スペイン語圏について詳しく解説していきます。該当する国や地域から、それぞれに含まれるスペイン語話者の人口数までを見ていきましょう。
国際連合の公用語には、5つの言語が設定されています。
それは、英語、中国語、フランス語、ロシア語、そしてスペイン語です。
このうちスペイン語は、第二言語として話す人までを加えると5億人を越え、中国語と英語に次いで世界で三番目に多くの話者数を抱える言語になっており、一大スペイン語圏を形成しています。
この記事では、その「スペイン語圏」に焦点を当て、定義、歴史、地域別による話者人口までを確認していこうと思います。
スペイン語圏とは?【定義の確認】
まずは「スペイン語圏とは何か?」に関する簡単な説明から。
スペイン語圏とは、
公用語や国語にスペイン語が定められている、もしくはそこに住む人々の主に話す言語がスペイン語である国・地域の総称
のこと。
スペイン語は中国語に次いで、世界で2番目に母語話者が多いと言われる言語で、スペイン本国を起源としながらも、歴史の過程で現在はアメリカ大陸でより広く話されています(※統計によって世界で2番目に母語話者が多い言語は、インドのヒンディー語や英語とされる場合もある)。
(青は唯一の公用語、赤は公用語の一つとなっている地域, 出典:wikipedia)
これらスペインと、アメリカ大陸でスペイン語が一般的に使われている地域を中心に、スペイン語が主に話されている地域が「スペイン語圏」に当たるのです。
具体的には、
- スペイン
- 南アメリカ
- 中央アメリカ
- カリブ海地域
- アフリカの赤道ギニア共和国
が一般的にスペイン語圏に含まれます。
ただし、上に挙げた地域でも、スペイン語以外が主な言語として使われいる国や地域もある点は覚えておきましょう。
スペイン語圏を理解する上で大切なスペイン語の歴史まとめ
世界で話者が何人いるかということも大切ですが、「スペイン語圏」への理解を深めるために、まずはスペイン語の歴史を確認しておきましょう。
スペイン語の起源
大きな分類で「インド・ヨーロッパ語族」に含まれるスペイン語は、フランス語、イタリア語、ルーマニア語、ポルトガル語などと同じ、俗ラテン語という祖語から発達した「ロマンス語」と呼ばれるグループに分類されます。
現在のスペインとポルトガルが位置するヨーロッパ南西部のイベリア半島が発祥地で、カスティーリャ王国で話されていた俗ラテン語と、当時この地域の一部を支配していたムーア人の話すアラビア語の方言が混ざり合って、13世紀にはスペイン語として標準化されました。
大航海時代の始まりによってアメリカ大陸へ広がったスペイン語
一方で、スペイン語がアメリカ大陸へ広がり、一大スペイン語圏を形成したのは、15世紀から始まり17世紀頃まで続いた「大航海時代」が理由でした。
この時代、技術の進歩もあり、スペインはポルトガルと争う形で領土拡大を国外へ求め、スペインが支援した一部の探検家(航海者)によって発見されたのが、現在のアメリカ大陸だったのです。
その後、スペインは主に南米や中米へ植民地を置き、多くのスペイン人が入植させて支配していった結果、現地ではスペイン語が当たり前のように使われ、スペイン本国を超える大きなスペイン語圏が、アメリカ大陸に形成されていきました。
スペイン語圏に含まれる国やスペイン語話者数を地域別に見ていこう
世界全体ではどこで何人の人に話されているのか?
スペイン語圏とされている国は世界にたくさんありますが、公用語としているのは、アメリカ合衆国の自治的・未編入領域であるプエルトリコ(プエルトリコ自治連邦区)も含めると、以下の通り21ヵ国に上ります。
- ヨーロッパ
- スペイン
- 北・中央アメリカ
- メキシコ/コスタリカ/グアテマラ/エルサルバドル/パナマ/ホンジュラス/ニカラグア
- 南アメリカ
- コロンビア/ベネズエラ/エクアドル/ペルー/ボリビア/チリ/アルゼンチン/ウルグアイ/パラグアイ
- カリブ海地域
- キューバ/ドミニカ共和国/プエルトリコ
- アフリカ
- 赤道ギニア
また公用語ではありませんがアメリカの一部地域(主に南部)、ベリーズ、アンドラ公国、ジブラルタルでは、日常的にスペイン語も話されてます。
世界でのスペイン語話者はどれくらい?
中華系の人々を中心に、世界でおよそ9億人が母語として使う中国語の普通話(マンダリン/北京官話)に次いで、統計によってはスペイン語を母語とする人々が世界で2番目に多いとされ、その数は現在、およそ4.5億人前後。
世界の人口の中でおよそ5~6%を占め、単純計算で20人に1人はスペイン語のネイティブスピーカーになります。
一方で、スペイン語を第二言語として話す人はそれほど多くなく、その数はおよそ5000万人前後と見積もられています。
これは、第二言語として英語、最近では中国語が圧倒的な人気を得ているため、スペイン語を学ぶ優先度が二の次になってしまっているからだと言えそうです。
ヨーロッパのスペイン語話者
スペインはスペイン語発祥の地であることから、当然ヨーロッパにおいてスペイン語話者は多くいます。
その数はスペインの人口規模である4600万人とほぼ同じです。
一方で、ヨーロッパではアンドラ公国とジブラルタルでもスペイン語は広く話されていますが、両国の公用語はそれぞれカタルーニャ語と英語であるのに加えて、合わせた人口規模も10万人程度しかいません。
また、スイスでは人口のおよそ2%程度に当たる、およそ15万人がスペイン語を話すと言われ、他にもイタリア、ドイツ、フランス、イギリスなどに少数のスペイン語話者がいます。
ちなみに、スペイン語はEUヨーロッパ連合で定められる24の公用語の1つです。
中南米・カリブ海のスペイン語話者
中南米とカリブ海を合わせた地域には、スペイン語を公用語に定めた多くの国があり、世界の中で最大のスペイン語圏となっています。
この地域全体で考えた場合、およそ3.5億人前後のスペイン語話者がいると想定され、スペイン語話者人口の大半を占めています。
この中南米・カリブ海地域でも最大のスペイン語話者人口を抱えるのがメキシコで、1億3000万弱の人々が日常的にスペイン語を使っているのです。
また、メキシコほどではありませんが、南米のコロンビアのおよそ4900万人とアルゼンチンのおよそ4400万人が、比較的大きなスペイン語話者を抱える同地域の国として続きます。
アメリカ合衆国のスペイン語話者
国としてはスペイン語を公用語に定めていないものの、スペイン語圏からの移民やその二世、三世の増加によって、アメリカ国内ではスペイン語話者の数と割合が増え続けています。
具体的には、アメリカ国内でスペイン語を母語とする人の数は4100万人以上で、国民の13%前後にあたり、さらにアメリカ国内にはネイティブスピーカーではないものの、その他に1200万人近いスペイン語話者がいると言われています。
結果、研究によっては2050年の時点で、アメリカ国内のスペイン語話者の数はメキシコを超えるとの予想がされているほどです。
ちなみに、「アメリカ国内においてスペイン語は第二言語として最も人気がある」という点も、スペイン語話者の増加に繋がっています。
その他地域でのスペイン語話者
スペイン語話者の大半はアメリカとヨーロッパに居住しているものの、それ以外の地域にもスペイン語圏はあります。
例えば、アフリカでは赤道ギニアにおいて、3つある公用語のうちの1つとして、人口の70%近くにスペイン語が話されています。
また旧スペイン領であった北アフリカでもスペイン語は話され、地理的にも近いモロッコには比較的多くのスペイン語話者がいます。
他に、アンゴラと南スーダンにも少数のスペイン語話者コミュニティがあります。
一方で、16世紀後半から1987年までスペイン語が公用語であり続けたフィリピンでは現在、スペイン語を話す人の割合は非常に小さい(1%前後)ものの、フィリピン全体の人口は1億人を超えるため、数で見るとそれなりに多くのスペイン語話者が確認出来ます。
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スペイン語圏とは?国や地域からスペイン語話者の人口数のまとめ
世界でも広く使われているスペイン語は、スペイン語圏という一大言語圏を形成しています。
そのため、中国語や英語以外にも、スペイン語を扱えるようにしておくことは、グローバルで活動したり海外で暮らす上では大いに役立つと言えるでしょう。