聖剣エクスカリバーについて詳しく解説していきます。伝説の中での描写とは?本物は実在するのか?気になったら要チェックです!
「エクスカリバー」。その名前を聞いたことがある人も多いことでしょう。
中世ヨーロッパから伝わるアーサー王伝説の主人公「アーサー」が所有していたとされる聖剣で、このエクスカリバーによってアーサーは、様々な困難に打ち勝っていきました。
またその人気から、エクスカリバーはアーサーと関係のない物語にも度々登場し、多くのファンを惹きつけています。
この聖剣エクスカリバーとはどのような剣なのでしょうか?本物は実在するのでしょうか?
エクスカリバーについて、伝説の中で語られる描写や、イタリアのトスカーナに実在するエクスカリバーの描写に似た剣についてまでを見ていきたいと思います。
聖剣エクスカリバーとは?
聖剣エクスカリバー、または単に「エクスカリバー」と呼ばれる剣は、アーサー王伝説に登場するアーサー王が持つ剣。
伝説の中ではアーサー王がブリタニア(ブリテン島)の正当な統治者であることを証明するもの、または象徴として描かれることが一般的です。
物語や伝説によって両刃の剣または片刃の剣と、微妙に描写が異なりますが、通常は両刃の剣として描かれることが多い剣で、また魔法の力も宿しているとされます。
一方で、エクスカリバーはそのファンタジックな背景から、アーサー王伝説とは全く関係ない物語にも度々登場し、特に日本作成のファンタジーゲームなどでは聖なる上位武器の一つとして含まれることがあります。
聖剣エクスカリバーの伝説を理解するために確認したい5つのポイント
伝説のエクスカリバーの起源は10世紀頃のウェールズに遡る
エクスカリバーは、10世紀頃のウェールズにその起源を見つけることが出来ます。
10世紀頃のウェールズでアルスル(アーサー)について書かれた、
- 『アンヌヴンの略奪』という伝説または詩
- 『キルッフとオルウェン』という散文物語
に「カレトヴルッフ」として初めて登場するのです。
この「カレトヴルッフ(Caledfwlch)」のカレト(Caled)は「戦い、または硬い」という意味を持ち、ヴルッフ(wlch)は「切り目、裂け目、切り込み」を意味しています。
そして、上記二つよりも後にまとめられた『キルッフとオルウェン』という話の中では、最も重要な持ち物としてアーサーが所持し、また、アーサーと一緒に戦った戦士であるアイルランド人のスェンスェアウクが、ディウルナッハ王を殺害するためにこの剣を使用している場面が描かれています。
どうやって「エクスカリバー」という名前が出来上がったのか?
では、もともと「カレトヴルッフ」という名前だったアーサーの剣が、どういった経緯で「エクスカリバー」という名前になっていったのでしょうか?
中世イングランドにおいて聖職者として活躍すると同時に歴史家としても知られたジェフリー・オブ・モンマスは、自らの著書「ブリタニア列王史」の中で後に聖剣エクスカリバーと呼ばれるアーサーの剣について述べています。
この中でモンマスは、その剣を「カリブルヌス」と記していました。
そして、この「ブリタニア列王史」は人気を呼び、ヨーロッパ大陸へ広がっていく過程で、その名前はさらに、
- カラブルン
- カラブルム
- カリボーンヌ
- カリボーゥルク
- カリボルク
- カリボーチ
- エスカリボルク
- エスカリボール
などに変わっていき、他の名前に比べて最も人気だったエスカリボールが最終的に「エクスカリバー」となって落ち着いたと考えられるのです。
この後、他の作品でも「エクスカリバー」という名前が一般的に使われるようになっていきました。
ただし、中にはエクスカリバーという名前以外で描写される場合もあります。
例えば15世紀〜16世紀頃に作られた「聖人ケアの生涯(The Life of St Kea)」というコーンウォール語で書かれた話の中では「カレスヴォール」と呼ばれており、これは、ウェールズ語の「カレトヴルッフ」を中世コーンウォール語で呼んだものです。
聖剣エクスカリバーにまつわる伝説はいくつか存在する
アーサー王と聖剣エクスカリバーについては、たくさんの物語で述べられていますが、アーサーがどのように聖剣エクスカリバーを手に入れたかについては、2つの伝説が残されています。
石に刺さったエクスカリバーの伝説
まず、12世紀後半から13世紀初期にフランスで活躍した詩人ロベール・ド・ボロンによる「メルラン」という作品でエクスカリバーは「石に刺さった剣」として登場しました。
この剣を石から引き抜ける者は「真の王」だけであるため、アーサー王が見事にこの剣を引き抜いたことで、彼こそが神によって任命された王で、ユーサー・ペンドラゴン(ブリタニアの王の一人でアーサー王の父ともされる伝説的な人物)の真の後継者であることを証明したのです。
そして、アーサー王伝説の散文作品の一つ「ランスロ=聖杯サイクル」の一部『メルラン続伝』では、この剣こそがエクスカリバーだと明白に記されています。
湖の乙女からエクスカリバーを受け取った伝説
しかし、その後、「ランスロ=聖杯サイクル」を書き直した作品「後期流布本サイクル」が作られると、その中の「メルラン続伝」では異なる描写がされていました。
(出典:wikipedia)
この伝説の中でエクスカリバーは、すでに王となっていたアーサーに対して、湖の乙女が与えた剣として描かれているのです。
具体的には、ペリノア王との戦いでアーサーの剣「カリバーン」が折れた後、新しい聖なる剣としてエクスカリバーを湖の乙女がアーサーへ与えたという伝説です。
二つの伝説を混ぜてしまったためにエクスカリバーに関する矛盾が生まれた
ちなみに、15世紀後半に生きたウェールズ人のトマス・マロリーは、「アーサー王の死」という長編作品を作りましたが、その中で上記2つの伝説を話の中へ加えています。
さらに、ただ加えただけでなく、その2つの剣をエクスカリバーとして描写したため、そのままアーサー王の死を読むと、エクスカリバーに関しては矛盾が残ったままとなってしまっているのです。
返還されたエクスカリバーの伝説
また、「ランスロ=聖杯サイクル」に含まれる「アルテュの死」の伝説では、瀕死のアーサーが騎士グリフレットに、エスクカリバーを湖に投げ入れて湖の乙女へ返す様に命じたことも描かれています。
しかし、グリフレットはエクスカリバーは手放すのはもったいないと感じたため、湖に投げ入れたふりを2度繰り返しました。
するとアーサー王は「エクスカリバーを湖に投げ入れた時に何を見たか」と尋ね、グリフレットはエクスカリバーは水中に消えていったと答えた結果、アーサー王は嘘を見破ってグリフレットを激しく怒りました。
そして、ついにグリフレットがエクスカリバーを湖に投げ入れると、エクスカリバーが水面に当たる前に手が湖から現れ、エクスカリバーを掴んで水中に戻って行ったことで、何故アーサーがグリフレトの嘘を見破ったかが分かるような流れになっているのです。
ちなみに、湖の中に聖剣を投げ入れる行為には歴史的起源があるものと思われます。
古代ブリトン人の戦士たちは、余生へと安全に導いてくれた神への捧げものとして、戦士にとって貴重な所有物を湖の中へ投げ入れる伝統を持っていました。
また、エクスカリバーの両面にはそれぞれ、「我を連れていけ」と「我を捨てよ」という言葉が刻まれているという描写もあります。
伝説によると聖剣エクスカリバーはただ切れ味鋭いだけじゃなかった!
アーサー王を真の王足らしめるエクスカリバーは、ただその威力が凄かっただけではありません。
伝説によると、他にも優れた力を持っていたらしいのです。
まず一つ目がエクスカリバーが持つ聖なる輝き。
エクスカリバーがアーサーによって引き抜かれた後、アーサーの真の王としての力が試された最初の闘いの中で、この聖剣は「松明30本分の輝き」を発し、それによって敵の目を眩ませてアーサーを勝利に導いたのです。
また、エクスカリバーの鞘には魔法が備わっており、この鞘を所持するものは、
- 出血する傷を負っても決して死ぬことは無い
- 傷を負っても出血はしない
といった伝説が残ります。
聖剣エクスカリバーは実在するのか?トスカーナの剣は本物か?
さて、伝説上のエクスカリバーを知るためにも5つのポイントを見てきたわけですが、このエクスカリバーは実在するのでしょうか?
実は、イタリアのトスカーナには石に刺さった剣があり、これが本物のエクスカリバーなのではないかという話があるのです。
ここからは、そのトスカーナの剣について見ていこうと思います。
サン・がルガーノ修道院にある石に刺さった剣
イタリアのトスカーナ州には、サン・ガルガーノと呼ばれる元々修道院として使われていた建物があり、その修道院の隣にある礼拝堂の中には「石に刺さった剣」があります。
「石に刺さった」状態が、アーサー王伝説に登場するエクスカリバーの描写に似ていることから、「トスカーナのエクスカリバー」とも呼ばれるこの剣は、1180年頃、中世の騎士「ガルガーノ・グイドッティ」が隠者になるために、戦争と財産を放棄する中で石に突き刺したと言われています。
そして、剣の柄と数cm程の刃のみが石から出ている姿が、まるで十字架のようであるのが特徴的で、その宗教的な場所も相まって、まさに「聖剣」に相応しい雰囲気を出しているのです。
偽物だと考えられていたが中世の本物の剣であることが判明
「石に刺さった剣」としてあまりにも出来すぎていることもあり、長年の間、この剣は偽物だと考えられていました。
しかし、イタリアのパヴィア大学が2000年代前半に行った調査研究によって、この剣は12世紀の物と一致しており、確かに本物の中世の剣であることが判ったのです。
謎に包まれた騎士「ガルガーノ・グイドッティ」
一方で、この「トスカーナのエクスカリバー」を石に突き刺してガルガーノ・グイドッティの人物像は、謎と伝説に包まれています。
ガルガーノを知るための歴史的な証拠はほとんどなく、当時の文書や記録も残されていないのです。
(出典:wikipedia)
一般的にガルガーノは、傲慢で貪欲な騎士であったものの、ある日、大天使ミカエルの姿を見た後に洞窟に篭って隠者になったと考えられており、この過程で所有していた剣を石に突き刺したという話が残っています。
ちなみに、そのガルガーノと大天使ミカエルの話は次のようなものです。
母親から婚約者に会う様に説得されたガルガーノは、婚約者の家に向かうために家を出た。
その道中、キウズディーノの近くの丘モンテシエピを通り過ぎる際、ガルガーノは馬から振り落とされ、そこで「物欲を捨てよ」と大天使ミカエルから啓示を受けた。
ガルガーノは物欲を捨てるのは剣で石を切るのと同じ位難しいと反対し、そのことを証明するために、自分の剣で石を突きたてた。
すると、本来であれば絶対に突き刺せるはずがない石に、まるでバターへ突き刺すように剣が滑り込んでしまったではないか。
こうしてガルガーノは大天使ミカエルに対して畏怖の念を抱き、隠者になることを決めたのだ。
トスカーナのエクスカリバーは実在したエクスカリバーなのか?
トスカーナにある石に刺さった剣は「本物の剣」であることは間違いないようです。
しかし、この剣が本物だとしても、アーサー王伝説に登場するエクスカリバーが、この石に刺さった剣に由来すると証明するのは難しいと考えられています。
ただし、石の下にはさらなる証拠が眠っている可能性もあり、今後の研究次第では、アーサー王伝説の話の起源が覆されたり、このトスカーナの石に刺さった剣が、実在したエクスカリバーのモデルだという説も浮上してくるかもしれません。
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アーサー王伝説に登場し、その他の物語を通して広く名前が知られる聖剣「エクスカリバー」について見てきました。
エクスカリバーに関しては異なる伝説が存在しますが、いずれにしてもアーサー王にとって重要な位置を占めた武器であることは間違いありません。
また、エクスカリバーが実在したかは分かりません。しかし、イタリアのトスカーナにはエクスカリバーの描写と似た本物の剣が存在しています。