サタンについて詳しく見ていきます。悪魔最強と呼ばれたり、堕天使ルシファーと同じだと言われるサタンとは、一体どういった存在なのでしょうか?
世界には様々な宗教や信仰があり、その中には無数の「悪魔」たちが存在します。
その数多くいる悪魔の中でも、最も名前が知られている存在と言えば「サタン」と呼ばれる悪魔でしょう。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教において、強大な力を持つ悪魔として描かれ、中には「最強の悪魔」と言われることもあります。
また、キリスト教の伝統では堕天使ルシファーと同一視される存在としても知られます。
この記事では、そのサタンについて詳しく見ていこうと思います。
「サタンとは一体何者なのか?」や「なぜ悪魔最強と呼ばれるのか?」など、サタンに関する疑問に対しての答えを見ていきましょう。
サタンとは?
悪魔最強と呼ばれることもあるサタンとは、聖書の預言者アブラハムの宗教的伝統を受け継ぐと称するキリスト教、ユダヤ教、イスラム教に登場する悪魔。
- ユダヤ教とキリスト教においては
- 神と対峙する悪魔
- イスラム教においては
- 人間と敵対する悪魔
- アッ=シャイターンと呼ばれる
という違いがあり、また、サタンに対する考えや逸話は長い時を経て変わるものもありましたが、この悪意の塊のようなサタンの存在は、全ての良い行いと真反対なものとして誰からも恐れられ続けてきました。
一方で、サタンのイメージとして恐らく最も有名な形はキリスト教におけるサタンでしょう。
キリスト教における現在一般的な解釈は、
- サタンは神と、神に使える人々の敵
というもので、キリスト教ならびにユダヤ教における聖典「創世記」の中でサタンは、「イブを誘惑した蛇」として初めて登場します。
サタンはイブに嘘をついて「善悪の知識の木の実」と呼ばれる禁断の果実を食べさ、次にイブがアダムに同じ実を食べさせたことで、最初の人間であるイブとアダムは死すべき定めを負った(これによって人類全体が死ぬ運命を追った)と同時に、エデンの園を追い出されてしまったのです。
また、サタンは、聖書の中でも特に新約聖書に多く登場したという特徴を持ちます。
聖書の中で、神と神の使徒は、最終的な自滅を導くサタンのずる賢い誘惑に注意するよう人々に警告していた様子が描かれています。
堕天使ルシファーと同一視される悪魔サタン
悪魔サタンはまた、キリスト教では伝統的に、元々は神に使えた他の天使達を束ねる大天使長で、「光をもたらす者」という意味の名前を持つ堕天使「ルシファー」と、同一であったとも言われることが多々あります。
実際、キリスト教の教理をわかりやすく説明した要約または解説である「カテキズム」の391章では、
教会の教えによれば、サタンは初め、神に造られたよい天使でした。
(引用:カトリック教会のカテキズム)
と記されており、また、新約聖書の「ヨハネの黙示録」の20章の1節から3節には、
わたしはまた、一人の天使が、底なしの淵の鍵と大きな鎖とを手にして、天から降って来るのを見た。
この天使は、悪魔でもサタンでもある、年を経たあの蛇、つまり竜を取り押さえ、千年の間縛っておき、
底なしの淵に投げ入れ、鍵をかけ、その上に封印を施して、千年が終わるまで、もうそれ以上、諸国の民を惑わさないようにした。その後で、竜はしばらくの間、解放されるはずである。
(引用:日本聖書教会)
と書かれており、「かつてサタンは神に使える天使であった」という解釈が、キリスト教には含まれていることが分かります。
ただし、その後もサタンがどのような天使であったかに関しては、様々な解釈が加わえられたこともあり、ルシファー以外にも、
- ベルゼブブ
- サマエル
- サタナエル
- 反キリスト(イエスの教えに背く者)
- メフィストフェレス
などと同一視されることもあれば、逆にこれらとは明確に分けられて単に「サタン」と呼ばれることもあります。
サタンの名前の意味と語源
ちなみに、サタンという名前の語源であるヘブライ語の「サーターン」は、「敵対者」や「妨げる者」という意味を持ち、また、アラブ語では「シャイターン」となることから、これがサタンの性格を反映していると言えるでしょう。
つまりサタンは、「良い存在(神や神の教えに沿った善い人々)や行いに真っ向から反対する存在」だという理解が根底にあるのです。
サタンに関して知っておきたいそのほか4つのポイント
サタンってどんな外見をしているの?
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教において天使や悪魔というのは肉体を所有していないため、人間に姿を見せる時、その外見は単なる見せかけで、状況によって様々に異なる外見を表します。
例えば、サタンがエデンの園でイブをそそのかして禁断の果物を食べさせた時の姿は蛇でした。
また、堕天使ルシファーと同一の存在として描かれる時は、悪魔と化した天使として描かれます。
さらに、叙事詩「神曲」を書いたことで知られるイタリア出身のダンテは、その詩の中でサタンを、
- 奇怪で翼と3つの顔を持つ生物
- それぞれの顔は悪質な罪人を貪り、凍えるような冷たい風が翼によって吹き荒れる
という外見で描写しています。
そして、中世ヨーロッパの終わりまでに出来上がった「ツノと尾があり、先が三つに分かれた武器を手にした容姿」と言う、現代でも描かれることが多い外見の描写も存在します。
このようにサタンを描いてきた人々は、神話上の生き物に始まり、様々なイメージを利用して、その外見を描いてきたことからも分かる通り、サタンの本来の姿というのは一つの外見にとらわれないものだと言えるでしょう。
サタンが悪魔最強だと言われる所以
サタンは「最強の悪魔」だと言われることがありますが、これはなぜなのでしょうか?
その理由としては以下2つの点を挙げられるでしょう。
- サタンは悪魔を統べる存在である
- 地獄の長となって地獄を統べる存在となった
このように、「サタンは神が住む天上界とは真逆の地獄に堕ちた後、その地獄で他の悪魔達を自らの支配下に置いて地獄の長となった」という解釈から、「サタン=悪魔最強」と考えられるようになったと言えます。
しかしこのことに対して、サタンが悪魔全体を支配した事実も、また地獄を治めた事実も確認出来ないとする以下の主張が存在するので、その点については頭に入れておくと良いかもしれません。
サタンは全ての悪魔を支配したとは聖書で触れられていない
聖書には善悪を示す神や悪魔の階級について、明確なことは記されていません。
そのため、仮にサタンが最も有名な神の敵だとしても、天上における神の敵、つまり悪魔達の全てがサタンの支配下にあったとは必ずしも言えないのです。
とは言え、サタンが少なくとも暗黒界において何かしらの大きなを持つ存在であったことは確かでしょう。
地獄の支配者となったことも聖書では触れられていない
地獄の支配者というのも、サタンに関するイメージとして一般的なものでしょう。
しかし、この点についても聖書では、「サタンが地獄を治める」とは述べておらず、「最終的には地獄に追放となる」という記述に留まっているのです。
ちなみに、サタンが地獄を治めるという発想は、ダンテが作った「神曲」に由来すると言われます。
この神曲の中で、神がサタンと彼の悪魔たちを天国から追放した時に地獄を創ったことが描かれ、その地獄に堕ちたサタンが他の悪魔達を統べる存在として地獄を治めたようなのです。
サタンと信仰
宗教的解釈と言うのは、歴史の中でよく議論の的となってきましたが、サタンについての解釈も例外ではありませんでした。
ただ、歴史を通じて「サタンの悪魔」としての評判はあまり変わっていません。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教においてサタンは大抵、世界の崩壊や秩序の欠落といった点に対して影響を及ぼす存在であると信じられています。
しかし、全ての宗教がサタンを避けているわけではなく、中には「サタン」をその信仰の重要な位置においているものも存在します。
例えば、サタニズムと呼ばれる宗教的主義では「サタン」を、
- いわゆる「悪魔」としてではなく、超自然的な存在・力などの概念として、また、幻想の力に対する彼らの信念を表す比喩的な意味
として捉えています。
つまり、サタニスト(悪魔主義者)たちはサタンを、神の存在に関する作り話や空想に対する「アンチテーゼ」的な概念として使っているのです。
そのため、多くのサタニスト達にとってサタンとは、「悪魔」という認識ではない上に、存在することはなく、あくまでも彼ら独自の精神性や思想を表す概念でしかないのです。
サタンと魔女狩り
一方で、サタニズムは「サタンを信仰する宗教」というイメージが強く、度々、外部からは、
- 暗黒の儀式を行ったり、動物を犠牲にしたり、幼い子供の血を飲んだり、他にもそのような倫理的に問題のある儀式や行動を行う信仰
であると信じられ、「悪魔崇拝」などと呼ばれることもありました。
そして、このことは、西ヨーロッパを中心に16世紀から17世紀頃に起こった集団ヒステリー「魔女狩り」や、1692年にアメリカで起こった「セイラム魔女裁判」の被害者を生み出してしまうことにも繋がりました。
当時、土曜日の夜には魔女達が集まって「サバト」という集会が開かれ、その中でサタン崇拝が行われているという話(サタンと取引して魔力を得ているという噂)が広まりました。
そして、「サタンを信仰している」として、多くの「魔女」が告発されたのです。
しかし、この魔女狩りはあくまでも、集団が正常な倫理観を失ってしまった大規模なモラルパニックであったことを考えると、実際にはサタン信仰とは全く関係なかった多くの人が、「魔女である」と言いがかりをつけられて告発されたと考えられます。
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サタンとは?悪魔最強で堕天使ルシファーと同一視される存在のまとめ
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教において信じられているサタンについて見てきました。
最強の悪魔と言われることがあり、堕天使ルシファーと同一視されることがあるサタンは、強大な力を持つ悪魔として一般的には考えられて恐れられています。
一方で、アンチテーゼ的な概念としてサタンと関わる信仰も存在することが分かりました。