タイの宗教|割合や仏教の上座部仏教が大多数を占める状況など

タイはの宗教について詳しく見ていきます。各宗教の割合や、上座部仏教徒が多数派を占める仏教の状況など、タイならではの宗教状況について理解を深めましょう。

「微笑みの国」として有名な現在タイは「仏教国家」としても世界的に知られ、タイ観光において仏教寺院などは観光スポットとしてよく取り上げられます。

実際、タイ人のほとんどが仏教を信仰しているという状況にあり、タイは世界の中でも1、2を争う仏教国家と言えるでしょう。

一方で、仏教と言っても日本人が一般的に信仰する仏教とは少し違ったり、一部の人々は仏教を信仰しながらも中国に起源を持つ信仰を実践したり、また、他の宗教を信仰する人々もいたりと、その様相は少しばかり複雑です。

この記事では、そんなタイにおける宗教状況や各宗教の割合、さらにはタイで主に信仰されている宗教に関する簡単な解説までを見ていきたいと思います。

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タイにおける宗教状況と割合

タイは仏教国と言われるだけあり、現在の同国において最も主要で圧倒的な信徒数を抱えているのは仏教。

総人口に対する仏教徒の割合は90%を超えるおよそ95%

しかし、仏教と一言では言い難い複雑さを内包しているのが特徴で、タイ人の大多数はベトナム、チベット、東アジア(日本を含む)に伝わった大乗仏教ではなく、それとは別な歴史経過を辿って東南アジアで広まった上座部仏教を信仰しています。

また、タイ人の中でも一部極めて少数の人々は、中国仏教(大乗仏教の流れを汲み中国で発展した)などの大乗仏教に属する宗派を信仰しています。

ただし、上座部仏教徒であっても大乗仏教徒であっても、タイ人の多く(特に中華系タイ人)は、仏教とは関係ない中国で生まれた道教や儒教の影響を受けており、生活の中で無意識的にその伝統を実践していたりします。

一方で、タイにおいて仏教の次に信徒数を多く抱えるのはイスラム教で、その次がキリスト教、加えて、インド発祥のヒンドゥー教やシク教を信仰する人も非常に割合は少ないですが存在。

さらに、タイ国内には、「チャオ・カオ」と呼ばれる9つの山地民を始め、「チャオ・タレー(海洋民)」など、複数の少数民族集団を抱えており、こうした少数民族のほとんどはアニミズム的な信仰を持っています。

ちなみに、タイの総人口の99%以上が「少なくとも一つは信仰や宗教を持っている」と自認していることから、無宗教の割合は1%以下です。

タイにおける宗教の割合

タイにおける各宗教の割合を示すと以下の通りです(2015年の国税調査の結果

  • 仏教:94.5%
    • 上座部仏教:大多数派
    • 大乗仏教:極少数派
  • イスラム教4.29%
  • キリスト教1.17%
  • ヒンドゥー教0.03%
  • シク教0.001%
  • 儒教0.001%
  • その他の宗教0.002%
  • 無宗教0.005%

タイにおける主要な宗教グループについてもう少し詳しく見ていこう

タイの宗教グループ① 仏教

世界的にも「仏教国」として知られるタイは、世界で最も仏教徒の割合が高い国の一つ。

上でも示した様に、タイにおける仏教徒の数は総人口の95%近くに及び、俗称としてタイは、仏教の僧侶が身にまとっている黄色の衣服から名付けて「黄色い袈裟の国」と呼ばれることさえあります。

タイにおいて信仰されている仏教は、主に大多数派の上座部仏教と、極少数派の大乗仏教の二つに分けることが出来ますが、この二つの宗派に関して文書による明確な記録が存在しないため、上座部仏教と大乗仏教のどちらが先にタイに伝来したのかについて、実は定かではありません。

上座部仏教

上座部仏教は、タイにおいては大多数の人々に信仰されており、紀元前3世紀のインドまで遡る世界最古の仏教一派。

正式には「シャム」として知られていた紀元前1世紀もしくは2世紀頃のタイに、スリランカからの貿易路を経由して伝来したと言われます。

この上座部仏教は東アジアを中心に広まった大乗仏教と基本的な教義は同じですが、仏教宗派の中でもより伝統的かつ保守的な一派であると考えられており、釈迦によって定められたニルヴァーナ(涅槃)へ至るまでの仏道において、大乗仏教よりもはるかに忠実に励むことを重視しています。

ちなみに、信教の自由はタイ憲法で保障されていますが、東南アジアで唯一、政治的権力を有する国家君主制度が今も残るタイにおいて、「国王は上座部仏教の信徒でなくてはならない」と法律で定められています。

大乗仏教

対照的に大乗仏教は仏教のなかでも比較的新しい一派であり、紀元前150年頃が起源といわれ、タイでは主に、中国系やベトナム系の人々(なかでも特に近年移民としてやってきた人々)によって信仰されています。

大乗仏教は、精神的な面での世界観が上座部仏教より「学術的ではない」また「孤立的でもない」という点で上座部仏教とは異なっていると言えるでしょう。

大乗仏教の教義によれば、ニルヴァーナへ至る道は経験を分かち合うことであると解釈出来ます。

大乗仏教はインドや東南アジアよりはむしろ、中国やベトナムで熱心に信仰されていることからも、タイの大乗仏教の信徒の多くが中国やベトナム系の人々であることは不思議ではありません。

タイの宗教グループ② イスラム教

タイにおけるイスラム教徒の割合は総人口のわずか4.5%以下で、そのイスラム教徒の大多数がスンニ派を信仰。

また、タイのイスラム教徒のほとんどは民族的にはマレー人です。

そして、彼らマレー系イスラム教徒の多くは、タイの隣国にあたるイスラム教国家「マレーシア」との国境沿いにある、タイ南部5県のうち4県に集中しています。

イスラム教は西暦9世紀頃、現在のタイ南部に定住したイスラム教徒の商人によって、タイ王国に伝えられたと言います。

ただし、後世にインドネシアやマレーシアに住むマレー人が急激にイスラム教へ改宗していったのに対して、タイにおけるイスラム教の浸透具合は少し違ったようです。

タイにおけるイスラム教の浸透はよりゆっくりで、当時のタイに影響を与えていたヒンドゥー教や、今日の多数派である仏教の教義を基にして、イスラム教の教えを補強する形で信徒数を増やしていったようなのです。

こうした流れから、今日、この地域で信仰されているイスラム教は、ヒンドゥー教や仏教と融合した他のイスラム教とは少し異なった宗教形態となっています。

タイの宗教グループ③ キリスト教

キリスト教は16世紀の大航海時代、ポルトガル人の商人や貿易商、また宣教師団によって、初めてタイに伝来しました。

このような状況の中で、ローマ・カトリックのドミニコ会修道士がスペインおよびポルトガル両国から渡来し、タイ人をキリスト教徒に改宗させようとタイの国中で布教活動を開始しますが、布教は上手く進みませんでした。

その結果、数世紀に渡ってタイは、キリスト教徒の信徒数が東南アジア諸国のなかで最も少ない国となっていました。

一方で、こうしたキリスト教の宣教師達は、タイ生まれの現地の人々の教育レベルを向上させ、とりわけ社会のエリート層に属する人々に関して劇的な功績を上げたと考えられることがあります。

キリスト教徒の西洋人達は、

  • タイに薬をもたらした
  • 私立学校や病院を開設した

といった功績を残し、西洋の影響を特に享受しやすかった裕福なタイ人家庭は、子供達をヨーロッパ、そして後にはアメリカへ留学させるようになっていきました。

ちなみに近年では、特に辺境地のコミュニティにおいて、活発化した布教活動の結果、プロテスタントのキリスト教徒数が増加傾向にあると言います。

タイの宗教グループ④ ヒンドゥー教

現在のタイにおいて、ヒンドゥー教は無宗教を除けば4番目に大きな宗教グループとなっていますが、それでも総人口の0.03%と、1%にでさえ遠く及びません。

しかし、ヒンドゥー教は2000年もの昔に伝来した、タイにおいては非常に古い歴史を持つ宗教です。

また、タイ族達による国家が成立する以前、この地域はヒンドゥー教国家であるクメール王朝(東南アジアで9世紀から始まったクメール人の王国)の支配下にありました。

このような歴史的背景から、ヒンドゥー教はタイの仏教にも影響を与えるなど、タイにおいて実は重要な存在であり続けてきたのです。

例えば、タイの国章にはガルダ(タイではクルットと呼ばれる)という半人半鳥の神鳥がモチーフにされていますが、これは、ヒンドゥー教の神話の中ではヴィシュヌ神の乗り物として登場します。

このことは、タイにおいてヒンドゥー教と仏教が密接な関係にあることを示していると言えるでしょう。

タイの宗教グループ⑤ 民間信仰

無宗教グループを除いた場合に、仏教、イスラム教、キリスト教の次に信徒を抱えるのが、その他の宗教を信仰するグループで、これに含まれる人々の多くは民間の信仰を持っています。

タイには、カレン族、モン族、アカ族、ラフ族といった山地民と呼ばれる山間に暮らす民族に加えて、モーケン(別名:海のジプシー)と呼ばれる一つに国に属さない少数民族達が存在しますが、彼らの多くは自然崇拝や精霊崇拝に近いアニミズム的な民間信仰を持っているとされます。

ただし、タイに住むこれら少数民族の人々が持つ宗教的慣習の多くは、キリスト教、道教、仏教などの要素も取り入れたものとなっているのが特徴です。

タイの宗教グループ⑥ シク教徒

シク教はタイ人口のたったの0.001%しか信徒を抱えていませんが、無宗教グループを除けばそれでも6番目に大きな宗教グループ。

国全体としては非常に数が少ないものの、バンコク、チェンマイ、プーケットなど、人口密度が高い地域のほとんどでは、まとまった数のシク教徒が密集して暮らしています。

シク教は1500年代にインド北部で興り、その後ほどなくしてタイにも伝来しました。

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タイの宗教|割合や仏教の上座部仏教が大多数を占める状況などのまとめ

タイの宗教状況について、各宗教の割合や、タイにおけるそれぞれの宗教の詳細などを見ていきました。

現在のタイにおいて政府は、いずれの宗教も公式に容認することはしていませんが、各宗教団体は一般的に反発を受けることもなく、自由に宗教活動を行うことが出来ています。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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