中国の少数民族を一覧にして紹介していきます。満州族や回族、他にもチワン族やヤオ族など、広大な中国を理解しておきたいなら少数民族についても抑えておきましょう。
世界最大級の人口を抱える現在の「中華人民共和国」は、漢民族の国家として知られます。
しかし、実は人口の9割以上を占める漢民族の他に、政府が公式に認定した少数民族の数は55にも上り、その点を考慮すると中国は多民族国家であることが分かるのです。
そのため、中国国内では漢民族のものとは異なる独特な伝統衣装や慣習を見つけることが出来、なかには中国特有の魅力となっているものもあります。
中国の少数民族とは一体どういった人々のグループなのか?
この記事では、数ある中国少数民族のなかから抑えておきたい9つの民族をピックアップして紹介していき、また、最後には55全ての少数民族の名前を一覧にしたものを掲載しておきます。
知っておきたい中国の少数民族
中国の少数民族1:チワン族(中国最大の少数民族)
中国国内55の少数民族のなかでも最大規模で、約1850万人ほどの人口規模を誇るのが、チワン族と呼ばれる少数民族グループ。
主に中国南部および南東部、チベット北部に居住し、他にも広西チワン族自治区や雲南省に多く住み、一部のチワン族の人々は湖南省、貴州省、四川省にも住んでいます。
そして、民族的特色として、
- 独自の言語チワン語を話す
- タイ語が属するタイ・カダイ語族に含まれる言葉
- 土着のアニミズム信仰を持つ一方で仏教や道教の影響も受けている
- 米を主食として広大な棚田や手工芸品、独特な錦織などで知られる
といった点を挙げることが出来ます。
また、タイ・カダイ語族に含まれるチワン語を話すことからも、タイやラオスに住む人々とは共通の祖先を有すると考えられています。
中国の少数民族2:ミャオ族(独特な文化と建築様式)
ミャオ族は山岳農村地帯で暮らし、主に昔からの居住地とされる貴州省やその周辺の省(雲南省、四川省、湖南省、海南省、広西チワン族自治区)に住む中国の少数民族集団。
中国国内ではおよそ950万の人口を抱え、南へ追いやられていった歴史を持つことから、ベトナムやラオス、そしてタイなどでもさらに200万人ほどが住んでいます。
その民族的特徴は、中国南部から東南アジア北部の山岳地帯に広がる少数民族の言語からなる語族「ミャオ・ヤオ語族」に含まれる言葉を母語とする点で、
他にも、
- 蘆笙/芦笙(ろしょう)で有名
- 蘆笙とは複数の竹製パイプを備えたミャオ族の伝統的な民族楽器
- 手工芸品で有名
- 銀を好み、女性が身に着ける銀細工の装飾品などは土産物として人気がある
- 音楽を愛する
- 歴史的に独立心が高い民族だとされてきた
- かつては勇猛果敢な戦士として知られていた
- 独特な建築様式を持つ
- 山岳ならではの建築で知られる
といった民族的特徴を挙げることが出来ます。
中国の少数民族3:ヤオ族(棚田で有名)
ヤオ族は主に広西チワン族自治区、湖南省、雲南省、広東省、貴州省、江西省などに居住し、中国国内ではおよそ300万人の人口を抱える少数民族。
居住地が重なることから、チワン族やミャオ族の集落の近くで暮らしていることがよくあります。
「ミャオ・ヤオ語族」に属する「ミエン語」を半数以上の人々が話すとされますが、一方ではタイ・カダイ語族に含まれるラッキャ語や、中国語を母語とする人々の割合も大きいという特徴を持っています。
さらに、ヤオ族の多くは山岳地帯の小さな村や町に住んで農民として暮らしていることでも知られます。
中国の少数民族4:トン族(蘆笙音楽と建築様式)
トン族(侗族)は主に貴州省、湖南省、広西チワン族自治区の主に山間部から河谷(かこく)の平野部に居住している中国少数民族。
上に名前を挙げたミャオ族が主に居住する一部の地域に住んでおり、特に貴州省ではミャオ族の集落の近くに住んでいることがよくあります。
その人口は中国国内では300万人ほどで、民族的な特徴としてはチワン族が話すチワン語と同じ「ミャオ・ヤオ語族」に属するトン語を話すことから、チワン族とは共通した祖先を持つと考えられます。
一方で、文化的には近隣に住むミャオ族にも影響されており、ミャオ族と同じくトン族も、蘆笙による独特な音楽を発展させてきました。
中国の少数民族5:ウイグル族(新彊最大の少数民族)
ウイグル人またはウイグル族は、中国国内では新疆ウイグル自治区に主に居住している少数民族集団で、他にも湖南省や河南省などの地域に一部が暮らし、国内に住むウイグル族の数はおよそ1100万人。
これは、中国の少数民族の中でも比較的大きな人口規模であり、また、イスラム教徒(ムスリム)の集団としては最大です。
ウイグル族の新疆での歴史は長く、シルクロードの交易で栄えユーラシアの文化や宗教の影響を色濃く受けてきました。
また、新疆ウイグル自治区にあるトルファン市には交河故城など、文化的に素晴らしいものが見られ、他にも「蘭州麺」などの独特な新疆料理は有名です。
一方で、言語はテゥルク語族に含まれるトルコ語と近い「ウイグル語」であり、また、人種的形質も中央アジア寄り(東アジア人よりも堀が深くて体毛が濃くがっちりとした体型)であることから、ウイグル族は中国最大の民族である漢民族や他の多くの少数民族とは様々な点で異なります。
中国の少数民族6:回族(新彊以外に住む最大規模の中国のイスラム教徒)
回族(かいぞく)は中国最大のムスリム集団の一つ(ウイグル人に匹敵する人口規模を抱える)とされる少数民族グループ。
およそ1000〜1100万の人口を抱え、国内の少数民族のなかでは最も広く中国全土に散らばっているとされ、中国北西部にある寧夏回族自治区や甘粛省、他にも青海省、河北省、河南省、四川省、雲南省、山東省の都市や村に住んでいます。
ただし、人種・民族的な特徴は漢民族と同じな点は、新彊ウイグル自治区に住むテゥルク系のウイグル人達と大きく違います。
漢民族の中からイスラム教に改宗した者達の子孫にあたるのが回族なのです。
そのため、回族独自の言語というのは無く、また、日々の生活にイスラム文化独特の風習が強く反映されているわけでもありません。
ただし、回族が話す中国語にはアラビア語やペルシャ語、そしてテゥルク語に由来する語彙が見つかることがあります。
このように、人種的にはほぼ漢民族と変わらないものの、イスラム教を信仰することで民族的には少数民族と分類される人々が回族なのです。
中国の少数民族7:モンゴル族(世界で最も有名な中国少数民族)
中国に住むモンゴル族はかつて、ユーラシア大陸のほぼ全域を征服して大帝国として知られる「モンゴル帝国」を築いたことで世界的に有名な民族グループに属する人々。
モンゴル族の帝国である元は100年ほど続き、1368年に滅亡した(実際には滅亡とまでは言えないが)後、モンゴル族の多くは北のモンゴル高原や現在の中国の内モンゴル自治区、並びにその周辺に逃れました。
そして、今日では彼らの住む居住地域が中華人民共和国に組み込まれているため、モンゴル族は中国において少数民族の一つとなっており、600万人ほどが内モンゴル、吉林省、黒竜江省、遼寧省、新疆ウイグル自治区、河北省、青海省などに居住しています。
そんなモンゴル族たちは、今でも騎馬民族として知られ、家畜を飼い肉料理で有名です。
ちなみに、中国にいる600万近くのモンゴル族の人口規模というのは、モンゴル自治区に隣接する国家「モンゴル国」に住む300万人弱の人口よりも大きなものとなります。
中国の少数民族8:チベット族(強大帝国の末裔)
チベット族はかつて、中国南西部の山岳地帯を支配下に置き、7世紀から9世紀にかけて広大な国家を築きました。
現在では中国のチベット自治区を始め、青海省、四川省、甘粛省(かんしゅくしょう)、雲南省に住み、合わせておよそ600万人が中国国内で暮らし、その半分ほどが本来の拠点であるチベット自治区に住んでいます。
シナ・チベット語族のチベット・ビルマ語派チベット諸語に分類されるチベット語を母語とする民族的特徴を持ち、高地での生活に非常によく順応した身体的機能を併せ持ちます。
また、チベット族の多くは、大乗仏教の二大系統の一つであるチベット仏教を深く信仰しています。
中国の少数民族9:満州族(清帝国を興した人々)
中国国内の満州族は、17世紀に明朝を倒し、現在の中国並びにモンゴル国の全土を支配した巨大な清帝国(1664〜1912年)を興した人々。
現在の人口は1100万人ほどで、先祖伝来の土地である遼寧省や黒竜江省、吉林省などに暮らしています。
そして、民族的には満州からシベリア・極東にかけての北東アジア地域に住み、ツングース語族に属する言語を母語とする「ツングース系民族」に分類され、元来は「満州語」を母語としてきました。
ただし、清朝以降、近年は言語的にも文化的にも漢民族社会に同化されつつあり、漢民族との同化が進んだ結果、両者の違いは徐々に無くなってきており、「失われつつある先住民族」としても知られます。
実際、今日において満州語を話す人口はわずかだとされます。
中国の少数民族一覧
中国少数民族のうち、知っておきたい9つの民族集団を紹介してきましたが、最後に中国政府が規定している55の少数民族の名前を一覧にして掲載しておきます。
アチャン族(阿昌族) | タイ族(傣族、ダイ族) | プイ族(布依族) |
イ族(彝族) | ダウール族(達斡爾族) | プミ族(普米族) |
ウイグル族(維吾爾族) | チベット族(蔵族) | ペー族(白族) |
ウズベク族(烏孜別克族) | チャン族(羌族) | ホジェン族(赫哲族) |
エヴェンキ族(鄂温克族) | 朝鮮族 | マオナン族(毛南族) |
オロチョン族(鄂倫春族) | チワン族(壮族) | 満州族(満族) |
回族(ホウェイ族) | チンポー族(景頗族) | ミャオ族(苗族) |
カザフ族(哈薩克族) | トゥ族(土族) | ムーラオ族(仫佬族) |
キルギス族(柯爾克孜族) | トゥチャ族(土家族) | メンパ族(門巴族) |
高山族(カオシャン族) | トーアン族(徳昂族) | モンゴル族(蒙古族) |
コーラオ族(仡佬族) | トーロン族(独龍族) | ヤオ族(瑶族) |
サラール族(撒拉族) | ドンシャン族(東郷族) | ユグル族(裕固族) |
ジーヌオ族(基諾族) | トン族(侗族) | ラフ族(拉祜族) |
シェ族(畲族) | ナシ族(納西族) | リー族(黎族) |
シベ族(錫伯族) | ヌー族(怒族) | リス族(傈僳族) |
ジン族(京族) | ハニ族(哈尼族) | ローバ族(珞巴族) |
スイ族(水族) | バオアン族(保安族) | オロス族(俄羅斯族) |
タジク族(塔吉克族) | プーラン族(布朗族) | ワ族(佤族) |
タタール族(塔塔爾族) |
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中国の少数民族について見てきました。
中国は漢民族が大多数を占める一方で、55に上る少数民族が公式に規定されており、その点からは多民族国家であるということが分かります。
また、こういった中国の少数民族の多くは、国境沿いの地域や、北部、南部、西部の山岳地帯に居住している傾向にあります。