ロシアの英雄を9名集めて紹介していきます。実在した宇宙飛行士から伝説の戦士まで、ロシアやロシア人について興味があれば確認必須です。
「英雄」は世界各地に存在していますが、ロシアもまた同じ。
ロシアでは伝説や伝承に出てくる架空の英雄を始め、歴史の中で偉業を成し遂げた人々が英雄として扱われ、尊敬を集めています。
そして、こういったロシアの英雄の中には、宇宙飛行士、軍人、詩人、そして戦士などが含まれます。
この記事では、数いるロシアの英雄の中から、歴史上に実在した人物から伝承に生きる架空の人物まで、合わせて9人のロシアの英雄を紹介していきます。
実在したロシアの英雄たち
ロシアの英雄1:イヴァン・スサーニン
イヴァン・スサーニン(イワン・スサーニン, 〜1619年)は、ロシアの歴史において「1598年のリューリク朝フョードル1世の死去から1613年のロマノフ朝創設まで」の時代を指す「動乱時代」に殉教者となったことで知られるロシアの英雄。
動乱時代に起こった「ロシア・ポーランド戦争(1605〜1618年)」において、ポーランドの軍隊がロシアへ攻め込んできたことがありました。
当時、農民として生計を立てていたスターニンが住んでいたドムニノ村という村は、国の避難場所として使用されていてこともあり、そこには将来の皇帝であるミハイル・ロマノフが、母親と共に身を隠していました。
ある日、ポーランドの軍隊は、その道中でスサーニンと遭遇。ロマノフ家の人間が住む避難場所へ案内するように脅します。
これに対してスサーニンは協力と案内を約束して、森へと導きました。
しかし、スサーニンが案内した道は「嘘」だったのです。
軍隊をかく乱してロマノフ家の人々を助けるために、わざと嘘の道を案内したのです。
一方でスサーニンは、義理の息子をロマノフ家の人々の元へ使いに出し、彼らに危険を知らせ、ロマノフ家は存命することとなりました。
嘘がバレたことで、スサーニンは最終的にポーランド側に殺されてしまいますが、スサーニンの献身は後世でオペラに仕立て上げられ、愛国心や、祖国のための献身のシンボルとして「英雄」扱いされることとなっていったのです。
ロシアの英雄2:ゲオルギー・ジューコフ
ゲオルギー・ジューコフ、全名ゲオルギー・コンスタンチーノヴィチ・ジューコフ(1896〜1974年)は、帝政時代からソ連時代のロシアに生きた人物であり、ソ連時代における軍人そして政治家。
ソ連軍においては「元帥」にまで昇進し、また国防大臣も務めた英雄です。
第2次世界大戦では、赤軍の幕僚として、また、将軍として、大戦に赴きました。
有名な功績には、レニングラードの戦い(攻防戦)で耐え抜いて、最終的にはソ連へ勝利を導いたこと、さらには、ナチスに対して大々的な反対運動を展開し、1945年5月8日、最終的にドイツを降伏に追い込んだことなどが挙げられます。
死後も彼に対する評価は高く、防空軍事指揮アカデミーや、サンクトペテルブルクなどの通りには、彼の名前が冠されました。
ロシアの英雄3:ユーリイ・ガガーリン
ユーリイ・ガガーリン(全名:ユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン, 1934〜1968年)は、人類で初めて宇宙に行った宇宙飛行士であると同時に、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国出身の、ソビエト時代を代表するロシアの英雄。
労働者階級の真の英雄として、庶民からスターの座へと上り詰めており、ソビエト時代の人々が思い描く「夢」を体現したような人物と言えます。
また、ガガーリンが持ち合わせていた質素な性格と、上品さと教養に溢れた性格は、当時の社会主義時代のロシア及びソ連を形成していた他の共和国ではとても尊敬され、多くの人々が敬意を払う対象となり、最終的には属していたソビエト軍の中で大佐にまで出世しました。
その業績に加えて、人格者としての側面などから、今日でもガガーリンはロシア人にとって英雄的存在です。
ロシアの英雄4:ワレンチナ・テレシコワ
ワレンチナ・テレシコワ、全名ワレンチナ・ヴラディミロヴナ・テレシコワ(1937年〜)は、ロシアが誇る女性の英雄の一人であり、また、世界で初めて女性として宇宙飛行を行った人物。
さらに、ユーリイ・ガガーリンなどとは違い、初の非軍人による宇宙飛行士となった人物であり、また、単独で宇宙飛行を成功させた唯一の女性です。
その世界初の試みや、当時は宇宙進出に関してアメリカとソ連が激しく競争していたこともあり、400人を超える候補の中から最終的に彼女が宇宙飛行士に選抜されたことは、家族を含めた第三者へ打ち明けることは完全に禁じられ、テレシコワが宇宙へ旅立った後にソ連政府が世界へ向けて発表したことで、ようやく皆が知ることとなりました。
途中で宇宙船の操作トラブルなどがあったものの、宇宙でおよそ3日間を過ごし、無事に地球へ帰還しました。
ちなみに、宇宙飛行士になる前、テレシコワはもともと織物工場で勤務していたなど、いたって普通の経歴を持っていました。
ロシアの英雄5:ヴラジーミル・ヴィソツキー
ヴラジーミル・ヴィソツキー(1938〜1980年)は、1964年から80年代の期間を表すソ連の「停滞の時代」と呼ばれた時期に活躍したロシアのモスクワ出身の詩人、俳優、そしてシンガーソングライター。
当時のソ連では、人々の感情や不満、そして社会問題などがないがしろにされていましたが、ヴィソツキーはそれを詩や歌にのせて表現したのです。
ただし、その内容は当時の社会背景から考えて非常に激しく、また、政権に対しての批判であったこともあり、彼の作品の多くは発売を禁じられました。
ただし、それでも労働者や知識階級の様々な人々から尊敬され、そして支持を受けていたことも事実で、ヴィソツキーの葬儀には大勢の人々が集まったと言います。
ソ連が崩壊した後には、日本にもヴィソツキーの作品が入り、また、宮崎駿は「風の谷のナウシカ」のエンディングソングにヴィソツキーの「大地の歌」の使用を希望したという話も残っています。
ロシアの英雄6:スタニスラフ・ペトロフ
スタニスラフ・ペトロフ、全名スタニスラフ・イェフグラーフォヴィチ・ペトロフ(1939〜2017年)は、核戦争を未然に防いだ人物として知られる、隠れたロシアの英雄。
ソビエトとアメリカが激しい緊張関係にあった冷戦時代当時の1983年9月26日、ソ連軍の将校として働いていたペトロフは、「アメリカから複数の弾道ミサイルが発車された」とするソ連の監視衛星が発した警報を「間違い」であると見抜きました。
もしも、この警報を信じていた場合、その後には偶発的にしろアメリカとの報復核攻撃による核戦争が起きていた可能性も示唆されており、ペトロフは世界レベルの核戦争を未然に防いだ「世界を救った男」なのです。
ペトロフの判断に対してはその後、ソ連政府からお咎めも無ければ表彰されることもなく時が経過していきましたが、2006年になると、ニューヨークにある国連本部で表彰されることとなりました。
2度目の特別世界市民賞に選出され、英雄として表彰されたのです。
伝承に登場するロシアの英雄たち:三戦士(3人のボガティール)
「三戦士(3人のボガティール)」とは、東スラブ人の伝承に出てくるボガティール(Bogatyr)と呼ばれる「戦士」たちの中でも、ロシアの画家ヴィクトル・ヴァスネツォフが19年の年月をかけて1898年に完成した作品「the Bogatirs」に描かれる3人の男たちのこと。
体格が大きくがっしりした「イリヤー・ムーロメツ」を筆頭に、彼の仲間であった「アリョーシャ・ポポーヴィチ」と「ドブルィニャ・ニキーティチ」が描かれ、彼らは伝承の中における不滅の英雄的存在となりました。
ロシアの英雄7:イリヤー・ムーロメツ
ロシアのウラジミール州にあるムーロムの街に生まれたとされるイリヤー・ムーロメツは、ロシアの伝承の中で最も偉大な戦士として描かれ、数々の危機からロシアを守るストーリーが知られます。
その無限の強さによって、片手でタタール民族の軍隊を撃退したり、 森全体を切り倒して怪獣や強盗を退治したりといった逸話が数多く存在するのです。
また、イリヤーの仲間であるアリョーシャとドブルィニャについてはそれぞれ、アリョーシャは知恵で、またドブルィニャは勇気で知られています。
ロシアの英雄8:アリョーシャ・ポポーヴィチ
3人のうち最も若い年齢であったアリョーシャについては、ドラゴンのトゥガーリン・ズメエヴィチに勝利を収めた逸話が残ります。
伝承によると、空を飛ぶことで人間に対して優位なドラゴンの弱点は、その翼にありました。
ドラゴンの翼は紙で出来ていたのです。
アリョーシャは、その翼を濡らすことで飛べなくして地上へ戻し、そして倒すことを考えました。
そして、天が雨を降らした機会を逃すことなく、アリョーシャはドラゴンを仕留めることに成功しました。
ロシアの英雄9:ドブルィニャ・ニキーティチ
ドブルィニャもまた、ドラゴンと戦う力に長けており、他にチェスや音楽、アーチェリーの技術でも知られています。
ドブルィニャと竜のニキーチチの伝承の中では、諦めそうになったその時、「あと3時間我慢しれば勝利するであろう」という天の声が送られた結果、3日間に及ぶ戦いでドラゴンに勝利したという逸話が残っています。
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ロシアの英雄9名!実在した宇宙飛行士から伝説の戦士までのまとめ
ロシアの英雄たちを9名紹介していきました。
ロシアでは他にも、実在した人物と伝承の中で描かれたキャラクターを合わせると、多くの英雄たちを見つけることが出来ます。
そして、そういった英雄たちの中には、その名前が様々なシーンで使われる人もいます。
例えば、ロシアの叙事詩であるブィリーナに登場する英雄「イリヤー・ムーロメツ」などは、カフェメニューの名前から、記念日の名前にまで採用されています。
このように、ロシアの英雄たちを知っておくことは、ロシアに関する他の物事の背景を知る上でも役立つことがあるので、興味があったら他の英雄たちについても調べていくと面白いと思います。