メテオラ修道院群について詳しく見ていきましょう。ギリシャにある世界遺産の一つで、人知を超えた場所に建てられた美しい複数の修道院のことです。
非常に長い歴史や文化を誇るギリシャでは、中世頃、想像を絶するような場所に修道院が複数建設されました。
そこは複雑で険しい奇岩が目立つ場所で、そのような場所にも関わらず、なんと合計24もの修道院が人の手によって建設されたのです。
そして現在、この場所はメテオラまたはメテオラ修道院群と呼ばれ、ギリシャが誇る重要な歴史的・文化的場所として知られています。
この記事ではメテオラ修道院群に関して、基本的な概要から今日も残る6つの修道院それぞれについての簡単な解説までを紹介していこうと思います。
メテオラ修道院(群)とは?
メテオラは、ギリシャ正教の修道院の中でアトス山に次いで2番目に規模が大きく重要な施設。
ギリシャ北西部のテッサリア(セサリア)地方北端の奇岩群と、その上に建設された複数ある修道院の総称のことで、「メテオラ修道院」や「メテオラ修道院群」とも呼ばれ、1988年からはユネスコの世界遺産へ登録されています。
「メテオラ」という名前は、ギリシャ語で「中空」、「空中に浮かぶ」、「空中に吊り下げられた」、「上空の天国」といった意味を持ち、修道院群の様子をよく表しています。
ギリシャで最も素晴らしい景観をもつ建物群の一つであり、周囲の景色と調和して素晴らしい景観を作っているのです。
そんなメテオラ修道院群が建設された奇岩群は、約6千万年前には形作られ、長い時間をかけて地震や風雨によって侵食されて、現在の変化に富んだ独特の形になりました。
そして、修道院が建てられた砂岩の巨石群の高さの平均は300m、高い所では550mに達します。
一方の修道院群は、14世紀のビザンティン帝国時代の修道士達によって「神に近づきたいという思い」の下、その奇岩群に建設され始めていったとされます。
ただし、メテオラ修道院群の基盤自体ができ始めたのは11世紀頃だと言われ、12世紀には正式にこの場所で修行が行われるようになっていたとも考えられています。
そして、最終的にメテオラには24の修道院が建てられ、それぞれ1〜2堂の教会と修道士達の部屋、そして食堂がありました。
しかし、現在では
- 大メテオロン修道院
- ヴァルラアム修道院
- ルサヌ修道院
- 聖ニコラス・アナパフサス修道院
- 聖ステファノス修道院
- アギア・トリアダ修道院
の6つの修道院だけが残り、活動を続けています。
メテオラにある6つの荘厳な修道院をそれぞれ紹介
大メテオロン修道院
メテオラの修道院の中でも最も古くて大きく、最も高い場所にあるのが大メテオロン修道院。
この修道院は、他の修道院よりも高い所に位置し、渓谷の下から615m以上も上った所に、当時、強い指導力を持っていたメテオラの聖アサナシオスによって建てられました。
そして、「空中に吊り下げられた偉大な場所」という意味を持つ名前からも分かる通り、この修道院に行くためには、頂上までの300段に及ぶ階段を登る必要があり、そこには14世紀に建てられた教会や小さな美術館、ワインセラー、日陰になった中庭など、たくさんの施設が存在しています。
ちなみに、大メテオロン修道院はメテオラ修道院群の中で最も権威のある修道院とされると同時に、メタモルフォシス(救世主の変容)という名前でも知られています。
ヴァルラアム修道院
メテオラの修道院の中で2番目に大きなヴァルラアム修道院は、険しい岩山の上に建てられており、建設にはかなりの困難が伴いました。
山の頂上に建築資材を持っていくだけでも22年かかったと言われており、かなり大規模な工事を必要としたことが分かります。
そして、1541年に建立され、1566年に施された拝廊部分を除いて、1548年には装飾が施されて完成しました。
現在、資材を持ち上げるために使用された機器類は、食堂を改築した美術館で展示されており、また、崖の表面に195段の階段が掘られているため、簡単に頂上まで上ることが出来るようになっています。
そして、修道院内部の礼拝堂は、フレスコ画で覆われており、その中にはアポカリプスを描いた恐ろしい絵が飾られていることでも知られます。
ルサヌ修道院
ルサヌ修道院は16世紀半ばにヨアニナのマクシモスとヨアサフによって建立され、1560年に装飾が施されました。
メテオラにあるその他6つの修道院と比べて低い岩の上に位置することから比較的アクセスが簡単なことで知られます。
他にも、最近新たに橋が修復されたこともあり、険しい崖を歩く恐怖が減り、修道院内部へと通いやすくなりました。
20世紀半ば以降、聖女ヴァルヴァラに捧げられた修道院であるルサヌ修道院は、女性修道院として利用されており、観光客を迎え入れる際には、親しみやすく接してくれる修道女が出迎えてくれます。
メインの礼拝堂には保存状態の良いフレスコ画が飾られていて、そこには殉教者のすさまじい光景が描かれ、その光景は優しく出迎える修道女の姿と対照的なコントラストを作り出していると言えるでしょう。
また、中庭と建物の外にある庭園は明るい雰囲気に満たされていて、写真を撮るにはうってつけのスポットとなっています。
聖ニコラオス・アナパフサス修道院
聖ニコラオス・アナパフサス修道院または単に聖ニコラオス修道院は、メテオラの修道院群の中でもその独特な建築構造が特徴で、比較的規模が小さい修道院。
14世紀に創建され、メテオラの修道院の中でも特に優れたフレスコ画で有名で、有名なクレタ人の画家テオファニス・ストリザリスによって、メインとなる礼拝堂の壁面のフレスコ画が描かれました。
そこには、聖書の一場面や16世紀の修道院の生活の様子が、活き活きとした色彩で描かれています。
ちなみに、この修道院へ辿り着くには、メテオラの近くにある村カストラキからの道を使うことになり、砂岩の頂上にある修道院の入り口まで行くには150段の階段を上る必要があります。
聖ステファノス修道院
メテオラの中で唯一、テッサリア地方トリカラ県の首都カランバカから見える修道院として知られるのが聖ステファノス修道院です。
14世紀前半には存在していたとされ、14世紀後半の1367年には共住用の修道院として使われるようになりました。
また、歴史の中ではビザンチン帝国(東ローマ帝国)の皇帝アンドロニコス・パレオロゴス3世が訪れており、元となる教会に資金援助を行ったことでも知られています。
一方で、第二次世界大戦中、反逆者を匿っていると信じたナチスによる攻撃を受けて大きな損害を被り、さらに1940年代後半のギリシャ内戦時には、共産党の反乱軍によってフレスコ画の多くが傷つけられた結果、1961年まで実質的に放棄されて無人となってしまった経緯を持ちます(1545年に改築された古いカトリコン(主聖堂)と、その後間もなく描かれたフレスコ画はまだ健在)。
ただし、その後には女性修道院として再建され、再び利用されることになり、現在に至ります。
今日、15世紀に使われていた食堂は美術館に改修され、素晴らしい刺繍のあるローブやタペストリーの展示が行われています。
また、修道女たちは観光客を温かく迎え入れてくれます。
アギア・トリアダ修道院
アギア・トリアダ修道院は、辿り着くのがかなり難しい場所にあり、谷を越え、さらに高い岩の間を登り抜けてようやく入り口に到達することができます。
キリスト教における三位一体を表す至聖三者に捧げられた修道院であることから、「至聖三者修道院」という意味を持ち、1475年〜76年に建てられ、1741年に装飾が施されました。
また、1981年に公開されたジェームス・ボンドの007シリーズ映画「007 ユア・アイズ・オンリー」の撮影が行われた場所としても有名で、結果的にメテオラ修道院群の中では、最も有名で知名度が高くなっています。
ただし、岩場の頂上に位置するこの孤独な修道院は、訪れるまでに最も苦労する修道院の一つであることも確かで、辿り着くためには険しい渓谷にある140段の階段を下りなければなりません。
そしてその後には、居住区の建物までの140段の階段を上る必要があります。
このように修道院に行くまでの道は厳しいものの、修道院に辿り着けば、それまでの努力が報われるような素晴らしい体験をすることができます。
例えば、ドーム型の部屋には、完璧に復元された17世紀の荘厳なフレスコ画が描かれており、さらに、文句のつけようのない景色を眺めることも出来るのです。
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メテオラ修道院群|ギリシャにある世界遺産の一つ(歴史や行き方等)のまとめ
ギリシャにあるメテオラ修道院群についてみてきました。
ユネスコによって、「維持すべき人類の遺跡」見なされて世界遺産となっている神聖なメテオラは、ビザンティン時代の建築と壮大な自然美が調和した世界にも稀に見る場所で、その芸術性や文化的価値によって世界中から関心を集めています。