シンガポールの教育制度の全体像から特徴

シンガポールの教育制度について、分かりやすいように全体像をまとめていきます。また、覚えておきたいいくつかの特徴も紹介するので、参考にしてください。

仕事で家族と共にシンガポールに移住する場合、または、国際的な環境が整うシンガポールで子育てをしょうと考える場合、子供のために最良の教育を選択するのは重要です。

しかし、日本とは異なる教育制度になるため、なかなか全体像が掴めず、子供に最適な教育環境を整える上で戸惑いが生じることがあるかと思います。

そこで、シンガポールの教育制度に関して分かりやすくまとめていきながら、特徴についてまで紹介していきます。

シンガポールの教育制度は十分に整備されており、トップレベルの教育が受けられる国。

そんなシンガポールの教育制度に関して、より全体像が理解でき、最適な教育を選択する上で参考になる知識を多少でも得ることができるはずです。

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シンガポールの教育制度の概要

シンガポールの教育制度を見ていくにあたって、まずは全体像を簡単に確認してみましょう。

シンガポールの教育制度では基本的に、以下のような流れで進学していくことになります。

  1. 3才から
    1. 必要であればプレスクール(就学前の教育保育機関。幼稚園、保育園など)に通う
  2. 6才頃から
    1. プライマリースクール(小学校)に通う
  3. 12才から16、17才頃まで
    1. セコンダリースクール(中・高等学校)に通う

そして、上記のセカンダリースクールの後、もしも10代の子供が大学進学を希望するのであれば、2~3年間の任意教育である大学進学準備コース(preparation course)に進む必要があり、進学先の大学はそこでの成績によって決まります。

シンガポールの教育制度に関しては、教育省(Ministry of Education)が実用的な手引書を作ってその選択肢について説明していますが、学校の種類が多様で複雑。

(より拡大して見たい場合はシンガポール政府サイトから)

言い方を変えれば、様々な特性やニーズに対応出来るように工夫されているのが特徴です。

また、シンガポールでは皆、幼少の頃から英語の他に自身の母語や、居住する地域で一般に使用されている母語以外の言語なども学んでいますが、学校教育では殆どの科目の授業が英語で行われています。

一般的な学年度(学期)

シンガポールの教育制度では、学年度(学期)は2学期制。

一般的に1学期は1月から5月までで、その後に長期休暇が入ります。そして、2学期は7月から11月までで、その後11月から12月にかけて長期休暇があります。

また、それぞれの学期中には短期休暇もあります。

ただし、上記の学年度が適用されているのは主に公立学校。

私立学校やインターナショナルスクールでは、欧米式の学年度を採用している学校が多く存在します。

シンガポールの教育制度における各学校の分類と概要表 

プレスクール(就学前の教育保育機関。幼稚園、保育園など)3才~6才の任意教育。管理運営は民間企業、地域財団、(宗教団体の)慈善事業などによるため、学費は有料の学校が多い。
プライマリースクール(初等学校、小学校)6才からの義務教育。学費は無料。
セコンダリースクール(中等学校)通常12才~17才の5〜6年間の教育。
任意のポストセコンダリー(大学進学準備コースまたは職業訓練専門学校)中等教育終了後、大学進学希望者はさらなる学習のために2~3年間の大学進学準備コースに進む。その他の選択肢として、職業訓練専門学校への進学するコースがある。

シンガポールの教育制度における各レベルの学校詳細

子供をシンガポールの学校へ入学させるための手順などは、シンガポール政府提供のサイトに詳しく書いてあるので参照していただくとして、ここからは、各レベルの学校に関して、もう少し詳しく解説していきます。

プレスクール(就学前の教育保育機関。幼稚園、保育園など)

プレスクールは3才~6才頃の子供が対象。

有料のところが多く、地域財団、(宗教団体の)慈善事業、民間企業などによって運営されています。

また、学費は学校によってさまざまで、優良な学校は申込者が多くて定員を超える傾向にあります。

例えば、シンガポール政府が管理運営するMOEキンダーガーテン(MOE kindergarten)の学費は、シンガポール永住者(永住権を持つ人)の場合、月額SGD320(約26,000円)に設定されています(2018年現在)

ただし、特別な措置といて条件を充した家庭に対しては、学費を免除するプレスクールもあります。

プライマリースクール(初等学校、小学校)

シンガポールでは6歳から義務教育のプライマリースクールに通います。

学費は無料で、子供をプライマリースクールに通わせない親には罰則が科されるのが特徴です。

そのため、ホームスクーリング(学校に通わないで家庭に拠点を置いて学習を行うこと)を希望する場合や、教育省が管理運営していない宗教学校に通いたい場合は、教育省から許可を受けなくてはなりません。

プライマリースクールは6年間です。

そのうち4年間が基礎教育期間で、残りの2年間はセコンダリースクール進学のための準備教育期間となっています。

プライマリースクール教育の特徴は、主な目的が英語、母語、算数の習得であること。また、学生はこの3科目以外にも、自分の得意科目を選択することが出来るようになっています。

セコンダリースクール(中・高等学校)

セコンダリースクールは4~5年間の中等教育で、スクール終了時に学生は全員試験を受け、その成績が良ければ大学進学準備コースに進むことができるため、大学進学を考えている学生にとっては非常に大切な期間となります。

ポストセカンダリー

セカンダリースクールを終えて、十分に良い成績を収めた学生は、2〜3年間の大学進学準備コースに進み、そこでは大学進学を希望する学生に特化した学習を、みっちりと詰め込まれることになります。

そして、どの大学へ行けるかは、この学校での成績によって決まるため、競争率の高いトップレベルの大学進学を考えている学生にとっては非常に重要です。

一方、ポストセコンダリーのもう1つの選択肢は、職業能力を習得するための職業訓練専門学校やポリテクニック(注)に進むコースです。

(注釈)ポリテクニックとは、職業に直結するような高度な専門知識を学べる実務教育を行う3年制の専門学校で、ディプロマ(資格証明書)が取得できる。

シンガポールの教育制度に関して知っておきたい特徴

シンガポール教育の特徴① 世界最高レベルの評価を受けている

生徒の学習到達度を調査するPISAによると、シンガポールの小中学生は数学と科学で最も高い成績を修めています。

また、2015年にはこの国の教育システムが、経済協力開発機構(OECD)に加盟している65か国中で最高の評価を獲得しました。

特に、シンガポール政府が科学や数学といった科目に重きを置いていることは、注目すべきことでしょう。

シンガポール教育の特徴② 英国がモデル

シンガポールの教育システムは英国のものを土台としており、試験結果を重視しています。

また、学校は共通テストにおける生徒の成績に応じてランク付けされるのも特徴です。

そのため、ランクの高い学校へ入学することは同時に、学生間での競争が激しいことを意味しているとも言えるでしょう。

シンガポール教育の特徴③ 塾通いも多い

シンガポールでは、日本と同等またはそれ以上に、親たちが子供の教育に関心を抱いており、学校以外の施設で教育を受けさせることが珍しくありません。

例えば、人気のある塾に子供を通わせようと、塾が開くまで親たちが外で列をなしている光景は珍しいものではなかったりします。

シンガポール教育の特徴④ 子供にはプレッシャーになりかねない

一方で、親がそれだけ子供の教育に熱心だということは、子供たちにとっては大きなプレッシャーになっているということでもあります。

親からはテストで良い結果を出して、最高の学校や大学へ通うことを期待され、教師からはテストで一番になることを求められています。

実際、成績が悪ければ人生に価値がないと考えている子供もいるようです。

シンガポール教育の特徴⑤ 地位が高い教育者

シンガポールの国立教育学院(NIE)は、同国で唯一の教師になりたい人向けの高等教育機関。

NIEは高校を卒業した上位3分の1の生徒を勧誘し、政府の給与体系に則った給料を満額支払った上で、4年間の教員育成プログラムを実施します。

そのため、シンガポールの教師たちは医者と同等レベルに地位が高く、給与も高いことがあります。

さらに、教師は専門能力の向上に100時間を確保でき、その分も給与が与えられています。

シンガポール教育の特徴⑥ 特性をとことん伸ばす

シンガポールの教育システムの主な目的は、生徒に人生で成功する上での平等な機会を与え、すべての個人の才能を伸ばすこと。

その理由から教育システムは評価とフォローアップ、そして生徒を適切な教育課程に振り分けることを重視しています。

こうした方針によって、経済に寄与できるような「スペシャリスト」を育成できるだけでなく、国際市場におけるシンガポール人の生産性と競争力を維持することができているのです。

シンガポール教育の特徴⑦ 様々な人種の子供と一緒に教育を受ける

シンガポールの社会はよく、人種のるつぼと評されることがあり、政府はその社会を反映して、人種に関係なく平等性を重視しています。

また、その結果は、シンガポールの学校制度にはっきりと反映されています。

シンガポールの学校はすべての人種の人々を迎え入れており、自分の生まれた民族に関係なく教育の機会が与えられているのです。

シンガポール教育の特徴⑧ 義務教育と非義務教育

教育省と義務教育法(Compulsory Education Act)によると、シンガポールにおいて初等教育(プライマリースクール)は義務になっています。

一方、プライマリースクールを卒業すると、生徒には自分の好きな道へ向けて様々な教育上の選択肢が用意されています。

それゆえに、教育省のシステムに魅力を感じていない家庭の子供たちの間では、ホームスクーリングが人気な選択肢の一つになるといった例を挙げることが出来ます。

シンガポール教育の特徴⑨ 人材資源を強調するシンガポール政府

シンガポール政府は国の唯一の資源は人であると考えており、それゆえに教育を重要視しています。

1965年以降、教育システムは4度の改革を行なってきました。

社会と経済発展に常に貢献できるようなシステムを作り上げるために、改革のすべては慎重に練り上げられ、その結果も細かく確認され、改善がなされてきたのです。

組織化され、試験を重視した教育システムには痛烈な批判がされているにも関わらず、シンガポールの人々は創造性に溢れ、教師はその革新的な指導法に関する調査でいつも上位に名を連ねている点を見ても、政府の努力は一定の効果を上げてきたことが分かります。

シンガポールの教育における学費

シンガポールの公立学校の学費は無料ですが、学費以外の支出は必要。例えば、制服代、交通費、教材費などが挙げられます。

また、私立学校の場合は学校によって学費はバラバラで、政府が一部出資している学校であっても、公立学校以上の費用がかかります。

そして、シンガポールには非常に多くのインターナショナルスクールがあり、授業は英語やその他の主要な国際語で行われ、海外駐在員の家庭の子供などは、母国に関する知識などを増やしながら、将来帰国した際にも問題ないように準備することが出来ます。

しかし、一般的にインターナショナルスクールの学費は高い傾向にあり、加えて入学金、保証金、技術費用などの雑費も多く掛かります。

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シンガポールの教育制度の全体像から特徴のまとめ

シンガポールは外国人の駐在員などには住み良い国で、教育面では世界の中でトップクラスを誇ります。

しかしながら、どの進路を選択するのが良いかは家庭によってそれぞれ違います。

そのため、シンガポールで子供の教育を考えるのであれば、しっかりとその制度を理解した上で、最適な学校を選んでいくようにしましょう。

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