世界に数ある諜報機関の中でも、その能力が高いと言われるスパイ組織・諜報機関を10個紹介していきます。実在するスパイ組織を確認していきましょう。
国外を担当するスパイ組織または諜報機関は、海外からの潜在的な脅威に対する防衛の最前線で、複雑な要素が絡み合いながら常に変化する、現代の国際情勢下で国を守っていくには重要な機関です。
国家の安全保障上で必要な情報の収集や分析を行い、自国政府へ報告し、国家の外交戦略策定へ協力します。
また、必要であれば様々な形態のスパイ活動を実施し、偽情報を拡散して敵国や潜在的な脅威を封じ込めたり、また諜報機関によっては暗殺などを実行して、脅威を取り除くこともあります。
この記事では、そんな情報機関の中でも、外部からの脅威に対抗する対外諜報機関として世界的に優秀だとされる、10の組織を紹介していこうと思います。
国際情勢を分析したり、歴史の裏側を理解する際には、この情報機関の存在に対する知識が必要なこともあるので確認しておきましょう。
- 世界のスパイ・諜報機関1:中央情報局(CIA)
- 世界のスパイ・諜報機関2:カナダ安全情報局(CSIS)
- 世界のスパイ・諜報機関3:秘密情報部(SIS)
- 世界のスパイ・諜報機関4:オーストラリア機密情報局(ASIS)
- 世界のスパイ・諜報機関5:国家安全部(MSS)
- 世界のスパイ・諜報機関6:ロシア対外情報庁(SVR)
- 世界のスパイ・諜報機関7:対外治安総局(DGSE)
- 世界のスパイ・諜報機関8:調査分析局(RAW)
- 世界のスパイ・諜報機関9:連邦情報局(BND)
- 世界のスパイ・諜報機関10:イスラエル諜報特務庁(モサド)
- 合わせて読みたい世界雑学記事
- スパイ・諜報機関10選!世界で諜報活動を行う実在するスパイ組織のまとめ
世界のスパイ・諜報機関1:中央情報局(CIA)
アメリカの中央情報局(CIA)と言えば、世界で最も名前が知られている対外諜報機関またはスパイ組織でしょう。
ハリウッドを映画を始めとした作品で、これまで数え切れないほど題材として取り上げられてきたため、CIAという名前を挙げれば、大抵の人は特に説明を聞くことなくアメリカの諜報機関と認識します。
そんなCIAは1947年に組織され、今日存在する各国のスパイ組織または諜報機関の中では、古くから存在するうちの1つで、その主な任務は、アメリカを脅かすかもしれない海外での動き、特にテロや核兵器、その他の大量破壊兵器についての監視です。
また、情報防衛やサイバー戦争にも対応します。
一方で、海外からの情報収集並びに分析が基本的な役割であるため、CIAが国内で収集する情報はわずかです。
そして映画などでも描かれている様にCIAは、必要な場合、スパイ活動や情報収集以外に、準軍事的な極秘工作活動も行います。
世界のスパイ・諜報機関2:カナダ安全情報局(CSIS)
カナダは世界で最も安全な国の1つですが、この国が安全に保たれている功績の大部分は、カナダの主要諜報機関であるカナダ安全情報局(CSIS)によるものです。
(出典:wikipedia)
CSISはカナダの国家安全保障に関するすべての事柄を扱っており、任務には、
- 機密情報の収集
- 秘密活動の実施
- 潜在的脅威に関する政府へのアドバイス
が含まれます。
「ファイブ・アイズ」、正式名称「UKUSA協定」と呼ばれる、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5ヵ国による諜報活動(スパイ活動)協定において、CSISはカナダ代表として参加。
このファイズアイズに参画する5ヵ国が、世界中に張り巡らせたネットワークで得た情報を利用することで、CSISは世界的にも非常に優れたスパイ活動が可能になるのです。
このように、カナダの首都オタワに拠点を置くCSISは世界中から情報を集め、カナダとその国民に脅威を及ぼしかねないものを取り除いています。
世界のスパイ・諜報機関3:秘密情報部(SIS)
秘密情報部(SIS)はイギリスが抱える対外諜報機関で、一般的には「MI6」として知られます。
MI6は有名なジェームズ・ボンドの映画「007シリーズ」によって、広く世界的に知られており、その認知度はCIAに次ぐと言えるでしょう。
MI6は他の対外諜報機関と同様に、海外から情報を集めて分析するのを主な役目としており、テロ、核兵器、麻薬の違法取引、組織犯罪、その他にイギリスの利益と国家安全保障を脅かす可能性のある活動について特に目を光らせます。
また、アメリカのCIAを始めとした諸外国の諜報機関との連携も行っており、その諜報能力は世界的に見てもトップレベルに優れていると言われます。
そんなMI6は、1909年に組織された世界で最も古くからある諜報機関の1つで、長い歴史の中で様々なスパイ活動や秘密工作活動を行ってきました。
しかしながら、その実績は潔白とは程遠いもので、近年では作戦の実施方法に関して論争を巻き起こしています。
例えば、必要な情報を得るために拷問を行ったり、囚人を正式な手続きなく他国へ引き渡したりしているといったケースが挙げられているのです。
ちなみに、MI6が対外関係を扱っているなら、内政を扱う機関はMI5として知られる情報機関「保安局」が担っています。
世界のスパイ・諜報機関4:オーストラリア機密情報局(ASIS)
キャンベラに本部を構えるオーストラリア機密情報部(ASIS)は、アメリカにおける中央情報局(CIA)に相当するオーストラリアの諜報機関です。
主に国際的または対外機密の情報を扱っており、多くの活動において世界中の他の同じような機関と連携しています。
(出典:wikipedia)
ASISは1952年に組織されましたが、1972年にオーストラリアの「デイリー・テレグラフ」がこの機関の存在を暴露するまで、一般市民はその存在について知らないままでした。
そんなASISは他の多くの諜報機関と同じく、これまで多くの事件に関わってきています。
最もよく知られている事件の1つは、1988年にパプアニューギニアで起きた出来事で、伝えられるところでは、ASISはスパイ活動を通して、パプアニューギニアの独立運動を抑えようとしたらしいのです。
また、1973年9月にチリで起きたクーデターにおいて、その数か月前から撤退を命じられていたにも関わらず、ASISは秘密裏にこの件に関与したと言われます。
世界のスパイ・諜報機関5:国家安全部(MSS)
正式名称を「中華人民共和国国家安全部(MSS)」とする国家安全部は、1983年に組織された中国の治安当局であり諜報機関。
本部は北京にあり、対情報部門と社会調査部門を含む17の局があるとされています。
(出典:wikipedia)
また、MSSは中国のインターネット検閲で中心的な役割を果たしており、国民を外の世界から切り離し、中国の人々に影響を及ぼすであろう情報を、政府が統制できるようにしています。
さらに、国内の反対意見や、中国を統治する共産党に対して、国民の反抗を招きかねない事態に対処する責任もあります。
加えて、MSSは経済的なスパイ活動にも深く関わっているとされ、例えばここ最近、世界中から機密情報を収集する手助けをしているとして疑われている中国の通信会社大手ファーウェーは、このMSSに繋がっているかもしれないとされているのです。
このようにMSSは、中国共産党の下で中国の国家安全保証や外交の戦略上、非常に重要な役割を果たしており、中国国内外に10万人以上の諜報員、つまりスパイを抱えているとさえ考えられています。
世界のスパイ・諜報機関6:ロシア対外情報庁(SVR)
ロシアと言えばかつて、KGBという有名な諜報機関を抱えていました。
しかし、ソ連崩壊のおよそ1ヶ月前にこのKGBは解散させられ、KGBの中でも対外情報活動を担当していた第1総局の後継機関として、ロシア対外情報庁(SVR)が設立されました。
第2総局が国内安保も担当していたため、KGBは国内外の諜報活動を広く担っていましたが、このSVRは対外諜報活動だけに焦点を当てたものになります(国内に関しては第2総局の後継機関であるロシア連邦保安庁、FSBが担当している)。
(出典:wikipedia)
SVRの任務は様々な形態のスパイ活動を行うことであり、その中には外国での軍事的および経済的スパイ活動や、電子機器を使用した情報収集が含まれます。
そして、ロシアの軍事的対外諜報機関であるロシア連邦軍参謀本部情報総局と緊密に連携し、ロシアの対外的な脅威を事前に排除したり防止したりしているのです。
ちなみにSVRには、外国での暗殺疑惑やインターネット上の偽情報拡散に関わっているという推測が取り巻いており、また、ロシアは中国と同盟関係にあるため、SVRは中国の諜報機関と頻繁に連携していると考えられています。
世界のスパイ・諜報機関7:対外治安総局(DGSE)
フランス国防省の下で活動している対外治安総局(DGSE)は、アメリカの中央情報局(CIA)に相当するフランスの機関で、本部をパリに置き、主に対外機密情報と問題を扱っています(内政に関しては国内治安総局が扱っている)。
(出典:wikipedia)
およそ5000人の人員を抱えるDGSEは、国家安全保障に関するあらゆる種類の活動や作戦を実行しており、その中にはスパイによる諜報活動や、傍受による諜報活動が含まれ、そこから得た情報を分析することで、国外におけるフランスに対する破壊活動の摘発や防止を行うのです。
例えば最近では、イスラム国(ISIS)のテロ行為に対して監視を強化していました。
一方で、作戦のほぼすべては秘密にされたままで世間の目から遠ざけられており、外からではあまり分かりません。
ただし、DGSEは1990年代のルワンダ内戦で重要な役割を果たしたと言われます。
ニセ情報を広める活動を行い、それが内戦の終盤においてフランスの関与を拡大させる基礎となっていったのです。
また、DGSEはユーゴスラビア連邦共和国とコソボ解放軍との間で起こったコソボ紛争でも重要な役目を果たしました。
世界のスパイ・諜報機関8:調査分析局(RAW)
インドの対外諜報機関であるインド調査分析局、通称「調査分析局(RAW)」は、おそらく世界中全ての諜報機関のなかで最も目立たない名前をしています。
部外者ならニューデリーに本部を置く、ただの非政府組織だとさえ思ってしまうかもしれませんが、その名前に騙されてはいけません。
というのも、研究分析局は世界で最も能力の高い機関の1つだからです。
(出典:wikipedia)
1968年に対外機密情報を専門に扱う目的で組織されたRAWは、インドをテロリストの攻撃から守り続けたり、インドに直接的な影響を与えうる他国の動きを監視したりするなど、国防にとって非常に重要な役割を担ってきました。
また、その重要な役割を安全にそして安定して遂行するためにも、RAWは世界的に見てほとんど情報を開示することのない諜報機関で、過去に行った作戦やスパイ活動については、ほとんど知られていません。
一方で、RAWは他の諜報機関と頻繁に連携しており、世界中に諜報員を配置していると推測されています。
特にパキスタンの核計画を監視するために、アメリカのCIAやイスラエルのモサドといった最高峰の諜報機関やスパイ達と頻繁にコミュニケーションを取っているとされます。
世界のスパイ・諜報機関9:連邦情報局(BND)
連邦情報局(BND)は、ドイツのベルリンとプラッハに本部を置くドイツの対外諜報機関。
1956年に組織されて以降、政治情報や経済情報の収集、そして分析と評価を行ってきており、その報告は直接ドイツの首相に行い、加えて軍事と民間両方の機密情報を収集する責任があります。
(出典:wikipedia)
また、国内唯一の対外諜報機関であるBNDには、7000人以上の人員が従事しており、そのうち約2000人が国外でスパイ活動やその他必要な情報収集活動を行っているとされます。
BNDの任務は、ドイツの利益と国家安全保障上における海外からの潜在的脅威全てを認知することで、テロ、核兵器やその他の大量破壊兵器、組織犯罪、麻薬、違法な人身売買、不法移民に関する情報などを集めています。
そして他の諜報機関と同じく、BNDの活動や作戦の大部分は機密扱いですが、BNDは情報収集のために、盗聴と電子スパイ活動をよく利用していることで知られています。
例えば、BNDはプライバシーに関係なく通信回線から会話を録音したり聞き取ったりして、テロや安全保障上の脅威に備えていると考えられるのです。
世界のスパイ・諜報機関10:イスラエル諜報特務庁(モサド)
通称「モサド」として知られるイスラエル諜報特務庁は、イスラエルの国家情報機関。
同国には他にも、シンベト(イスラエル総保安庁)とアマン(イスラエル参謀本部諜報局)という2つの情報機関が存在しますが、それぞれ「ガザを含めた国内の治安」と「軍事的機密情報」を取り扱っており、対外諜報活動を担当するモサドとは役割が異なります。
モサドは対外諜報活動を通して、イスラエルの利益と安全を脅かしかねない海外の動きに関する情報を集めて分析し、必要であればスパイ活動以外にも秘密工作を通して潜在的な危険を排除します。
また、工作を担当する部署には、実力行使並びに特殊作戦を担当するメトツァダと呼ばれる課があり、その課にはさらにエリート暗殺者で構成されたキドンという対テロリスト&暗殺チームが存在しているとされます。
さらに、モサドはその諜報活動を円滑にするために、アメリカのCIAを始めとした他国のスパイ組織または諜報機関と連携しており、その中で主に中東諸国とイランの核計画といった共通の関心事について、緊密な情報共有を実施しているようです。
イスラエルは、対イスラエルの姿勢を崩さない多くのイスラム教諸国を周囲に抱えているため、モサドは国防や安全保障上において非常に重要であり、またそのことがモサドの諜報能力を世界でもトップレベルにしています。
合わせて読みたい世界雑学記事
- 勢力均衡(バランスオブパワー)とは?国際政治の理論と例を考察
- 領土問題とは?世界で起こる具体的事例を確認して理解を深めよう!
- →こちらから国際情勢に関する情報をさらに確認出来ます
スパイ・諜報機関10選!世界で諜報活動を行う実在するスパイ組織のまとめ
世界に存在する数々の諜報機関の中でも、特に能力が高いとされる10のスパイ組織を紹介してきました。
これら諜報機関について知識を持っておくことは、国際情勢や現代史を読み解く上で役立つことがあります。