中国の宗教についてわかりやすくも十分に詳しく解説していきます。それぞれの割合から主な宗教の歴史的背景や状況までを確認していきましょう。
中国は広大な土地におよそ14億人の人口を抱える、名実ともに巨大な国家です。
最大の漢民族以外にも多くの民族を抱えており、さらに長い歴史の中で発展してきた思想や信仰によって、一見すると分かりづらいですが、よくよく見ていくと、実は多様な宗教模様を見せている国だったりします。
この記事では、そんな中国の全体としての宗教事情から各宗教の割合、そして主な宗教の歴史的背景と中国国内での状況までを見ていこうと思います。
中国の宗教状況からそれぞれの割合までを確認
中国は同質性が高い文化であると考えている人が多いですが、驚くべきことに中国の宗教事情はかなり多様性に富んでいます。
表現を変えれば、「世界の主な宗教のほとんどが中国国内で信仰されている」と言えるでしょう。
実際、その割合は地域ごとによって異なってきますが、多くの人口を抱える中国では、ほぼどの都市でも必ず、中国の思想や伝統に影響を与えてきた儒教や道教の伝統や慣習はもちろんのこと、仏教からキリスト教のプロテスタントを信仰する人々まで、多様なグループに出会うことになります。
ちなみに、中国では宗教と思想が絡み合っていることが多いと言えます。
特に道教および儒教は、宗教的な要素も併せ持つ中国を代表する思想体系または思想のフレームワークの二つの流れです。
さらに、恐らくヒンドゥー教や仏教などインドの宗教に由来すると考えられる、来世に対する儀礼や独自の信仰がこの二つの思想とは独立して存在し、中国古来から発展してきた思想体系に影響を与えています。
中国における各宗教の割合
2015年の世論調査によれば「中国国民の約90%が”自称”無神論者あるいは宗教を信仰していない」と回答したという話がある一方、多くの国民は様々な宗教的儀礼を実践し、思考パターンに影響を受けています。
そのため、自らが何らかの宗教グループの一員であると自覚していない人々が非常に多く暮らしていると考えられ、
中国において信仰されている宗教がそれぞれどの程度の割合を中国人口の中に抱えるのかについて、正確な数字を把握するのは困難です。
しかし、2014年に実施された「中国家庭追跡調査(China Family Panel Studies)」と呼ばれ調査プロジェクトによると、「無宗教」と「道教や儒教を始めとした思想形体によって影響されている信仰(民俗信仰)を持つ人」を合わせた数は73.56%を占め、それ以外は他の宗教が占めるという数字が公表されました。
具体的な割合は以下の通りです。
- 無宗教+民俗信仰
- 73.56%
- 仏教
- 15.87%
- キリスト教
- 2.53%
- イスラム教
- 0.45%
- その他の宗教
- 7.6%
(参照:wikipedia)
この統計にも出ている通り、無神論者と主張する多くの中国人は、実際には何かしらの民俗宗教の影響を受けているであろうことが分かります。
また、この中国の民俗信仰に関する状況は、中国の人々の多くが如何に無意識的に宗教的思想から影響を受けて世界の物事を認識しているかを示す良い例と言えるでしょう。
中国における4つ(5つ)の公認された宗教
そんな現在の中国ではいくつかの宗教が制度上で公認されています。
その宗教とは、
- 道教
- 仏教
- キリスト教
- プロテスタント
- カトリック
- イスラム教
の4つの宗教で、キリスト教をそれぞれの宗派ごとに数えた場合は5つとなります。
共産主義を採用している現在の中国では儒教は公認されていない
ちなみに、中国に生まれた歴史的人物「孔子」に起源を持つ儒教は、長い時間を掛けて中国の思想や伝統に大きな影響を与えてきたわけですが、儒教は公認の宗教に含まれていません。
これは、無神論を標榜する共産党が政権をとって中華人民共和国が成立して以降、宗教に関して制限が掛けられることとなり、特に儒教に対しては、
革命に対する反動である
として激しい弾圧が加えられたからです。
儒教の思想には、
- 古えの君子の政治を理想の時代を理想とする
- 支配者の徳による王道によって天下は治められるべきである
という考えがあり、「財産の一部または全部を共同所有することで平等な社会」を目指す共産主義とは全く相容れないものだったからです。
ただし近年、文化面からソフトパワーの影響を世界中へ拡大したい中国は、中国文化の宣伝を行ってく中で儒教を再評価し始めているようです。
ちなみに、中国人の多くが実際は儒教や道教の思想に影響されているにも関わらず、「無宗教」だと考えているかの理由についても、共産主義を土台とした中華人民共和国の成立が大きく関係していると考えられます。
中国公認の四大宗教をそれぞれ見ていこう
現代の中国における宗教事情や割合を見てきましたが、ここからは中国で公認されている4つの宗教について、歴史も踏まえながら見ていきましょう。
道教
漢民族を中心とした中国人の多くの慣習や思想の中には道教の影響が見られることから、事実上の中国最大宗教と言えるのが道教。
道教は中国が発祥の宗教で1700年以上の歴史があり、中国の中心部郊外にあたる地域と中国東部で主に信仰されてきました。
また、道教の始祖は「老子」で、その教義は「道(タオ:Tao)」に関するの老子の著書に基づき、宗教と哲学の要素が組み合わさっているのが特徴です。
特に、謙虚、慈悲、倹約の心を思想の中心としています。
さらに、この道教の思想は、複数の古代中国の教義を信仰する土着の宗教や哲学が基礎となって構成されているだけでなく、その後に各地で発生した信仰や思想にも影響を与え、中国文化の中では根底を支える思想形態の一つとなっていきました。
例えば、中華圏の文化で有名な「陰陽太極図」は、道教の思想の根本を表したものです。
そして現在の中国には、1,500もの道教の寺院と僧寺があるとされています。
仏教
中国国内で比較的広く信仰されている宗教の一つが仏教で、仏教信者の大半は漢民族だと言われます。
ただし、漢民族の中には、日々、仏教の教えに基づいて行動してはいないものの、歴史的、文化的な文脈で仏教を実践している人々も多いため、中国における仏教徒(特に漢民族)の正確な数を把握することは非常に困難です。
一方で、今日の中華人民共和国に組み込まれているチベット自治区のチベット人を始め、他にも中国国内で暮らす少数派のモンゴル人、ローバ族、メンバ族、トゥチャ族といった民族グループも仏教を信仰しています。
そんな仏教は、紀元前2世紀頃に商人達が荷物を運ぶのに使ったシルクロードを通って、インドから中国に伝わりました。
今日、仏教はチベットと内モンゴル自治区をはじめ、中国のいくつかの地域で信仰され、その教義が実践されています。
キリスト教
中国国内には、カトリックとプロテスタントのキリスト教2大宗派のどちらかを信仰する人々が、全人口の2%強いるわけですが、中国でキリスト教の布教が始まったのはかなり歴史を遡ります。
西暦635年にネストリウス派(古代キリスト教の教派の1つ)の司祭一行が、ペルシア帝国から中国にやってきました。
ネストリウス派のキリスト教が中国における布教の足掛かりを得るには時間がかかりましたが、現在では中国の一部で根づいています。
一方で、キリスト教が中国で急速に発展を遂げたのは、1840年に清とイギリスの間に勃発した阿片戦争後のことです。
この戦争を終わらせるために両国が結んだ南京条約によって、中国の港の多くが外国へ開かれ、それと同時にヨーロッパから多くの宣教師達がやってきた結果、カトリックやプロテスタントの人々が増えていったのです。
ちなみに、これまでに数多くの教会が建てられてきましたが、中には中国における宗教的な観光地となっているものもあります。
イスラム教
イスラム教は1300年以上前に、アラブ世界から中央アジアを通って中国へ伝わってきたと言われます。
現在は、ウイグル族、回族、カザフ族、ウズベク族、タジク族、タタール族、キルギス族、トンシャン族およびバナン族といった、主にテュルク系民族が中心で、中国においては少数民族に分類される人々によって主に信仰されています。
そして現在は、中国のほとんどの街でイスラム教徒のコミュニティが点在しているものの、特に、
- 新疆ウイグル自治区
- 寧夏回族自治区
- 甘粛省および中国北西部の青海省
には比較的多くのイスラム教徒が暮らしており、例えば疆ウイグル自治区においては住民の60%近くがイスラム教を信仰しています。
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中国の宗教と割合|道教や儒教の中国起源の信仰から世界的宗教の状況のまとめ
中国の宗教事情について見てきました。
意外なことに、中国は多宗教国家と言え、道教、仏教、キリスト教、イスラム教の4つは公認された宗教として信徒を抱えています。
また、共産主義を採用した中華人民共和国では過去に弾圧されて公認はされていないため、統計に出てくることも少ないですが、儒教の思想や哲学も、様々な信仰へ影響を与えています。