スペインのシエスタ|昼寝(昼休憩)はなぜ広まったのか?時間は?

スペインのシエスタについ見ていきます。昼寝や昼休憩として知られるこの習慣はなぜ広まったのでしょうか?シエスタの時間とはいつなのでしょうか?詳しく解説していきます。

スペインに関して有名なことの1つにシエスタがあります。

スペイン人のライフスタイルで一番と言ってよいほどシエスタは有名で、これは、昼寝も含めた休憩のために、午後の一定時間、活動を休止する習慣のことです。

また、シエスタが文化の1つにさえなっているスペインでは、この習慣を重んじて昼寝コンテストなるものまで登場するほどです。

スペインにおけるシエスタとは一体なんなのか?

一般的な時間帯はいつなのか?

なぜシエスタがスペイン に広まったのか?

スペインの有名な習慣「シエスタ」について、詳しく解説していきます。

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そもそもシエスタとは何なの?

まずは、スペインの有名な習慣「シエスタ」についてのおさらい。

シエスタ(siesta)とは、簡単に言ってしまえばスペインにおいて「昼寝」または「昼休憩」を指す言葉。

ただし、日本人が行ったりイメージする典型的な昼寝や昼休憩よりも長いのが特徴で、地域や人によって多少の誤差があるものの、シエスタにはだいたい3〜4時間の時間が割り当てられるのが一般的です。

また、上に示したように、シエスタと言えば「=昼寝」と思われることがありますが、決して昼寝だけを指すのではなく、「昼寝も含めて可能な長い昼休憩」と表現した方が、より適切だと言えると思います。

伝統的なシエスタの時間とは?

スペインにおいてシエスタが行われる時間帯に関しては、地域や人々の間で多少のばらつきはあるものの、概ね14:00〜17:00(13:00〜16:00)と言うのが最も一般的で、仕事によっては16:00〜18:00または19:00までをシエスタに当てる人もいます。

その両者の違いは主に、

  • 14:00〜17:00(13:00〜16:00)にシエスタをとる人
    • 商店や一般的な職場(企業や官公庁など)で働いている人
    • その他多くの人々
  • 16:00〜18:00(19:00)にシエスタをとる人
    • 上記のシエスタ時間に接客業を行っている人たち(レストランで働いている人など)

といった感じです。

このように、スペインでシエスタと言った場合、基本的には14:00〜17:00(13:00〜16:00)という時間帯が最も広く受け入れられていますが、その時間帯に取れない人は時間をずらしてシエスタを取るため、2つの時間帯が伝統的に存在してきました。

スペインでシエスタが受け入れられてきた理由

ではなぜ、一見すると経済的に見て非効率的に感じるシエスタのような習慣が、スペインでは受け入れられてきたのでしょうか?

この疑問については、次のように4つの理由があると考えられます。

理由① 日中の暑さを避けるため

シエスタがスペインで受け入れられていった理由の中で最も大きな理由と言えるのが、「日中の暑さを避けるため」というもの。

スペインは特に午後の暑さが厳しい国で、シエスタは元々、畑仕事をする農夫たちが暑さを避けるために始めたものであり、それがやがて他の人たちの間でも取り入れられていき、習慣化されていきました。

昼寝をして疲れをとった後はまた仕事に戻り、遅い時間まで働くことで、結果的に休憩せずに働き続けるよりも長い時間働くことが出来たのです。

理由② かつて営業時間が制限されていたこともシエスタの普及を促した

農家から始まって室内で働く人たちにも受け入れられていったシエスタはその後、室内の温度がエアコンで管理されるようになってからも続きました。

ではなぜ、室内が涼しく保たれるようになったというのに、シエスタの習慣は残り続けたのでしょうか?

これについては、かつてスペインは法律で「商店の営業時間を週72時間、日曜営業は年間で8日のみ」としていたことがあったというのが1つの理由だと言えるでしょう。

以前までは無制限にお店を開いておくことが出来なかったため、店側は最も効率よくお客さんを獲得出来る時間に営業する必要に迫られました。

結果として多くの商店は、暑さによって多く人が外での活動を避ける時間帯には店を閉め、涼しくなった夕方から再開して遅くまで営業するという方法を選び、結果的に、店を閉めている間は今まで通りのシエスタ時間として残っていったのです。

ただし、この営業時間の規制は近年緩和され、商店は週90時間、日曜営業は年10日まで可能になっています。

理由③ ゆっくりと昼食に時間をかけるスペインの習慣

シエスタの伝統を支えてきた要因の1つには、長い時間をかけるスペイン人の昼食習慣もあるでしょう。

スペインの家庭では通常、伝統的に母親が家族のためにたっぷりの昼食を用意します。

成人した人でも家族と一緒に住んでいたり実家の近くに住んでいるのであれば、昼には実家へ戻って母親の手料理を食べることは今でも行われており、2時間ほどかけて(時間が許せばもっとゆっくりと)、さらにお酒を一緒に楽しむこともあります。

そしてその後、一休みしてから仕事に戻るのです。

もちろん現在において、このようにゆっくりと昼食を家族と摂れるような人は少なくなってきていますが、それでも地方には、こういった生活スタイルが日常となっている人たちがいます(※都市部では必ずしも職場が自宅に近いとも限らず、食事をとりに帰宅することも少なくなりました。それよりも終業時間を早め、帰宅時間を早めるようになっています。)

理由④ 短い睡眠時間を補うためのシエスタ

スペイン人の睡眠時間は、世界保健機関(WHO)が推奨する時間よりも1日あたり1時間少なく、また、世界的に見てもトップレベルで遅くに就寝する人々だと言われています。

その結果、スペイン人は夜の睡眠時間不足を補うためにシエスタと必要とするというのも、シエスタが習慣として残っている理由だとする意見があります。

スペインの時間は本来の時間より遅らされた

スペイン人の睡眠時間が少ない理由の1つには、属しているタイムゾーンの本来の時間よりもスペインの時間が遅らされているという点を挙げられます。

スペインはポルトガルと共にイベリア半島に位置しており、イギリスと同じ「グリニッジ標準時(GMT)」に属するにも関わらず、それよりも1時間ほど遅い「中央ヨーロッパ標準時」の時間に合わせられているのです。

これについては、

  • 第二次世界大戦中、当時の独裁者であったフランシスコ・フランコが、ナチスドイツに従って結束するために、ドイツが属する中央ヨーロッパ標準時に合わせた
  • 単純に軍事作戦実行時の時刻的な混乱を避けるために中央ヨーロッパ標準時を用いた

など、いくつかの仮説がありますが、いずれにせよスペインの時間は第二次世界大戦中に1時間遅らせられ、終戦後も戻されることなく今まで続いているのです。

そして、これによってスペインの朝は暗く、夜は明るくなった結果、以下に挙げる夜更かしの傾向が強くなり、スペイン人の平気的な睡眠時間は短くなったと考えられます。

夜更かし→睡眠不足→昼寝

スペインの時間が遅れて夜でも明るい時間が延びたこともあり、スペインでは遅い夕食や夜更かしの習慣が強化され、ある種の文化となって続いています。

例えば、他の国で夕食と言えば、大体18:30から遅くとも20:00ぐらいには開始しますが、スペインでの夕食は早くても20時で、通常は21:00または21:30、遅い場合は22:00に開始なんてことが一般的です。

さらに、他の国と同様に夕食後はもちろんナイトライフを楽しむために、多くのスペイン人はすぐ寝ることもなく、人によっては街に繰り出したりするため、スペインの夜は長く、真夜中から朝の3時頃まで街は賑わいます。

結果、自ずと夜の睡眠時間は短くなり、その不足分を補うためにも、さらには次の夜を元気に過ごすためにも、シエスタなしでは難しいといった状況が生まれているのです。

また、多くのスペイン人はこの夜更かしの習慣を変えたいと思っていないことも、シエスタが今でも受け入れられている理由なのでしょう。

近年はシエスタ文化が少しずつ衰退している

2016年、スペインは首相宣言として、公的な営業終了時間を19時から18時へと変更しました。

これまでの2時間の昼休みを撤廃し、1日の拘束時間を短縮したのです。

この出来事が象徴しているように、現在のスペインにおいて伝統的なシエスタ文化は少しずつですが廃れつつあります。

現代的な職場環境では、日中の暑さが厳しい時間帯でもエアコンの普及により、働き続けることができるようになっていることもあり、長時間の昼休憩をとることを望まない、望めない人がほとんどです。

また、国内には大型スーパーやデパートが増え、こういった商業施設は当たり前のようにシエスタの時間帯も営業しいます(この点を踏まえると、暑さの心配がない冬の時期など、一部のスペイン人がシエスタをとっているこの時間帯に買い物に行くのはよい考えです)

このような状況となった結果、シエスタを取る根拠が薄れてきており、特にマドリードやバルセロナといった都市においては、グラナダやサラマンカといった地方の街と比較して、シエスタの習慣は下火になってきているのです。

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スペインのシエスタ|昼寝(昼休憩)はなぜ広まったのか?時間は?のまとめ

スペイン で最も有名な習慣の1つ「シエスタ」について見てきました。

ちなみに、日中の活動効率を高めるために、昼寝をすることは良いと言われています。

また、スペイン医師会の発表によると、シエスタにはストレス軽減や記憶力、注意力、循環器機能の向上といった効能があるそうです。

この点を踏まえると、シエスタ習慣と言うのは、実は人間の健康や幸福度を高める上でとても有効な習慣なのかもしれません。

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