シンガポールのホーカー文化|ホーカーセンターは食文化で文化遺産

シンガポールのホーカー文化について詳しく見ていきます。シンガポールにおいてホーカーセンターは、食文化を形成する重要な場所であり、そこで繰り広げられるホーカー文化はシンガポールの文化遺産と言えます。

シンガポールへ訪れたことがある人の中にはは、その名前を耳にしたり、実際に立ち寄ってみたことがある人も多いであろう場所と言えばホーカーセンター。

ホーカーセンターは、シンガポールを代表する有名なものの一つで、ホーカーセンターにまつわる文化「ホーカー文化」は、シンガポールにとっては欠かせない重要なものとなっています。

この記事では、そんなシンガポールにおけるホーカー文化について詳しく見ていこうと思います。

まずは、ホーカーセンターと呼ばれる場所に関しての概要を確認することから始めていきましょう。

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ホーカーセンターとは?

ホーカーセンター(Hawker Center)とは、安い値段で料理や飲み物を提供する飲食店が集まった屋台街または複合施設

簡単に言ってしまえば、安くても値段の割には非常に美味しいB級グルメの飲食店が集まった屋台街で、シンガポールだけでなく、香港やマレーシアにも存在します。

シンガポールなど、多くの家庭で自炊する習慣が一般的でない土地においてホーカーセンターは、日常的な食事の場として利用しているのです。

そのため基本的には、公共住宅やバスターミナルなど、日頃の生活が営まれている屋外の場所に設置されていることが多いのが特徴。

しかし、最近ではフードコートなどの屋内に入るホーカーセンターも現れてきました。

ちなみに、ホーカー文化という言葉は、このホーカーセンターにまつわる文化的側面をまとめて指す際に用いられます。

シンガポールにおけるホーカー文化とは?

シンガポールのホーカーセンターはシンガポール文化の象徴

シンガポールのホーカー文化は、シンガポール人にとっては生活に無くてはならないものと言えるでしょう。

あらゆる職業や地位の人々が、ホーカーに入るお店で提供される気に入りのホーカーフードを食べたり、その料理をきっかけに交流を深める為にホーカーセンターに集まります。

そして、何年もかけて、このホーカーセンターで提供される、

  • 美味しいB級グルメ
  • 独特な空間
  • コミュニティーの連帯感

の組み合わせは、中華料理、マレーシア料理、インド料理、そして他の多国籍の料理を売るお店と共に、多文化を抱えるシンガポール社会の縮図となってきました。

シンガポールに移住してきた異なる国籍の移民達が持ち込んだ食文化から、多くのホーカー料理が作られ、何年もかけてその食文化は、シンガポール人が愛して誇るローカル食に進化し、シンガポールにとっては重要な食文化並びに「食の遺産」となったのです。

また今日において、ホーカーセンターはシンガポール人のコミュニティー生活には欠かせないものでもあります。

というのも、ホーカーセンターはシンガポールのあらゆる場所に広がっており、「コミュニティーの食堂」としての役割を果たしているから。

現地の人にとっては、食事をするだけでなく友人や家族で集まって賑やかな会話を楽しむ、ある種の社交場です。

さらにホーカーセンターは、社会的な結束力を促したり、生活費を抑えたり、そして経験、価値、一般的な時間の過ごし方の共有などに基づいた、共通の国民意識を育てる役割も担う、活気に溢れた共同スペースとしての役割も果たしています。

このようなことから、シンガポールにおいてホーカーセンターは、ただ食事をしたり会話を楽しんだりするだけでなく、シンガポール文化を形成する一つの象徴であり、また、シンガポール文化を体験出来る場所であると言えるでしょう。

評価されるホーカー料理の伝統

ホーカーセンターで料理を提供するホーカーフードの料理人達には、あらゆる人種、性別、そして年齢の人達がおり、彼らの存在は非常に重要。

異なる文化背景によって生まれた豊富な料理のレパートリーがあってこそのホーカーセンターでありホーカー文化と言え、シンガポールにおいてホーカー文化を今後も遺していくには非常に大切な存在なのです。

そのため、ホーカーフードの伝統に精通しているホーカーの料理人達は高く評価されており、ホーカー料理人達の知識、技術、価値を、次の世代へと受け継ぐことは、とても大切であると考えられています。

また少し以前まで、ホーカーセンターで提供される料理は、どんなに美味しくてもあくまでもB級グルメで、それ以上の評価をされることがありませんでした。

しかし、近年ではホーカー料理に対する評価が見直され、また、国際的な評価を得る店が出てきたことから、シンガポール人の中にはホーカー文化を誇りに思う人が増えてきている気がします。

ちなみに例えば、国際的な評価基準としてはミシュランが有名で、「吊橋頭 大華豬肉粿條麵 / ヒルストリート・タイホア・ポークヌードル」と「香港油鶏飯麵 / 香港・ソヤソースチキンライス&ヌードル」は、2016年に発売されたミシュランガイドブックに1つ星の店として紹介されました。

シンガポールにおけるホーカー文化の歴史

当初はストリートフードであった

シンガポールにおけるホーカー文化は、1800年代中頃まで遡ります。

当初、料理を提供する商売人は、路上に食べ物を並べて商売していました。いわゆるストリートフードを販売して商売を行い、生計を立てていたのです。

また当時、この商売は、少しの資金と最小限の技術で始められたため、多くの移民達の間で人気でした。

1970年代まで、チャイナタウンやオーチャードロードなどの地域では、ストリートフードの屋台が見受けられ、それら屋台は、あらゆる職業や階級の客に対してラクサやサテなどの手ごろな価格の料理を提供する、人々が集う人気の場所だったと言います。

都市化に伴って「ホーカーセンター」が広がっていった

しかし、20世紀半ばからシンガポールの経済が拡大していくに伴って都市化が進んでいくと、ストリートフードの衛生状態や、無認可で料理を提供していた商売人自身に対しての懸念が高まっていきました。

その結果、1950年代頃から、路上での販売ではなく、特定の場所で料理の販売を行うホーカーセンターの設置が広まっていきました。

さらに、シンガポール政府はホーカーセンターでの商売を免許制にし、1968年から1986年にかけて免許を発行してストリートフードの商売人達をホーカーセンターに移動させていった結果、きちんとした衛生管理が行き届いた、快適な設備のあるホーカーセンターとホーカー文化が確立されていったのです。

ちなみに、この頃はシンガポール史上、最も広い範囲でホーカーセンターの建設が行われた時期で、ホーカーセンターは住宅地や工業地帯にまで建てられました。

そして今日、東京23区より少し広い程度の国土しか持たないシンガポールには、なんと110ヶ所以上のホーカーセンターがあると言われ、その数は今後も少しずつ増えていく予定だとされます。

シンガポールのホーカー文化の保護と活性化

見てきたように、今日のシンガポールにおいてホーカーセンターとは、シンガポール人の生活を成り立たせる上でにとても大切なものであると同時に、シンガポールが経済大国として発展してきた歴史と一緒に形成された大事なシンガポール文化の象徴の一つなのです。

そのため、現在、このホーカー文化を今後も守っていくために、ホーカーセンターやホーカーフードを文書や映像で記録したり、保護したり、宣伝していく努力が行われています。

また、シンガポール国家遺産局はこれまで、民間のエージェント、ホーカー商売人達の協会、食の専門家などと協力して、数々のプロジェクトをサポートしてきました。

例えば、2017年にシンガポール国家遺産局とシンガポール国家環境庁は、12ヶ所のホーカーセンターに対して、近隣地域との関係性における社会的意義や、センターの文化的遺産や建築についての項目を含む調査を実施。

ホーカーセンターにはストーリーボードが設置され、ホーカーセンターの歴史が紹介されるようになりました。

加えて、シンガポール国家環境庁が2016年に行った調査によると、回答者のうち10人に9人がホーカーセンターは、「シンガポール人のアイデンティティーのかなり大切な一部、または大切な一部である」と回答したことが判明。

さらに、2018年にはシンガポール国家遺産局が3000人以上を対象にした世論調査を行い、「食の遺産」はシンガポールの無形文化遺産の最も重要な部分と結論付けたのです。

2019年にはユネスコへ文化遺産として推薦した

このような国家機関による調査結果と、大多数の国民が抱えるホーカー文化に対するコンセンサス(意見の一致)が大きな後押しとなり、2019年3月27日、シンガポールはユネスコに対してホーカー文化を無形文化遺産とする推薦状を提出したのです。

そして、この推薦に関してシンガポールは、

The submission of nomination documents is a milestone in Singapore’s Unesco inscription journey to better recognise and protect our intangible cultural heritage…A successful nomination will demonstrate to the world how proud we are of Hawker Culture in Singapore, encourage greater appreciation for our hawkers, and show our commitment as a nation to safeguard hawker culture for generations to come.

推薦状の提出は我々の無形文化遺産を良く認識し、保護していく上で、ユネスコにとっても画期的な出来事となるでしょう。(中略)推薦の成功は、世界に対して我々がどれだけシンガポールにおけるホーカー文化を誇りに思うかを示し、ホーカーに関わる人々への大きな感謝となり、そして、国家として何世代にも渡ってホーカー文化を守る我々の約束を表すこととなります。

と声明を発表。

このようにホーカー文化は、シンガポール国民のみならず、国家も支援する、シンガポールにはなくてはならない文化の一つとなっているのです。

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シンガポールのホーカー文化|ホーカーセンターは食文化で文化遺産のまとめ

シンガポールを代表する文化の一つ「ホーカー文化」について見てきました。

シンガポールへ訪れた際には、節約や料理を楽しむだけでなく、シンガポールの文化を知る上でも、ホーカーセンターに立ち寄ってみましょう。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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