ケチャダンスとは?バリ島の伝統的ダンスの歴史や特徴を紹介!

ケチャダンスについて詳しく紹介していきます。バリ島の伝統的なダンスと言われるケチャの歴史や特徴などを見ていきましょう。

インドネシアのバリ島は有名なリゾートとして観光客に大人気な場所。

美しい自然やビーチがあることで知られますが、島に残る独特の文化や芸術も人々を魅了している理由です。

そんなバリ島の文化や芸術に含まれるものとして、ケチャまたはケチャダンスがあります。

ケチャ・ダンスは十人以上の男性ダンサーによって演じられる伝統的なバリ島のダンスで、彼らは上半身は裸で、サロンと呼ばれる腰布を着用し、燃え立つ竹の松明を囲んで円陣を組んで座り、真ん中で踊るダンサーを盛り上げて独特な舞踏劇を披露するのです。

ケチャダンスはバリ島を文化面から象徴する存在の1つであり、かけがいのない観光資源となっています。

この記事では、そんなケチャダンスについて、基本的な知識から4つの豆知識までを紹介していきます。

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ケチャ(ケチャダンス)とは?

インドネシア語では「Tari Kecak」として知られるケチャ、またはケチャダンスとは、1920年代後半から1930年代にインドネシアのバリ島において発展した、ヒンドゥー教のダンスと楽劇のスタイル。

また、男性合唱と言われることがある通り、始まった当初からずっと男性のみで構成されてきましたが、2006年になると初の女性ケチャグループが結成されています。

そのダンスまたは合唱は、古代インドの長編叙事詩でありヒンドゥー教においては聖典の1つとなる「ラーマーヤナ」の物語に基づいており、伝統的にバリ島全域の寺院や村で踊られてきました。

「ラーマーヤナのモンキーダンス」と呼ばれることもあり、およそ150人にも上る人々が腰の周りにチェック柄の布を纏い、円陣を組みながら手足を動かし「チャ」と繰り返し唱えるのが特徴です(※ただし、実在する猿を表現しているわけではない)

そしてケチャのストーリーは、ラーマーヤナに登場し、ハヌマーン率いる猿のような種族のヴァナラが、魔王ラーヴァナと戦う王子ラーマを助ける戦いの様子を表現しています。

ちなみに、ケチャのルーツは、バリ島にある伝統的な憑依舞踏「サンヒャン・ドゥダリ」だとされています。

ケチャダンスの歴史

ケチャは従来、男性の合唱を伴う儀式的な憑依舞踊であることは上で触れた通りですが、バリ島で自然発生的に誕生したものではなく、実は外部の人間による芸能化への提案がきっかけだったと一般的には考えられています。

1920年代後半〜1930年代、ドイツ人の画家であり音楽家であったヴァルター・シュピースは、バリで生活を送るなかでこの儀式に興味を抱くようになりました。

そして、欧米からの観光客向けに、現地で受け継がれてきた憑依舞踏のサンヒャンを基盤にしながらも、そこへ、ヒンドゥー教のラーマーヤナの物語に基づくダンスを加え、舞踏劇を構成したものを提案。

シュピースはインドネシア人のダンサー「ワヤン・リンバク」と共にこれに取り組み、さらにリンバクは、バリ島人グループによる海外公演ツアーを展開したことで、ケチャダンスは国際的に有名になっていったのです。

そんなケチャは現在、

西洋または世界の中心となる文化が、独自または隣接する文化とはかけ離れた従来は別の文化の一部であった文化的要素を全く異なるアートの形態として取り入れた一例

と言われ、近代のアートと文化システムとの関係を象徴する1つの例だと見なされることがあります。

ただし、ケチャはより自然発生的に誕生したとする説もある

しかし一方で、パフォーマーや振付師、そして学者でもあるワヤン・ディビアは、ヴァルター・シュピースが島に上陸した時点で、「バリ島の人々はすでにケチャダンスを発展させつつあった」との見解を示しています。

例として、リンバクは1920年代に儀礼舞踊バリスの動きを、ケチャを率いるリーダー的役割の振り付けに取り入れていました。

ディビアによるとシュピースはこの斬新なアイディアを評価し、リンバクに一般的であったガムランではなく、現在のケチャに繋がる「コーラスを用いたラーマーヤナに基づいたショーを手がけるよう」提案しただけだと言うのです。

ケチャダンスのパフォーマンス

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大勢の男性達が合唱をしてリズミカルに体を動かす

ケチャダンスは一般的に、上半身裸に腰布のみを纏った50から100人超の男性達によって展開されます。

そして、バリ島の伝統的なココナッツオイルのランプを中心に何重にも円陣が描かれ、

チャ、ケチャ、ケチャ、ケチャ

の言葉を唱えながらはじめは左へ、そして右へゆったりとリズミカルに体を動かしていくのです。

そして、スピードは徐々に上がり、次々に空中に手をかざし、揺れ動かします。

ヴァナラ軍団とラクシャーサ軍団の戦い

ケチャダンスは舞踏劇のためのパフォーマンスであり、踊りの中で紹介される物語はヒンドゥーのラーマーヤナの叙事詩となっているわけですが、そこでは大きく2つの勢力の戦いが表現されています。

上半身をさらけ出しケチャを唱える男性陣は、王子ラーマーを援護する猿のような種族ヴァナラの一団、そしてもう一方は、魔王ラーヴァナ率いる巨人のラクシャーサの一団を演じているのです。

1時間ほど続く

Kecak Dance / Uluwatu, Bali

パフォーマンスは1時間ほどとなっており、ダンダカのジャングルにジタとラーマーが追放されるシーンからラーマーヤナの話が展開されます。

ケチャの中では、

  • 黄金色の鹿の登場
  • ラーヴァナによるジタの誘拐
  • ラーヴァナとジャターユの戦い
  • ハヌマーンのジタの捜索

などが演じられ、ラーマーとラーヴァナの戦いで幕を閉じる形となっています。

そして、物語のシーンに合わせ、ケチャのチャントや合唱が行われるのです。

18時からヒンドゥー教寺院で行われる

バリ島におけるケチャダンスのパフォーマンスは通常、毎日夕刻の6時から、ウルワツ寺院やタナロット寺院などのバリ島のヒンドゥー教寺院にて行われます。

また、ウブド、ガルーダウィスヌクンチャナ、バトゥブラン、パンダワビーチなど、バリ島各地には、ケチャの舞台としてのステージが設けられている場所もあり、文化展示やエンターテーメントなどの一貫として、ケチャのパフォーマンスが披露されることもあります。

ケチャダンスの参加者について

ケチャダンスに参加する人々は、合唱を担当する多くの人々に加えて、ジタ、ラーマー、ラクシュマナ、ラーヴァナ、ハヌマーン、ジャターユなどの役を演じるメインダンサーから構成されています。

また、「チャ、チャ、チャ」とチャントを唱える男性コーラスの中にも、特定の役割を務める人が存在し、「ポ、ポ、ポ、ポ」と唱えてチャントのビートを保つパートや、コーラスのリーダーとして「ディイ!」や「チアアトゥ!」などと口頭でチャントのスタートとストップの指示を出す人などがいます。

さらに、チャントが繰り返される中、歌を担当する人もおり、呪文のようなフレーズを口にしながら、踊りのシーンに合わせたメロディーやリズムを繰り広げ、加えて、ダランと呼ばれる人は踊りが展開される中、一般的にバリ語とサンスクリット語で物語のナレーターを務めます。

これらの重要な役割を占める人々は通常、上級の男性ダンサーとなっており、残る参加者はハーモニーに合わせて「チャ、チャ、チャ」と唱え続けるのです。

中心的なケチャダンサー達は優しく穏やかな役と勇ましい役に分かれる

ケチャダンスの中心的な存在であるとされる、ラーマーヤナの主な登場人物を務める踊り手は、主に、優しくて穏やかな役を演じる人たちと、勇ましい役を演じる人たちに大別出来ます。

ラーマー、ジタ、ラクシュマナそして黄金色の鹿といった、優しく穏やかな動きが特徴的な役を演じる人々と、ラーヴァナ、ハヌマーン、スグリーヴァなどの勇ましい役を演じる人々です。

ちなみに、優しく穏やかな動きの役は、そのようなダンススタイルを専門とする女性のダンサーによって演じられることもあります(※勇ましい役は男性によってのみ演じられる)

ケチャの参加者は他の仕事を持つことがほとんど

ケチャダンスには多くの人々が参加していますが、一般的にこの参加者達は、近隣の村々に住む人々であることがほとんど。

また、彼らの多くはケチャ以外の職にもついており、他の仕事の終業後にケチャダンスのパフォーマンスに参加することが基本で、観客のチケット代が彼らの報酬として配られます。

ケチャダンスに関する4つの豆知識

ケチャダンスについて、その基本となる知識を見てきましたが、最後に、他にも押さえておきたい4つの豆知識も紹介していきます。

ケチャに参加する人の数は無制限

ケチャダンスには、50〜100人前後が参加するのが一般的ですが、その参加人数については特に制限が設けられていません。

そのため、場合によって数千人規模の人々がケチャに参加することもあります。

例えば、インドネシアのバリ島にあるタバナン県のタナロット寺院では、2006年9月26日、5000人が参加してケチャダンスが披露されました。

ケチャダンスには楽器の伴奏がない

ケチャダンスの特徴であるユニークな点の1つと言えるのが、パフォーマンス全体に楽器の伴奏が無いこと。

ダンスは単純に参加者達のアカペラコーラスを伴うのみで、そのリズムやメロディーは、50~70人の男性ダンサーが発する「チャッ、チャッ、チャッ」という音の組み合わせで成り立っています。

楽器が伴奏がある一般的なダンスとは全く異なるのが、非常に興味深いケチャの特徴だったりします。

憑依状態に陥るダンサー

ケチャダンスの中には、憑依の儀式と呼べる場面が登場することがあります。

これは特に、ハヌマーンが焼かれる場面などでよく登場します。

このシーンでは、ハヌマーンを演じる踊り手が祭司の祈りを受け、火を蹴るダンスに先立って憑依状態に陥るのです。

こうして憑依状態になることで、そのダンサーは火によるダメージを感じることがなくなるとされています。

バリ島でケチャダンスを見るなら知っておきたい場所

バリ島でケチャダンスを見たいなら、バリ島のバドゥン半島南西端の海岸沿いに位置するウルワツ寺院か、バリ島中西部の海岸にあるタナロット寺院のいずれかに行けばOK。

中でもウルワツ寺院は、ケチャダンスを楽しむことのできる最も人気のスポットとして知られます。

ちなみに、どちらの寺院も「バリ六大寺院」と呼ばれる、バリ島を代表する6つの寺院に含まれる有名な場所です。

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ケチャダンスとは?バリ島の伝統的ダンスの歴史や特徴を紹介!のまとめ

バリ島の伝統的なダンスとされるケチャダンスについて見ていきました。

ケチャダンスは、そのユニークさのために、多くの人たちを魅了しています。バリ島へ行くことがあるなら、このケチャダンスを忘れずに見に行きましょう。

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