北アフリカに主に住んでいる、ベルベル人の特徴を見ていきます。また、男性と女性の有名人も紹介していくので、ベルベル人とはどんな人達なのか理解出来るはずです。
ベルベル人は北アフリカの数ヶ国にまたがるように居住しており、長い間この地域の文化へ大きな影響を与えてきた人々。
また、世界中へ移民として移住しているため、北アフリカ以外の国でも出会うことがあります。
そんなベルベル人は、北アフリカ諸国へ訪れるた観光客を楽しませるためのパフォーマンスをしていたり、独特で興味深い工芸品を販売していたりしますが、それだけではなく、実は非常に興味深い特徴や歴史、文化を持っている人たちなんです。
そんなベルベル人について、基本的な紹介から知っておきたい特徴的なこと、そして何人かの有名人までを紹介していきます。
- ベルベル人とは?
- ベルベル人について知っておきたい11の特徴的なこと
- ベルベル人の特徴的なこと1:モロッコのおよそ半数の人口がベルベル人
- ベルベル人の特徴的なこと2:ベルベル語を話せる人の全体数は不明
- ベルベル人の特徴的なこと3:大部分のベルベル人はイスラム教徒だが昔は違った
- ベルベル人の特徴的なこと4:ベルベル人という名は未開人に由来
- ベルベル人の特徴的なこと5:アマジグ人・アマジク人と呼んであげた方が良い
- ベルベル人の特徴的なこと6:ベルベル人を見下す風潮があった
- ベルベル人の特徴的なこと7:北アフリカにアラブ人たちよりも遥か昔から居住
- ベルベル人の特徴的なこと8:多くは山間部に住む
- ベルベル人の特徴的なこと9:伝統的な結婚式
- ベルベル人の特徴的なこと10:古代ベルベル語の書き言葉が存在する
- ベルベル人の特徴的なこと11:何世紀にもわたり食されてきた料理
- ベルベル人の有名人をちょこっと紹介
- 合わせて読みたい世界雑学記事
- ベルベル人百科|特徴から有名人(男性&女性)までを見ていこう!のまとめ
ベルベル人とは?
ベルベル人とは、北アフリカの先住民グループの一つ。
外見的にはコーカソイド(注)に当てはまりながらも、他のヨーロッパやアラブ諸国の人たちとは異なる独特な文化を持つのが特徴。
また歴史上、ベルベル人達は、アフロアジア語族(アジアとアフリカで話される関連した言語グループ)に属するベルベル諸語を話し、このベルベル諸語を母語とする人々が総称として「ベルベル人」と呼ばれる点もポイントです。
一方で、ベルベル人の多くは長い年月の間に各地域の言語を母語として育ち、ベルベル諸語を話せない人々もいるため、非ベルベル諸語話者も加えた民族的なベルベル人の数は、今日ベルベル人として知られる人々の数よりはるかに多いと考えられています(ただし、歴史上、広範囲に広がるベルベル人は様々な社会や祖先をルーツに持つとされ、完全に同質の民族グループというわけではない)。
もともと北アフリカの広い地域に古くから住んでいるため、今でも主にモロッコ、アルジェリア、北部マリ、モーリタニア、北部ニジェール、チュニジア、リビア、そして西部エジプトの一部に住んでいます。
しかし、今日までに多くのベルベル人が海外へ移住しているため、フランス、スペイン、カナダ、ベルギー、オランダ、ドイツ、その他のヨーロッパ諸国で、比較的大規模なベルベル人の移民コミュニティも確認されています。
(注釈)コーカソイドとは、ヨーロッパや中東、西アジアや北アフリカに住む人たちをまとめて指す概念。肌の色の多少の違いはあるものの、鼻が高くて目が大きな、日本人的に言えばいわゆる「白人的な外見」に当てはまる人たちのこと。
ただし、ベルベル人は外見こそコーカソイドであるが、実際には多くの人がネグロイド(黒人系の人々)の遺伝子も保有していると言われる。
ベルベル人について知っておきたい11の特徴的なこと
ベルベル人の特徴的なこと1:モロッコのおよそ半数の人口がベルベル人
モロッコと言えば観光地として有名なため、訪れたことがある人も多いかもしれませんが、実はモロッコに住む人のおよそ1300万人(2000万人とも言われることがある)、モロッコの人口の40%以上のがベルベル人だとされます。
他にも、アルジェリアには800~1300人(アルジェリア人口の20~30%ぐらい)、リビアには300万人前後(リビア人口の5%前後)のベルベル人が住んでいるとされ、北アフリカの国々でかなりの人口規模を持っているのが分かります。
さらに、北アフリカ以外で言うと移民先として人気のあるフランスには200万人以上(フランス人口の3%以上)、ベルギーにはおよそ50万人(ベルギー人口のおよそ4.5%)、オランダにはおよそ40万人(オランダ人口の2~2.5%)のベルベル人が住んでおり、各国でそれなりに大きな勢力となっているのが特徴的です。
ベルベル人の特徴的なこと2:ベルベル語を話せる人の全体数は不明
ベルベル人の生活様式(大部分は農民や遊牧民)の性質上、また、広範囲に居住地が広がっていること、さらに移民として海外に住んでいる人も多いことなどから、ベルベル語を話すベルベル人の数を正確に把握するは困難。
そのため、ベルベル人として呼ばれるベルベル語話者の全体数は不明とされています。
例えば、北アフリカに住む民族的なベルベル人(主にモロッコとアルジェリア)の内、およそ1500万人から2500万人がベルベル語を話すと考えられていますが、他にも2500〜3000万という話もあったりと、あくまでも推測の域を出ません。
ベルベル人の特徴的なこと3:大部分のベルベル人はイスラム教徒だが昔は違った
北アフリカの多くの地域と同様に、ベルベル人の大部分はイスラム教徒ですが、昔からそうだったわけではありません。
何世紀にもわたって、ベルベル人達はこの地に入植してくるアラブ人達と戦ってきましたが、その勢力に押されて徐々にアラブ人が多く北アフリカ一帯に住むようになり、同時にベルベル人の多くがアラブ人によってもたらされたイスラム教に改修していったのです。
一方で、アトラス山脈に住むベルベル人たちの間では一時期、ユダヤ教が広く浸透している時期がありました。
このユダヤ教徒であるベルベル人の大部分は、昔にイスラエルに移り住んでいます。
ベルベル人の特徴的なこと4:ベルベル人という名は未開人に由来
ベルベル人の名前の由来は、ギリシャ語の“barbaros” (barbarian:未開人の意味)に由来します。
これは当時、ベルベル人たちに初めて遭遇した、ローマ人、フランス人、アラブ人たちが、自分達にとって未知なる文化や生活習慣、わけのわからない言語を操っている姿を見て、野蛮で未開のものとしたからでした。
ベルベル人の特徴的なこと5:アマジグ人・アマジク人と呼んであげた方が良い
上で述べたように、ベルベル人と呼ばれる彼らですが、その意味することが「未開人や野蛮な人」という言葉から派生しており、しかも第三者に勝手につけられた呼称であるため、客観的に考えると差別的な呼び名であることが分かります。
一方で、ベルベル人自身は自分たちを呼ぶ際、一人を指す場合は「アマーズィーグ(a-Mazigh)」、そして複数の人々を指す場合は「イマズィゲン(i-Mazigh-en)」と表現し、意味は「free people(自由な人々)」や「noble men(気高い者)」。
また、ベルベル語を指す際に彼らは、タマジグト(Tamazight)、タマシェク(Tamasheq)、タマジャク(Tamajaq)などと表現します。
このようなことから、もしもベルベル人と出会った際に彼らを呼ぶのであれば、アマーズィーグ(単数系)やイマズィゲン(複数形)という言葉を使い、彼らの言葉を指す場合はタマジグトと言ってあげると喜ぶかもしれません。
ベルベル人の特徴的なこと6:ベルベル人を見下す風潮があった
悲しいことですが、その「ベルベル」の語源が意味することからも分かる通り、オーストラリアにおけるアボリジニやその他の国の原住民達のように、20世紀半ばまで、ベルベル人達を見下す風潮がありました。
特に、この地に入植してきたアラブ系住民や、19世紀後半から始まったアフリカの植民地化によってやってきたヨーロッパ人達から、二流市民として扱われる傾向がありました。
しかし現在は、人種差別に対するグローバルな流れなども影響し、ベルベル人は他の文化の人々と平等に尊重されており、また、ベルベル語はモロッコの公用語の一つとして認められています。
ベルベル人の特徴的なこと7:北アフリカにアラブ人たちよりも遥か昔から居住
現在ではアラブ人が北アフリカの大部分の人口を占めていますが、ベルベル人はアラブ人が北アフリカにやってくるよりも、はるか昔からこの地域に居住していました。
その年代に関しては確実ではないものの、少なくとも4000年以上も前には、この地域にベルベル人が住み始めた可能性が示唆されています。
ベルベル人の特徴的なこと8:多くは山間部に住む
フェズやマラケシュのようなモロッコの都市へ観光に行くと、ベルベル人のパフォーマンスや工芸品を見かけるかもしれませんが、ベルベル人の大部分は都市部には住んでいません。
ベルベル人はモロッコや、その他の北アフリカの山間部に居住し、作物を育てながら自給自足の生活を行い、少数のベルベル人達は遊牧を行っているのです。
ベルベル人の特徴的なこと9:伝統的な結婚式
最も有名なベルベル文化の一つが、イミルヒル(Imilchil)の結婚祭。
太陰暦のカレンダーに基づいて毎年9月に、現地の部族たちがアトラス山脈に登って集まり、結婚を望む男女達に、いわゆる集団お見合いのようなことをさせて結婚式を執り行います。
ちなみに、このような結婚祭が始まった起源とされ興味深いのが、この地方に伝わる昔ばなし。
昔々、愛し合う一組のカップルがいましたが、お互いの家族が反目しあっていたため、結婚出来ないことに絶望し、湖に身を投げたというストーリーです。
そのような不幸が起こらないように、部族のメンバー皆で結婚したい男女達を祝うようになったといった感じでしょうか。
ベルベル人の特徴的なこと10:古代ベルベル語の書き言葉が存在する
古代にはベルベル後の書き言葉が存在していました。
しかし、北アフリカでは現在、多くの種類のベルベル諸語が話されている一方、そのどれも、古代ベルベル語の書き言葉と強い関連性を示していません。
その古代ベルベルの書き言葉に用いられたアルファベットは、ポエニ文字(古代地中海の海外交易に従事したフェニキア人の言語を表記するための文字)やラテン文字に似ているとされています。
また、この文字は、紀元前3世紀から3世紀にかけて使用されていたと考えられています。
ベルベル人の特徴的なこと11:何世紀にもわたり食されてきた料理
ベルベル人が食べてきた料理は大変美味として有名。そのレシピは何世紀にもわたってほとんど変わらずに守られてきています。
また、ベルベル料理は、タジン(北アフリカ地域の鍋料理)などの、北アフリカ諸国の伝統料理に取り入れられてきています。
ベルベル人の有名人をちょこっと紹介
ベルベル人はだいたいどんな人たちか分かってきたかと思いますが、最後にベルベル人の有名人をちょこっとだけ紹介しておきます。
ベルベル人の有名人① ジネディーヌ・ジダン
ジネディーヌ・ジダンと言えば、世界最高のサッカー選手の称号「バロンドール」や「FIFA最優秀選手賞」などを多く受賞している、元サッカーフランス代表。
現在はサッカーの指導者として活躍中です。
アルジェリア独立戦争前にフランスへ移住してきたベルベル人の両親を親に持つベルベル系フランス人で、世界で最も有名なベルベル人の一人かもしれません。
ベルベル人の有名人② カリム・ベンゼマ
フランス代表としても活躍したことがあり、世界最高峰のサッカーチーム「レアルマドリード」でフォワードとして活躍するカリム・ベンゼマもベルベル人。
ジダンと同じように、1950年代に家族がアルジェリアからフランスへ移住してきたことにより、フランスの国籍を保有しています。
ベルベル人の有名人③ 沢尻エリカ
美しい外見で女優や歌手として活躍する沢尻エリカは、ベルベル人の血を引いている人物。
父が日本人で母がベルベル系フランス人(アルジェリア生まれ)であるため、ベルベル人と日本人のミックスと言え、有名なベルベル人の一人と考えられるかと思います。
ベルベル人の有名人④ ロリーン
ヨーロッパの音楽の祭典「ユーロビジョン・ソングコンスト」に、2012年のスウェーデン代表として参加した女性歌手ロリーン。
彼女の両親はモロッコ生まれのベルベル人であるため、スウェーデン国籍を有するベルベル人として活躍しています。
ベルベル人の有名人⑤ イザベル・アジャーニ
イザベル・アジャーニは、フランス映画界で最も権威があると言っても良いセザール賞を、フランス映画史上最多の5回も受賞し、さらに米アカデミー賞にも2回ノミネートされている、1955年生まれのベテラン女優。
母はドイツ人だけど父がベルベル系アルジェリア人であるため、イザベル・アジャーニもまた、ミックスのベルベル人女性だと言えます。
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ベルベル人百科|特徴から有名人(男性&女性)までを見ていこう!のまとめ
北アフリカを中心に住んでいるベルベル人は、独特の文化や言語を持つ人々。モロッコなどを訪れた際には必ずと言っていいほど見かけるかと思います。
もしも彼らに会うことがあったら、「ベルベル」ではなく「アマーズィーグ」と呼ぶことをお忘れなく!
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