イギリスの国花|テューダーローズやスコットランドのアザミなど

イギリスの国花について詳しく見ていきます。イングランドのテューダーローズやスコットランドのアザミなど、イギリスには複数の国花があるのが特徴です。

世界に存在するおよそ200ほどの国家の中には、自国を象徴する国花を持っている国家があります。

そして国花は、その国を単に象徴する存在であるだけでなく、歴史的または文化的な意味合いを持っている場合がほとんどで、このことはイギリスの国花においても一緒です。

一方で、国家の歴史的な成り立ちによって、イギリスの国花と言われるものは複数存在するのが特徴で、それがまたイギリスの国花を興味深くしています。

この記事では、テューダーローズやアザミなど、イギリスの国花とされる各花について、国花に制定されるまでの歴史的な背景も含めて見ていきます。

ただし、なぜ複数存在するのかを理解するためには、国家としてのイギリスの特徴を理解しておくことが大切なため、まずは簡単にイギリスの成り立ちに関してのおさらいから始めていきましょう。

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イギリスの成り立ちによって複数存在するイギリスの国花

まずはイギリスの国家としての成り立ちと特徴を理解することから始めよう

イギリスの国花を理解する上では、イギリスの国としての成り立ち並びに日本と比べて異なる特徴を理解しておくことが必須。

まずは、イギリスの国家としての成り立ちと特徴をおさらいしていきましょう。

現在「イギリス」と呼ばれている国は、グレートブリテン島とアイルランド島北東部を中心に、そのた複数の小さな島から構成されており、正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」。

この名前からも分かる通り、

  1. イングランド
  2. スコットランド
  3. ウェールズ
  4. 北アイルランド

という4つのカントリー(国または構成国)が、同じ君主を共有する「同君連合」を歴史の中で形成していき、全体として一つの「主権国家」という体制を取る、少し変わった特徴を有するイギリスとなっていきました。

言い方を変えれば、グレートブリテン島とアイルランド島の中に存在する、4つの日本のような単一国が、外交や防衛など様々な面を一本化して共有しながら連合を組んでいるのがイギリスなのです。

そのため例えば、サッカーやラグビーなどを見ると、イギリス代表としてではなく、イングランドやウェールズなど、イギリスを構成する国がそれぞれ出場しているのが分かります。

イギリスには各構成国ごとに国花がある

そしてこのことはまた、国花に関しても同じです。

つまり、イギリスには構成国ごとに国花が制定されているため、同国には4つの国花が存在し、具体的には以下の通りになります。

  • イングランド
    • テューダー・ローズ
  • スコットランド
    • アザミ
  • ウェールズ
    • ラッパスイセン
    • (リーキ)
  • 北アイルランド
    • シャムロック

ちなみに、上を見ると5つ存在していますが、ウェールズの「リーキ」は茎と葉のみが国のシンボルとして扱われ花は対象となっていないことから、「国花」とした場合、厳密には含めません。

また、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」全体の国花として「バラ」が挙げられることがありますが、これは日本で言われる傾向にあることで、実際には連合を象徴する花に関してまとまった意見はありません。

ただし、イギリスの構成国の中で最も目立つのがイングランドであるため、イングランドのイメージのまま「バラはイギリスの国花である」と言われることは少なくないと思います。

イギリスの国花を構成国ごとに確認していこう

イングランド:テューダー・ローズ

まずはイギリスを構成する代表的な国イングランドの国花から。

上でも示した通り、イングランドの国花は「テューダー・ローズ」と呼ばれるバラですが、これはただのバラではありません。

テューダー・ローズは自然界に存在するバラではなく、あくまでもイングランドの伝統的なバラの紋なのです。

このテューダー・ローズと呼ばれる紋は、

  • 赤バラを紋章とするランカスター家
  • 白バラを紋章とするヨーク家

の間で1455年から1485年までの30年にも及んだ権力闘争、いわゆる「薔薇戦争」の終結を記念して、ヘンリー7世がイングランドの紋章として制定したもの。

赤いバラと白いバラを組み合わせたデザインであったため、両家間の平和の象徴となりました。

このヘンリー7世はランカスター家の女系の血筋を引くテューダー家の人物であり、また、ヨーク家のエリザベス王女と結婚してテューダー朝を開いた際に、このバラの紋を採用したことからテューダー・ローズと呼ばれ、以降、イングランドのシンボルとなってきたのです。

ちなみに現在、ラグビー連盟のイングランド代表チームやイングランドゴルフ連盟のエンブレムには赤バラが使われていますが、これは赤色の方が目立つテューダー・ローズから派生していると考えられます。

スコットランド:アザミ

スコットランドのハイランド地方やローランド地方でよく見られるアザミは、少なくとも500年以上にわたってスコットランドの国花と見なされてきた花。

花は赤紫や紫色をしており、葉や花を包む総苞にトゲがあるのが特徴です。

アザミが国花に選ばれた経緯ははっきりしていません。

ある伝説によると、スコットランドの戦士たちが侵略してきた北欧軍に寝入りを襲われた際、アザミのトゲを踏んで声を上げたことで目を覚ますことが出来たとされ、このことがアザミが国花の起源となったと言います。

そんなアザミをモチーフにした紋章は、ラグビーのスコットランド代表チームやサッカーチームのユニフォーム、そして警察官の制服に至るまで、スコットランドではあらゆるところに使われています。

また、スコットランドと英国の人々の生活に大きな貢献をした人たちに授与される、スコットランドの最高勲章「シッスル勲章」は、アザミをモチーフにしており、「アザミ勲章」と呼ばれることもあります。

スコットランド:ラッパスイセン

ラッパスイセンがウェールズの国花になった経緯に関しても諸説あり、確たる起源については定かになっていません。

中には、

  • ウェールズの紋章は19世紀までリーキ(西洋ネギ)であった
  • ウェールズ語でスイセンは「cenninen Pedr」である
  • そして、ウェールズ語でリーキは「cenninen(cennin, 複数形)」である
  • よって、誤解が生まれた結果、本来はリーキであった国花がいつの間にかラッパスイセンに置き換わったのではないか?

という仮説が存在します。

他にも、

  • ラッパスイセンは初春に咲く花である
  • 3月1日のセント・デイヴィッド・デー(聖デイヴィッドの日)にスイセンの花を身につける習慣がある
  • よって国花に選ばれたのではないか?

と考える人もいます。

理由はなんであれ、ウェールズ出身で唯一イギリスの首相になったデイヴィッド・ロイド・ジョージは、鮮やかで気分が明るくなるラッパスイセンが国花にふさわしいと公言していたこともあります。

実際に、リーキよりも服に飾るのに可愛らしいという点は間違いありません。

リーキについて

ちなみに、ウェールズの国花にはリーキも含まれることがあるわけですが、その場合に対象とされるのはあくまでも食用になる茎葉の部分のみ。

そのため、リーキが国花であるかについては議論が絶えませんが、ウェールズの首都カーディフの旗には、ネギ坊主(ネギの花)も描かれていたりします。

また、リーキはウェールズの守護聖人デイヴィッドのシンボルでもあるなど、ウェールズでは伝統的に大変重宝されてきました。

北アイルランド: シャムロック

北アイルランドの国花は、幸運の四つ葉のクローバーではなく、三つ葉のクローバーの形をしたシャムロックで、イギリス連合国家には含まれない隣国のアイルランド共和国においても国花です(現在の北アイルランドとアイルランド共和国は、1920年に成立したアイルランド統治法によって南北に分割されて誕生した)

また、アイルランド共和国では政府によって商標登録されています。

なぜシャムロックが北アイルランドの国花となったかについては、一つの伝承によると、

アイルランドの守護聖人パトリキウス(聖パトリック)は、キリスト教において重要な三位一体を説明するためにシャムロックを用いた。

聖パトリックは、一つ目の葉は父(神)を、二つ目の葉は子(キリスト)を、そして三つ目の葉は霊を表しているとして、シャムロックを三位一体の比喩として利用したのだ。

という話が残っており、これによってアイルランド並びに北アイルランドでは国花となっていったというのです。

ちなみに、シャムロックとは、実は単一種の植物ではなく、マメ科のクローバー、ウマゴヤシ、ミヤカタバミなど、葉が三枚に分かれているクローバー(シロツメクサ)に似た草の総称です。

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イギリスの国花|テューダーローズやスコットランドのアザミなどのまとめ

イギリスの国花について見てきました。

その国家としての特徴的な成り立ちによって、テューダーローズ、アザミ、ラッパスイセン、そしてシャムロックと、イギリスを形成する国にそれぞれ一つずつの国花が、合計4つ存在するのが特徴です。

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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