伝説の生き物10体を一覧にして紹介していきます。日本や中国のものから、他の国や地域で信じられてきたものまでを確認してみましょう。
伝説の生き物、伝説の獣、超自然的で神秘的な精霊や神の存在は、古代からずっと人間を魅了してきました。
そのため、伝説の生き物達は、数多くの芸術作品や物語の中でも描写されてきており、今日においてさえ、小説はもちろんのこと、映画やゲームなどに頻繁に登場します。
そして、これら伝説上の生き物は、有名なものからあまり知られていないものまで、世界各国に無数に存在しているのです。
この記事では、日本や中国を始め、世界中に存在する伝説の生き物の中でも、興味深い10体をピックアップして一覧としてまとめていきたいと思います。
伝説の生き物1:カッパ
日本の民間伝承における伝説の生き物と言えばカッパ。
漢字では「河童」、つまり川の子供という意味で表記されることから分かる通り、川や湖に住み、子供のような体系をし、通常は緑色で、特徴的な頭の皿、くちばし、水かきがついた手足を持つ妖怪として描かれます(水神として描かれることもある)。
また、基本的には水の中で生活しているものの、ときおり陸に上がってきては子供相手に相撲をとり、相撲に負けた子供の尻子玉(人の肛門の中にあるとされた想像上の玉)を抜くという話が残ります。
一方で、頭の皿には水が入っており、長時間陸地に上がることで皿の水が干上がったり、お辞儀をして水が溢れたりすると途端に力を出せなくなるという話は、カッパが登場する数々の物語で描かれています。
伝説の生き物2:中国の四神
古代中国の天文学では、天を28の区画に分割した二十八宿で考えていました。
そして天を、
- 東方
- 北方
- 西方
- 南方
の4つの区画に分け、1区画に対して7宿を割り当ててまとめあげ、それぞれに一体ずつ伝説上の霊獣を対応させたのです。
この合計4体の霊獣が中国の四神であり、4つの区画(方角)と四神はそれぞれ、
- 東方 → 青龍(緑色の龍)
- 北方 → 玄武(白色のトラ)
- 西方 → 白狐(蛇が巻き付いた脚の長い亀)
- 南方 → 朱雀(赤色の大きな鳥)
という組み合わせとなりました。
ちなみに、天文学的な重要性は別にして、これら4つの伝説の生き物は、それぞれ様々な中国の神話に関連づいています。
伝説の生き物3:年獣
年獣(ねんじゅう)とは、中国の神話に登場し、海または山に住む獣として描かれる伝説上の生き物。
体は牛のように大きく、頭には角が生え、無類の怪力を持った化け物であり、中国における旧暦の大晦日に人里にやってきて人を食らったと言われます。
伝承によると、元々中国の村において村人達は、年獣に襲われないよう、年末年始にドアの前に食べ物を置き、村から離れた山へ避難していました。
用意した食べ物を食べた年獣はお腹いっぱいになり、それ以上村人達を襲わないと考えていたからです。
このようにして年獣からなんとか身を守っていたある時、村人達は獰猛な年獣が、赤色、炎、音の3つを恐れることを知りました。
そこで、村人達は新年を迎えるに際して、赤い提灯と赤い春の巻物を窓とドアに掛け、また、爆竹で大きな音を立てたのです。
するとこれが大成功。
これ以来、中国では年獣を追い払うために毎年、「春節(中国の旧暦における正月)」には爆竹、騒音、そして赤い色で祝うのが習慣となったと言います。
伝説の生き物4:クラーケン
スカンジナビアまたは北欧の神話や伝承によると、クラーケンは船を攻撃する巨大な海の生き物。
体長はゆうに2kmを超えることから、島と間違えられることもあるほどで、大抵の場合は巨大なイカやタコのような姿で描かれます。
中世(13世紀頃)にアイスランドで成立した散文作品群である「サガ」のエルヴァル・オッドルの物語の中には、2つの海の怪物「ハーヴグーヴァ」と「リングバクル」が登場。
これらは類似する海の怪物であるため、クラーケンの元となった伝説上の生き物だと考えられています。
ちなみに、科学が進歩した近代においてクラーケンは、伝説の生き物であるにも関わらず、その存在が分類学的に体系化されたこともあります。
1735年に初版が発行されたスウェーデンの自然科学者カール・フォン・リンネによる「自然の体系」という本の中で、クラーケンは巨大な頭足類(イカやタコなど頭足綱に属する動物の総称)に分類され、学名として「Microcosmus marinus」が与えられたのです。
また、1746年に発表されたリンネによる別著「Fauna Suencica」の中でクラーケンは、「ノルウェーの海に生息する独特の生き物」と記されています。
伝説の生き物5:ピアサ
ピアサとは、怪鳥またはドラゴンとして描かれることが多い、北米に起源を持つ伝説上の生き物。
アメリカ合衆国のミシシッピ州を流れるミシシッピ川一帯に暮らしていた、イリニ族に伝わる伝承に登場します。
(出典:wikipedia)
その姿は、
子牛ほど大きく、ノロジカの雄のような角、赤い目、トラのようなあごひげ、そして恐ろしい表情を持ち、顔は人間のようで、体は鱗で覆われ、尾は身体、頭、脚の間を通るほどに長く、尻尾の先は魚のようなヒレが付いている
として描かれます。
そして伝承によると、この伝説の生き物は元々人間を襲うことはありませんでしたが、ある時、人の死体を食らうと人肉に味をしめてしまい、それ以降、人間を襲うようになりました。
そして、イリニ族は大勢の集団でなんとかピアサを倒し、再び平穏を手にいれたとされます。
伝説の生き物6:メネフネ
ハワイに残る神話によると、メネフネはポリネシア人達がハワイ諸島にやってくるよりも前から同地に住んでいた伝説上の小人族で、人間がこの地へやってきてからは、人里離れた山や谷に住んでいたと言われます。
(出典:wikipedia)
伝承では、メネフネ一人一人が卓越した工芸家だったらしく、例えばハワイに残る古代の建築物、道、池、カヌーなどは、メネフネ達が作ったものだとされ、何かを作り上げる時は、夕暮れ時から作業を開始して一晩で完成させたそうです。
とはいえ、ハワイ諸島においてメネフネの存在を証明する客観的な証拠、例えば小さな人種の人骨などは発見されておらず、あくまでも伝説上の存在と考えられています。
また、西洋人がハワイへやってきて以降に生まれた伝説の存在だとする説もあります。
伝説の生き物7:シパクトリ
シパクトリとは、1500年前後に現在のメキシコ中央部辺りに盛えたアステカ文明における神話に登場した伝説の生き物。
神話の中でもアステカ創造神話に登場し、そこでは、
世界が創世される以前、アステカの2大神の前には「海」と「大地の怪物」であるシパクトリしかいなかった。
2大神の一柱であるテスカトリポカは、自らの片足を餌にしてシパクトリへ噛みつかせ、2大神のもう一柱であるケツァルコアトルと協力してシパクトリをとらえた。
そして、その体から大地を作り、ここに海と大地を備えた世界が生まれた。
さらに、シパクトリの頭は13の天となり、その尻尾は黄泉の国となった。
として描かれているのです。
一方で、シパクトリは一般的に「ヒキガエルと魚の特徴を持つワニ」という姿で描写されてきました。
加えて、伝説によるとシパクトリの食欲は飽くなきもので、各関節に口が存在していたとされ、神々が創世を開始した当初、創造物が地上に落ちると、シパクトリが持つ多くの口によって貪り食われたと言います。
伝説の生き物8:グレンデル
グレンデルとは、スカンジナビアを舞台とした古英語最古の伝承で、また英雄の物語を語る叙事詩の一つである「ベーオウルフ」に登場する巨大な怪物のこと。
ベーオウルフは8世紀から11世紀初頭にかけての物語で、デンマークのフロスガール王を助ける英雄ベーオウルフの話。
物語が進んでいく中でベーオウルフは、フロスガール王が建築した巨大な城「ミードホール(メドゥセルド)」を占拠して王国全体を脅かしていたグレンデルという名の野獣を倒したのです。
ちなみに、ベーオウルフの物語の中で描写されたフロースガール王による城は存在していたという話があり、それは、現代のデンマークの首都コペンハーゲンから37kmほど西にある、最古の王都「レイレ」に存在していると言われます。
一方で、伝説の生き物であるグレンデルが実際に存在していたかどうかに関して同様の話はなく、一説には、グレンデルは人間に厄災をもたらす人間の敵、病気、死の象徴として描かれたのではないかと言われます。
伝説の生き物9:ナーガ
ナーガは海、川、湖、滝に住んで水を司る、インド神話に起源を持つ精霊または蛇神で、黒い鱗をまとい、体長が数キロにも及んだり、7つの頭あるとして描かれることもある伝説の生き物です。
伝統的に水神の化身として崇拝され、雨の恵みをもたらすものと言われます。
また、仏教においては釈迦が悟りを開く時に守護したと考えられており、これによって竜王として取り入れられたことから、守護神として崇められ、寺院や聖地を守る存在として信じられています。
ちなみに、地域によって微妙に異なるものの、通常、ナーガは地下世界に住んで人間の言葉を話すことが出来、さらに天界に通じる力を使って天候を左右したり、人間の姿になる能力を持ち合わせていると描写されます。
伝説の生き物10:グリフォン(グリフィン)
紀元前3000年頃にまで起源が遡るのではないかと言われるグリフォン(グリフィン)は、鷲(ワシ)の頭、翼、前脚と、ライオンの胴体、尻尾、後脚を持つ伝説の生き物。
古代世界において、ワシは「鳥の王」として、また、ライオンは「獣の王」として捉えられていたため、グリフォンは強力で雄大な生き物として認識されていました。
古代エジプトを始め、西アジアのペルシャ地域や地中海地域でも信じられており、紀元前550年頃から始まったペルシャ帝国時代にグリフォンは、悪魔や魔術、そして中傷から人々を守る守護者と考えられることもありました。
さらに、古代ギリシャの芸術や神話の中に登場することも一般的で、ギリシャのクレタ島では、紀元前15世紀に遡る青銅器時代の遺跡「クノッソス宮殿」の謁見の間にて、フレスコ画によるグリフォンの描写が発見されています。
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世界中に散らばる伝説の生き物の中から10体をピックアップして紹介してきました。
伝説の生き物の起源は多種多様であり、しばしば論議の対象となっていますが、人間の文化や宗教においては非常に重要な役割を果たしてきました。
また、物理世界を超越した存在として、今日であっても人間の想像力と欲求を刺激し続けているのです。