ドイツビールの歴史と種類|その発祥や起源とは一体?

ドイツビールの歴史と種類について見ていきましょう。その発祥や起源を遡ることは、ビール好きでなくても知的な好奇心が湧くはずです。

ドイツと言えばビール。

毎年10月に開催されるオクトーバーフェストを始め、ドイツではビールが大量に消費されることで知られています。

どうしてビールはドイツ文化においてそんなに重要なのでしょうか?

また、ドイツにおいてビールはどのように発展してきたのでしょうか?

この記事では、ドイツビールの発祥や起源、そして歴史の中で誕生してきたドイツビールの種類までを見ていきたいと思います。

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ドイツビールの歴史:その発祥や起源とは?

世界的にビール大国として知られるドイツビールの醸造には、その背景に非常に長い歴史があります。

紀元前1800年頃、ドイツ人の先祖となるゲルマン人が定住生活に入った際、すでに彼らはビールを作っていたと考えられており、また、その後の西暦500年までにドイツ人は、オート麦や、時にははちみつから作られた薄いビールを醸造していました。

しかし、ドイツ人がビールを発明したわけではありません。

1万3千年前、農業革命よりもさらに以前、現在の中東辺りに住んでいた人々がすでに、

  • 焼いた穀物を水につけると、おいしくて滋養があり、わずかにアルコールを含んだ飲み物が出来る

ことを発見しました。

実際、イスラエルのハイファ地域で行われた考古学発掘によって、古代の醸造所の跡が発見されています。

そして、このわずかにアルコールを含む「液体のパン」は、地球上ほぼすべての文化でお決まりの飲み物であるビールへと姿を変えていったのです。

ドイツではかつて修道院でビールが生産されていた

西暦数百年の後半になると、キリスト教がヨーロッパにおいて強い立場を確立していったわけですが、それに伴いドイツでは、修道士が自分たちのために醸造していたビールを販売するようになっていきます。

また、

  1. 当時の修道院はヨーロッパにおける教育機関であり、研究センターでもあったこと
  2. 修道士たちの作るビールは一般家庭で作られたビールよりも遥かにおいしく出来たこと
    1. 一般家庭の主婦達が片手間にビールを作っていたのに対して、修道士達は醸造にもっと時間を掛けていた

などから、ドイツの修道院は、西暦1000年頃から大量消費のためにビールを生産し始めていきました。

さらにドイツの修道士達は、「Klosterschenken」と呼ばれる無料でビールを提供する場を設けて地域の人々へ貢献していたと言います。

特に当時、ビールは安全で、栄養豊富で、手軽にカロリーを摂取出来るとして、小さな子どもたちに良いとすら考えられていた(加えて、子供達を静かにさせる効果もあると人気だった)ことも、この動きを加速したと考えられます。

また、12、13世紀までには、数百もの修道院でビール醸造が行われており、食料飢饉の時でさえ、ビール醸造をすることが許されていたようです。

ちなみに、ビールを生産する修道院は主にドイツ南部にあり、アンデックス修道院、サンクトガーレン、ヴァイエンシュテファン、ヴェルテンブルガーといったいくつかの修道院は、現在でも存在しています。

ドイツの一般人もビールの醸造を続けた

修道院でビールの大量生産がなされる一方で、他のドイツ人達もビール醸造を止めることはありませんでした。

特に、当時の法律では醸造可能なビールの量に関する規制がなかったため、人々は好きなだけビールを醸造出来たことがこれを後押ししました。

ただし、火災の危険性が懸念されたことから、家でのビール醸造が常に許されていたわけではなく、ビール醸造とパン製造の日がそれぞれ決められている「共有の製パン所(パン屋)」を使ってビール醸造を行っていたようです。

そして、この「共有場所でのビール醸造」は、後に小規模な「ビール醸造所」として発展していきました。

ビールにホップが使われるようになったのは10世紀前後

今でこそビール醸造で当たり前に使われる「ホップ」が使用されるようになったのは、10世紀前後だとされます。

736年に歴史上初めて、ドイツのガイゼンフェルトの書物でホップの栽培について述べられ、ビールに使用するホップについては11世紀に初めて言及されました。

実際、考古学的発見によって、9世紀と10世紀にはホップがビールに使用されたことが判明しています。

ちなみに、ビールで使用される以前、ホップは神経鎮静剤や下剤といった薬として使用され、場合によっては染料としても使用されていました。

ホップは苦みがあって香りを与え、殺菌剤としての作用も持つと考えられていたことから、ビールの風味を増して長持ちさせるために加えられていったのです。

また、ホップは庭で栽培することができ、安価に手に入ったことから、ビール醸造で広く使用されるようになっていったようです。

ドイツのビールの歴史において重要な「ビール純粋令」

1516年4月23日、ドイツ南東部からオーストリアにかけてのバイエルン公国を支配したバイエルン公ヴェルヘルム4世によって、「ビール純粋令」なる法律が制定されます。

これは、

  • ビールは、麦芽・ホップ・水のみを原料とする(※現在は「酵母」も含まれる)」

と明文化された、現在でも有効な世界最古の食品に関する法律です。

実は12世紀になると、ビールの質について言及された初めての法が制定されました。

醸造者(酒販売者)が、悪質なビールや間違った計量のビールを製造・販売した場合は刑罰に処す

というものです。

その後、ヴァイマル市は1348年に、

ビール醸造にはモルトとホップのみを使用すること

と記し、1393年には食料飢饉のため、ニュルンベルク市は、

パン作りに使用することの出来ない大麦以外、いかなる穀物もビール醸造に使用することを禁止

して、1516年にはバイエルンでついに、ビール純粋令が署名されて制定されたという背景があります。

ちなみに、麦芽(特に大麦の種子を発芽させたもの)とホップが強調されていった一つの理由としては、他の穀物を使うよりこの大麦とホップの組み合わせの方が、結果として非常に質の高いビールが出来ることが分かったというのがあります。

さらに、そこへ綺麗な水と酵母を合わせることで、それ以前に流通していたビールよりも美味しく衛生的なビールとして完成されたのです。

ビール純粋令前に存在した「Grut権」

「ビール純粋令」以前は、ハーブミックスを使ったビールを製造したり、ビールを作るためのハーブを販売する「Grut権」と呼ばれる特権がありました。

この特権は市や教会、その領地の貴族から与えられ、権利保有者は区分地域で独占権を得ていました。

Grutはハーブのミックスで、ビールを安定化して飲料化する材料として使われました。

初めてGrut権が歴史に書き記されたのは10世紀頃で、この時代、ハーブミックスの独占権を破る原因となるホップは、基本的に使用が禁止されていました。

特に、Grut権を持つことでとても裕福になれた有力な人物達は、最後までホップの使用に対して抵抗していました。

しかし、ホップにはコストを抑えつつビールを新鮮に保ち、質を高めるなどの効果があったため、徐々に広がりを見せた結果、最終的にはホップがビール醸造における市民権を得ていくようになったのです。

現在のドイツビールの完成

その後、研究者達は、酵母、特にイースト菌が発酵を促す役割を発見。

この発見は、商業的に見た場合に生産性を押し上げたことから、当初はビール純粋令に酵母の使用が明記されていなかったにも関わらず、酵母の使用が許されていき、ビール醸造においては「酵母」を原料の一つとして加えることが一般的になっていきます。

そして、上でも述べたビール純粋令が1993年にビール酒税法の一部として愛生された際には、「酵母」も原料の一部に加えて明文化されました

また19世紀には、ピルスナービールの創作からボックビールやエクスポートビールの出現まで、ドイツ語圏の国々では、「ビール革命」と言って良い動きが見られ、現在のドイツで見られる様々なビールが完成していったのです。

ちなみに、歴史の中でドイツから外国へ移住した醸造者たちは現地でビールの醸造を始めたり、作り方を使えた結果、飲みやすいこともあり、ビールは世界を席巻するアルコール飲料となっていきました。

ドイツビールの種類

地球規模で大人気のビールですが、その種類や基準に関してはドイツが大きな影響力を持っています。

また、種類は異なったとしてもそのほとんどは麦芽、ホップ、水、酵母で出来ているわけですが、それぞれの味、香り、舌触り、泡などは大きく異なってきます。

ここでは最後に、ドイツで見つけられるビールの種類を簡単にまとめておきます。

  • ピルスナー
    • ドイツ・オーストリア共和国(現チェコ共和国)のボヘミア地方のピルゼン発祥
    • ドイツにおける定番ビール
  • ヘルス
    • 黄金色でライトなバイエルン名物
  • ドゥンケル
    • 濃い茶色で優しい味のバイエルン名物ビール
  • エキスポート
    • ドルトムントとミュンヘン発祥だけどブレーメンで人気があるビール
  • ケルシュ
    • ケルン周辺でのみ作られるキレのある地ビール
  • アルト
    • デュッセルドルフの地ビール
  • 白ビール
    • 大麦と小麦でモルトを作るビールで、南部ドイツ人のお気に入り
    • ベルリーナヴァイセはベルリンの白ビール
  • シュバルツビール
    • テューリンゲンとザクセンというドイツ東部の州が原産
  • ボックビール(シュタルクビール)
    • アルコール度数が高めの期間限定ビール
  • メルツェン
    • オクトーバーフェスト・ビールで出されれるアルコール度が高めのビール
    • もともとはバイエルン発祥
  • ゴーゼ
    • ゴスラー発祥で、フレーバーがついた小麦を混ぜたビール
  • ナトゥアトルーブ・ビール
    • 濾過されておらず、低温殺菌されていない特性ビールで栄養が豊富
  • ラオホビール
    • ブナの木材で燻製された麦芽で作られるビールで、バイエルンのバンベルクの特産品

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ドイツビールの歴史と種類|その発祥や起源とは一体?のまとめ

ドイツビールの歴史と種類をまとめてきました。

ドイツでその手法が確立されたビールは、やがて世界中で人気な飲み物となり、現在では日本も含めてあらゆるところで楽しまれています。

ちなみに、昔ビールを作っていた人々の多くは女性達でした。彼女達はパン作りと同じように、ビール醸造に精を出していたのです。

ビールの歴史を振り返る上では、女性の貢献も忘れてはなりません。

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