ポリネシア人について、歴史的なルーツから伝統まで詳しく解説していきます。また、筋肉量が多くて最強の人種だと言われる主張についても触れておきます。
「サモア人」や「マオリ人」といった人々について耳にしたことがある人は多いかと思いますが、実はこの人たちは「ポリネシア人」と呼ばれる民族グループに含まれます。
ポリネシア人は太平洋のポリネシアを起源とする人々で、太平洋に広く散らばっているため、各地域ごとに異なった民族名が付いているのです。
では、このポリネシア人とは一体何者なのでしょうか?
そのルーツを見ていくと、実は日本人とも近しいことが分かってきます。
この記事では、そんなポリネシア人に関して歴史から伝統まで詳しく見ていこうと思います。
また、最後には「ポリネシア人最強説」についても触れていくので、興味があれば確認してください。
ポリネシア人とは?
ポリネシア人とは、ポリネシア諸語(サモア語、ツバル語、ハワイ語、マオリ語、トンガ語などのポリネシアで話されている互いによく似た言語一群)を話すオーストロネシア語族の諸民族。
太平洋中部およぼ西部のポリネシアに位置するポリネシア諸島の先住民または、それらの島を起源とする人々のことで、長い歴史の中で大変洋を中心に世界各地へ移住して散らばっており、主な生活領域として、
ハワイ | ニュージーランド | タヒチ |
イースター島 | ソロモン諸島 | パプアニューギニア |
トンガ | ツバル | サモア |
クック諸島 | フランス領ポリネシア | ウォリス・フツナ |
トケラウ | アメリカ領サモア | ニウエ |
バヌアツ | ニューカレドニア | ミクロネシア連邦下の2島 |
を挙げることが出来ます。
また、世界中のポリネシア人を合わせると、総人口は200万人ほどです。
(紫がポリネシア。赤はミクロネシアで青はメラネシア。出典:wikipedia)
そして、同じ太平洋上の近隣地域を起源とするメラネシア人やミクロネシア人とは、共通の祖先を持つ親縁関係にあるとされます。
ポリネシア人のルーツと歴史
ポリネシア人のルーツを探る科学的調査や研究により、現在、ポリネシア人の原点は元々、華南や台湾であったのではないかとする説が有力となっています。
華南や台湾に住んでいた人々の一部が、紀元前2500万年頃に移動を開始。
台湾
↓
フィリピン
↓
インドネシア中部
とおよそ500年間かけて南下していき、そこからさらに、
ニューギニア → メラネシア → ポリネシア
と、今度は東へ進路を取り移動していった結果、紀元前950頃には現在のポリネシア地域に到達したのではないかと考えられています。
また、ニューギニアやメラネシアを移動していく過程で、パプア先住民やメラネシア先住民(5万年前に出アフリカ後にインドを経てやってきたオーストラロイドで、オーストラリアのアボリジニと共通の祖先を持つ人々)と交わった結果、現在のポリネシア人が形成されたことがDNA解析によってわかっています。
よって、ポリネシア人は日本人と同じモンゴロイドと、オーストラリアのアボリジニ達と共通の祖先を有する人々の混血である可能性が高いと言えるのです。
(出典:wikipedia)
ポリネシアに到着したポリネシア人達の祖先は始め、現在のトンガ、ウォリス・フツナ、サモアに移住し生活を構えました。
そして、紀元前1世紀頃になると再び移住を開始。
人々はカヌーで海を渡り、時間をかけて太平洋一帯に広がっていき、北はハワイ、南はニュージーランド、東はイースター島に居住地を構えるようになったのです。
一方で、18世紀後期にヨーロッパ人がこの地域を発見すると、これらの島々はヨーロッパによって植民地化されていきました。
第二次世界大戦後に一部の島々は独立しましたが、フランス領ポリネシアなどの他の島々は属領の形をとったまま現在に至ります。
現代のポリネシア
このようにヨーロッパの影響力がポリネシア人達の居住地に及ぶと、ヨーロッパから持ち込まれた宗教や文化、食生活などによって、ポリネシア社会も変化し始めました。
例えば、ポリネシア社会にはキリスト教が普及し、ポリネシア人の生き方は異教であると非難されることも過去にはあったのです。
現在、ポリネシア人の総人口の約95%はキリスト教徒であるとされています(一部の人々の間では、土着のポリネシア神話が信仰されている)。
また、ポリネシア諸言語に加え、英語とフランス語が多くのポリネシア人によって話されている状況のため、独自の言語のいくつかは消滅の危機に瀕し、例えば、ハワイ語に関しては保存プログラムが展開されるまでになっています。
さらに、大多数のポリネシア人は、服装、エンターテイメント、教育、スポーツ、雇用などの面において、西洋に強く影響された生活を送っています。
ポリネシア人の伝統的な文化や社会生活
ポリネシアの土着信仰と宗教
19世紀初め頃に初めて西洋人の宣教師がポリネシアに到来する以前、この地域では独自の土着宗教が広く信仰されていました。
その一つが、「タプ(tapu)」という概念。
これは、「神聖であるため禁止されているもの」いった意味を持ち、ポリネシア社会では伝統的にタプの下で規範が定められ、この規範にそむくと、病気や死など深刻な出来事につながると言われていました。
例えば、マルケサス諸島では、女性の生理用ナプキン自体は「タプ」ではありませんでしたが、それに触れるのは「タプ」であるといった感じです。
ちなみに、この「タプ」から英語の「タブー」という言葉が使われるようになったと言われています。
また他にも例えば、ハワイのポリネシア社会では、族長は神と家系的に関係があり、その結果「マナ」と呼ばれる神聖な力を備えていると信じられており、他にも4つの神と1つの女神の存在が信じられていました。
通過儀礼
多くのポリネシア社会に共通する伝統文化として、特徴的な「通過儀礼」を挙げることも出来るでしょう。
この通過儀礼とは思春期に執り行なわれるもので、通常「入れ墨(タトゥー)」が伴い、社会によっては男性だけが入れ墨を施されることもあれば、男性と女性の両方が入れ墨を施されることもありました。
また、この入れ墨の慣習はポリネシア人にとっては、文化的および象徴的な意味があり、ニュージーランドの先住民「マオリ族」の社会は最近、入れ墨の技術が復活し始めていることでも有名です。
一方、同じポリネシア人であっても、ごく限られた社会で行われた通過儀式も存在します。
それは、「肥育(ひいく)」の儀式とでも名付けると分かりやすいもので、思春期になった男女の若者達は隔離され、
- 直射日光を避けて動かずに過ごし、
- 同時に一定期間大量の食物を与えられる
といった儀式。
これによって体を肥えさせて「性的に魅力的にする」というのが目的だったのです。
ただし、この儀式は現在では行われていないとされています。
ポリネシア人の伝統的な社会や生活
伝統的なポリネシア社会には大きな村がなかった代わりに、社会活動や宗教儀式などを行う共用建築物を中心に、近隣家族は一帯に集まって暮らすというのが基本的な生活スタイルでした。
男女の関係と結婚
そして、多くのポリネシア社会では過去、複婚制(複数の配偶者を持つことが出来る制度)が採られていました。
この点に関しては、なかでもマルケサス諸島(マルキーズ諸島)のポリネシア社会は興味深く、女性が複数の夫を持つことができる伝統的な慣習「一妻多夫」を持っていたと言われます(この習慣は世界的に見てもかなり稀)。
逆に、当時のマルケサスのポリネシア社会では、複数の妻を持つ「一夫多妻」の男性を見つけるのは非常に珍しいことだったそうです。
※現在のポリネシアでは一夫一婦制が基本です
また、男性と女性の役割と身分は、ポリネシアの中でも社会によって異なってきました。
例えばマルケサスでは女性は男性とほぼ同じ地位を伝統的に享受してきており、その平等を表す一つの慣習として、女性も男性と同じほぼ同じ範囲に入れ墨を入れることが許されていたという点があります。
一方、他の多くのポリネシア社会の伝統的な価値観では、女性は男性よりも低い身分にあったため、この限りではありませんでした。
さらに、ポリネシアの一部(ハワイやタヒチなど)では元々、男性と女性は別々に食事をしていたようです。
他にも、明確な社会階級が存在するタヒチのような社会では、異なる階級間の結婚は伝統的には禁じられており、万が一にも異なる階級間の男女間に子供が生まれた場合、その子供は出生時に殺されていたと言われます(※しかしこの慣習は、タヒチにキリスト教を伝えた宣教師達の活動によって廃止されている)。
ポリネシア人の伝統的な衣服
西洋人と接触する以前、ポリネシア人は独特の伝統的な衣服を着用していました。
その衣服とは、基本的に「樹皮布(じゅひふ)」で出来たもの。
樹皮布とは樹の皮を打ち延ばしてつくった布のことで、この樹皮布を男性は「ふんどし」のような感じで、また、女性は「腰巻」として着用していたようです。
一方で儀式を執り行う際、ポリネシア人は伝統的に多くの装飾品を身につけます。
現在でも、ポリネシア人が住んでいる観光地などでは、パフォーマンスとしてこの伝統的な儀式とその際に着用している伝統的な衣服や装飾品を見ることが出きますが、その際、手の込んだ羽毛の頭飾りを被っている者は身分が高いことを示しています。
伝統的なポリネシア人の食生活
昔ながらのポリネシア社会の多くにおいて、食べ物は基本的に漁業や園芸(花や果物、野菜を栽培していた)に依存していました。
また、ポリネシアを代表する重要な食べ物として、タロイモを挙げることが出来るでしょう。
例えば、焼くか蒸すかしたタロイモをすり潰してペースト状にした「ポイ」は、この地域を代表する料理の一つ。
またハワイのポリネシア社会では、伝統的にタロイモの葉っぱで豚肉を包んで蒸し焼きにした「ラウラウ」という料理が存在します。
ただし地域によっては異なり、例えばマルケサス諸島のポリネシア社会では、太平洋諸島原産のデンプン質で大きな果物「パンノキ」が、代わりによく食べられていました。
ポリネシア人は圧倒的な筋肉を誇る最強の人類という話について
ポリネシア人の中は肉体系のコンタクトスポーツで活躍する人が多いため、ポリネシア人は圧倒的な筋肉を持つ最強の人類だと言われることがありますが、最後にこのポリネシア人最強説について軽く触れておきます。
肉体系のコンタクトスポーツで活躍するポリネシア人は多いが・・・
ポリネシア人の中には、「マーク・ハント(格闘家)」、「ドウェイン・ジョンソン/ザ・ロック(元プロレスラー)」、「曙(元横綱)」といった日本でも馴染み深い「最強」の人物がいます。
また、世界最強のラグビーチームであるニュージーランド代表「オールブラックス」は、ポリネシア系のマオリ人達が多くメンバーとして加わっています。
このように、コンタクトスポーツで活躍しているポリネシア人が目立つため(コンタクトスポーツで活躍している以上その筋肉量も多い)、「筋肉量が多い」とか「最強」といったイメージがポリネシア人に関して存在するのは確かです。
ただし、ポリネシア人全体の筋肉量を平均化した研究があるわけでもなく、現時点で上記のイメージをポリネシア人全体へ一般化出来るかどうかは少し難しいと言えます。
それでも世界最強の人種と言われるには2つの理由があるのかもしれない
しかし、それでもコンタクトスポーツで活躍するポリネシア人の割合は、他の民族と比較しても多いのは事実だと思います。
そこで仮に、ポリネシア人が本当に身体的に優れた人種であったと仮定すると、そこには次の2つの理由が考えられるのではないでしょうか。
- ポリネシア社会では伝統的に「戦士」が尊ばれてきた
- 社会によっては「戦士」であることが誇りとされ、ポリネシア人男性はお互いにレスリングのような組み合い対決をすることが良くある
- このような組技で勝利するには体重が重く大きな体は圧倒的有利になる
- 勝者は周りから尊敬を集めて、より多くの女性と関係を持つことが出来た
- よって、体が大きく組技に強い遺伝子が残りやすかった
- 大きな女性が好まれる傾向にある
- 社会によっては、体の大きな女性が好まれる傾向にある
- よって、生まれてくる子供も生まれつき体が大きくなる可能性が高い
- 加えて、体の大きな強い男性と体の大きな女性の間に生まれた子供は、さらに丈夫な骨格や、それに伴って付く筋肉の総量が多くなる
上記はあくまでも仮説ですが、「戦士」をリスペクトするマオリ人やサモア人を見ていると、このような理由で、彼らの社会で尊敬を集める「体が大きくて強い人たちの遺伝子が選択されてきた」結果、コンタクトスポーツで秀でた力を発揮出来る人が多いと考えられるかもしれません。
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ポリネシア人とは?歴史やルーツから最強の筋肉戦士に関する議論までのまとめ
太平洋のポリネシア地域を起源とするポリネシア人について見てきました。
現在、ポリネシア人が住む地域では、観光客向けに様々なパフォーマンスやイベントが開かれていることもあるので、興味がある人は訪れてみると良いかもしれません。