インドネシアの宗教と割合|イスラム教が多数派だがキリスト教なども公認される

インドネシアの宗教と割合を紹介していきます。イスラム教が多数派となっていますが、キリスト教を含めた6つの宗教が政府に公認されています。

東南アジア南部に位置するインドネシアは、世界でも稀に見る多民族国家であり、そこには土着の人々も合わせると、およそ300の民族が暮らしているとされます。

また、その歴史の中では異なる文化的背景を持った人々が多く行き交いし、さらにはオランダによって支配された経験も抱えます。

このような背景によって、インドネシアでは他の国とは違った興味深い宗教状況が生まれています。

この記事では、インドネシアの宗教状況について、大まかな概要から割合、さらにはインドネシアにおける各宗教の基本情報などを解説していきます。

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インドネシアの宗教状況とそれぞれの割合

インドネシアは世俗主義の民主国家を標榜していることから、国民の宗教と信仰の自由は憲法29条によって保障されています。

しかし、人口の大半はイスラム教徒(ムスリム)であり、また国家は「唯一神」への信仰(1945年にスカルノ大統領によって定められた国是パンチャシラ(注1)の第一項)に基づいているとされています。

一見矛盾するようですが、インドネシアの初代大統領スカルノは、あらゆる宗教(緩やかな多神教であるヒンドゥー教を含めて)は、基本的に唯一神を信仰していると仮定することで、この問題を解決しようとしたのです。

そのため、インドネシアは表面上はイスラム教国ではありませんが、政治的にはイスラム教の影響を受けています。

一方で、同時に多民族国家であり、地域によっても民族割合や信仰の傾向が異なることから、インドネシアにおける宗教状況は地理的な要因にも大きく影響されています。

例えば、バリ島にはヒンドゥー教に属するジャワ人が多く住むため、ヒンドゥー教が多数派を占めるのに対して、インドネシア中部にあるスラウェシ島ではキリスト教(カトリック)が主な宗教となっており、さらにスマトラ島北端のアチェ州では人口のほぼ全てがイスラムを信仰し、イスラム法(シャリーア)が法律となっているといった具合です。

(注釈1)パンチャシラとは、インドネシアの国是となっている建国5原則で、国民統合のイデオロギー、体制の正統性原理となっていた。

政府公認の6つの宗教とそれに対する批判

インドネシアの宗教状況に関する特徴として、政府は以下6つの宗教のみを公認している点を挙げることが出来るでしょう。

  1. イスラム教
  2. キリスト教プロテスタント
  3. キリスト教カトリック
  4. ヒンドゥー教
  5. 仏教
  6. 儒教

この6つの中からインドネシア国民は1つを信仰することを求められ、それがパスポートなどの身分証に個人情報として記載されます。

また結果として、無宗教はインドネシア社会では認められないということになりますが、実質的に無宗教を禁止する法律はありません。

2017年、「インドネシアの憲法は信仰の自由を認めているのにおかしい」と訴えていた非公認派(非公認の宗教や無宗教の人々)による訴えによって、憲法裁判所はこの状況は違憲だとする判断を下しています。

インドネシアの宗教の各割合

上述したインドネシアの宗教状況を踏まえ、主なインドネシアの宗教の各割合は以下のようになります。

  • イスラム教:87.18%
  • キリスト教プロテスタント:7%
  • キリスト教カトリック:2.91%
  • ヒンドゥー教:1.7%
  • 仏教:0.72%
  • 儒教:0.05%
  • その他の非公認宗教と無宗教:0.45%

(※2010年時点)

ちなみに、上記のようにインドネシアは事実上のイスラム教国家と言える状況になっており、国内には敬虔なイスラム教徒がたくさんいます。

しかし、それほど敬虔でないイスラム教徒も数多くいます。

そうした人たちは、身分証明書にイスラム教徒と記載され、家庭環境からイスラム教文化の中で育ってきたと考えているものの、祈りを捧げたりモスクに行ったりコーランを読んだりすることは滅多にありません。

インドネシアの各宗教についてもう少し詳しく見ていこう

イスラム教

インドネシアの人口の大半はイスラム教徒です。

しかし、まとまった集団があるわけではありません。

インドネシアでは地方ごとに異なる歴史があり、そのために異なる影響を受け、結果としてイスラム教の信仰形態も異なっています。

世界のイスラム教を統一する「汎イスラム主義」の動きは何世紀も前から現在まで続いていますが、インドネシアではイスラム教の多様性はなくなっていないのです。

また、インドネシアのムスリムのほとんどはスンニ派です。

キリスト教(プロテスタント&カトリック)

ヨーロッパの影響とオランダによる植民地支配がインドネシア社会にもたらした永続的な変化は、現在のインドネシア人口の約10%がキリスト教徒であるという点に尽きるでしょう。

イスラム教に比べれば人口は少ないものの、キリスト教はインドネシアで二番目に信者の多い宗教となっており、中でも、プロテスタント教会の信者が半数以上を占めます。

また、プロテスタント信徒の多くはインドネシア東部に固まっている一方で、カトリック信徒の多くはインドネシア中部の島スラウェン島に固まってコミュニティを作っているという特徴もあります。

過去にはイスラム教徒とキリスト教徒の間で、1999〜2002年にモルッカ諸島で起きた「マルク宗教抗争」に代表される暴力事件が起きたことがありますが、インドネシアではどちらの宗教も基本的には平和に共存しています。

ヒンドゥー教

インドネシアの公式な宗教の中で、最も長い歴史を持つのがヒンドゥー教です。

しかし、ほとんどの地域で、ヒンドゥー教の歴史は時間の流れと共に、あるいは征服されたことで消えてしまいました。

唯一の例外がバリ島です。

今日まで、バリ島(「神々の島」と呼ばれている)の住民のほとんどがバリ・ヒンドゥー教を信仰しており、美しい田園風景やビーチの他に、バリ・ヒンドゥー教関連のイベントや施設などは、観光の目玉となっています。

ちなみに、インドネシア諸島にヒンドゥー教や仏教が伝来するまでは、人々はアニミズムを信仰していました。

しかし、紀元1世紀にヒンドゥー教がインドと中国を結ぶ交易ルートを通じて西から伝わると、支配者たちはこの宗教を使って権力を伸ばそうと画策し、ヒンドゥー教の神々だと称することで、自分たちの権威を高めたのです。

仏教

インドネシアの人口の1%弱が仏教徒です。

仏教徒のコミュニティはリアウ州、リアウ諸島州、バンガベリントゥン、北スマトラ、西カリマンタン、ジャカルタに集中しており、それに加えてインドネシア仏教徒の大多数は華人(中華系の住民)です。

ただし、実際には道教や中国の民間宗教を信仰している人も多いものの、これらはインドネシア政府から認められていないため、仏教徒として分類されています。

インドネシアの仏教とヒンドゥー教の歴史は強く絡み合っています。

仏教は2世紀頃、その1世紀前にヒンドゥー教が東南アジアに広まったのと同じ交易ルートで広まりました。

スマトラ島にあった初期の海洋王国シュリーヴィジャヤは、7世紀に仏教僧達向けの仏教学習施設と呼べるような存在になりました。

さらに、その一世紀後には、中部ジャワのシャイレンドラ朝によって、壮大なボロブドゥール寺院が建てられ、15世紀には、ヒンドゥー教・仏教を信仰する強大なマジャパヒト王国がインドネシア諸島全域を勢力下に置きました。

現在でもスマトラ島とジャワ島には、2〜15世紀の仏教遺跡が多数残っています。

儒教

中国発祥の儒教は、宗教ではなく思想や哲学のようなものだと言われることもありますが、インドネシア政府は儒教を六つの公認宗教の一つに定めています。

儒教はスカルノ大統領時代に公認宗教の一つとなりました。

しかしその後、中国に由来する表現(中国語、中国の祭り、中国語の名前)を規制しようとしたスハルト政権によって公認が取り消されました。

これは、インドネシア人と華人(人口がインドネシアの総人口の3%未満に過ぎない少数民族にもかかわらず、インドネシア経済の大半を手にしていた)との間の衝突を避けようとしたというのが大きな理由です。

またこれによって、儒教信者は仏教かキリスト教に(身分証の上でのみ)改宗することとなりました。

それから数十年後の2006年、インドネシア政府は儒教を再び公認宗教に加え、現在までに至っています。

その他土着の宗教など

政府には認められていませんが、インドネシアのいくつかの州にはさまざまな聖霊信仰(アニミズム)も存在しています。

ヒンドゥー教の伝来以前から、インドネシア国内でアニミズムはさまざまな形で実践されていました。

しかし、何世紀もの間にこれらのアニミズムは一神教的な信仰と混じり合い、結果として、ジャワ州のケジャウェン信仰、カリマンタン州のカハリンガン信仰のように、一部の地方で融合して変化した信仰として残っています。

政府によると、こういった土着の信仰はインド国内に200弱あると推定されています。

インドネシア国内における宗教と暴力

残念なことに、インドネシアの歴史において宗教は暴力の原因となってきたことがありました。

例えば、中央政府に権力が集中し、市民社会の力が弱い状況を生み出したスハルト大統領政権が倒れた後、それまで政府によって押さえつけられていた過激なイスラム主義者の発言力や暴力的な行為が表面化し、爆弾テロなどの事件が発生しました。

また、改革運動下では、過激なイスラム教徒やアーマディヤ派(イスラム教の一派)が、キリスト教徒を始めとした少数派のコミュニティを頻繁に襲撃したことがメディアによって伝えられたこともありました。

酷い状況のようですが、このような宗教的な暴力は、インドネシア社会においては、どちらかと言えば例外です。

実際、インドネシアのイスラム教徒コミュニティの大半は、複数の宗教が共存する平和な社会を支持しています。

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インドネシアの宗教と割合|イスラム教が多数派だがキリスト教なども公認されるのまとめ

インドネシアの宗教状況について紹介してきました。

多民族国家であるインドネシアを理解するには、こういった宗教的背景も知っておくと良いかと思います。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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