インドと中国の関係や国境問題を知ることは、これからの時代で非常に役立ってくるはずです。世界最大人口を抱える両国について見ていきましょう。
経済大国として思い浮かべる国と言ったら、未だにアメリカや日本と答える人が多いかもしれませんが、近年ではインドや中国を思い浮かべる人も増えてきているかもしれません。
この両国は、過去数十年の間に急速な経済成長を成し遂げ、現在の国際社会においては無視できない存在であり、国際情勢へ大きな影響を与えています。
そのため、インドと中国の両国について理解し、また、両国間の関係を頭に入れておくことは、これからの世界の流れを読み解くには重要になってくると言えます。
この記事ではまず、両国が成し遂げた経済成長を歴史的な流れから見つめてそれぞれに関する理解を深め、その上で、両国間の関係について掘り下げていきたいと思います。
中国の経済成長と現状
毛沢東と中国:閉ざされた国内経済
20世紀の中国は、10億近い人口を抱えながらも非常に閉ざされた国家でした。
1940年代には、中国の経済や人々に関する最も基本的な情報でさえ、毛沢東(当時の共産党、中国全体の指導者)の指導下で権力を握った共産党によって厳しく管理され、外部の人間には入手しづらい状況だったのです。
しかし、1976年に毛沢東がなくなってからすぐに中国の圧政が終わったわけではありません。
例えば、1989年に天安門で勃発した学生の抵抗運動は、軍隊によって暴力的に鎮圧され、数百人の死傷者を出してしまったのです(天安門事件)。
江沢民と中国:経済に変化が生まれる
1990年代になると、江沢民の指導の元で中国は経済の規制を緩め始めます。
その結果、(特に経済特区内にあった)多くの中国企業が外国との貿易を拡大することとなり、中国の市場の完全開放を望んだ西欧の資本主義諸国にとって、嬉しい変化が起こり始めたのです。
一方、中国国内では豊かで都市化した海岸部と貧しく農村社会である内陸部の間に、非常に大きな経済格差が生まれてしまい、いわゆる「格差問題」として現在の中国まで続くの不安要素となってしまいました。
現在の中国:経済拡大の政策を行い世界の主要プレーヤーとして台頭
21世紀に入っても、胡錦濤(こきんとう)は中国の国際貿易を拡大し、グローバル社会における立ち位置を高めるための政策を継続します。
その結果、世紀の変わり目頃(2000年前後)から、中国は過去に例を見ないスピードで安定した経済成長を経験していきます。
成長は止まるところを知らず、中国政府の発表によると、毎年の経済成長率は約8〜10%を記録し続けたのです。
2010年以降この値は若干低下しているとは言え、経済成長の結果はどこを見ても明らか。
中国社会は急速に変貌しました。
2000年時点において「中産階級」とみなされたのは全人口の10%以下に過ぎなかったのが、2017年には30%近くにまで増加(※定義や情報源によって具体的な数値は違うが平均するとおおよそ30%:参照:exciteニュース & ZDNet Japan)。
これは、中国の人口14億人を考えると、日本はもちろん、アメリカの全人口よりも多くの人が中産階級になったということです。
しかも、その割合は今後も増えていくと予想されています。
また、中国の中産階級人口の増加は中国の社会だけでなく、国際経済をも変貌させました。
新興の中産階級は購買欲が高く、贅沢品を欲しいと思う人も増えています。
例えば、中国は2017年に2887万台の新車販売台数を記録。
これは、アメリカで国内過去最高を記録した2016年の1755万台を圧倒的に越えており、近年、中国の新車販売台数は世界で最も高い数値となっています(参照:毎日新聞 & CarMe)。
中国の領土問題
中国政府は、このように圧倒的な経済力を手に入れた結果、アジア地域そして世界全体において、その影響力を拡大・強化しようとしています。
公式には中国は平和的な開発のみを推進するとしていますが、実際には武力を行使することもいとわない振る舞いを見せ、領土問題に対しての強硬な姿勢を示しているのです。
例えば2014年の夏、中国とベトナムの両国が領有権を主張していた南シナ海に石油プラットフォームを建設しました。
さらに同時期から現在まで、日本と領土問題を抱える尖閣諸島周辺の日本領海へ何度も侵入しています。
このような中国の「地域・外交政策」は、21世紀後半の世界の動きに大きな影響を与えてくることは間違いありません。
インドの経済成長と現状
中国とは異なる道を進みながらも同じように発展著しいインド
中国の南東に位置するインドもまた、21世紀社会における経済のサクセスストーリーを体現しています。
中国とインドが辿った道は違いますが、結果は似たようなものになっていると言えるでしょう。
インドには中国のように政治を完全にコントロールする共産党が存在しない代わりに、1947年までインドはイギリスの植民地であり、その後に民主的な政府を築いてきたのが特徴です。
しかし、独立後の数十年は社会主義寄りの政権が続き、また政治家の汚職も日常茶飯事(現在も汚職は多い)でした。
1980年以降から徐々に経済発展が加速していった
1980年代を迎えると、インド政府は徐々に都市や港を国際自由貿易のために開放していき、その結果驚くべき成果を得ていくようになります。
当初は(今もそうですが)最低賃金が安く、また労働に関する規制もほとんどないことを理由に、20世紀後半から21世紀にかけて外国企業がたくさんインドへ押しかけ、欧米諸国では運営するのに大きなコストがかかる生産工程や工場、他にもサービスを提供する拠点を建設していきました。
この動きについて倫理的な議論はもちろんありますが、インド経済とインド国民に与えた影響の多くはポジティブなものだったと考えられるでしょう。
そして、その経済成長を数字で見てみると、1980年から2002年までの経済成長率の平均はおよそ6%。
加えて中国の経済成長が2010年以降停滞しているのに対し、インドの勢いは今でも強力で、2015年から2017年までの経済成長は平均しておよそ7.3%を維持しています。
この違いは労働規制を強化し、最低賃金の引き上げが続く中国に対して、インドは変わらずコスト削減を望む企業にとって魅力的な国であり続けているからというのが最もな理由ではないでしょうか。
そして、この結果、現在ではおよそ20%の人口が中産階級となっていると考えられており、その数を表すと約2.7億人(全体は約13.5億人)になり、世界の企業にとってはこれから大変魅力的な市場になる可能性を持っているのです(参照:The Economic Times)。
民主主義国家にとって重要なインドと中国との国境問題
2010年辺りから、名目GDP(nominal GDP)では世界トップ10入りをし、購買力平価に直したGDP(PPP GDP)では日本を抜いて世界3位の規模を誇る経済大国となったインドは、政治的にも重要な意味を持ちます。
特に、中国の台頭を考えた場合、民主主義国家であるインドと外交関係を強化して中国を牽制するといった考えが、近年、アメリカを含めたいくつかの国で見て取れます。
一方で、そのインドと中国の関係は複雑です。
ヒマラヤ地方で国境を接する両国は、20世紀半ばに領土紛争を繰り返してきた過去を持ちます。
しかし近年では、両国とも経済成長を優先しているため、二国間の関係は比較的穏やかであると言えるでしょう。
以降では、この両国間の関係についてもう少し掘り下げて行きたいと思います。
中国とインドの国際関係
インドが1950年に台湾との国交を終結させ、中華人民共和国(中国)を正当な政府として認識した時から始まったインドと中国の関係は、表向きは友好的だと言えますが、国境紛争や経済競争などの問題も内在しており、緊張関係につながる可能性も内在します。
過去に幾度となく衝突を繰り返してきたインドと中国
中国とインドは、世界で最も人口の多い上位2カ国で、同時に急速に成長する主要な経済国。
そのため現在、両者はお互いに無視できない存在となっている一方、両国間では20世紀半ばに、幾度となく国境に端を発した衝突が起きています。
例えば、
- 1962年の中印国境紛争
- 1967年のチョーラ事件
- 1987年の中国インド間の緊張状態
などが代表的です。
また、2017年初頭には、中国がブータンとの国境付近のドラクム高原で道路建設を始めた結果、中国とインドの間に緊張が高まりました。
インドと中国はそれでもパートナーシップ構築の努力をしている
しかしそれでも、1980年代後半以降、両国は外交的、経済的な関係を構築する努力を継続してきました。
2008年に中国はインド最大の貿易相手国となり、両国は戦略的および軍事的関係を拡大します。
加えて、貿易や商業のほかに、中国とインドが相互利益のために協力しているいくつかの分野があります。例えば、気候変動や世界的な金融秩序の改革などです。
そして中国は2012年6月に、中国とインドの関係が「今世紀、最も重要なパートナーシップ」であるとの見解を発表しました。
ただしいくつかの懸念点もある
しかし、経済的および戦略的な関係にもかかわらず、インドと中国が真の友好関係を築くにはいくつかのハードルがあると言えます。
第一に、インドは中国のために深刻な貿易不均衡に瀕しているという点。
第二に、国境に沿った軍事インフラを、両国ともに着々と拡充しているという点。
そして第三に、インドが対立するパキスタンと中国は強力な戦略的二国間関係を築いており、また中国は、紛争のある南シナ海におけるインドの軍事的および経済的活動に懸念を表明している点。
実際、インド人口の半分以上が、中国との領土紛争が両国間の軍事衝突につながる可能性があると懸念していると言います。
このような状況から、現在、両国の関係は表向き良好ではありますが、何かのきっかけで急速に悪化し、大きな軍事衝突に繋がる可能性も否定出来ないと言えるのではないでしょうか。
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インドと中国の関係や国境問題など|最大人口を抱える2ヵ国は国際情勢において重要のまとめ
20世紀を通して、世界の経済成長は西側諸国が独占していましたが、21世紀はアジア諸国が経済的に躍進する時代となりそうです。
その中でも特に、インドと中国は非常に重要なプレーヤーとなり、これからの国際情勢で大きな影響力を持つようになるでしょう。
将来の国際情勢を理解していくためにも、この両国に関しては両国間の関係も含めて理解を深めておくのがおすすめです。