ケルト神話に登場する妖精、女神、魔女などを10体紹介していきます。それぞれの名前や、伝説などについて確認していきましょう。
古代ローマ人がアルプス以北へ進出してくる以前からヨーロッパに住んでいたとされるケルト人達の間には、他とは違う独特の伝承や物語が語り継がれていました。
ケルト人の間で語り継がれていたこれら物語はケルト神話と呼ばれ、その世界観の中では様々な超人的な存在、例えば、妖精や女神、他にも魔女などが描かれています。
この記事では、そんなケルト神話の入り口として、ケルト神話に登場する10の妖精や女神の名前から伝説までを紹介していこうと思います。
ケルト神話の妖精1:オェングス(アンガス)
(出典:wikipedia)
オェングスまたはアンガスは、ケルト神話における神の一族(トゥアハ・デ・ダナーン/トゥーアサ・ジェー・
アンガスの頭上には彼の口づけが形を変えた数多くの鳥が飛び回っているとされ、この小鳥のさえずる声は、人々へ恋心となって飛び込んでいくと言われます。
そんなオェングスは、ケルト神話の伝説によれば、ダーナ神族の最高神「ダグザ」と、女神「ボアーン」の息子で、ボイン川のほとりのニューグレンジの近くで養父ミディールによって育てられました。
そして、成人するとダグザの王宮を訪ね、最終的にはダグザの王宮を得たことで妖精国の王となりました。
ケルト神話の妖精2:ブラン
(出典:wikipedia)
「祝福されたブラン」としても知られるブランは、ケルト神話の健康の神であり、愛と美の女神ブランウェンの兄であり、ウェールズの海の神スィールの息子。
ブランという名前は「カラス」または「ワタリガラス」の意味で、古代ウェールズの物語集「マビノギオン」に現われます。
また、海の神であるブランは、どんな家にも入れないほどの巨体だったとされます。
そしてケルト神話の中では、いくつかの物語でブランが登場します。
例えば、
アイルランド王マソルーフがブランウェンと結婚したものの、その後ブランウェンに酷い仕打ちをするようになった。
その結果、アイルランドとブリテンの間で戦争が起こり、ブランと部下たちがアイルランド王を殺した。
しかし、ブランウェンは戦いによる激しい破壊に絶望して死んでしまった。
という話があれば、別の物語では、
ブランに美しい女性が近づき、死や悲しみ、悪意、病気のない島々を探しに行くよう伝えた。
ブランはこの使命を果たして女人の島を見つけた。
といったことが語られています。
ケルト神話の妖精や女神3:リアンノン
(出典:wikipedia)
リアンノンは、ケルト神話の中で月と馬の女神として描かれ、また、中世ウェールズの物語集「マビノギオン」の中でも「マギノギ四枝」における中心的な存在。
リアンノンはまた、白馬で人間世界と妖精の王国とを行き来することで知られ、彼女に心を打たれれば、心が霊感と愛とで満たされると言います。
そんなリアンノンは、マビノギの第一枝「ダヴェドの大公プイス」と第三枝「スィールの息子マナウィダン」に登場します。
例えば、第一枝の中で描かれるリアンノンの物語は以下のようなものです。
ダヴェドの大公プイスはリアンノンを追っていた。そして、リアンノンを捕らえると、彼女の心も掴んだ。
その後、二人は結婚して息子をもうけた。
しかし、息子は盗まれてしまい、保護したグウェント・イス・コイトの領主テイルノンによって、妻と共に自分たちの息子として育てられた。
ところが、この子は驚くほどの速さで成長。
テイルノンは後に息子とプイスが似ていることに気づき、大公の元に返した。
ケルト神話の妖精4:オイフェ
(出典:wikipedia)
オイフェは、アイルランドで最も有名なケルト神話のキャラクター「リール王」の二番目の妻で、一番目の妻エヴァの妹。
エヴァは王との間に4人の子をもうけましたが、4番目の子供を産んだ後で亡くなってしまった後、残されたリール王は3人の息子と一人娘の母親を求め、そこでオイファが選ばれたのです。
伝説によれば、オイファは魔法が使えたそう。
そんなオイファに関しては、次のようなエピソードがあります。
結婚当初は王と子供たちとの暮らしを楽しんだオイファだったが、すぐに王が子供たちを可愛がることに嫉妬するようになった。
ある日、子供たちと一緒に近くの湖に出かけたオイファは、子供たちに魔法をかけて白鳥に変えてしまった。
そして、子供たちは白鳥として、デラヴァラ湖、モイル海峡、イニシュグローラ島の三か所で、同じ期間ずつ過ごしながら900年間生きなければならなくなった。
この呪いは、聖パトリックがアイルランドに到着したことを知らせる鐘の音が白鳥たちの耳に届いたときにようやく解かれるというものだった。
しかし、そうは言っても元々人間だった白鳥たちは話をすることが出来たので、美しい歌を歌って父王に何が起きたかを知らせた。
王はデラヴァラ湖にやってきてフィンヌーラと話をし、オイファが魔女であることと子供たちに呪いをかけたことを知った。
王は激しく怒り、オイファを霧の中に追放し、オイファはその後、二度と姿を見せることはなかった。
ケルト神話の妖精5:ダナ
ダナはケルト神話が枝別れていった中の1つとされる「アイルランド神話」において、最も偉大な女神の一人とされる存在で、ダーナ神族における女神達のリーダー的存在でした。
別名として「ダヌ」や、アイルランドと同じケルト系統であるウェールズにおいては地母神「ドン」として知られます。
その名前の意味は、賢さ、知識、富、豊穣、教師などで、ダーナ神族(トゥアハ・デ・ダナーン/トゥーアサ・ジェー・
ダナは他の女神達よりも遥かに強い力を持っていたとされ、また、インド神話に登場する女性「ダヌ」と関連しているとの説もあります。
ケルト神話の妖精6:ブリギッド
(出典:wikipedia)
ケルト神話の神々や妖精の中で最も有名な女神の一人がブリギッド。
ケルト神話においてはダーナ神族の一員であり、最高神ダグザの娘であり、また、「炎のブリジッド」として知られるように、火の要素を持つ女神でした。
さらに他にも、金属細工、豊穣、家畜、作物の実り、詩の女神として描かれます。
一方で、ケルト神話の中でブリジットは、「グレートマザー」と呼ばれる神の母であり、最高神ダグザはブリジットの息子であるという説も存在します。
伝説によれば、ブリジッドは生まれてすぐに牛乳で沐浴し、赤い耳と白い体を持つ妖精界の乳牛から採れた、純粋な乳しか飲まないと言います。
ケルト神話の妖精7:ディアナ
(出典:wikipedia)
その名前はラテン語のdius(日光)とdium(空)と繋がりがあるとされることからも分かる通り、ディアナはローマ神話での狩猟、月、誕生の女神。
また、自然、特に野生動物や森林と関わりがあるとされ、伝説の中でディアナは、ニンフのエゲリアとともにネミの森で暮らしていたと語られます。
さらにディアナは、魔法の分野で最も大切な存在。
1899年に書かれた魔女の歌「アラディア」によれば、ディアナは人類、小びと、巨人を作った星の精で、ローマ近郊のネミ湖岸にあるディアナ・ディモレンシスの森は、最も有名なディアナ信仰の場です。
ちなみに、ケルト神話のディアナは、ギリシア神話の女神アルテミスと同一視されることもあります。
ケルト神話の妖精8:ディルムッド・オディナ
(出典:wikipedia)
ディルムッド・オディナまたはディアルムド・ウア・ドゥヴネは、ケルト神話の中で妖精や魔女には分類されないものの、超自然的な力を持つとして描かれる登場人物。
ケルト神話に属するアイルランド神話の中でも、「フィン物語群」に登場する「フィアナ騎士団」の最も優れた騎士であり、伝説によると、愛と若さ、そして美を司る神オェングス・オグは、ディアルムドの守護神であり養父だったとされます。
そして、その養父からモラルタという名の魔法の剣を授かったディアルムドは、無敵の優れた戦士として戦場に名をはせることとなります。
また、ディアルムドは人並みはずれて美しく、妖精によって額に付けられた有名な「黒子(ほくろ)」を持っていました。
その妖精は若さの化身であり、この黒子が額に付けられたことによって、ディルムッドはあらゆる女性を魅了し、彼女たちから愛されるようになったのです。
ケルト神話の妖精や女神9:アーシン(オイシン)
(出典:wikipedia)
アイルランド民間伝承の中でも、最も有名な物語はとして、伝説の英雄フィン・マックールの息子「アーシン(オイシン)」にまつわるものがあります。
アーシンの母親は元々、妖精だったこともあり、ある日、アーシンが森で狩りをしていると、金髪のニーヴという名の美しい妖精が近づいてきて、ニーヴはアーシンを愛人にしたいと言い寄り、ティル・ナ・ノーグと呼ばれる妖精たちの楽園に来るように頼んだ。
アーシンは同意し、その後、常に若いままの姿でいられる楽園で300年間暮らした。
しかし、幸せではあっても、ある時から故郷に帰りたいと願い始めたアーシンのために、ニーヴは旅に必要な魔法の馬を与え、故郷に帰省することを提案した。
ただし、地に足をつけてはならないという条件と引き換えにであった。
アイルランドに帰り着いたアーシンは、男たちが以前よりもずっと弱くなっていることに加えて、国中がキリスト教に改宗していたことに驚いた。
そんな中、馬で道を進んで行くと、3人の男が岩を持ち上げようと苦労しているところに出くわした。
アーシンは自分なら楽々と持ち上げられることが分かっていたので、馬を止めて手助けしようとした。
ところが、その行為によって馬の腹帯が滑って足が地面についてしまった。
すると、たちまちアーシンの体は老いて弱々しくなって盲目になり、馬は消えてしまった。
その後、聖パトリックはアーシンをキリスト教に改宗させようとしたが、アーシンは異教徒のままであることを選んだ。
この話の興味深い点は、キリスト教徒に比べて異教徒が生き生きして力強い存在だと暗に描かれていることです。
おそらく、ケルト文化の影響下にあった当時の人々による、キリスト教文化やキリスト教徒に対する批判だったのかもしれません。
ケルト神話の妖精や女神10:モーガン・ル・フェイ
(出典:wikipedia)
モーガン・ル・フェイは、モルガーナと呼ばれることもある、アーサー王とキャメロットの魔法の世界の主要な人物です。
ケルトに由来すると言われるアーサー王伝説の中では、アーサー王の異父姉であり魔女として描かれます。
アーサー王伝説の中でも12世紀に著された「マーリンの生涯」から登場し、その美しさと魅力で男性を誘惑しては危険な状況に向かわせたり、マーリンやアコロンと関係を持つなど、悪役として描かれることで物語を盛り上げていきました。
ちなみに、アーサー王伝説に登場するこの魔女「モーガン・ル・フェイ」と、ケルト神話の女神「モリガン」とは、混同しないことが大切。
とはいえ、この二人の間につながりがあるとする説もあります。
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ケルト神話の妖精・女神・神・魔女10体の名前や伝説を紹介!のまとめ
ケルト神話に登場する、妖精や女神など、人を超越する10の登場人物たちを紹介してきました。
ケルト神話には、他にもまだまだ多くの妖精や神、さらには英雄が登場するので、興味が沸いたら早速調べてみましょう。