて、仏教徒やイスラム教徒などが少数ながら存在しています。
これらネパールの民族、言語、宗教について、以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
ネパール文化を象徴する多民族性
ネパールの人口は多くの民族によって構成されているわけですが、これらのネパールに存在する民族は大きく分けると3つのグループに分けることが可能。
- チベット系ネパール人
- ネパール先住民族
- インド系ネパール人
の3つです。
まず、チベット系ネパール人は、チベットから移動してきて現在のネパールに定住したと言われる人々で、主にネパールの山岳地帯に居住。また、ネパールの国土の中でも北側を中心に暮らしています。
彼らの文化はチベットの文化と良く似ていて、日本人と同じモンゴロイド系の顔をしている点が特徴です。
これに対して、ネパールの先住民族は、他の民族が現れる前からずっとネパールに住んでいました。
そして、彼らの文化は、ネパール人の伝統様式と深い部分で関わっています。
このネパール先住民族の多くは、国の中でも標高の高い地域に住んでおり、ネパール先住民族はネパールの総人口の35%前後を占めているのです。
ただし、「ネパール先住民族」と一括りにしているものの、実際にはこのグループの中だけでも、幅広い様々な人々が存在しています。
最後に、インド系ネパール人ですが、彼らはインドから移住してきた民族であり、ネパール南部のテライ地域や山岳部に居住を開始。ただし、現在はネパール全域に渡っています。
これらの土地は土壌が肥沃であるため、彼らの祖先は主に農業で生計を立てていました。
そして、インド系ネパール人はインド文化の流れを色濃く受け継いでいるだけでなく、中にはいわゆる「アーリア人」の外見的特徴を持った人たちも含まれます。
このように、ネパールの民族は大きく分けると3つに分類出来ますが、実際のところ、異なる民族間での混血が進んでいるため、どれか一つのグループへ分けるのが難しい場合も多々あります。
多民族文化を象徴する多言語の存在
上でも述べた通り、ネパールには123の言語が存在しているわけですが、公用語に制定されているネパール語は国内ほぼ全ての地域で使われており、ネパール語を話せないという人は極少数です。
そして、このネパール語に次いで多くの話者を抱える言語として、マイティリー語、ボージュプリー語、タルー語、タマン語、ネワール語が続きます。
ちなみに、それぞれの言語を「母語」として喋る人の割合は以下の通りです。
- ネパール語:44.64%
- マイティリー語:11.67%
- ボージュプリー語:5.98%
- タルー語:5.77%
- タマン語:5.11%
- ネワール語:3.2%
ヒンドゥー教国と言われるネパールの最大宗教はヒンドゥー教!
現在のネパールは宗教に関して寛容な態度を示しているものの、2006年に国教が廃止されるまでは「ヒンドゥー教」がネパールの国教として制定されていたこともあり、過去から現在まで、同国ではヒンドゥー教が支配的な宗教となっています。
そのため、人口の81.3%がヒンドゥー教を信奉しているだけでなく、国の文化や伝統はヒンドゥー教に大きく影響されてきました。
実際、ネパール文化のかなりの部分はヒンドゥー文化と言えます。
そして、2番目に信者の多い宗教は仏教でネパールの総人口の9%を占めており、残りは、イスラム教4.4%、キラント教3%、キリスト教1.5%、その他0.6%となっています。
より詳しくは、ネパールの宗教|割合からヒンドゥー教・仏教・キリスト教などの状況までを確認してください。
ネパールの文化2:ネパール料理
ネパール料理には、異なる民族料理やアジア文化の影響を受けた様々な料理がありますが、その多くは特にインドとチベットの影響を強く受けているのが特徴で、米が利用されている物が多いという特徴も挙げられます。
例えば、伝統的で代表的な料理としては「ダルバート」と呼ばれる家庭料理があり、これは、豆のスープとお米、それにスパイスの効いたおかずと漬物の4点がセットになったものです。
ただし、出される料理の内容は、地域の気候によって大きく異なるのもネパールならではの特徴。
例えば、山岳地帯などの米を十分に供給できない地域では、穀粒やとうもろこしを練って作った「ディド」を主食とするなど、住んでいる地域で見つかる代用食品を使って地域ならではの内容にしています。
また他にも、ご飯の代わりにロティと呼ばれる薄いパンを主食にすることもあります。
さらに、乾燥した葉物野菜を発酵させた料理「ガンドルク」や、カトマンズの渓谷で人気な「モモ」と呼ばれるチベット風団子、祭りの時に特別な料理の一つとして振舞われる「セル・ロティ」と呼ばれる輪っか状の甘いパンもネパール料理として知っておくと良いでしょう。
ネパールの文化3:ネパールの伝統衣装
ネパール国内にいる民族はそれぞれ、独自の民族衣装を持っている場合がほとんどですが、基本的な慣習は似通っています。
そんなネパールに民族衣装の中でも、ネパールを代表する伝統衣装と言われるのが、
- 男性用の「ダウラ・スルワル」
- 女性用の「クルタ・スルワール」
です。
まず、男性用の「ダウラ・スルワル」についてですが、ダウラは前を重ね合わせるタイプのシャツのことで、スルワルはシンプルなパンツを指します。
そこへ、必要に合わせてジャケット、ベスト、頭につける装飾品など身につけます。
ちなみに、ネパール全土で被られている帽子は「ダカ・トピ」と呼ばれています。
一方、女性用の「クルタ・スルワール」は、ブラウス、薄手のバギーパンツ、大判のスカーフからなる衣装。
パンツはゆったりとしていて、鮮やかな色で無地なことが多く、ブラウスも鮮やかな色が使われていますが、柄のあるものを着用します。
そして、スカーフはブラウスと同じ柄の長いタイプで、体にかけて使います。
ネパールの文化4:芸術・工芸・建築
ネパールの中でも観光客で賑わうタルバール広場や有名な通りでは、タンカ(コットンやシルクの布に描かれた仏画)と呼ばれる仏画の掛け軸が多く販売されています。
その他にも、金属や木材の手芸用品、伝統的なチベット絨毯などが売られており、これらはネパールの特産品です。
さらに、仏教寺院の壁の鮮やかな絵画や、丹精込めて作られた寺の像などは洗練されていて素晴らしく、タンカや多の工芸品なども含め、芸術的面におけるネパール文化の特徴やレベルを、明確に表現していると言えるでしょう。
また例えば、ネパール最大のヒンドゥー教寺院である「パシュパティナート」は、同国の文化にどれだけヒンドゥー教が大きな影響を与えているかを垣間見れる良い場所となり、ネパール最古のヒンドゥー教寺院「チャング・ナラヤン」は、ヒンドゥー教の歴史の重みを感じさせてくれます。
そして、パゴタやストゥーパと呼ばれる仏塔は、建築へ芸術的な要素を導入した結果としてできたネパール文化の代表的産物です。
ネパールの文化5:伝統的な儀式の具体例
ネパールには異なる民族が多く住んでいることなども影響した結果、多くの伝統的な儀式が存在しています。
以下では、その具体例をいくつか紹介してみます。
子供に関する儀式
子供が生まれた時には名前を授けるための儀式「ヌワラン(Nuwaran)」が執り行われることがあり、幸運を呼ぶ名前が与えられます。
その後、子供が生後5~6か月になった時(固形食を食べられるようになった時)には、お米を食べる儀式「パスニ(Pasni)」が開かれ、子供の成長を祝います。
ちなみに、もしも子供が男の子なら、男であることを示す「ブラタバンダ(Bratabandha)」と呼ばれる儀式が行われることもあり、男の子は儀式の中で頭の髪を剃られることになります。
ネワール族の中で見られる女性に関する儀式
ネパール人の中でもネワール族のコミュニティーでは、思春期(初潮前の少女の時)の女性と、ヒンドゥー教においては聖なる樹木とされる「ベルノキ」とが婚姻関係を結ぶ儀式が存在。
これは、女性の夫が死んだ場合にその女性を庇護するためや、将来男性と結婚する際に素晴らしい男性がやってくることを願うものです。
また他にもネワールの女性は、女性らしさを高めるためにバーラの儀式、あるいは「グファ・ラクネ(Gufa rakhne)」と呼ばれる儀式を経験します。
これは、7~13歳の少女が行うネワールの成人への儀式で、少女が12日間のあいだ洞窟の中に入り、太陽と男性から隔離された環境で過ごすというものです。
儀式が終わる12日目には、盛大な宴会が催されます。
長寿を祝う儀式や死を弔う儀式
さらに、ネパール人が特定の年齢に達した時に行われる「ジャンク(Jankhu)」と呼ばれる儀式もあります。
これは、その人が77歳に達した時、または83歳(厳密には生まれてから1000か月目)、88歳、99歳、110歳に達した時に、長寿を祝って行われる儀式です。
一方で、誰かが亡くなった時には「シュラーダ(Shraddha)」と呼ばれる儀式が行われ、そこでは皆がその人を弔います。
死んだ人の親族が13日間のあいだ、白い喪服を着て心身を清浄に保つことで喪に服すのです。
ネパールの文化6:ネパールの祭り
ネパールにおいては、色々な宗教と文化があるため、年間を通して様々な祭りが行われいますが、これらの祭りは主に、ヒンドゥー教と仏教のコミュニティーに影響されていることが多く、それら宗教と強い関りを持っています。
また、ネパール国内で開催される祭りの多くは、文化的あるいは伝統的な価値観と結びついている点も忘れてはなりません。
ちなみに、ヒンドゥー教文化圏であるインドやネパールの祭り事では、「ティカ」と呼ばれる赤い染料を良く見かけます。
これは、祭りや祝いの時、額へ赤い丸い印のような飾りを付けるために使用され、この「ティカを額に塗る」というのは、ネパールにおける一つの伝統であり習慣になっています。
さらに、ネパールでは伝統的に年配の人を敬う習慣がありますが、これに関連したこととして年寄りが皆に祝福を与えるという、ネパールにはなくてはならない習慣も存在しています。
以下にネパールのお祭りの具体例を挙げておきます。
- ダサイン(Dashain)
- 10日間にわたって行われるとても長い祭りで、この中では家族や親族と遠く離れて暮らしている人々が家族と再開することになる
- ティハール(Tihar)
- 5日間に渡って行われる祭りで、祭りのそれぞれの日が大切な意味を持つ一日として扱われており、「光の祭り」という名前でも知られる
- ブッダ・ジャヤンティ(Buddha Jayanti)
- ブッダの誕生日を祝う行お祭り
- チャス(Chhath)
- 豊かな生活を与えてくれた事に感謝する祭りで、太陽神と暁の女神を崇拝する事を目的として4日間にわたって厳格に行われます。
ネパールの文化7:ネパールで人気なスポーツ
ネパールの文化を表すものの一側面として、スポーツについても触れておきましょう。
ネパールにおいて最も人気のあるスポーツはサッカーで、次にクリケットです。
特にクリケットに関しては、かつてイギリスの植民地となった隣国インドの影響や、1815年にネパールとイギリスの間で調印されたスガウリ条約以降にイギリスとの関係が強くなったことなど、地理的・歴史的な背景が影響していると言えるでしょう。
さらに、ネパールでは「ダンディ・ビヨ」と呼ばれるスポーツが、特に田舎を中心に人気だったこともあり、かつては非公式に国技とされていました。
しかし、ダンディ・ビヨは年々人気を落としていっています。
それに対して、2017年には公式な形でバレーボールがネパールが国技として宣言されました。
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ネパール文化や習慣の特徴|民族・伝統・人気なスポーツなどのまとめ
ネパールの文化や習慣について、7つの異なるポイントから見てきました。ネパールの文化はとてもワクワクするような多様性に富んでいます。
その完成度の高さから言っても、見逃す事の出来ない優れた文化だという事ができるでしょう。
ネパールを訪れた際には、その豊かな文化を感じてみましょう。