ケツァール|火の鳥!コスタリカやグアテマラに棲むかわいい鳥

ケツァールを知っていますか?火の鳥と呼ばれることもある、コスタリカやグアテマラなどの中央アメリカに生息するかわいい鳥です。

その姿から生きる火の鳥とさえ呼ばれるケツァールは、世界一美しい鳥と言われる鳥。

コスタリカやグアテマラなど、中央アメリカの熱帯雨林の山岳地帯に生息する中型の鳥で、色鮮やかな体の色と可愛い外見、さらに、優雅に伸びる長い尾羽によって、一度見た人へ忘れられないほど強い印象を与えます。

ケツァールとは一体どんな鳥なのか?

特徴や習性などを含めた基本的なことから、ケツァールにまつわる逸話や迷信までを紹介していきます。

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ケツァールとは?

ケツァール(quetzal)とは、キヌバネドリ科に属するとても鮮やかな色合いをした鳥。

可愛い目を持ち、ずんぐりむっくりとしながらも、人の目を引く色合いと鮮やかで美しい外見が特徴で、

  • 美しい青緑色の翼
  • 緑色/金色がかった緑色の玉虫色の頭部
  • 胸掛けのようにも見える緑色/金色がかった緑色の玉虫色のの頸部から胸部
  • 緑色/金色がかった緑色の玉虫色の尾羽(但し裏側の一部は白色や黒色)
  • 鮮やかな赤色をした腹部

を持ちます。

また、オス、メスともにこうした色合いをしていますが、ケツァールは性別によって個体の形質が異なる性的二形(せいてきにけい)の生き物であることから、

  • オス
    • 鮮やかな傾向にあり、種によっては1mにも伸びる二股に分かれた尾羽(飾り羽)を持つ
  • メス
    • 羽の一部にグレーや茶色が混じることがあり、尾羽は短い

といった際を異なる性別間で見ることが出来ます。

(ケツァールのメス)

そして、体長は基本的に35cm前後で、種によってはオスの個体に1m近い飾り羽がつくため、全長は1mをゆうに超えることがあります。

ケツァールの生息地

鮮やかな色合いはグアテマラの人々を象徴するものだとして、グアテマラの国鳥になっていることからも分かる通り、ケツァールはメキシコ南部からパナマにかけての中米に生息。

その地域にある山岳地帯の森林や湿地がある高地、標高1200〜3000mの環境に住みついているとされます。

ケツァールの種類

ちなみに、「ケツァール」と呼ばれる鳥には、実は5つの種類と1つの近似種が含まれているのはあまり知られていません。

キヌバネドリ科ケツァール属に含まれる鳥

(ケツァールの一種「キンガシラカザリキヌバネドリ」)

  1. カンムリカザリキヌバネドリ(Pharomachrus antisianus)
  2. キンガシラカザリキヌバネドリ(Pharomachrus auriceps)
  3. オジロカザリキヌバネドリ(Pharomachrus fulgidus)
  4. カザリキヌバネドリ(Pharomachrus mocinno)
  5. アカハシカザリキヌバネドリ(Pharomachrus pavoninus)

中でも、ケツァールとして日本において一般的に認知されているのは「カザリキヌバネドリ」で、長い尾羽(飾り羽)を持った火の鳥の様な鳥として知られています。

キヌバネドリ科ミミキヌバネドリ属

(出典:eBird

現在の生物学上の分類によると、ケツァールとは異なるミミキヌバネドリ属に分類され、ミミキヌバネドリ属を単一の種で構成するミミキヌバネドリは、ケツァールとは非常に近い種。

外見も非常に似ていることから、一部の識者からはケツァール属に含めるべきだとの声も出ており、実際に英語では「Eared quetzal」と表記されることから、将来的にはケツァールの仲間に分類されるかもしれません。

ケツァールの習性

ケツァールは通常、森林に生える高い木の高い部分(通常は地上から10m程度の高さ)にある穴を住みかとして暮らします。

自ら木に穴を掘ることもあれば、キツツキが作って放置されている穴を使うこともよくあります。

そして、多くの個体は主に単独で行動し、明け方や夕暮れなどの時間帯に活発になる「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」の性質を持ちます。

一方で、ケツァールが主食とするのは果物や実ですが、他にも補食として、ハチやアリ、イモムシなどの虫、トカゲ、カエル、その他の小型脊椎動物を食べることもあるため、いわゆる雑食性の動物です。

ちなみに、ケツァールの象徴でもある鮮やかな色の羽と周りの森林の美しさによって、飛行する時はまさに自然の神秘と言える姿になりますが、実は飛ぶことはあまり得意ではなく、また地上に降りることも稀。

これはケツァールの足は木にとまったり、跳ねたりするのに適しているからです。

また、普段は大人しい鳥ですが、縄張り意識が強く、夜明けと日没には口笛のような鳴き声で自分の縄張りを主張します。

ケツァールの繁殖について

ケツァールが成熟して生殖適齢期となるのが5歳から6歳の頃。

このぐらいの歳になると、例えばカザリキヌバネドリ種のオスには、繁殖期である3月から6月の前に1m近い飾り羽が生えてきます(この羽は3歳頃までは生えない)

そして、オスが求愛行動を始めると、そのオスを気に入ったメスが動きを模倣し始め、こうしてつがいが成立(ただし、繁殖期以外につがいになるケースは稀で、通常は単独行動)

その後、ケツァールのつがいは、キツツキによって木に掘られた巣穴を使うか、自らそのくちばしで腐った木や切株に巣穴を掘り、そこに卵を産むのです。

メスは青い3cmほどの卵を2〜3個産み、ヒナが孵るまでの間、オスと交代で約17-18日間温め続け、雛が孵った後も交代で餌を運びます。

その後、ヒナは生後3週間ほどで飛べるようになります。

ケツァールの語源

ケツァール(quetzal)の名は、メキシコや北米のインディアンたちによって最も広く話されていた、ユト・アステカ語族のナワトル語にある「quetzalli」が語源になっているとされます。

この「quetzalli」の「quetz」は「立つ」を意味することから、quetzalliは「真っ直ぐ伸びる羽」を指します。

そして、quetzalliは、

大きく光り輝く尾羽

を意味する様になり、そのような尾羽を持つ鳥であるケツァールの名前となっていったようです。

他にもquetzalliは「ケツァールの尾の雨おおい羽」を意味するとも言われます。

ちなみに、現在でこそケツァール属として、いくつかの種類が含まれ、それぞれはケツァールの仲間とされますが、当初、ケツァールは、長い飾り羽が特徴的な「カザリキヌバネドリのみを指す言葉」として使われていました

ケツァールにまつわる逸話と迷信

ケツァールは何千年ものあいだ、その美しさを崇められてきました。

またそれだけでなく、人里離れた山奥に生息していることで現地の人にとっては神秘的な鳥となり、ケツァールに関しては様々な逸話が生まれました。

聖なる鳥

ケツァールは、古代マヤとアステカの人々から聖なる鳥として崇められていました。

そのため、羽毛は貨幣として用いられ、身分の高い者や王族が儀式の際に身に着けたりしていたのです。

例えば、1m近い長く伸びるケツァールの尾羽は、主に王族の衣装の装飾として用いられていました。

ちなみに、ケツァールを国鳥として崇めているグアテマラでは、その通貨の名前(グアテマラ・ケツァル)にも、1924年からケツァールの名前が採用されています。

自由の象徴

まばゆいばかりのケツァールは、人間に捕らえられたり小屋に入れられたりするとすぐに自害してしまうという言い伝えがあります。

このことから、文化によっては伝統的に、ケツァールを「自由の象徴」としているものも存在します。

また、飼育には向いていないため、もちろんペットにすることはほぼ不可能で、経験豊富な動物園などであっても飼育は非常に困難。

高い技術をもった専門家以外はこの美しい鳥を世話するには適していません。

絶滅の危険性

その美しい姿と希少性から、ケツァールは人気の観光資源ともなっていますが、同時にペット目的で捕獲されたり、観光客向けに飼われた結果、次々と命を落としていきました。

また、美しい羽毛を目的とした乱獲の影響や、生息地である森林伐採もケツァールの環境を大きく脅かしています。

その結果、個体数は激減し、現在は絶滅危惧種に数えられています。

ただし、代表的なケツァール「カザリキヌバネドリ」と、ケツァールの近似種とされている「ミミキヌバネドリ」は、準絶滅危惧種であるとされています。

可愛い大きな目は重要な役割を持つ

ケツァールを魅力的にしている特徴の一つは、鳥類の中でも体に対する割合が大きい目。

この目によってケツァールは可愛らしさを増していますが、実は、ケツァールの目が大きいのは実用的な理由があってのことだと言われます。

それは、ケツァールの生息地である薄暗い山奥のなかでも周りが良く見えるようにするため

ケツァールは大きな目によって薄暗い中でも行動し、生きていくために必要な餌を探したり出来るようになっているのです。

ケツァールの腹が赤くなった言い伝え

グアテマラには、マヤがスペインから侵攻を受けた際に起きた激しい戦闘の話が伝わっていますが、そこにはケツァールが登場します。

その話によると、マヤ人の都市キチェがスペインの激しい侵攻をうけた際、戦場に残されたマヤ人の死骸に多くのケツァールが群がりました。

そして、その血で羽が染まり、ケツァールの腹部分が赤くなったと言うのです。

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中米に生息する伝説の火の鳥を彷彿とさせる美しい鳥、ケツァールについて詳しく見てきました。

日本では見ることができない上に、現地であっても人里離れた所に棲むことから、なかなか実際に目に掛かることは難しい鳥です。

もしも実際に見ることが出来たら、それだけでラッキーだと言えそうです!

世界のことって面白いよね!By 世界雑学ノート!

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