オイミャコンはロシアにある極寒な場所で、世界で最も寒い定住地として知られます。その過酷な場所に関して、基本情報から豆知識までを見ていきましょう。
誰しも厳しい冬の一つや二つは経験があることと思いますが、その時の最低気温はどのぐらいだったか覚えていますか?
例えば東京であれば、下がったとしても−1か−2度だと思います。
また、日本における最低気温の公式記録は、1902年に旭川市で記録された「−41度」。
非常に寒いことは確かだと思いますが、日本に住んでいる限り、どんなに寒いと感じてもロシア北東部に位置するオイミャコンと比べたら「赤子の手をひねる」レベルの話。
というのも、オイミャコンは世界で最も寒い定住地として知られ、そこに住むには非常に過酷な生活を強いられることになるから。
この記事では、そんなロシアのオイミャコンについて、地図で場所を確認することも含めた基本情報から、知っておきたいいくつかの豆知識までを紹介していきます。
オイミャコンとは?
オイミャコンとは、ロシアのシベリア(ロシア連邦領内のおよそウラル山脈分水嶺以東の北アジア地域)にあって、ロシア連邦を構成する共和国の一つ「サハ共和国」に属する居住地の一つ。
北極圏(北緯66度33分から北の地域で真冬には太陽が昇らず、真夏には太陽が沈まない)からほんの少し南に位置し、また、サハ共和国の首都ヤクーツクから北西におよそ900km、そしてインジギルカ川からは南西へおよそ2km離れたところにあり、シベリアの中でも奥地に位置して非常に寒い場所。
元々オイミャコンは、トナカイを遊牧して暮らす人たちが、トナカイへ水をやるために春に短期滞在する拠点として使っていたのが起源だと言われ、非常に厳しい環境にも関わらず、現在はおよそ500人の人が住んでおり、小さな村として機能しています。
また、村にはお店が一つあり、住人に必要なものを提供しています。
ちなみに、オイミャコン(Oymyakon)は「不凍の氷」、つまり「凍らない水」を意味する言葉で、これは近くにある天然の温泉が由来です。
オイミャコンの場所を地図で確認してみよう
それほど厳しいシベリア奥地に位置するオイミャコンの場所を、マップを見ながら確認してみましょう。
(赤色のポイント部分がオイミャコン)
広大なロシアの中でも東北に位置する場所にあり、上には北極海の一部である東シベリア海が広がっているのが分かります。
さらに、もう少し拡大した地図を利用してオイミャコンの場所を見てみましょう。
南西にサハ共和国の首都であるヤクーツクが確認出来るかと思います。
また、上の地図では確認出来ませんが、地図をさらに拡大していくとすぐ隣をインジギルカ川が流れているのが分かります。
世界一寒い定住地として知られるオイミャコン
上で見たように、オイミャコンは国全体が寒いロシアの中でもさらに奥まったところにあり、決して気まぐれでは訪れられない、とにかく極寒な場所。
真冬の12月と1月は平均気温が「−45度」を下回り、冬以外の季節を含めた一年間の平均気温も「−15.5度」になるほどです。
また、冬は暖かくなった日でさえ−40度を下回ります。
そんなオイミャコンは、「人が定住する場所としては世界一寒い」と有名で、1926年1月26日には「−71.2度」の気温が記録されています。
ただし、この時の測定法には議論があり、オイミャコンの最低気温の記録としては、1933年2月6日に記録された「−67.7度」というのがより一般的です。
しかしどちらにしろ、この二つの記録は定住地としては世界一寒い記録の一つであり、以前は北半球で最も寒い場所とも考えられていました。
オイミャコンの寒さをイメージしてみよう
数字でオイミャコンがどれだけ寒いかを紹介してきましたが、数字として見るのと実際の姿を知るのには大きな違いがあります。
そこで、真冬のオイミャコンがどれほど寒いのかを別な角度から見ていきましょう。
その寒さを象徴することとして、次の例が衝撃的です。
- まつ毛が凍りつく
- 口のなかでは唾液がツララになる
- 息を吐くとすぐに凍りつく
- 靴を外に出したまま数分間放置すると凍ってしまう
- 車はエンジンをストップしないで24時間動かしておく必要がある
- そうしないとバッテリーがやられて故障してしまう
- 地面を掘るのがほぼ不可能
- そのため配水管がない
- 穴を掘りたい場合、例えば「埋葬したい」などのケースでは「大きな焚火をおこす」→「土の表面数センチを柔らかくしてから掘る」→「次の焚火をおこす」を繰り返す
他にも、極寒のオイミャコンを象徴するものとして食事を挙げることが出来るでしょう。
作物の育たないオイミャコンには生の野菜というものはなく、食事は肉が基本となる料理がほとんど。
また、その肉も多くの場合、生であるか凍っているため、それを煮込んでシチューのようにしたものが最も良く食べられる料理です。
加えて、サイコロ状に凍らせた馬やトナカイの血を料理に添えて、必要なビタミンやミネラルなどを摂取します。
さらに、ストロガニーナと呼ばれる「凍った魚」を薄く、長くスライスした料理があります。
オイミャコンは過去に流刑地として利用されていた
とにかく、オイミャコンに一年を通して住むということは、非常にタフであり過酷であることは間違いありません。
特に、まだ現代のような暖房設備がなかった昔であればなおさらです。
実は、このオイミャコンを含めた地域一体が広く知られるようになったのは20世紀半ばのことで、当時は政治犯の流刑地として使われていた暗い過去がある場所でした。
自国の領土内にあって、その地へ送るだけで高確率で人を死に至らしめる広大な土地は、独裁者達に重宝されたのです。
このようにオイミャコンは、暗い歴史を持った場所でもあるのです。
オイミャコンについて他にも知っておきたい豆知識
世界一寒い定住地として知られるオイミャコンに関して基本的なことを紹介してきましたが、この極寒地域についてさらに詳しくなるためにも、次に紹介する3つの豆知識も抑えておくと良いかもしれません。
オイミャコンの夏の気温
オイミャコンは夏でも涼しく、真夏である7月と8月でさえ日中の平均気温は12〜14度。
ただし、7月と8月は一年の中で唯一、氷点下を気温が下回ることがない月だとされ、また、日によっては30度を越す日も出てきます。
そんなオイミャコンの夏の最高気温は、2010年7月28日に記録された34.6度で、日本で定義される猛暑日(35度以上の日)になったことは記録上、これまで一度もありません。
ちなみに、オイミャコンでは年間を通じて最高気温と最低気温の差が100度以上になることもあります。
夏と冬で日照時間が全然異なるオイミャコン
オイミャコンは北極圏のすぐ南に位置していることから、季節によって日照時間も極端に変わってきます。
例えば、日照時間が最も短くなる12月は1日の中で太陽が3時間しか出ず、日照時間が最も長い6月には21時間にもなります。
また、真冬に日照時間が3時間あると言っても、日本の昼のような明るさには到底及ばず、イメージとしては夕暮れ時のような暗さです。
そのため、冬の極端に寒い気温と極端に短い日照時間は、この地に住む人達を身体面だけでなく精神面でも苦しめることになるのです。
オイミャコン生活を象徴するいくつかの話
極寒のオイミャコンでしか聞けない生活に関する話として、次のようなことは非常に興味深いかと思います。
まず第一に、非常に寒い気温と過酷な条件のため、人間の体には大きなストレスが常にかかっているそうで、人によっては35から40歳ぐらいになると世間でいうリタイア生活に入ることもあるんだとか。
また、この地域には学校もあり、現地の子供達は「−40度」であっても当たり前のように学校へ行き、気温が「−52度」を下回ったところでようやく学級閉鎖となります。
そして、基本的に冬であれば生ものであっても外へ出しておけば絶対に腐ることはなく、現代の技術「冷蔵庫」に依存しない食料保存が可能な場所でもあるのです。
ちなみに、オイミャコンでは暖をとるにあたって、蒔や石炭を使うことが一般的だそうです。
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オイミャコンはロシアにある世界で最も寒い定住地|地図で場所を確認して豆知識も紹介!のまとめ
世界一寒い定住地であるロシアのオイミャコンについて見てきました。
オイミャコンは簡単に行くような場所ではありませんが、世界にはこのように極寒で生活するには過酷すぎる場所も存在すると頭の中に入れておくと、ちょっとした雑学知識として良いかと思います!