領土問題とは具体的にどのような問題のことを指すのでしょうか?世界で起こっている具体例を15個ピックアップして、領土問題に対する理解を深めていきます。
世界地図には国境線が描かれていますが、そこに描かれる国境線に関して全ての国が納得しているわけではありません。
国際的に承認されている国境線であっても、実は隣接する国同士は納得しておらず、一部の地域では係争が起きている、つまり領土問題が起きているのです。
例えば、日本も尖閣諸島や竹島、そして北方領土を巡って、それぞれ中国、韓国、ロシアと領土問題が存在します。
このように、世界中を見渡すと、非常に多くの領土問題があることに気づきます。
この記事では、領土問題について理解を深めるために、領土問題を定義した後、世界で起こっている領土問題の中から15個を具体例としてピックアップして紹介していこうと思います。
領土問題とは?
領土問題または領土紛争とは、特定の地域(主に陸地である領土)を巡って、2つ以上の国がどの国へ属するか争っている状態または問題のことで、何らかの理由でその地域の主権があいまいであるか、不都合であると解釈された時に発生します。
その理由としては例えば、
- 天然資源を巡った争い
- 歴史の中で第三者によって恣意的に定められた国境
- 国際情勢の変化(パワーバランスの変化)
- 当事国内の政治状況の変化
- 民族の対立
などを始め、他にも多岐に渡るのです。
一方で、外交努力によって平和的な形で解決することがあるものの、これまでの歴史の中で、戦争によって多くが決着がつけられてきた事実は、現在起こっている領土問題をを考える上で、しっかりと覚えておきたい点かと思います。
世界の領土問題の具体例16(15個+1)選
さて、領土問題の定義について理解したところで、ここからは世界で起こっている領土問題の具体例を16個挙げて紹介していきたいと思います。
世界の領土問題1:ナゴルノ・カラバフ
南コーカサスのアゼルバイジャン西部にあるナゴルノ・カラバフは、アルメニアとアゼルバイジャンの間で領土問題となっています。
この地域には昔から多くのアルメニア系住民が住んでいると同時に、以前はアゼルバイジャン系住民も住んでいました。
そのため、昔から両民族の間では領土問題として取り上げられることが度々ありましたが、状況が悪化したのはソ連崩壊以降。
ソ連時代、カラバフはアゼルバイジャン内の自治州とされたもの、ソ連という大きな一つの国の中でアルメニアもアゼルバイジャンも含まれていたため、大きな問題にはならずに済んでいました。
しかし、ソ連が崩壊すると、カラバフに住んでいた多数派のアルメニア系住民がアルメニアへの合流を求め、「ナゴルノ・カラバフ共和国」として1991年9月2日に独立宣言をしたのです。
その結果、現在、カラバフの独立を支持するアルメニアとナゴルノ・カラバフ共和国側と、自国の領土であると主張するアゼルバイジャン側によって、カラバフを巡る領土問題が起きています。
世界の領土問題2:アブハジアと南オセチア
アブハジア共和国と南オセチア共和国の二つの共和国は、南コーカス地域に位置する国ジョージアを相手に一世紀近くにわたって独立を求めて争ってきました。
アブハジアの多数派はアブハジア人であり、また、南オセチアの多数派はオセット人。
ジョージア人の国であるジョージアと両地域は、民族的なアイデンティティが異なり、これがこの地域における領土問題の原因の一つと言えるでしょう。
そして、アブハジアと南オセチアは、緊密な同盟関係にあるロシアからの軍事支援に頼ることで、現在、事実上の独立状態となっているのです。
世界の領土問題3:キプロス
何世紀にもわたってギリシャとトルコは互いに激しくいがみ合ってきましたが、その結果、地中海の東に浮かぶキプロスでは、両国による領土問題が起きています。
ギリシャとトルコはお互いに、過去に何度もキプロスの統治権を奪ったり奪われたりしてきたのです。
そして、現在のキプロス島は二つに分裂しています。
北側のおよそ37%の土地をトルコ側がコントロールし、そこは「北キプロス・トルコ共和国」となり、残りの南側の土地およそ63%は、ギリシャ系住民によって占められる「キプロス共和国」となっているのです。
ちなみに、「北キプロス・トルコ共和国」はトルコ以外を除き、国際的な承認は得ていません。
また、両者の間にはNATOによって設けられた緩衝地帯があります。
世界の領土問題4:セウタとメリリャ
アフリカ大陸北部の沿岸、ちょうどモロッコ領土にあたるこれらの沿岸には、モロッコの領土ではなくスペインの飛地領とされる、「セウタ」と「メリリャ」という二つの地域があります。
歴史の中で、スペインによって占領された地域です。
モロッコはスペイン政府に向けて、両地域の主権を返還するように繰り返し求めてきましたが、どちらの地域の地元住民も圧倒的多数でそれを拒否。
現在のところ、2つの地域は未だにスペイン領とされ、また、EU圏内に留まっています。
世界の領土問題5:フォークランド諸島
南大西洋にあるフォークランド諸島は、アルゼンチンのパタゴニアから500kmほど離れた海に浮かぶ大小の島々。
16世紀、大公開時代の中でヨーロッパ人に発見されてからというもの、フォークランド諸島はイギリスが領有権を主張したり、他にもフランスやスペイン、そして、スペインから独立してからはアルゼンチンが領有権を主張するなどしてきました。
しかし、1833年以降はイギリスが実行支配を続けており、それに対してアルゼンチンが領有権を主張しているものの、この状況は現在まで続いています。
世界の領土問題6:サウスジョージア・サウスサンドイッチ諸島
フォークランド諸島からさらに1000kmほど東にいったところには、サウスジョージア・サウスサンドイッチ諸島という地域があり、ここでもイギリスとアルゼンチンによる領土問題が起こっています。
問題の発端は、20世紀になった頃にアルゼンチンの捕鯨会社がこれらの島々で事業を始めたのとほぼ同時に、英国がこの島を併合したこと。
現在はイギリスの海外領土とされているものの、今日まで、アルゼンチンはこの諸島の領有権を主張しています。
世界の領土問題7:ジブラルタル
ヨーロッパの南西、スペインやポルトガルなどが位置するイベリア半島の南東部に突き出た小さな半島は、ジブラルタルと呼ばれるイギリスの海外領土。
16世紀からイギリスの占領下になる18世紀までは、スペインの領土であったこともあり、イギリスとスペインはジブラルタルの領有権を巡って未だに領土問題を抱えています。
ちなみに、イギリスがEUからの離脱を目指すブレグジットにおいてEU側のスペインは、イギリス側が示した「離脱協定案」でのジブラルタルの扱いを改めないと、その案を拒否すると発表するなど、ブレグジットによって同領土問題は複雑化しています。
世界の領土問題8:西サハラ
西サハラはアフリカ大陸北西部の大西洋岸にある地域で、モロッコ、アルジェリア、モーリタニアに接して主に砂漠からなり、世界でも最も人口の少ない地域の一つ。
元々はスペイン帝国の一部でしたが、現在では、西サハラにおいて独立国家樹立を目指すポリサリオ戦線によって宣言された亡命政府「サハラ・アラブ民主共和国」と、モロッコによって領有権が主張されています。
ちなみに、サハラ・アラブ民主共和国は国連に加盟する80以上の国に国家として承認されています。
世界の領土問題9:アビエイ
2011年にスーダン共和国に元々属していた南部10州が独立して「南スーダン共和国」が樹立されて以降、スーダンと南スーダンの間には「アビエイ」を巡る領土問題が存在し続けています。
アビエイは、両国間の紛争地帯のちょうど中央辺りに位置し、スーダンが実行支配している一方で、南スーダン側もその帰属を主張しています。
世界の領土問題10:チベット
チベットと中国の関係は複雑です。
1500年近い時間の中で、両者の力関係は常に変わりながら共存してきたのです。
現在、チベットは中国の自治省とされていますが、この地域に住むチベット系住民たちは、今もインドに亡命したダライ・ラマを指導者に置く「チベット亡命政府」を自分たちの政府だと考えており、この地域を巡っては、チベット亡命政府側と中国側で事実上の領土問題が続いています。
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世界の領土問題11:台湾
台湾は、1912年に成立した「国民党」による「中華民国」と、1949年に国民党を「共産党」が大陸から追い出して成立した「中華人民共和国」の二つが領有権を争っている場所。
中華民国と中華人民共和国はどちらとも、自分たちが正当な「中国」であると主張しており、互いに相手を承認しておらず、現在は中華民国が台湾を実行支配している状況にあります。
ただし、近年は中華人民共和国の経済が大きく成長し、それに伴って軍事力や国際社会に与える影響が強まった結果、中華民国による台湾支配に関して予断を許さない状況になりつつあります。
世界の領土問題12:スプラトリー諸島(南沙諸島)
南シナ海南部に浮かび、大小合わせて数百にもなる島々から成るスプラトリー諸島(南沙諸島)は、もともとは無人島で、現在でも一部を除いてほとんどの島に人は住んでいません。
しかし、この諸島周辺には、数多くの石油や天然ガス資源が眠っている上に、豊かな漁場があることから、同地地域は、
- 中国(中華人民共和国)
- 台湾(中華民国)
- ベトナム
- フィリピン
- マレーシア
- ブルネイ
の6つの国によって領有権が争われており、また、諸島に含まれる島は、それぞれ異なる国によって実行支配されている状況になっています。
世界の領土問題13:カシミール
カシミール地域はインドとパキスタンの間にあり、インド北部とパキスタン北東部の国境付近に広がる山岳地帯。
このカシミールは現在、三つの勢力の下に分かれています。
それは、
- パキスタン
- 北西の地域を実行支配
- 中国
- 北東の地域を実行支配
- インド
- 南の地域を実行支配
の3ヶ国で、それぞれが領有権を主張しています。
なかでも、特にインドとパキスタンはお互いの主張を認めようとせず、過去に何度も戦争が繰り返されるなど、両国の間では領土紛争が続いており、未だに解決の道筋が見えていません。
世界の領土問題14:沿ドニエストル共和国
ドニエストル川とウクライナに挟まれた狭い土地にある沿ドニエストルは、モルドバ共和国の一部とみなされているものの、モルドバ側による実行統治には至っておらず、事実上の独立状態にあります。
モルドバに住む住民の大多数はルーマニア人なのに対して、沿ドニエストルの住民の多くはロシア系で、これが、モルドバと沿ドニエストルを分け隔てている大きな原因です。
沿ドニエストルはモルドバ側と沿ドニエストル側によって事実上の領土問題となっており、そこへ、ロシアの影響がちらついている状況が続いています。
世界の領土問題15:クリミア
2014年にロシアが一方的に併合を宣言したクリミアは、ウクライナとロシアの間の領土問題として注目されただけでなく、それまでの国際社会の秩序を乱す大事件でした。
この地域には年中凍ることがない不凍港があるため、歴史的にロシアにとっては戦略的上で非常に重要でした。
しかし、ソ連時代の1954年、当時のソ連最高指導者ニキータ・フルシチョフによってウクライナへ移管された結果、1991年にウクライナが独立した際にクリミアは、ウクライナの一部となったままでした。
このような背景もあり、同地に多く住むロシア系住民が独立並びにロシアへの編入を希望しているという口実で、ロシアはクリミアを実行支配して自国領土として併合してしまったのです。
一方で、ウクライナはもとより、諸外国の多くはこの編入を認めていないため、国際社会を巻き込んだ領土問題となっています。
世界の領土問題(逆領土問題):ビル・タウィール
世界の領土問題として最後に紹介しておきたいのが、これまで挙げてきた問題とは真逆の珍しいパターン。
ビル・タウィール(Bir Tawail)は、エジプトとスーダンの国境地帯の一部で、両国ともに自国の領土とは主張せず、むしろ相手の領土だと主張する、ある意味「逆領土問題」が起きている地球上でも非常に珍しい場所。
両国の国境地帯の紅海沿岸にあたるハラーイブ・トライアングル(Hala’ib Triangle)を巡る領土問題と結びついており、
- 両国ともハラーイブ・トライアングルの領有権を主張している
- ハラーイブ・トライアングルを自国領として境界線を引くとビル・タウィールは含まれない
- その他
- ビル・タウィールはハラーイブ・トライアングルの1/10しかない
- ビル・タウィールはハラーイブ・トライアングルより重要でない
といった理由から、両国はビル・タウィールに関する主権を主張していないのです。
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領土問題とは?世界で起こる具体的事例を確認して理解を深めよう!のまとめ
領土問題について理解を深めるために、世界中で起こっている具体的な事例を15個ピックアップしてみました。
領土問題は世界中で起こっています。
そして、そこには個々の原因や理由があり、解決には膨大な労力と時間が掛かるのです。