中国の国花について詳しく見ていきます。国花の候補として挙がる11の花から、非公式にでも国花が選出された国民によるオンライン投票の結果までを紹介していきます。
「中国4000年の歴史」というフレーズでお馴染みの中国には、国を象徴する様々なものが存在します。
例えば、中国の竜や万里の長城、他にもジャイアントパンダなどは、中国をイメージさせる有名なものです。
では、中国における「国花」とは、どの花を指すのでしょうか?
この記事では、中国の国花事情について見ていきたいと思います。
- 中国に国花はあるのか?
- 中国において国花のように大切にされている11の花
- 中国の国花候補1:牡丹(学名:Paeonia suffruticosa)
- 中国の国花候補2:ロウバイ(学名:Chimonanthus praecox)
- 中国の国花候補3:キク(学名:Chrysanthemum)
- 中国の国花候補4:ラン(学名:Orchidaceae)
- 中国の国花候補5:ツバキ(学名:Camellia japonica L.)
- 中国の国花候補6:ハス(学名:Nelumbo nucifera)
- 中国の国花候補7:モクセイ(学名:Osmanthus fragrans)
- 中国の国花候補8:チャイナローズ(学名:Rosa chinensis)
- 中国の国花候補9:ツツジ(学名:Rhododendron)
- 中国の国花候補10:スイセン(学名:Narcissus tazetta)
- 中国の国花候補11:梅(学名:Prunus mume)
- 非公式だが中国の国花がついに選ばれた?
- 合わせて読みたい世界雑学記事
- 中国の国花|11の国花候補と非公式に投票がされた結果を紹介のまとめ
中国に国花はあるのか?
まずは中国に国花があるのかないのかについて、簡潔に結論を記すと、
- 中国に国花はない
となります。
多民族が暮らし、地域によっても大きく生活スタイルが異なる中国には、国花として候補に挙げられる花が多く存在し、そのなかから国花として「国の公式な花」を一つに決めることが出来ないからです。
ただし、国花として正式に定められてはいないものの、中国文化において「国花」とほぼ同義語的に大切にされている牡丹、梅の花、チャイナローズなど、11の花があります。
以下では、その11種類の花について、それぞれ簡単に紹介していきます。
中国において国花のように大切にされている11の花
中国の国花候補1:牡丹(学名:Paeonia suffruticosa)
牡丹(ぼたん)は大きな花やたっぷりとした花弁、そして鮮やかな色合いなど、誇らしげなその美しい色と優雅な見た目から中国では、
- 花の王
- 百花王
- 花神
などと称され、縁起の良い花とされてきました。
また、中国国内では長年シンボル的存在の花として重宝され、「富と名誉の花」とも言われてきました。
中国の西北部が原産で、牡丹は歴史の初期から中国で栽培されてきたと言い、4,000年にも及ぶ中国の長い歴史の中で、牡丹は常に中国のあらゆる場所に広く存在していました。
中国の国花候補2:ロウバイ(学名:Chimonanthus praecox)
ロウバイは12月から2月の真冬に黄色くて香りの強い花を咲かせる落葉樹。
日陰でも問題なく育つなど、あまり土壌に影響されることがない丈夫な花木で、原産国である中国では多くの人に親しまれ、とても人気のある植物の一つとなってきました。
ちなみに、中国語では「蝋梅」となり、梅と近しい花木のように思われることがありますが、これは、単純にロウバイが梅と同じように寒い時期に花を咲かせ、また、開花した花が梅の花にどことなく似ていることから付けられただけ。決して近縁種の植物というわけではありません。
中国の国花候補3:キク(学名:Chrysanthemum)
キク(菊)と言えば、日本でも天皇家の家紋のモデルであり、日本のパスポートにも菊のマークがあしらわれていることから、日本の事実上の国花とされる花。
一方で、中国においても菊は古くから文献に現れ、7世紀頃の唐の時代には中国で始めて栽培・鑑賞されるようになるなど、中国とは所縁が深い花です。
中国や東アジア文化において「四君子」と呼ばれ、草木の中の君子と称えられる4種類の草木(蘭、竹、菊、梅)の一つに含まれ、特に重陽の節句(陰暦九月九日の節句)では大切な役割を果たしています。
そんなキクは多年生草本で、黄、白、赤紫、真紅などさまざまな種類の色があり、また、中国では9月から11月にかけて咲くのが一般的です。
中国の国花候補4:ラン(学名:Orchidaceae)
ラン(蘭)は多年生草本で、独特な形の花を咲かせる美しい植物。
世界全体を見渡すと15000近い種類のランがあるとされ、特に鑑賞植物として長い年月をかけて様々に改良されてきました。
中国や日本では古くからいくつかのランを珍重してきたこともあり、中国では「徳の証し」とされています。
その多様性から、種類によっては氷河以外のあらゆる地域で自生することが出来る生命力の高いものも含まれ、また、品種によって、花の咲く期間は数時間のものもあれば6か月のものもあります。
中国の国花候補5:ツバキ(学名:Camellia japonica L.)
ツバキ(椿)は、アジア東部や南部で見られ、一般的に成長が早く、葉はシンプルな形で艶があり、大きな5〜9枚の花弁から成る花を咲かせることで知られます。
また、アジア地域でツバキは、経済的に重要な役割を担ってきた歴史を持ち、飲用の茶葉やオイルに加工されてきました。
中国では非常に大事にされてきた花ですが、実はその学名からも分かる通り、ツバキは日本原産だったりします。
ただし、中国や東南アジアにもツバキの近縁種が存在し、例えば、中国南部からベトナムには黄色い花を咲かせる原種があります。
中国の国花候補6:ハス(学名:Nelumbo nucifera)
その多くは濁った水の中で育ち、水面に大きな円形の葉を広げて大輪の花を咲かせるハスは、仏教文化では古くから大切にされてきた花。
仏教が各地に広まっていく過程で、ハスも様々な地域に広がっていきました。
ピンクや白の花を咲かせ、日当たりのよいところを好みます。
ハスの茎部分は沼の泥に埋まっていますが、花は常に水面に浮いているのが特徴で、中国では純潔と誠実さの象徴とされています。
中国の国花候補7:モクセイ(学名:Osmanthus fragrans)
モクセイは、スイートオリーブやティーオリーブなどとも呼ばれることがある、常緑の低木で中国が原産とされる植物。
3〜6mほどの高さの木に、通常は晩夏から秋にかけて小さくて香りの強い花が咲きます。
中国では「桂花」と呼ばれ、ジャムやお茶、漢方薬などに使われることもあります。
中国の国花候補8:チャイナローズ(学名:Rosa chinensis)
チャイナローズまたはロサ・キネンシスと呼ばれるこの花は、貴州省、湖北省、四川省などの中国中南部が原産。
中国では「花の女王」と称され、高さ1~2m程度の低木に、綺麗なピンクや赤の花びらを持つ花を咲かせます。
栽培が非常に簡単で、花が長持ちすることや、観賞用としての価値の高さから、中国では園芸植物として広く栽培されており、世界中でも人気があります。
中国の国花候補9:ツツジ(学名:Rhododendron)
ツツジは日本でも一般的に、4月〜5月の春先に咲き、中国や日本を含めたアジアを中心に広く分布している花。
ネパールでは国花に指定されています。
一方で、ツツジは中国において「ふるさとを思う木」と言われてきました。
ちなみに、中国において国花のように重宝されるツツジは、ツツジ科の植物の中でもトウヤマツツジ(学名:Rhododendron simsii)と呼ばれる種類であることが多いようです。
中国の国花候補10:スイセン(学名:Narcissus tazetta)
スイセンは球根から育つ多年生植物です。
冬から春にかけて花を咲かせる観賞植物であり、水でも土でも栽培出来るとして、中国では昔から栽培されてきました。
また、「中国の聖なるユリ(Chinese Sacred Lily)」として知られるなど、中国国内で親しまれてきた花です。
一方で、体内に摂取するとめまいや痙攣がおきることがあるなど、天然の毒を含んでいます。
中国の国花候補11:梅(学名:Prunus mume)
日本でも一般的に見られる梅は、中国の長江周辺が原産地と考えられているバラ科サクラ属の落葉高木。
後に他のアジアを中心とした諸外国にも持ち込まれ、日本へはかつて遣唐使によって持ち込まれたと考えられています。
木自体は最大で10m程度の高さまで成長し、毎年2月から4月の冬後半から春の始め頃にほのかな香りのする花を咲かせます。
ちなみに、寒さを耐え忍ぶその姿から、中国で梅の花は、
- 勇気
- 希望
- 新しい命
などの象徴とされています。
非公式だが中国の国花がついに選ばれた?
見てきたように、中国には非常に多くの国花候補が存在し、これまで一つの花を中国の国花とする試みはされてきませんでした。
しかし、国が正式に定めてはいないものの、非公式の形でついに中国の国花が一般市民の投票によって明らかになったのです。
中国花協会によって百花の王「牡丹」が国花に選ばれる
2019年7月23日にCHINA DAILYに投稿された記事によると、中国花協会(China Flower Association)は一般市民に向けて、国花にふさわしい花がどれかを決めるオンライン投票を呼びかけ、その結果、「牡丹」が選ばれたと発表しました。
このオンライン投票で投票者は、以下の10種類の候補、
- 牡丹
- ロウバイ
- キク
- ラン
- ツバキ
- ハス
- モクセイ
- チャイナ・ローズ
- ツツジ
- スイセン
から投票したい花を選ぶことが出来ました。
そして、全投票数362,264票のうち、
- 牡丹・・・79%
- ロウバイ・・・12%
- ラン・・・2%
- ハス・・・1.9%
- その他の花・・・それぞれ1%未満
という結果が出たのです。
中国花協会のDong Yan氏はこの結果に関して、
牡丹は唐の時代の国花でした・・・中略・・・装飾用としてだけではなく、食べ物として、そして伝統的な漢方薬としても用いられており、その市場価値は大変高い。
と話しており、また現在、中国花協会によると、牡丹は既に国花に推薦され、選定されるべく、中央政府からの承認を待っている状態らしいです。
ちなみに、中国花協会は国花の条件として、
- 中国原産で国内のあらゆる地域に生息している
- 形や色が美しくて中国の文化や国の個性を表している
- しっかりとした歴史的基盤があって一般に広く知られている
- 一般社会に利益を与えるべくあらゆる分野での使用が可能
という4つを満たしているとしています。
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中国の国花|11の国花候補と非公式に投票がされた結果を紹介のまとめ
中国の国花について見てきました。
現在(2019年10月現在)、中国には国花は正式な形で制定されています。
しかし、国花に近い形で親しまれる花はいくつか存在し、中でも牡丹は多くの人が国花にしたいと考えている花だということが分かります。