アファーマティブアクションとは何か知っていますか?社会の不公平を無くそうという考えに基づいた行動で、教育や雇用の場面で実際に採用されています。
仕事やその他のことにおいて、求人に応募したけど受からなかった経験はありませんか?
その場合、受からなかった原因は何でしょうか?
職歴が不十分だったのか、もしくはもっと条件に近い候補者がいたのかもしれません。
受からなかった理由は色々考えられまが、その理由が「年齢」や「性別」、もしくは「個人の何らかの特性」によるものではないかと頭をよぎったことはありませんか?
基本的には、性別や年齢、またはそれ以外の個人的なことが理由で不合格になったと考えることは少ないかもしれませが、現実として、そのような理由で不合格になることは十分に起こり得ます。
しかし、現在はより社会的マイノリティ(少数派)や女性の雇用促進が唱えられている時代。
だからこそ、上記のような状況を変えていくためにも「アファーマティブアクション」の考えが重要になってきます。
このアファーマティブアクションとは一体なんなのか?
基本的な定義から雇用や教育における例を挙げながら解説していきます。
アファーマティブアクションとは?
アファーマティブアクションとは、別名、ポジティブアクションと言われ、「積極的改善措置」を意味する行為。
広く言えば、採用や教育機関への受け入れ、その他競争率の高い選考過程において、歴史的または慣例的に社会から除外されてきた人々や弱者に対して「優遇措置を取る」というもの。
また別な定義を用いるとすれば、
過去における社会的構造的な差別によって、現在不利益を被っている集団(女性やエスニックマイノリティ)に対し、一定の範囲で特別な機会を提供することなどにより、実質的な機会均等などの実現を目指す暫定的な措置
(引用:国際協力用語集【第4版】, p.9)
となります。
よって、アファーマティブアクションの目的は、今まで固定観念や差別的行為により除外されてきた個人、また集団に同等の機会を与えて「活躍の場を均等にする」ことなのです。
ちなみに、アメリカやオーストラリアでは「アファーマティブアクション(affirmative action)」という言葉で表現されることが多いのに対して、「ポジティブアクション(positive action)」という表現は欧州において一般的です。
アファーマティブアクションの起源
アファーマティブアクションの現状を十分に理解するには、現状から一歩離れて歴史を知ることが重要です。
20世紀半ばに導入されて以来、アファーマティブアクションに関する政策は、物議を醸し出す議題となることもしばしばありました。
機会均等を生み出すための最初の試みは1961年に実施され、その際、当時のケネディ大統領は全ての政府契約企業に対して、人種や宗教、皮膚の色、国籍などによる応募者差別を禁止する大統領命令に署名しました。
その4年後、リンドン・ジョンソン大統領は、前大統領命令の内容を拡大する、独自の大統領命令に署名します。
今まで除外されてきた人々の採用や、彼ら・彼女らに対して機会を均等に与えることを保証する、「アクションオリエンテッドプログラム(action oriented programs)」を導入して多様性を促進しなければならない、という内容が追加されたのです。
当時のアクションオリエンテッドプログラムとは具体的に、様々な「人種」や「民族的背景」を持つ従業員を積極的に採用、そして雇用しようという計画です。
そして1967年、ジョンソン大統領は女性を含めた内容に拡大して改正しました。
これが、後々のより積極的で広範囲なアファーマティブアクション(セクシャルマイノリティ、外国人、身体障害者などへの改善措置も含む)につながっていくのです。
アファーマティブアクションの例
教育におけるアファーマティブアクションの例
アファーマティブアクションは国民生活の様々な分野に取り入れられていますが、比較的よく目にしたり耳にしたりする分野の一つが高等教育。
例えばアファーマティブアクションの起源とも言えるアメリカでは、大学入学において少数派の学生の人数を確保する取り組みを続けてきています。
また日本国内においては、
大学進学は住民税非課税の低所得世帯に限って支援し、国立大の入学金と授業料を免除、私立大はさらに一定額を上乗せ助成する
(引用:佐賀新聞LIVE)
といった政策案を2017年に固めるなど、今まで社会的な構造や環境によって機会が与えられてこなかった学生に対して、より積極的な改善措置を実施していく方針が示されています。
雇用におけるアファーマティブアクションの例
雇用におけるアファーマティブアクションとは、求人、採用、研修、昇進、解雇といった点に関して、これまで差別の対象になっていた人々や弱者に対し、積極的に均等な機会を与えていくものと言っていいでしょう。
また別の見方をすると、人材の多様性を確保した雇用を実現するといった言い方ができるかと思います。
この雇用におけるアファーマティブアクションの例として、どのような取り組みを行えば「積極的改善措置」につながるか、具体的なポイントと共に以下で見ていきましょう。
求人の方法
アファーマティブアクションの下で求人を考える場合、多種多様なグループから人材を確保し、資格要件を満たす候補者をより充実させることを目的とします。
例として、求人の募集を掲載するにあたって、積極的に女性や少数派をターゲットとした広告を打っていくといった活動を挙げることが出来ます。
他にも、大学やその他の高等教育機関などで行われる、社会的弱者や少数派に関してのイベントで求人募集を掛けてみるといった方法も一つの例だと思います。
採用フローと応募者情報
また、採用フローを作る際に、社会的な弱者や少数派であることが採用側(人事部門の人間など)の印象に影響を与えないようにするのも、雇用におけるアファーマティブアクションの一例です。
例えば、応募者のエントリー情報には、性別、年齢、国籍といった情報が含まれていたとしても、これらの情報が採用の判断に用いられないように、応募者の他の記録とは別にして管理しておくといった工夫です。
そのための具体的な採用フローや、情報選別の条件を事前に明確にしておくことで、社会的な弱者や少数派かどうかに関わらず、より均等な採用プロセスを受けてもらうことが可能になるのです。
経営幹部のコミットメント
また、アファーマティブアクションを実現するための仕組みを作るだけでなく、企業の最高経営責任者や経営幹部が積極的にコミットしていくことも、雇用におけるアファーマティブアクションの実現に重要。
経営者達が組織全体に対してアファーマティブアクションの考えを啓蒙していく(書面にて職場の様々な場所へ掲示するなど)ことはもちろん、経営層やそれ以外の役職へ、積極的に女性や社会的少数派を採用していくようにします。
こうすることで、表面上の積極的改善に終わらず、より本質的な人材の多様性確保を行え、社会的に見ても雇用機会の均等を実現している優れた企業または組織として評価されることにつながるはずです。
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アファーマティブアクションとは?例を教育や雇用の面からいくつか挙げて解説のまとめ
能力や経験値に関係なく、それ以外の条件によって特定の人材が除外されることは今でも起こっています。
しかし、現代の日本は人口減少問題を抱えていたり、グローバル化が唱えられていたりと、社会のあらゆるところで、より多様な人材採用を実現していかなくてはいけない状況です。
そのためにも、アファーマティブアクションの考えは今後必要不可欠になっていくでしょう。
一方で、アファーマティブアクションが行き過ぎることで「逆差別(少数派や弱者が優遇され過ぎることで不公平な競争が生まれるというもの)」が起こってしまうという批判もあります。
その点は確かに懸念になるかもしれませんが、特に日本においては未だに女性や他の少数派の人々の機会均等が実現しているとは言えないため、アファーマティブアクションの考えが否定されることによる弊害の方が大きいと思います。
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